ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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いよいよアインクラッド編原作ルートもラストに近づいてきました。
今回はスカルリーパー戦です。


ep.58 百本足の骸骨

ナエが消えてから数日が経った。

あの日以降、ハルトとコハルは最前線へ復帰した。

当然の復帰に周りは驚いており、中には長い間最前線を離れていた二人を良く思わない者もいたが、そんなものを気にともせず、二人は攻略を進めていた。

そんなある日、二人の下に一つの知らせが届いた。

 

「偵察隊の半数が全滅!?」

 

メッセージの内容を聞いたコハルが驚く。

ハルトも内心驚いていたが、極力冷静さを保ちながら詳しい内容を伝える。

 

「昨日の夜、二十人編成のパーティーがボスの偵察を行ったんだ。それで、最初の十人が部屋の中に入って、残りの十人が外で待機してたんだけど、最初の十人が部屋の中央まで進んだ途端に部屋の扉が急に閉じたんだ。待機してた人達はどうにか扉を開けられないか色々試してみたけど、結局扉は開かなくて、5分ぐらい経って、ようやく扉が開いたけど・・・そこには、ボスの姿も最初の十人姿も無かった」

 

「それって・・・!」

 

「残った十人の一人が《黒鉄宮》に行って、生死を確認しに行ったけど・・・最初の十人の名前全てに横線が引いてあったんだ」

 

ハルトの言葉に、コハルは絶句するしか無かった。

いくら偵察隊とはいえ、彼らも最前線で戦うプレイヤーで、それなりの実力を兼ね備えている。にも拘らず、5分足らずで全滅してしまい、ボス部屋も一度入ったらボスを倒すか、こちらが全滅するまで出られない仕様となっており、このボス攻略が今までで一番の激戦になることが予想できる。

 

「最初の十人が《転移結晶》で逃げれなかったことを考えると、ボスの部屋は恐らく、結晶無効化空間に違いない。それに、七十五層はクォーター・ポイント。今までのボスとは比べ物にならないくらい強いと考えた方がいい」

 

「だからこそ、二大ギルドを始めとした攻略組にいるギルド、私たちのようなギルドに入っていないソロプレイヤーに招集を掛けて、今ある全ての戦力を使ってボスを倒すってことだね」

 

納得したコハルだが、あまりにも難易度が高く、絶望的とも言える状況に、不安な様子で口を開く。

 

「帰れるかな?私たち・・・」

 

「帰るさ。必ず二人で現実世界に帰ろう。そう約束したから」

 

「ハルト・・・うん、そうだね」

 

「行こう。七十五層に」

 

ハルトとコハルはそれぞれの装備を確認し、準備を終えたら家を出た。

二人は家の玄関に置いてある植木鉢に視線を向ける。植木鉢には一本の小さな苗が植えられていた。

その植木鉢は、ナエが消えた翌日に植えたものだ。いつか彼女が帰って来た時、この家をすぐ見つけられるよう、目印として置いた物だ。

 

「行って来るよ、ナエ」

 

「ナエちゃん、見守っててね」

 

(ナエ)に一言告げて、二人は歩き出す。

向かう先は集合場所である七十五層の《コリニア》にある転移門広場。

 

 

 

 

転移門から転移してきた二人の目には、既に何十をも超えるプレイヤーが集まっていた。

「血盟騎士団」や「聖竜連合」の二大ギルドに所属するプレイヤーを初め、全員最前線で戦う攻略組のプレイヤーばかりだ。

彼らはハルトとコハルに気づくと、驚きや緊張、嫉妬めいたものなど様々な視線を向けていた。

 

「よっ、ハルトにコハル」

 

そんな中、二人に声を掛けてくる者がいた。

ハルト達が振り向くと、そこにいたのは「聖竜連合」所属のシヴァタと同じく「聖竜連合」に所属している元ALSのタンク役リーテンだった。

 

「シヴァタ、それにリーテンも」

 

「お久しぶりです。ハルトさん、コハルさん」

 

そう言って、リーテンが二人に笑顔を向けてくる。

リーテンはかつてALSに所属しており、二十五層でALSが半壊した後も必死にALSを立て直そうとしてたが、ALSが既に最前線から撤退せざるを得ない状態まで衰退したことと、シヴァタの勧誘や元ALSの仲間たちの後押しもあって、三十五層のボス攻略後に元DKBこと「聖竜連合」に移籍したのだ。

 

「良かったぁ!最近、全然見かけなかったから心配したんだぜ。あ!それと、遅くなったけど結婚おめでとう!」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

「微笑ましいです。お二人の事、前からお似合いだと思っていましたので」

 

「えっと・・・二人は責めないの?その・・・僕たち、かなりの間最前線から離れてたんだけど・・・」

 

気まずそうに言うハルトの言葉に、シヴァタとリーテンはキョトンとした顔をする。

 

「何言ってんだ?何かしら事情があったんだろ?なら、しょうがないだろ」

 

「そうですよ。少しの間だけ最前線から離れてたところで、お二人の事を責めたりしませんよ」

 

「それに、もしお前らの事を悪く言う奴がいたら、俺が一発ガツンと言ってやる」

 

「シヴァの言う通りです。私たちの友人を悪く言う人は、例え同じギルドの仲間でも許しません」

 

「シヴァタ・・・リーテン・・・」

 

二人の言葉を聞いて、目頭が熱くなるハルト。

 

「そういうことだ。少なくともこの場には、お前たちを責めようとする奴はいないさ」

 

そう言われて、声がした方に振り向くと、トウガを先頭に「紅の狼」の面々がいた。

 

「お前たちが最前線に復帰したと聞いた時は驚いたが、その様子だと、もう用事は片付いたみたいだな」

 

「うん。今まで休んでた分、このボス戦で大暴れするつもりだよ」

 

「フッ、期待しているぞ」

 

いつも通りのハルトを見て、問題無いと感じて笑みを浮かべるトウガ。

そこへ更に、彼らに声を掛ける者がいた。

 

「よぉ、キリトとヒースクリフの決闘の日以来だな」

 

そう言って、近づいて来たのはザントだ。相棒のラピードは普段ボス攻略に連れてきていないので今回は一人だ。

 

「ザントも参加するんだね」

 

「当然だろ。こんな面白そうな戦い、参加しねぇ訳にはいかねぇだろ。そっちはちゃんとしたボス攻略は久しぶりみてぇだが、足引っ張りやがったら俺がケツぶった斬るからな」

 

「ハハハ、流石にケツは勘弁してほしいな」

 

相変わらず言葉は悪いが、彼なりの激励にハルトは苦笑いする。

すると、転移門からキリトとアスナの二人がやって来た。

二人がやって来たのを見て、周りのプレイヤー達はハルト達の時と同じような視線を二人に向けるが、ハルトとコハルはそんな視線を気にともせず二人に話しかける。

 

「来たね、二人共」

 

「今日はよろしくね。キリトさん、アスナ」

 

「あぁ、頼りにしてるぜ」

 

話しかけてきた二人に、キリトは笑顔で言葉を返す。

一方、アスナは不安そうな表情を二人に向けていた。

 

「二人は今回の攻略に参加して大丈夫なの?その・・・ナエちゃんのこと・・・」

 

あの時の出来事はキリトとアスナも知っている。

自分たちはユイを失わずに済み。ハルト達はナエを失った。

娘を失った二人が今回のボス攻略できちんと戦えるのかアスナは心配してた。

 

「大丈夫だよ。ナエはちゃんと、僕たちの心の中にいる。ナエの想いも背負って、僕たちはここにいる」

 

「ハルトの言う通り。それに、いつまでも落ち込んでたら、ナエちゃんが悲しむからね。いつかナエちゃんと再会した時、胸を張って会う為にも、ここで逃げる訳にはいかないから」

 

そんなアスナの心配をよそに、二人は笑顔で答えた。

 

「二人がこう言ってんだ。信じてやろうぜ」

 

「・・・そうね。改めてだけど、今日はよろしくね」

 

アスナもまた、二人を信じることにし、改めて健闘を讃えた。

 

「よう!」

 

そんな彼らに声が掛けられ、声がした方に振り向くと、クライン、エギル、オルランドの三人がいた。

 

「お前らも参加するんだな」

 

「無論!これだけの勇者たちが集まっているというのに、我らがいなければ、伝説の勇者の名が泣くわ!」

 

「応とも!伝説の勇者ってわけじゃねぇけど、ここで逃げれば男が廃るぜ!」

 

「わざわざ商売を投げ出して加勢に来たんだ。この無私無欲の精神に感謝しろよ」

 

「なら、お前は戦利品の分配から除外してもいいんだな?」

 

「い、いや、それはだなぁ・・・」

 

キリトの言葉にエギルが焦り、それを見た周りのプレイヤー達は軽く笑った。

場が少し和んだところで、転移門から新たに数人のプレイヤーが現れ、全員がそこに視線を向ける。

現れたのはヒースクリフと「血盟騎士団」所属の数名のプレイヤーだ。

今回のレイドリーダーを務めるヒースクリフが現れたことで、場が一気に引き締まった。

ヒースクリフは《回廊結晶》を取り出し、手に持ちながら腕を上げる。

 

「コリドーオープン」

 

ヒースクリフの言葉と同時に結晶は砕け散り、彼の正面に転移門が出現した。

 

「さぁ、行こうか」

 

ヒースクリフを先頭に、攻略組は次々と転移門へ入っていく。

転移した場所は、迷宮区の奥にある広い部屋だった。

部屋の奥にはボス部屋へ繋がる巨大な扉があるが、これまでのボス部屋の扉と違い、何処か重厚感を感じさせる扉だった。

場がただならぬ緊張感に包まれる中、先頭にいたヒースクリフが振り向いて、攻略組に語りかける。

 

「基本的には、血盟騎士団が前衛で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限り攻撃パターンを見切り、柔軟に反撃してほしい。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。解放の日のために!」

 

ヒースクリフがそう言うと、この場にいるプレイヤー達から歓声が上がる。

歓声が止み、それと同時に扉がゆっくりと開かれる。

キリトは二本の剣を抜き、隣にいるハルト達に声を掛けた。

 

「死ぬなよ」

 

「当然」

 

「オメェもな」

 

「今日の戦利品で一儲けするまで、くたばるわけにはいかねぇな」

 

ハルト、クライン、エギルの順で言葉を繋ぎながら、各々武器を構える。

やがて、扉は完全に開き切り、ヒースクリフが十字の盾から剣を引き抜いて叫んだ。

 

「戦闘開始!」

 

叫ぶと同時にボス部屋へ駆け込むヒースクリフ。

 

『ウォォォォォォ!!』

 

それに続くように、攻略組のプレイヤーが一斉になだれ込んだ。

全プレイヤーが部屋に入り、部屋の中央に集まった瞬間、バンッと入口の扉が勢い良く閉まった。

ボス部屋は広いドーム状になっており、辺りに灯りが無く、静寂のみが空間を支配していた。

静寂した空気の中、誰もが精神を集中させて、ボスが来るのを待つが、ボスが現れる気配はいくら経っても訪れない。

場の空気に耐え切れず、誰かが声を上げようとしたその時だった。

 

「!? 上よ!」

 

突然アスナが上を見上げながら、この場にいる全員に聞こえるような声で叫んだ。

彼女に釣られて、他のプレイヤーも上を見上げると、巨大なモンスターが天井に張り付いていた。

全長十メートルはあるであろうその巨体は骨のみでできていた。頭部の四つ目から赤い光が宿っており、前方の左右からは巨大な鎌のような腕が生えている。体の後ろには無数の足が生えて、その全てが天井に張り付いていた。

そのモンスターの頭上にHPバーと《ザ・スカルリーパー》という名前が表示される。

 

「スカルリーパー・・・」

 

「見るからにヤバそうじゃねぇか」

 

キリトがそのボスの名前を呟き、ザントが冷や汗をかきつつも笑みを浮かべる。

《ザ・スカルリーパー》は下にいる攻略組の存在に気づくと、無数にある足を広げて、一気に下へ降りてきた。

 

「固まるな!距離を取れ!」

 

ヒースクリフの叫びが響き渡り、呆然と上を見上げていた全員が我に返って、《ザ・スカルリーパー》が落下する地点から走って離れる。

だが、二人のプレイヤーが恐怖のあまり動けないでいた。

 

「こっちだ!走れ!!」

 

キリトの声で、ようやく我に返った二人のプレイヤーは走り出す。

だが、その隙を逃すまいと、地面に着地した《ザ・スカルリーパー》は、背後ががら空きになっている二人のプレイヤーを巨大な鎌で斬り裂いた。

攻撃を喰らった二人のプレイヤーは、宙へ吹き飛ばされる。

 

「「危ない!」」

 

アスナとコハルが咄嗟に落ちてくる二人を受け止めようとしたが、吹き飛ばされた二人の体は、彼女たちの手に受け止められる寸前に、ポリゴン状に四散していった。

 

「なっ!?」

 

「い、一撃で!」

 

「無茶苦茶な・・・!」

 

衝撃の光景にキリトとクラインとエギルが驚いたまま呟く。

やられた二人のプレイヤーは重装備だった。《ザ・スカルリーパー》の一撃は、そんな彼らのHPを一瞬で削り取った。

その事実に、多くのプレイヤーが戦慄した。

しかし、戦いはこれで終わりなはずもなく、《ザ・スカルリーパー》は新たな獲物を狙おうと、近くにいたプレイヤーに向けて鎌を振り下ろす。

 

「っ!」

 

そうはさせまいと、ヒースクリフが巨大な盾を前に出して、巨大な鎌を受け止める。

盾と鎌がぶつかり合い、辺りに火花が飛び散るが、ヒースクリフは表情を歪めることなく、堂々と鎌を受け止めた。

だが、この男は斬り裂けまいと判断した《ザ・スカルリーパー》は、咄嗟にもう一本の鎌を先程ヒースクリフに守られたプレイヤーに振り下ろす。

 

「馬鹿が!」

 

しかし、今度はザントが悪態付きながら前に出て、《夜月》を振り下ろして巨大な鎌を受け止める。

初めは均衡していたが、徐々にザントが押されていく。

 

「ちっ!流石にキツイな・・・なら!」

 

直後、《夜月》を握っているザントの両腕が黒く染まり、《ザ・スカルリーパー》の巨大な鎌を押し返していった。

 

「おらっ!!」

 

その勢いのまま、ザントは両腕の力を込めて、鎌を弾き返した。

まさか自身の鎌が弾き返されるとは思わなかった《ザ・スカルリーパー》は、一旦ザントから距離を取った。

ザントの両腕は黒く染められており、彼は不敵な笑みを浮かべながら、両手剣である《夜月》を片手で持っていた。

 

「流石だ。そのユニークスキル、どうやら攻撃だけでなく防御にも使えるようだ」

 

「けっ!あんたの<神聖剣>も大概だろ」

 

隣にいるヒースクリフの称賛を軽く流すザント。

ザントのユニークスキル<武装硬化>。そのスキルの特徴は、筋力パラメータを極限まで引き上げることだ。

普段から強化の際にザントは、筋力パラメータを優先的に強化しており、彼が重量ある両手剣を片手剣のように振り回せるのには、彼自身の戦闘センスと最大までに鍛えられた筋力パラメータが原因だった。

そんなザントでも、両手剣を片手で振り回すなんて真似は流石にできなかった。

しかし、このユニークスキルを手に入れたザントは、今までの戦闘スタイルに更に磨きがかかり、片手を使っての両手剣の剣技は勿論、右手だけで両手剣を持てるようになったことで、空いた左手を使った数々の体術など、多彩な攻撃を行えるようになった。

攻撃は最大の防御。その言葉に見合ったザントに相応しいユニークスキルだと言えるだろう。

 

「あの鎌は私と彼で受け止める!他の者はその隙をついて、攻撃を仕掛けるんだ!」

 

ヒースクリフが大声で指示を出すと、攻略組はその指示に従って動いた。

ヒースクリフとザントが正面の攻撃を防いでいる間に、他のプレイヤーが側面から攻撃する。

 

「ハルト!」

 

「分かってる!」

 

ハルトとコハルもソードスキルを発動させて、《ザ・スカルリーパー》に攻撃していく。

当然、周囲から攻撃を受けていた《ザ・スカルリーパー》も何もしないままでいるはずもなく、側面にある骨の足で攻略組に反撃する。

 

「来るぞ!タンク隊、前へ!」

 

「了解!」

 

「任せるである!」

 

それをシヴァタやリーテン、ナーザを除く「レジェンド・ブレイブス」の面々を始めとしたタンク隊が防ぐ。足は鎌程攻撃力はなく、重装備のプレイヤーでも受け止めることができた。

その隙にアタッカーが攻撃して、《ザ・スカルリーパー》にダメージを与えていく。

 

「硬いな。調理するに時間が掛かりそうだぜ」

 

「だが、着実にダメージを与えているのは確かだ。この調子で行けば、被害は最小限に――」

 

《ザ・スカルリーパー》のHPがあまり減っていない事に文句を言うソウゴに対して、冷静に言葉を返すトウガ。

その直後、彼の視線の先にエギルを先頭に《ザ・スカルリーパー》に攻撃を仕掛けるプレイヤーの集団が見えた。

 

「暴れるんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

果敢に立ち向かうエギル達だったが、直後トウガが《ザ・スカルリーパー》の後ろにある骨の尻尾が動いていることに気づいた。

 

「止まれ!尻尾が来るぞ!」

 

慌ててトウガが叫ぶが、《ザ・スカルリーパー》は後方の尻尾を振り回し、自身に近づいてきたエギル達を薙ぎ払った。

エギルは当たった箇所が腕だけのため、HPが全損することはなかったが、他のプレイヤーはもろに食らってしまい、吹き飛ばされたままポリゴン状に四散していった。

 

「畜生!」

 

「後ろに回り込み過ぎるな!尻尾の届かない範囲で攻撃するんだ!」

 

悔しそうな顔をするエギルに向かって指示するトウガ。

その言葉は周りにも届き、尻尾の方に近づかないよう気をつけながら攻撃していく。

その甲斐あって、尻尾による犠牲者はこれ以上出ることが無くなり、戦況は完全に攻略組の方に傾いていった。

正面をヒースクリフとザントの二人が引き受け、他が側面を攻撃していく。ただし、尻尾に近づきすぎないよう注意し、向こうが足で反撃したらタンクが防ぐ。

その工程を繰り返していくうちに、《ザ・スカルリーパー》の体勢が崩れた。

HPも残り僅かになっており、それを見たヒースクリフは攻略組に指示を出す。

 

「全員、突撃ぃ!!」

 

ヒースクリフの叫びと共に全員が《ザ・スカルリーパー》に攻撃する。

ハルトの<コネクト>による多彩な武器を用いた攻撃、キリトの<二刀流>による素早い連撃、アスナの細剣による無数の突き、コハルの短剣やトウガの<双剣>による無数の斬撃、ソウゴとクラインの刀による一撃、エギルの斧やザントの<武装硬化>による力強い一撃。コノハとレイスの連携による息の合った攻撃。

この場にいた全員が、防御など一切せず、《ザ・スカルリーパー》に向けて無我夢中で攻撃し、HPを減らしていった。

そして、遂にHPが無くなり、《ザ・スカルリーパー》は奇声と共に体が光に包まれ、ポリゴン状に四散した。

 

 

 

 

長時間に渡り《ザ・スカルリーパー》を倒した攻略組だが、誰一人としてその勝利に喜ぶことはなかった。

全員がギリギリの戦いを繰り広げ、その上犠牲者も何人か出た。

ほとんどのプレイヤーが床に座り込み、中には仰向けに倒れて息を整えている者もいる。

 

「何人やられた・・・?」

 

ふと、クラインがそんなことを呟く。

それを聞いたキリトが、マップを表示して、この場にいるプレイヤーの数を数える。

 

「・・・七人、死んだ」

 

「噓だろ・・・」

 

「七人・・・決して多い数字じゃないけど・・・」

 

「私たち、この調子で誰も犠牲にしないまま百層まで辿り着けるかな・・・?」

 

エギル、ハルト、コハルの順で呟く。

確かに、今までのボス攻略、二十五層でALSが半壊した時に比べれば、それほど多くは無いだろう。けれでも、常日頃から犠牲者を出さずに攻略することを目標としてる攻略組にとって、七人という数字は、この場の空気を暗くするのに充分過ぎる数字だった。

場が暗鬱な空気に包まれる中、ハルトは一人の男に視線を向けた。

この中で唯一、背筋を伸ばして毅然と立っている人物。「血盟騎士団」の団長、ヒースクリフ。

彼は先程の戦闘の疲れなど一切無いと言わんばかりの顔で攻略組全体を見渡していた。

その視線は穏やかで温かく、遥か高みから人々に慈悲を垂れる神のような目だった。

それを見た瞬間、ハルトは全身が凍りつくような感覚に襲われた。

ふと、視線をザントの方に向けると、彼は床に座ったまま、ポーションでレッドに達していたHPを回復してる最中だった。

《ザ・スカルリーパー》の鎌は重装備のプレイヤーをも軽く薙ぎ払い、ユニークスキルを持つザントやヒースクリフですらも防ぐことで手一杯だった。しかし、いざ戦いが終わると、同じユニークスキル使いのザントのHPはレッドになっているのに対して、ヒースクリフのHPは減ってはいるが色はグリーンままだ。

二人のHPに明確な差ができていた事に、ハルトは疑問を抱いた。

無論、<神聖剣>の高い防御力のお陰と言うのもあるが、ここまでの差ができるだろうか。

そんな考えが頭の中をよぎった瞬間、ハルトはキリトとヒースクリフが決闘した時の事を思い出した。

あの戦いで、キリトの一撃が当たる瞬間、ヒースクリフはシステムの限界を超えた速度で防ぎ、勝利を収めた。

あの時は<神聖剣>の効果で防御が間に合ったと結論付けた。しかし、もしもそれ以外の事が原因だとしたら・・・

気づいたら、ハルトは立ち上がり、ヒースクリフの下に歩いていた。

 

「ハルト?」

 

後ろでコハルが疑問の声を上げたが、ハルトはそのままヒースクリフに近づく。

ヒースクリフもこちらに近づいてくるハルトに気づき、ハルトはヒースクリフの前に立って口を開いた。

 

「流石ですね。あれだけの激しい戦いだったのに、疲れた様子すらも見せないなんて・・・」

 

突然ヒースクリフに向かって喋り出したハルトに、周りは視線を向ける。

対するヒースクリフは、内心疑問に思いながらも言葉を返す。

 

「別に疲れていないわけではないさ。これでも、ボスのヘイトをこちらに向けるのに集中してからな」

 

「そうですか?その割には、HPがあまり減ってないですね。同じようにヘイトを集めていたザントは、レッドまで減っているのに・・・」

 

「・・・君が何を言いたいのか理解し兼ねる。もし、言いたいことがあるのなら、ハッキリ言った方がいい」

 

「そうだね。では、単刀直入に言います・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒースクリフ団長、あなたは茅場晶彦ですか?」

 

『!?』

 

ハルトの言葉に、この場にいるプレイヤーが驚愕の表情となる。

 

「っ!」

 

次の瞬間、ヒースクリフの背後からキリトがソードスキル<レイジ・スパイク>で突進して来た。




・リーテンの移籍について
リーテンはSAOIFだと三十五層のボス攻略後にDKBに移籍したので、この小説でも同じようにしてます。また、原作プログレッシブで彼女が今後どうなるかは分かりませんが、この小説では生存して、シヴァタと一緒にスカルリーパー戦に参戦してます。

・「レジェンド・ブレイブス」参戦
彼らもスカルリーパー戦に参戦です。強力なタンク五人に遠距離攻撃ができるナーザの存在は頼りになるでしょう。

・死者について
そして、上記二つに加えて、SAOIFのキャラであるハルト(SAOIF主人公)とコハル、トウガやザントなどのオリキャラ達の活躍もあり、原作よりも死者が減りました(原作だと14人だった)。

・<武装硬化>
ザントのユニークスキル。筋力パラメータを極限にまで引き上げる効果があり、両手剣や斧など両手で使う武器を片手で持つことができる。使い方としては、両手剣を片手で持ちながら盾を使うことができたり、両手剣で片手直剣のソードスキルが使えたりなど様々である。ザントの場合、盾を持つと体術が使いにくくなるという理由で盾は装備していない。他にもパンチ一発で巨大な岩を壊せたりすることができる程筋力パラメータが上昇するため、素手での戦いでも使い道はある。ただし、基本SAOは剣重視の世界なので、普通はあまり素手で戦うことないが、ザントは普通じゃないので、右手に《夜月》を持ち、空いた左手を使って相手をぶん殴ったりしている。ちなみに、このスキルを使用すると、両腕が黒くなるエフェクトが発生する。具体的なイメージは「ワンピース」の武装色の覇気を想像してもらいたい。


次回はいよいよあの男が正体を表す!更に、衝撃の事実が明らかに!?


・ちょっとした小話
ラスリコにユウキ参戦おめでとう!しかも、剣神のスーパーアカウントでの参戦!これに伴い、本作のアンダーワールド編でユウキは剣神のスーパーアカウントで参戦することになります。また、本来ユウキはオリジナルのスーパーアカウントで参戦する予定でしたが、上記の通り剣神で参戦するので、スーパーアカウントについて考える手間が省けました(笑)。

・ちょっとした小話というよりネタバレ
本作のアンダーワールド編では、四女神(ユウキがいるので一つ増える)の他に四騎士というスーパーアカウントを登場させます。詳しい情報はx(Twitter)に載せているので、私のプロフィールからどうぞ。
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