ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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就活を無事に終えて、今日から投稿再開です!
今回からはナエちゃん編です。原作でお馴染みのあの子も登場します。


ep.54 朝露の少女と碧の騎士

キリトとヒースクリフとの決闘から数日後。

ハルトは六十一層のマイホームでナエと一緒に遊んでいた。

 

「いいかいナエ。ここに一つのコインがある。このコインを手に握って、もう一つの手でコインを握っている手を数回叩くと・・・ほら!」

 

「わぁ!コインが消えました!」

 

先程までハルトの手に握っていたコインが無くなり、ナエは驚きの声を上げる。

驚くナエを見て、ハルトは口元を軽く緩ませながらマジックを続ける。

 

「そして、もう一度パンって手を叩くと・・・ほら!消えたはずのコインが元通り」

 

「すごーい!」

 

ハルトの手の平に消えたはずのコインが置かれ、ナエは拍手を送った。

マジックを見てご満悦な様子のナエ。そこに、コハルが微笑みながら口を開く。

 

「ナエちゃん、楽しそうだね」

 

「はい!パパは凄いです!」

 

「ありがとう、ナエ」

 

「フフッ、もうすぐ夕方になるし、そろそろ晩ご飯にしよっか」

 

「わーい!コハルの料理、楽しみですね、パパ」

 

晩ご飯と聞いて喜ぶナエ。

こうして見ると、仲微笑ましい家族の日常にしか見えないだろう。ナエの複雑な事情がなければ・・・

晩ご飯を食べ終えたナエは、そのまま寝室のベッドで寝て、ハルトとコハルはテーブルを挟んで椅子に座っていた。

 

「ねぇ、ハルト。私たち、本当にこのままでいいのかな?」

 

「・・・・・・」

 

コハルの言葉に、ハルトは何も言わない。

 

「この間、キリトさんとアスナが結婚した後、二人が最前線を離れたって聞いたでしょ。二人が離れたってことは、その分攻略も厳しくなっているはず。いつまでも皆に甘えているわけにはいかないと思うの。でも・・・」

 

「分かってる。ナエの事もこのままにしておくわけにはいかない。だけど、彼女の正体が分からない以上、今の僕たちができることは限られている」

 

「そう、だよね・・・」

 

「今は待とう。いつかナエのことが分かる時まで・・・」

 

その言葉に、コハルはうんと頷くことしかできなかった。

重い空気の中、ハルトにメッセージが届いた。

 

「ん?キリトからメッセージだ」

 

メッセージの相手は、先日アスナと結婚したキリトからだった。現在は二十一層のログハウスでアスナと二人で暮らしていると聞いている。

 

「えっと・・・『明日の朝、俺たちの家に来てくれないか?できれば、ナエも連れてきてほしい』・・・キリト達の家って、確か二十一層だったはず」

 

「ナエちゃんも一緒に連れていく?どういうことなのかな・・・?」

 

メッセージを確認して、疑問を浮かべる二人だったが、ひとまずは寝て、明日キリト達の家に行くことにした。

 

 

 

 

そして、次の日の朝早くから、ハルトとコハルとナエの三人は、二十一層に訪れていた。

 

「ここがキリト達の住んでいる家か・・・」

 

「何だか、私たちが住んでいる場所とそっくりだね」

 

木造のログハウスを見上げながら、ハルトとコハルは家の扉の近くに置いてるベルを鳴らす。

すると、すぐに入口の扉が開き、私服姿のキリトとアスナが顔を出した。

 

「来たな。待ってたぜ」

 

「いらっしゃい、ハルト君、コハル、ナエちゃん」

 

「こんにちは、キリトさん、アスナ。それと、改めて結婚おめでとう」

 

出迎えてくれたキリトとアスナに、コハルが笑顔で返す。

ハルトも元気そうな二人の様子に笑みを浮かべながらも、自分たちを呼び出した用件をキリトに聞く。

 

「それでキリト。僕たちをここに呼んだ用件は何?ナエも連れて来て欲しいって言ってたけど・・・」

 

「あぁ、実は・・・」

 

「あれ?その人たちは誰ですか?」

 

キリトが説明しようとした直後、白いワンピースを着た一人の少女が顔を出してきた。

 

「紹介するよユイ。この二人はハルトとコハル。同じ攻略組の仲間で俺の友達だ」

 

「パパのお友達ですか?」

 

「「パパ!?」」

 

「そうよ。パパとママにとって、大切な人たちなの」

 

「「ママ!?」」

 

次々と出てくる衝撃的な単語の数々に、ハルトとコハルは驚くばかりである。

そんな二人の様子を見て、キリトは苦笑いする。

 

「まぁ、驚くのも無理はないな。ひとまず、中に入れよ。そこで説明するから」

 

キリトに言われるがまま、三人はログハウスの中へ入る。

テーブルを挟んで椅子に座り、ハルトとコハルはキリトから謎の少女ユイについて聞いた。

 

「なるほど、森の中で倒れてたその女の子、ユイを見つけて保護した。そして、朝になったら目を覚ましたから、色々聞いてみたけど、その子も記憶喪失で、分かったのは名前だけだと・・・」

 

「なんか、私たちがナエちゃんと初めて会った時と似てるね」

 

キリトの話を聞いて、当時の状況やユイ自身が、嘗て森の中でナエを見つけた時の状況と似ていることに気づくコハル。

キリトも同じようなことを思っており、ユイとナエを見比べながら言葉を続ける。

 

「俺たちも色々調べてみたけど、この子がナエと同じで頭にカーソルが無いことに気づいてな。もしかしたら、何か共通点があると思って、連れて来てもらったんだ」

 

「ふむ、ナエと同じカーソルの無いプレイヤーか・・・」

 

そう言いながら、ハルトは視線をナエの方に向ける。

視線の先では、ナエとユイが向き合いながら自己紹介をしてた。

 

「初めまして、私はユイです」

 

「私はナエです。よろしくお願いします、ユイ」

 

お互いぺこっと頭を下げるナエとユイ。

 

「二人共、本当にそっくりだ。姉妹って言われても違和感ないや。記憶が無いところや、僕らのことをパパやママって呼ぶところも」

 

「それなんだけど、一つ気になることがあるんだ」

 

ハルトの呟きを拾ったキリトが、二人に問う。

 

「ユイは俺たちの事をパパ、ママって呼ぶのに、どうしてナエはハルトだけパパって呼んで、コハルは名前で呼んでいるんだ?」

 

「それは・・・最初に見つけたのがハルトだから、とか?」

 

「それも疑問なんだ。そもそも、たまたま森の中を一人で歩いていたハルトが、たまたまモンスターに襲われていたナエを見つけた・・・偶然にしては、少し出来過ぎだと思うぞ。まるで、誰かがハルトが一人の時を狙って、ナエにモンスターを仕向けたとか・・・」

 

「さ、流石に考えすぎじゃ・・・ねぇ、ハルト」

 

「・・・・・・」

 

有り得ないと言わんばかりの顔をするコハルだが、ハルトは思うところがあるのか、顔を険しくさせながら考え込んでいた。

場の空気が重くなり、見かねたキリトが話題を切り替える。

 

「まぁ、それは今考えても仕方のないことだろ。それより、今後どうするかだな」

 

「それなんだけど、ユイをサーシャさんの所に連れていってみたらどう?」

 

ハルトはキリトとアスナに《はじまりの街》でサーシャが経営している教会のことを教える。

 

「親元がいない子供たちを保護している教会か・・・そこなら、ユイのことについて聞けるかもしれないな」

 

「だけど、ナエの時は目ぼしい情報は得られなかったから、ユイを連れても、あまり期待はできないかもしれないよ」

 

「それでも、行かないよりはマシだろ。何も得られなかったら、その時また考えるさ」

 

そう言うキリトを見て、ハルトはこれ以上、何も言わなかった。

 

 

 

 

キリト達の家で昼食を食べた後、ハルト達六人は《はじまりの街》に来ていた。

 

「ここへ来るのも久しぶりだな」

 

「私も。普段はここに来ることなんて無いしね」

 

「《はじまりの街》・・・私とハルトが再会した場所。そして、全てが始まった場所・・・」

 

コハルがそう呟くと、ハルト達四人は茅場晶彦がデスゲームの宣言をした始まりの日の事を思い出す。

思い耽る気持ちを切り替えて、アスナはキリトの背中に背負われているユイに話し掛ける。

 

「ねぇ、ユイちゃん。見覚えのある建物とかある?」

 

「分かんない」

 

アスナの問いに、首を横に振って答えるユイ。

 

「ナエちゃんはどう?前に来た時と違って、何か思い出したことは?」

 

「ありません」

 

今度はコハルが聞くが、同じくハルトの背中に背負われているナエは首を横に振る。

 

「まぁ、《はじまりの街》は恐ろしく広いからな。とりあえず、中央市場に行ってみようぜ」

 

キリトの提案に頷き、中央市場の方に向かうハルト達。

やがて、市場に辿り着き、道を歩く道中にキリトが辺りを見渡しながら口を開いた。

 

「なんか、思ってた以上に生き生きしてるな」

 

「噂で聞いた話と随分違うね。確か、今の《はじまりの街》は軍が支配していて、かなり風紀が悪いって聞いたけど・・・その割には、人が多いね。ハルト君たちが前に来た時もこんな感じだった?」

 

「いや、前来た時はこんなに人はいなかった。いったいどうなっているんだ?」

 

「私たちが最後に来てからその間に何かあったのかな?」

 

目に広がるのは、人が賑わいを見せる平和そのものの光景。始まりの日程ではないが、それなりに活気のある市場だった。

噂で聞いた軍の横暴に苦しめられている《はじまりの町》とは思えない光景に、キリトとアスナは疑問を抱く。ハルトとコハルも前に来た時と比べて生き生きとしている《はじまりの町》に困惑している。

疑問を抱きながらも、市場を歩いていたその時だった。

 

「子供たちを返して!」

 

「「!?」」

 

「今の声は!」

 

「サーシャさん!」

 

路地裏の方から女性の叫び声が聞こえ、キリトとアスナが驚く中、ハルトとコハルは聞き覚えのある女性の声に反応し、いち早く走り出した。遅れてキリトとアスナも後を追う。

しばらく走っていると、サーシャが武装してる軍のプレイヤー達と対峙してる光景が見えた。

 

「子供たちを返してください!」

 

「人聞きの悪いこと言わないで欲しいなぁ。軍の大事な任務で、ちょいと子供たちに社会常識ってのを教えてやってるのさ」

 

「そうそう。市民には納税の義務があるってな」

 

軍の一人がそう言うと、他の者達はゲラゲラとチンピラみたいに笑うも、サーシャはそれを無視して、軍の後ろにいる子供たちに聞こえるよう大声で叫ぶ。

 

「ギン!ケイン!ミナ!そこにいるのね!」

 

「サーシャ先生!助けて!」

 

「三人共、お金なんていいから全部渡しなさい!」

 

「そ、それが、こいつら金だけじゃダメだって」

 

「なんですって!?」

 

奥から聞こえたケインの言葉に困惑するサーシャ。

 

「あんたら随分税金を滞納してるみたいだな。だから、金だけじゃ足りないんだよ」

 

「装備に防具、何もかも全て渡してもらおうか」

 

嫌な笑みを隠さず、サーシャに要求する軍のプレイヤー達。

 

「そこを通して・・・!」

 

怒りのままサーシャが腰の短剣に手を掛けたその時だった。

 

「そこまでだ!」

 

突如男の声が響き渡り、軍のプレイヤー達や子供たちにサーシャ。丁度現場に辿り着いて、サーシャ達の頭上を飛び越えようとしたキリト達も動きを止めて、一斉に顔を見上げた。

すると、家の屋根の上に立っている一人の人間が全員の目に映った。

 

「あ、あいつは!?」

 

「まさか、またあの騎士か!?」

 

「「「「騎士?」」」」

 

軍の一人から出た騎士の言葉に、ハルト達四人は疑問の声を上げる。

 

「とう!」

 

騎士と呼ばれた男は、屋根から飛び降りると、子供たちの前に着地した。

その人物は全身を青い鎧で覆っていた。右手に剣を持ち、左手に盾を装備しており、兜で頭を隠しているその姿は、正に騎士に相応しい振る舞いだった。

子供たちを守るように立つ青い鎧の騎士は、軍に向かって言い放つ。

 

「アインクラッド解放軍。懲りずにまたプレイヤーから税を巻き上げているようだな。それも、こんな幼い子供たちから・・・恥を知れ」

 

「う、うるせぇ!部外者が口を出すな!」

 

そう言いながら、軍の一人が武器を取り出して、騎士に襲い掛かる。

 

「あ、危ない!」

 

アスナが騎士に向かって叫ぶ。

 

「遅い!」

 

しかし、騎士は片手直剣のソードスキル<レイジ・スパイク>を一瞬の早さで発動させて、襲い掛かった男に攻撃した。

当然、圏内であるためダメージは無いが、スキルの威力とプレイヤー自身のパラメーターの大きさによって発生するノックバックが男を吹き飛ばした。

男はハルト達がいる場所まで飛んでおり、強力なノックバックを発生させたことから、騎士のスキルと技量の高さが伺える。

仲間が飛ばされて呆然とする軍の面々を騎士は睨みながら低い声で言った。

 

「すぐにこの場から去れ。もう二度とこんな真似はするな」

 

「「ヒイイイイイ!!」」

 

騎士の圧に怯えた軍は、一斉に走り去っていった。

それを見届けると、騎士はサーシャに一言告げる。

 

「俺はこれで失礼するよ。また何かあったら、いつでも呼んでくれ」

 

「は、はい。ありがとうございます・・・」

 

戸惑いながらも礼を言うサーシャを見た騎士は、家の屋根に向かって跳んで、この場を去ろうとする。

 

「待ってくれ!あんたはいったい・・・?」

 

キリトが慌てながら見知らぬ騎士に正体を尋ねる。

すると、騎士はキリト達を見下ろしながら力強く叫んだ。

 

「俺の名は碧の騎士!このアインクラッドにて、己の使命を果たすことを決意した騎士(ナイト)だ!」

 

堂々と叫んだ碧の騎士は、そのままどこかに行ってしまった。

 

「なんだったんだ?」

 

「さぁ?」

 

「悪い人ではなさそうだけど・・・」

 

突如現れて、風のごとく去っていった碧の騎士に困惑するキリトとアスナとコハル。

そんな三人をよそに、ハルトはサーシャに話し掛ける。

 

「大丈夫ですか?サーシャさん」

 

「ハルトさん!えぇ、私は平気よ。それよりも、ギン達は?」

 

「俺たちも平気だよ!碧の騎士が助けてくれたから!」

 

元気そうな子供たちを見て、ホッと安堵するサーシャ。

 

「うっ!?」

 

その時、キリトに背負われていたユイが急に苦しみだした。

 

「皆の・・・皆の、心が・・・!」

 

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

 

様子がおかしくなったユイに向かってキリトが叫ぶ。

アスナも慌てながら駆け寄る。

 

「ユイちゃん!何か思い出したの!?」 

 

「あたし、あたし、あたし・・・ここには、いなかった。ずっと、一人で、暗いとこにいた・・・」

 

何かを呟きながら苦しむユイだったが、次の瞬間

 

「うあああああ!!」

 

彼女の体が激しく揺れて、ユイは悲鳴を上げる。

そして、機能を停止した機械のように、ユイはそのまま気を失った。

 

「ユイちゃん!」

 

アスナは背中から倒れるユイを抱き止める。

 

「何だよ・・・今の・・・」

 

何が起きているのか分からず、キリトは混乱している。

そばで見てたコハルも同じ気持ちであり、この光景に呆然としている。

 

「い、いったい何が・・・?」

 

「ひとまず、ユイを教会まで運ぼう!サーシャさん!すぐに教会に案内してください!」

 

「は、はい!」

 

ハルトに言われて、サーシャはすぐにキリト達の所に駆け寄った。

 

「ナエ、大丈夫かい?」

 

ハルトは心配そうな表情で背中にいるナエに声を掛けるが、返事がない。

 

「ナエ・・・?」

 

「・・・・・・」

 

ナエはただ黙って、ユイが苦しんでいる姿を凝視してた。

その姿に、ハルトは何故か得体の知れない何かを感じるのであった。




・ユイ
ご存知キリトとアスナの娘。本当に二人の娘だろって思うくらい違和感の無い少女。ちなみに、SAOIFだとメインストーリーには未だに出ていない。

・碧の騎士
《はじまりの街》に突如現れた謎の騎士。その身を青色の鎧で纏う彼の正体はいったい・・・?


ナエちゃん編は少し長くなりそうです。


・ちょっとした小話
知っている人もいるかもしれませんが、最近「推しの子」の二次小説書きました。よければ、そちらも是非ご覧ください。
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