ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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ep.59 真実

キンッ!

 

金属がぶつかり合う音が響き渡る。

誰もが視線を音がした方に向ける中、キリトは目を見開いて正面の光景を見る。

キリトが突き出した剣は、ヒースクリフの体を貫くことなかった。

なぜなら、ヒースクリフの前にある黒い黒刀が彼の《エリュシデータ》を防いでいたから。

 

「・・・何の真似だ?」

 

「ザント・・・!」

 

驚くと同時に、キリトは自身の失態を悔いた。

先程まで、彼はポーションで自分の回復に専念していた。だからこそ、自分が不自然な行動をしても気づくことはないと思っていた。

しかし、ザントは予想外の速度で自分の行動を見破り、愛刀の《夜月》で《エリュシデータ》の突きを防いで見せた。

こちらを睨むザントに対して、キリトは極力冷静さを保ちながら言葉を返す。

 

「・・・そこをどいてくれザント。俺は暴く必要があるんだ。この男の正体について」

 

「ほぉ、つまりお前も、こいつみてぇにヒースクリフの正体が茅場晶彦だって言うつもりか?」

 

「・・・そうだ」

 

そう言った次の瞬間、周りから非難の声が上がった。

 

「ふざけるな!我らの団長を愚弄する気か!?」

 

「いくら決闘で負けたからといって、俺たちの団長を陥れようとするなんて、なんて野郎だ!」

 

「所詮は《ビーター》とその仲間!今すぐこの場で斬り捨てて――」

 

「黙れ・・・!」

 

「「「っ!?」」」

 

騒ぐ攻略組をザントは威圧して黙らせる。

先程までの騒がしさが噓のように静かになる中、ザントは一転して笑みを浮かべる。

 

「面白れぇ。だったら、今ここで見せてみせろ。この男の正体ってのをな」

 

「分かっている。俺がさっきやろうとしたみたいに、もう一度ヒースクリフに俺の剣を突き刺す。だけど、HPはイエローにならないはずだ」

 

「多分だけど、HPがイエローに近いこの状態だと、何らかのシステムが作動して、剣は刺さらないと僕たちは予想している」

 

「もし、それがお前らの勘違いで、ヒースクリフの体にテメェの剣が刺さったらどうすんだ?冗談でしたじゃ済まされねぇぞ」

 

「その時は・・・俺が腹を切って詫びるさ」

 

「!? キリト君!いったい何を――!?」

 

アスナが驚きの声を上げながらキリトを止めようとしたが、その前にザントが口を開いた。

 

「いいねぇ、その迷いのねぇ目。強ぇ奴の目だ・・・」

 

満足そうに笑いながら、ザントは視線をヒースクリフに向ける。

 

「つーわけだ。今からキリトがあんたの体に剣をぶっ刺すみてぇだが、あんたはそれでいいか?」

 

「・・・あぁ、構わんよ」

 

ヒースクリフからも許可を貰い、誰もが見守る中で、キリトは再びソードスキル<レイジ・スパイク>を発動させた。

あっという間にヒースクリフに迫り、キリトの《エリュシデータ》がヒースクリフの体を貫こうとした次の瞬間、ヒースクリフの前に紫色の壁が現れ、激しい衝撃音と共に《エリュシデータ》を弾いた。

その紫の壁は、キリトやハルトにとって見覚えのあるものだった。

『Immortal object』。かつてユイがキリトやアスナ達を守る為に使用したそのシステムタグは、不死属性を意味するもの。普通のプレイヤーなら持てるはずのない属性である。

しかし、そのシステムタグは、今ヒースクリフの目の前で表示されていた。それは、一プレイヤーであるはずのヒースクリフが不死属性を持っている事を意味していた。

 

「これが、この男の真実だ・・・」

 

キリトの呟きに、誰も答える者はいない。

HPがイエローにならない。正に最強と言えるプレイヤーの伝説に隠された真実に、誰もが言葉を失っていた。

辺りは静寂に満ち、誰もがヒースクリフに視線を向ける中、最初に口を開いたのはザントだった。

 

「あーあ、せっかく俺がお膳立てしてやったってのに無駄になっちまったな・・・どうやら、賭けはあんたの勝ちみてぇだ・・・茅場さん(・・・・)

 

「そうだな。彼らは既に私の正体に気づいていると見て間違いないだろう」

 

『!?』

 

突如親し気に話し出したザントとヒースクリフに、この場にいた全員が驚愕の表情となる。

そんな攻略組の様子を見回しながら、ヒースクリフは堂々と宣言した。

 

「君たちの推理通りだ。私は茅場晶彦。この世界を作った創造主であり、本来なら百層で君たちを待ち構えているラスボスだ」

 

ヒースクリフの口から語られたその事実に、場は一気に凍り付いた。

そんな中、ハルトは視線をザントの方に向けて、彼に話しかける。

 

「ザント・・・君は気づいてたのかい?あの時既に・・・」

 

「あぁ、俺は茅場晶彦がどういう人間なのかをある程度知っている。何せ、リアルで何回も会っているからな」

 

「何だと?お前とこの男の関係はいったい・・・?」

 

そう問うキリトに、ザントは堂々と宣言した。

 

「一言で言やぁ・・・俺は茅場晶彦の弟子だ」

 

ザントの一言に、周りが更に凍り付く。

この世界の創造主である茅場晶彦。そんな彼に弟子がいた。しかも、それが攻略組で最も危険を言われている人物。

ただでさえ、ヒースクリフの正体が茅場晶彦だという事だけでも衝撃的なのに、次から次へと明かされる真実に、攻略組はただ混乱するばかり。

そんな彼らの心情を無視しながら、ザントは言葉を続ける。

 

「つっても、SAOに関してはほとんど知らされてねぇがな。知ってたのは、VRMMOを生み出して、このゲームを作っていた事ぐらいだ。この人は昔から人に隠し事ばっかしやがるし、話をしても互いの趣味やプライベートの話ばっかで、自分の研究内容は一切話やしねぇ。教えられたことは、ネットで検索すりゃ出てきそうなもんばっかだ」

 

「・・・そのお前が、この男と何の賭けをしたんだ?」

 

険しい顔をしながら、キリトが更に問う。

ザントは笑みを浮かべながら、数週間前の出来事を語り出した。

 

 

 

 

数週間前、キリトとヒースクリフの決闘が終わった後、ザントが訪れたのは「血盟騎士団」のギルドホームだった。

そこで彼は、ギルドホームの門番を任されている団員に向けてこう言った。

ヒースクリフと二人っきりで話させろと。

初めは、攻略組でも危険人物扱いされているザントを団長と二人っきりにするわけにはいかないと彼の要望を拒んでいた団員だったが、それを承諾したのは、他でもないヒースクリフ本人だった。

渋々と言った様子の団員に団長室へ案内され、ザントはヒースクリフと二人っきりで向かい合った。

 

『まさか、君が私に用があるとはな。血盟騎士団に入らせて欲しいと希望しに来たのかね?』

 

『ハッ、俺がそんなモンのために、ここに来るわけねぇだろ。単刀直入に言うぜ。お前・・・いや、あんた、茅場晶彦だろ?』

 

ヒースクリフは一瞬驚いた顔をしたが、興味深そうに微笑みながら言葉を返した。

 

『ほう、何故そう思った?』

 

『ずっと思ってたんだよ。空を飛ぶ城に病気レベルで焦がれていたあの人が、そいつを作っただけで満足するはずがねぇ。絶対にこの世界にいる。そう考えた上で、あんな規格外の動きを見せられたら、疑うに決まってんだろ。あれは、システムの干渉で為せるモンだってな。そして、それができるのは、この世界を作ったゲームマスターただ一人。そうだろ?・・・茅場さんよぉ』

 

目の前にいる人物に向かって、この世界を作った人物の名前で呼ぶと、ヒースクリフは大声で笑い出した。

 

『ハハハハハ!やはり、君の鋭い観察眼とその思考力の高さは侮れないな。我ながら素晴らしい弟子を取ったものだよ。それで、私の正体を知った君はいったい何を望む?』

 

そう聞いてくるヒースクリフに、ザントは笑みを浮かべながら答える。

 

『昔の俺だったら、今すぐここであんたをぶっ殺して、さっさとこのゲームを終わらせるつもりだったが・・・どうも、気が変わっちまってな。一つ、あんたと賭けをしてぇと思ってな』

 

『賭け、かい?』

 

『今、この世界でユニークスキルを持っている奴は、俺やあんたを含めて五人いる。そいつらが、アインクラッド第百層、そこで待つあんたと戦う前に、あんたの正体に気づけるかだ。もし、それまでに気づいた奴がいなかったら・・・そん時は俺と戦え』

 

『ふむ、確かに、彼らならそう遠くない未来、私の正体に気づく可能性は高い。しかし、どうして君はそのような賭けをしようと思ったんだ?私が見るからに、この世界の君は常に強者(つわもの)との戦いを求める獣だった。自惚れるつもりはないが、君の中で私は強者(つわもの)の類に入っているはずだ。そんな君が、他人に獲物を譲る真似をするなど、君らしくない』

 

『そうだな・・・こういうのは普通、勇者の役目だろ。俺みてぇな悪党が魔王を倒しても締まらねぇだろ。それによぉ・・・』

 

そこで言葉を区切ると、ザントは真剣な表情になって言う。

 

『俺は求めてんだよ。この俺を真に倒せる本物の強者って奴をな。もし、この世界を作ったあんたを倒した奴がいりゃ、そいつは間違いなく、俺を殺せる可能性がある強者だ。当然、あんたも例外じゃねぇ』

 

『なるほど、私が負ければ君はその者と戦い、勝てば君自身が私と戦う。どっちになっても、君の目的はほとんど達成されるわけか。しかし、忘れているわけではなかろう?私は言わば、このゲームのラスボスだ。もし、私が負ければ、その時点でこのゲームはクリアされる。そうなれば、君の目的は達成できなくなるぞ?』

 

『構わねぇよ。生きていりゃ、戦える機会なんざいくらでも来るだろ。それが現実だろうと仮想世界だろうとな』

 

『現実問わず、今の君に勝てる人間など、そういないだろうに・・・随分と強欲な理由だ』

 

『人間なんざ所詮そんなもんだろ。いくら他人の前でいい人ぶろうが、結局は自分の欲を満たそうとするエゴの塊だ。あんただってそうだろ?』

 

『・・・それもそうだな。この世界そのものが、長年抱いていた私の(エゴ)が詰まった作品に過ぎないのだから・・・』

 

そう語るヒースクリフこと茅場晶彦の顔は、笑みを浮かべながらも少し悲しげだった。

 

 

 

 

「――つーわけだ。本来、茅場さんが正体を明かすのは九十五層のつもりだったが、それまでに誰も正体を見破れなかったら、その場で俺と決闘する予定だった。けどまぁ、こうしてお前らに見破られた以上、賭けはこの人の勝ちってことだ。おめでとさん」

 

一通り話したザントに、ハルトとキリトは険しい顔をする。

彼にも色々言いたいことはあるが、今は隣にいるヒースクリフが優先だと判断する。

 

「趣味が悪いな。最強のプレイヤーが一転して最悪のラスボスになるなんてな」

 

「中々いいシナリオだろう?最終的に私の前に立つのは君たちだと予想していた。ユニークスキル<二刀流>は全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、その者が魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。だが、君は私の予想を超える力を見せつけた。まぁ、この想定外の事もネットワークRPGの醍醐味と言うべきか・・・」

 

ヒースクリフはキリトを称賛すると、今度はハルトに視線を向ける。

 

「そして、ハルト君。君はこのSAOの武器を全て使いこなし、それを証明するユニークスキル<コネクト>を得た。このスキルはあらゆる武器の熟練度を最大まで上げた者に与えられ、長い年月を掛けても獲得できる者はいないと思っていたが、それを僅か2年足らずで手に入れたことは私も予想外だったよ。更には、この世界で出会ったプレイヤー及びNPC、生きとし生ける者全てを次々と自分の味方につけるその力。正に君は、この世界にとってイレギュラーと言ってもいい。私にとって君は、非常に興味深い存在であり、最も恐るべき力を持った人間だと言える」

 

ヒースクリフの称賛に、ハルトは何も言えなかった。

すると、一人の《血盟騎士団》のプレイヤーが剣を握り締めながら、ヒースクリフに向かって跳んだ。

 

「俺たちの忠誠、希望を・・・!よくも・・・よくも・・・よくもーーー!!」

 

そう叫びながら、ヒースクリフに向けて剣を振り下ろそうとする。

しかし、ヒースクリフは迎え撃とうとせず、左手でウィンドウを操作する。

すると、そのプレイヤーは空中で停止し、そのまま地面に落ちた。

その光景に周りが驚く。よく見てみると、彼のHPバーの隣に麻痺が付与されていた。

そして、ヒースクリフは素早くウィンドウを操作し、次々と他のプレイヤーを麻痺にしていった。

 

「な、何?」

 

「体が・・・!?」

 

「ちっ、流石ゲームマスター。何でもありだぜ」

 

アスナやコハル、更には弟子であるザントも例外ではなく、麻痺が付与されてその場に倒れる。

やがて、この場にいるほとんどのプレイヤーが麻痺で倒れた。唯一倒れなかったのは、キリトとハルトの二人だけだった。

二人はそれぞれの想い人の体を抱き寄せながら、この状況を引き起こしたヒースクリフを睨む。

 

「・・・ここで全員殺して隠蔽するつもりか?」

 

「そんな真似はしないさ。しかし、こうなっては致し方がない。私は最上層の第百層にて君たちの訪れを待つとしよう。ここまで育ててきた血盟騎士団、攻略組プレイヤー諸君を途中で放り出すのは不本意だが、君たちの力ならきっと辿り着けるさ。だが、その前に――」

 

ヒースクリフは剣を収めた盾を床に突き立てながら、視線をキリトとハルトの二人に向けた。

 

「キリト君、ハルト君。君たち二人に一つ提案をしよう」

 

提案という言葉を聞いて、顔を険しくするキリトとハルト。

この場でこの男は、いったい何を提案しようというのだろうか。

 

「先程、ザント君が話したのは私の正体を見破った者がいなかった場合の話だ。では、もしも九十五層までに私の正体を暴いた者がいたら・・・その時は、正体を見破った者に私と決闘をする権利を与えるというものだ」

 

「決闘だと!?」

 

「そうだ。勿論、不死属性は解除する。そして、私に勝てたら、このゲームはクリアされ、生き残った全てのプレイヤーはログアウトし、現実世界に帰還することができる」

 

『!?』

 

その言葉に、ザントを除く全プレイヤーが驚いた。彼は初めからこうなることを知っていた為、そこまで驚いた様子はない。

 

「無論、強制はしない。あくまで決闘をする権利を与えるだけ。するかしないかは、君たち自身で決めるんだ」

 

そう言うヒースクリフに対して、二人はかなり揺らいでいた。

このまま百層まで、それもヒースクリフ抜きで行くとなれば、それまでの間に多くの犠牲者が出るかもしれない。

だけど、ここでヒースクリフを倒したら、この時点でSAOはクリアされ、現実世界に帰還できる。

正直無茶な賭けかもしれない。キリト一人でも倒せなかった相手に、二人で挑んでも勝てる保証はない。

だけど、少しでも希望があるのなら・・・

 

「・・・キリト」

 

「分かってる。俺も同じことを思っていた・・・」

 

「!? 駄目よキリト君!ハルト君も止めて・・・!」

 

「行ったら駄目・・・!」

 

コハルが必死に腕を動かして、ハルトの服の裾を掴む。

そんなコハルに、ハルトは優しく微笑む。

 

「大丈夫だよ。必ず勝ってくるから」

 

「本当だよね?信じていいんだよね?」

 

「勿論、必ず二人で現実世界に帰ろうって約束したから。だから、少しだけ待ってて」

 

コハルがうんっと頷くと、ハルトは彼女を床に寝かせて、背中の剣を抜き、ヒースクリフの下へ近づく。

キリトもまたアスナを床に寝かせると、背中にしまっていた二本の剣を抜いて、ハルトの隣を歩く。

 

「二人共、止めろ!」

 

「乗るな二人共戻れ!」

 

「キリト!ハルト!」

 

エギル、トウガ、クラインの三人が必死に体を動かそうとしながら制止しようとする。

二人は歩んでいた足を止めると、三人の方に顔を向ける。

 

「エギル、今まで剣士クラスのサポートありがとうな。知ってたぜ、お前が儲けの半分を中層プレイヤーの育成につぎ込んでいたのを」

 

「僕も知ってた。エギル、僕にとってあなたは、尊敬する大人の一人だったよ」

 

「!?」

 

二人の言葉を聞いて目を見開くエギル。

それを見た二人は、今度はトウガの方に視線を向ける。

 

「トウガ、こんな人でなしの《ビーター》である俺を友達って呼んでくれてありがとうな」

 

「現実世界に戻ったら、トウガや紅の狼の皆についてもっと聞かせてくれるかな?皆のこと、もっと知りたいから」

 

「お前ら・・・当たり前だ!飽きるほど聞かせてやるから覚悟しろよ・・・!」

 

声が震えながらも強がりの笑みを向けるトウガに微笑み、最後にクラインに視線を向ける。

 

「クライン・・・あの時、お前を置いて行って悪かった」

 

「僕もごめん。あの時はコハルの事だけを考えて、キリトやクラインの事、考えてなかった・・・」

 

「!?・・・お前ら・・・許さねぇからな!ちゃんと向こうに戻って、飯の一つでも奢らねぇと許さねぇからな!」

 

「アハハ、程々にお願いするよ」

 

「そうだな。また向こうで会おうぜ」

 

涙を流しながら叫ぶクラインに、困り顔を見せながらもその想いに応えたハルトとキリト。

そして、二人は再び歩みを進め、ヒースクリフの前に立った。

 

「一つ頼みがある」

 

キリトが茅場に話しかける。

 

「何かな?」

 

「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら・・・暫くでいい。アスナが自殺できない様に計らってほしい」

 

「僕からもいいかい?キリト同様、もし俺が死んだら、コハルが自殺できない様にしてくれるかい」

 

「よかろう、彼女たちは《セルムブルク》から出られないようにしよう」

 

「キリト君!駄目だよ!そんなの、そんなのってないよ!」

 

「止めてハルト!そんな約束しないでよ!」

 

アスナとコハルの涙交じりの悲痛の声が響く。

しかし、ハルトとキリトは決して後ろを振り返ることはせず、持っていた武器を構えた。

ヒースクリフもまた、手を動かして不死属性を解除し、剣を抜いた。

緊迫した空気が漂う中、キリトがハルトに小声で話しかける。

 

「ハルト、あの盾がある限り、あの男にはスキルでの攻撃は通用しない。俺が<二刀流>で攻めて奴の体勢を崩すから、お前は崩れたところを攻撃してくれ」

 

「分かった。でも、そう簡単にあの鉄壁の守りを崩して貰えるとは思えないけど」

 

「そこは無理でもやるさ。お前こそ、俺の動きについてこいよ」

 

「心配しなくても大丈夫だよ・・・二年間、一緒に戦った親友(・・)の動きを見逃す程、僕は弱くないよ」

 

「!?・・・あぁ、そうだな。頼りにしてるぜ、親友」

 

互いの拳を打ち合い、笑みを浮かべ合うキリトとハルト。

そして、正面にいるヒースクリフを見つめながら、共に深呼吸をして・・・

 

「「行くぞ!」」

 

地面を蹴り、二人同時に斬り込んだ。

今ここに、アインクラッド最後の戦いが幕を上げた。




・ザント、茅場晶彦の弟子だった
まさかの衝撃の事実です。この男は後何個秘密があるんだ・・・

・ザントの賭け
もしも決闘でキリト達が勝てば(クリア後に)二人と戦い、ヒースクリフが勝てば百層で彼と戦える。どっちが勝っても、ザントの目的はほぼ達成されるという。

・ヒースクリフから見たハルト
全ての武器を扱える技術だけでなく、アルカナシステムも懸念していた自然とプレイヤーやNPCと心を通わせるそのカリスマ性を高く評価しています。そのため、総合的に考えたらキリトよりも評価は高いです(これがコミュ障との違いか・・・)。

・親友
二年間の戦いを通して、お互い親友と呼べる仲に成長したハルトとキリトでした。(ユー○オ「キリト?(泣)」)

・ちょっとしたネタバレ
茅場晶彦の弟子だということが発覚したザントですが、この先、そのことが世間に広まることはないです。噂程度で治まりますし、SAOに関する本でザント自身の異常性や二つ名が書かれても、茅場晶彦の弟子とは書かれません。なぜなら、彼にはそんなのが可愛く見えるほどのヤバい秘密を抱えており、その秘密のおかげで情報が広まるのを防げたからですが・・・それはまた別の章で。


ザント(隼人)から見た茅場晶彦の印象は、肉体は貧弱で夢追い馬鹿だが、それを貫き通そうとする揺るがない信念と行動力を持っていて、素直に好感を持てる。また、茅場の事を弱者だと思っておらず、強者の一つの形だと思っている。
対して、茅場晶彦から見たザント(隼人)の印象は、物分かりが良く非常に優秀な弟子。プライベートでも一緒に食事に行ったりしているが、ザント(隼人)が異常な闇を抱えているのを見抜いており、少なくとも、自分では彼の闇を払うことはできないと諦めている。
強さに固執する狂人と己の理想に固執する狂人の組み合わせですが、師弟関係はかなり良好です。普段、他人を呼び捨てにするザントがさん付けで呼ぶくらいですから。
次回、ラストバトル!果たして勝つのは・・・!?
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