ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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ラストバトル!果たして勝つのは・・・!?


ep.60 インテグラル・ファクター

緊迫する空気の中、最初に仕掛けたのはキリトだった。

 

「ハァ!」

 

《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》。二つの剣を使いながら、<二刀流>で連続攻撃していく。

ヒースクリフは剣と十字盾を巧みに使いこなしながら防いでいるが、その後ろを《フォルネウス》を持ったハルトがソードスキルで攻撃する。

しかし、ヒースクリフは素早く盾を動かして、片手直剣の一撃を防ぐ。

 

「忘れてないか?このゲームを作ったのは私だ。ソードスキルの型もそれがどこに来るのかも全てお見通しだ」

 

そう言って、ヒースクリフは十字盾を《フォルネウス》ごと下から上げて、ハルトの顎に盾を当てようとした。

その瞬間、ハルトは後ろに飛んで盾を間一髪で躱す。そのままクイックチェンジで細剣の《ドミニオン》に切り替えると、盾を上に上げているヒースクリフの隙を付いて、《ドミニオン》を突き刺した。

ヒースクリフは咄嗟に体を動かして躱そうとしたが、《ドミニオン》の切っ先がヒースクリフの体を掠らせた。

 

「そんなの初めから分かってるさ。あなたが知識で戦うなら、僕らはこの世界で培った技術と経験で戦うだけだ」

 

「ほう・・・」

 

一度距離を取ったヒースクリフに向けて言うハルト。その言葉を聞いたヒースクリフは、僅かに微笑んだ。

 

「ハルトばかりに気を取られてる場合じゃないぞ!茅場晶彦!」

 

その横から攻撃してくるキリトの<二刀流>を、ヒースクリフは剣と十字盾で防いでいく。

その隙を狙って、ハルトは再び《ドミニオン》でヒースクリフ目掛けて突きを繰り出すが、ヒースクリフは剣を動かして突きを防ぐと、体を横に一回転させながら剣を振るった。

 

「ぐっ!」

 

直撃こそ避けたが、二人の体に剣で斬られたダメージエフェクトが刻まれる。

 

「見事な連携だが、そう何度も同じ手は食らわんよ」

 

「くっ、まだだ!」

 

冷静に語るヒースクリフに、キリトは熱くなりながら、再び攻撃を仕掛ける。

一方、ハルトは冷静に状況を分析する。

 

「(やっぱり、あの盾の防御を崩さない限り、こっちに勝ち目はない・・・だったら!)」

 

すぐさま武器を片手棍の《アルバトロス》に切り替えて、大声でキリトの名を叫ぶ。

 

「キリト!」

 

「っ!」

 

その呼び声に反応して、キリトは一瞬驚いたが、すぐさまヒースクリフとの剣戟を中断して、後ろに下がった。

自分の意図を察してくれたと判断し、ハルトはキリトの反対側まで移動し、間にヒースクリフを挟むような形を作る。

そのまま二人は同時に攻撃を仕掛ける。

 

「さっきと同じことをするつもりか?それでは何も変わらんよ」

 

そう言って、ヒースクリフは先程同様、剣と十字盾を巧みに使い、左右から迫る二人の攻撃を防いでいく。

二対一、一見数が多い方が有利に見えるが、ヒースクリフは数の不利を物ともせず、圧倒的な力で二人を追い詰めていく。

キリトが無我夢中で攻撃する中、ハルトはある一点に集中していた。

 

「(まだだ!もっと、もっと早く、正確に!)」

 

全神経を集中させながら、ハルトは十字盾の同じ箇所(・・・・)を何度も何度も殴りつける。

それらを繰り返して、何度目もかも分からない打撃を十字盾にぶつけた瞬間、鉄の破片が僅かに飛び散ったのが目に映った。

ハルトはすぐさま距離を取ると、クイックチェンジで斧の《トワイライト》に切り替える。

《トワイライト》が光り輝き、ソードスキル<グランド・クロス>を発動させたハルトは、ヒースクリフに向けて《トワイライト》を横薙ぎに振るう。

横薙ぎに振るった《トワイライト》は、十字盾とぶつかり合い、激しい火花を散らす。

 

「そこだ!」

 

続けざまに、ハルトは《トワイライト》を真上に振り上げて、渾身の一撃を振るった。

ヒースクリフはそれを十字盾で防ぎ、金属同士がぶつかり合う音が響いた次の瞬間

 

ピキッ

 

「!?」

 

《トワイライト》を防いだ十字盾にひびが入った音が微かに響いた。

 

「やっと、焦りを見せたね」

 

驚くヒースクリフに、ハルトはニヤリと笑う。

焦りを見せたヒースクリフだが、すぐさま冷静になり、ハルトに向けて剣を振り下ろす。

ハルトは後ろにステップして剣を躱すと、キリトに向かって叫ぶ。

 

「キリト!ソードスキルを使ってもいい!盾のひびに攻撃するんだ!」

 

「!? 分かった!」

 

ハルトに言われたキリトは、二つの剣を構えて、<二刀流>の最上位ソードスキル、<ジ・イクリプス>を放った。

迫りくる二十七連撃の大技に、流石のヒースクリフも剣だけで受け止め切れず、十字盾も使って防ぐ。

 

「うおおおおおお!!」

 

雄叫びを上げながら、キリトは言われた通り、ひびがある部分を集中的に攻撃していく。

その甲斐もあってか、先程まで数センチ程度だったひびが徐々に広がっていった。

そして、最後の二十七連撃目を盾にぶつけた瞬間、左手に持った《ダークリパルサー》が砕け散った。

 

「!? マズい!」

 

「いいや!大丈夫!」

 

焦るキリトをよそに、いつの間にか武器を槍の《グリード》に切り替えたハルトが、槍を投げる構えを取っていた。

突きが多い槍のソードスキルの中でも異質、投げの技であるソードスキル<ライトニング・スピア>。投げの技だけあって、威力が高く、射程も最大50メートルあるのだが、一度投げたら自分で取りに行かないといけない上、その間無防備な状態になる為、あまり使われていないソードスキルである。

眩い光に包まれた《グリード》を、ハルトは力いっぱい振り絞って投げた。

 

「いっけぇーーーーーー!!」

 

叫び声と共に投げられた《グリード》が閃光のごとくヒースクリフに迫る。

ヒースクリフは咄嗟に十字盾を前に構えて、迫る《グリード》を防いだ。

槍と盾がぶつかり合う音が響き合う。

《グリード》は勢いが衰えることなく突き進んでいこうとし、その度に十字盾のひびはどんどん大きくなっていく。

 

ガシャーン!

 

そして遂に、《グリード》が十字盾を突き破った。

難攻不落と思われた防御を破り、《グリード》は勢い落とすことなく、そのままヒースクリフを貫こうとした。

次の瞬間、ヒースクリフは即座に十字盾から手を放しながら、盾から突き出た槍を紙一重で躱した。

そして、そのまま素早い速度で、無防備となったハルトに迫った。

 

「まさか、盾を壊されるとは思っていなかった。見事だと言っておこう。だが、これまでだ」

 

そう言って、ヒースクリフは赤色の光を迸らせた剣をハルトに向けて振り下ろす。

キリトが慌てた様子で叫ぶ。

 

「避けろハルト!」

 

「さらばだ!ハルト君!」

 

叫び虚しく、ヒースクリフの剣はハルトの体を斜めから斬り落とした。

斬られたハルトは、体がゆっくりと青白くなっていき・・・

 

パリンッ!

 

ポリゴン状に四散した。

 

「そんな・・・」

 

「噓、だろ・・・?」

 

アスナとキリトが現実を受け止められないと言わんばかりの顔で恐る恐る呟く。

他のプレイヤーもハルトがいた場所を呆然と見る。

 

「あぁ・・・あああ・・・!」

 

その中でも、一番酷かったのはコハルだった。

体が震え、声も上手く出せず、ハルトが消えたことが噓であって欲しいと言わんばかりに、心の中で何度も否定する。

しかし、いくら否定しても、彼がヒースクリフに斬られて、消滅した光景が頭から離れず、今起きたことが真実だと脳が理解した瞬間、涙を流しながら叫んだ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

悲痛な叫び声が、部屋中に響き渡る。

絶望が押し寄せる中、攻略組の・・・いや、全プレイヤーの希望となるはずだった少年は、粒子となって消えていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もがそう思っていた。

 

カタンッ

 

「・・・む?」

 

最初に異変に気づいたのは、正面にいたヒースクリフだった。

ハルトが消えた瞬間、彼がいた場所から何かが落ちたような音が微かに響いた。

音に反応し、顔を下に向けると、視線の先に真っ二つに斬られている結晶が転がっていた。

周りのプレイヤー達もヒースクリフに釣られて、視線を転がっている結晶の方に移す。

ヒースクリフはその結晶の名をポツリと呟く。

 

「これは・・・《人形(ドール)クリスタル》・・・」

 

突然現れた《人形クリスタル》に、ヒースクリフや攻略組は困惑する。分かるのは、先程斬ったハルトは、《人形クリスタル》が作り上げたハルトの人形だったということ。

同時に、それは一つの意味を現わしていた。

ハルトはまだ死んでいない。

 

「どこにいった・・・!?」

 

ヒースクリフは慌ててハルトを探し出す。

しかし、いくら辺りを見渡しても、それらしき姿は見当たらない。

前後にはおらず、左右にもいないとなると、残りは・・・

 

「上か・・・!」

 

「うおおおおおおっ!!」

 

ザンッ!

 

ヒースクリフが気づいたと同時に、上から落ちてきたハルトの一撃がヒースクリフの体を斬り裂いた。

驚愕の表情を浮かべたまま、ヒースクリフは一歩も動かなかった。ハルトもまた、手に《フォルネウス》を持ったまま動かない。

そして、ヒースクリフの頭上にあるHPは減っていき、やがてゼロになった。

辺りがシーンと静まり、静寂が続く中、最初に口を開いたのはヒースクリフだった。

 

「・・・盾の耐久値が無いことに気づいていたのか?」

 

「確証は無かったです。でも、あれだけ強力な攻撃を受け止めていたんだ。どれだけ耐久値が高くても、無限じゃない限り限界は来る。僕は信じただけです。盾が壊れることも、それを利用して僕に斬り掛かることも、《人形クリスタル》で作った僕の偽物に気づいたあなたに隙が生まれることも・・・それら全てを信じて戦った結果がこれだっただけです」

 

ヒースクリフは先程の《スカルリーパー》の戦いで、あの強力な鎌を何度も受け止めていた。

当然、彼の持っている盾は、その攻撃を受ける度に耐久値は減るだろう。いくら<神聖剣>の力があれど、プレイヤーを一撃で倒せる攻撃を何度も受けていれば、その耐久値はかなり減っているに違いない。

故にハルトは盾を集中的に攻撃し続けた。同じ箇所を何度も何度も。

そして、ヒースクリフが盾が壊れた瞬間を狙って、自分に攻撃してくると予想した上で、敢えて大技の<ライトニング・スピア>を放ったと同時に、《人形クリスタル》で自分そっくりの虚像を作り、無防備な姿を晒した。

誰もが投げられた《グリード》とヒースクリフに注目しており、ヒースクリフも目の前に構えた十字盾のせいで、ハルトの姿が僅かの間見えなかった。だからこそ、ハルトが《人形クリスタル》を使用した事に誰も気づけなかった。

その間、本物のハルトは虚像が完成する瞬間に高く跳び、瞬時に《フォルネウス》を装備すると、そのまま落下して、困惑しているヒースクリフを上から斬り裂いた。

強力なソードスキルや特殊なスキルでもない。ヒースクリフを倒すことができるただ一つの可能性を信じて戦った。たったそれだけのことだった。

ハルトの説明を聞いたヒースクリフは、満足気に微笑んだ。

 

「・・・見事だ。己の直感と剣をひたすらに信じ、ほんの僅かな可能性すらも掴み取る力。最早君を《全属性使い(オールラウンダー)》と評するのは勿体ない」

 

そう言うヒースクリフの体が光り出した。

 

「君を評するならこうだ。全ての可能性を引き寄せ、それらを束ねる存在・・・」

 

光はどんどん広がり、やがて辺り一帯を覆いつくす。

 

――インテグラル・ファクター

 

そんなヒースクリフの呟きが聞こえた直後、ハルトの視界を真っ白な光が覆った。




<グランド・クロス>
オリジナルソードスキル。SAOIFだと斧の星4コネクトスキル。斧を横に振った後、縦にもう一度振る二連撃のソードスキル。

<ジ・イクリプス>
原作でもある最大二十七連撃の地味に凄いスキルなのだが、原作だとVSヒースクリフ(二回目)でしか使われていない不遇なソードスキル。

<ライトニング・スピア>
オリジナルソードスキル。SAOIFだと槍の星4MODスキル。原作でもあるかどうか分からない投げ技のソードスキルとなっており、遠くの敵をも狙えるが、槍を投げるため、拾うまで無防備になるのが欠点。

・盾の耐久値について
原作では、最後まで壊れる事はなかった十字盾ですが、この作品では武器や物には耐久値が存在し、前々回のスカルリーパー戦で盾の耐久値が減ったこともあり、最後はハルトのゴリ押しとも言える攻撃で壊れました。もしかしたら、こちらが見落としている設定もあるかもしれませんが、そこはご了承ください。

・インテグラル・ファクター
タイトル回収です。同時に、これがハルトの最終的な二つ名になります。


最後に勝負を決めたのは、ep.49で登場した《人形(ドール)クリスタル》でした。まさか、この地点で既に伏線が張られていたと予想できた者はいないはず。
次回、アインクラッド編原作ルート最終回!
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