ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
アインクラッド編原作ルート最終回!浮遊城の物語の結末を最後までお楽しみください。
「ここは・・・?」
気がついたら、ハルトは透明な板の上にいた。
辺りは夕焼けに照らされて、赤金色に輝く空が無限に広がっていた。
夕焼けの空を見渡していると、ある光景が目に映った。
「あれは・・・アインクラッド?」
先程までハルト達がいたはずの浮遊城が、崩壊していった。
下の階層から無数の破片をまき散らしながら空の底へ落ちていき、風に混じって轟音が響き渡る。
その光景を眺めていると、背後から声が聞こえた。
「ハルト!」
自身の名前を叫ぶその声に振り向くと、大切なパートナーに親友とその伴侶が立っていた。
「コハル。それにキリトとアスナも・・・」
呟くハルトに向かって、コハルが走り出し、彼の胸に飛び込んだ。
「本当にハルトなんだよね?幽霊とかじゃないよね?」
「大丈夫だよ。僕はちゃんと、ここにいるから」
「良かったぁ・・・本当に、良かったよぉ・・・うぅ・・・!」
「言ったはずだよ。コハルを置いて死ぬつもりはないって」
涙を流すコハルの頭を優しく撫でるハルト。
そんな二人を微笑ましく見ながら、キリトとアスナが口を開く。
「だけど、あれは流石に心臓に悪かったぞ」
「ホントよ、私もあなたが死んじゃったかと思ったんだから」
そう言って、呆れ顔を見せるキリトとアスナ。
抱擁を解いたハルトは、崩れるアインクラッドを見つめながら問う。
「ここは・・・アインクラッドの外でいいのかな?」
「多分。崩れ落ちてるっていうことは、恐らくゲームクリアしたんだと思う」
ハルトの疑問に、キリトが答える。
そのまま四人は無言のまま、崩壊するアインクラッドを見守る。
「あ!・・・私たちの家・・・」
コハルが小さく声を上げる。
崩れる大地の中に、二人のログハウスと思われる建物が無数の木々と共に落下していた。
その光景を見て、悲しそうな顔をするコハルの手をハルトはそっと握った。
キリトもまた、アスナの手を握りながら、アインクラッドの最後を見届ける。
「中々の絶景だろう?」
ふと、そんな声が聞こえ、視線を右に向けると、白衣を着た男が崩壊するアインクラッドを眺めていた。
ハルト達はその男を知っていた。フルダイブ機能を開発し、この世界を作り上げた張本人。茅場晶彦その人だった。
突然目の前に現れた茅場に戸惑う中、キリトが問い掛ける。
「あんたが俺たちをここに呼んだのか?」
「如何にも。現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去を行っている、後10分程でこの世界は消滅するだろう。君たちもじきにこの世界からログアウトされて、現実世界に帰還されるはずだ。ここに呼んだのは、なんてことはない。最後に少しだけ話がしたいと思ってね。聞きたいことがあるのなら、何でも聞いてくれたまえ」
そう語る茅場に、戸惑いながらもハルトは次々と質問していく。
「他のプレイヤーは?あの場にいた人達は・・・?」
「心配しなくとも、あの場にいた者達を含む現時点でアインクラッドに住まう全てプレイヤーは、無事現実世界に帰還を果たした」
「・・・死んだ人達は?」
「命は一つだ。失ったものは、二度と戻らない。それは、どこの世界でも変わらないよ」
「そう、ですか・・・」
もしかしたらと期待してたが、語られたその事実にハルトは少し顔を暗くするが、質問を続けた。
「・・・どうして、こんなことを・・・?」
それは、SAOのプレイヤー。いや、この事件を知っている全ての人間が思っているであろう疑問だった。
何故、茅場晶彦は一万人の人間を巻き込んで、こんなデスゲームを行ったのか。彼をこのような狂気に駆り立てたのには、それ相応の理由があったのだと、ハルトは思っていた。
しかし、茅場の口から出たのは、予想だにしなかった言葉だった。
「・・・何故だろうな。私自身、よく覚えてないんだ」
「え・・・?」
四千もの命が奪われ、その元凶を作った人物のあまりにも自分勝手とも言える返答に、ハルトは言葉を失う。
けれども、不思議と怒りは湧いてくる事はなく、ハルトは茅場の言葉を待つ。
「いつからか私は、あの城を、現実世界のあらゆる枠や法則をも超越した世界を創ることだけを欲して生きてきた。そして、私は私の世界の法則をも超える世界を見ることができた。私が空に浮かぶ鉄の城に取り付かれたのは何歳の頃だったかな・・・その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。いつの日か、この地上から飛び立って、あの城に行きたい。それだけが、私の唯一の欲求だった」
「欲求、ですか?」
「そうだ。私はね、信じているのだよ。アインクラッドのような大いなる空に浮かぶ城が何処か別の世界、或いは現実世界にもあるんじゃないかって・・・」
「それが・・・あなたのたった一つの望み・・・」
純粋な目で、ひたすら真っ直ぐに語る茅場晶彦。端から見れば、そんなことの為に多くの人間を巻き込んだのかと糾弾されてもおかしくないだろう。
しかし、ハルトは彼の言葉に怒りを見せることなく、今の自分が思っていることを茅場に伝えた。
「あなたのしたことは、この先どれだけ悔いようと、決して許されないことです。できることなら、現実世界で罪を償って欲しいと思っています・・・でも、この世界が無ければ、僕はコハルや皆に出会う事はなかった。だから・・・僕たちを出会わせてくれてありがとうございました・・・これだけ言っておきます」
「そうだな・・・俺もハルトと同じ気持ちだ」
ハルトの言葉にキリトが共感する。コハルとアスナもコクリと頷いていた。
「・・・そうか」
ハルトの言葉を聞いた茅場は、何処か嬉しそうな顔で微笑んだ。
「では、私はそろそろ行くよ。少し経てば、君たちも現実世界に帰還するだろう」
そう言うと、茅場は後ろに振り向き、歩き出した。
だが、ふと足を止めると、首をハルト達の方に向けながら口を開いた。
「最後に言い忘れてたよ・・・ゲームクリアおめでとう。ハルト君、コハル君、キリト君、アスナ君」
そう言い残して、茅場は風となって消えていった。
残った四人は、崩れゆくアインクラッドを眺めていたが、最初に口を開いたのはキリトだった。
「これで、お別れだな」
「違うよキリト君。これはお別れなんかじゃない」
「ここから始まるんだ。僕たちの新しい現実が」
自分の言葉を否定するアスナとハルトに、キリトも「そうだな・・・」と呟いた。
すると、コハルが三人に提案する。
「ねぇ、せっかくだし、ハルトやアスナ達の名前を教えてくれる?もし、現実世界に戻ったら、また会いたい時に名前が分からないと探しづらいから」
「いいねそれ、私もキリト君やコハルの名前を知りたい」
「うん、そうだね」
「しょうがないな・・・じゃあ、まずは俺から」
そう言って、キリトは現実世界の自分の名前を言った。
「桐ケ谷和人。今年で16だ」
「私は結城明日奈です。今年で17歳になります」
「本多小春です。私も17歳です」
「僕は時枝春斗。歳はコハルやアスナと同じで17だよ」
キリトに続いて、アスナ、コハル、ハルトの順で名前を言う。
全員の名前と年齢を聞いたキリトが、少し不満気な様子で喋った。
「ていうか、俺以外全員年上かよ。なんか、仲間はずれにされた気分だぜ・・・」
「フフッ、なんか納得だわ。この中で一番子供っぽいのってキリト君だし」
「なにおう!」
「確かに、普段からキリトさんって実は年下なのかなって思ってたけど、どうやら当たってたみたい」
「コハルもか!?ふ、不愉快だ・・・」
「まあまあ、一歳の差なんだし、気にすることないよ」
アスナに言葉に大きく反応し、更にはコハルも賛同した為、不機嫌になるキリトをハルトが宥めた。
そうしていると、四人の体が光り始めた。
「どうやら、そろそろ時間みたいだな。現実に戻ったら、俺たちはバラバラになる」
「そうね。でも、あくまで一時的なものよ」
「またすぐ会えるよ。今度は現実でね」
「うん、必ず会おう。この四人で」
世界の終焉を感じた四人は、それぞれ手を重ねて円陣を組む。
「これから先、何があっても、僕たち四人は仲間で友達だ!」
ハルトがそう言った瞬間、四人は光に包まれ、この世界から消えていった。
とある病院の一室で本田小春はゆっくりと目が覚めた。
最初に見えたのは、知らない天井だった。少なくとも、自分の家のものではないと瞬時に理解する。
右腕を動かすと、瘦せ細ったその腕に細い管がテープで固定されており、それらを辿ると、細い支柱に吊るされた透明パックが見えた。
パックには液体が入っており、恐らく自分が眠っている間に体が衰弱死しないよう点滴で命を繋いでいたのだろう。
体を起こそうとするが、上手く力が入らない。それに、頭が妙に重い。
何とか起き上がり、頭に手を当てると、ヘルメットのような物を被っており、それがナーブギアだと理解した小春は、頭にあるナーブギアを外した。
「帰って、来たんだよね・・・?」
手にあるナーブギアを見ながらポツリと呟く。
自分の体を見ると、非常に瘦せ細っていて、SAOでは肩まで伸びてたセミロングの髪も、腰まで伸びていた。
ふと近くにあった机を見ると、花が入った花瓶に果物、大量の手紙が置いてある。
「あ・・・」
それを見た小春は、現実世界に帰って来たこと、それに気づいたことを実感し、目から涙を流した。
窓を見ると、日差しが入り込んでおり、白い病室を照らしていた。
「ハルト・・・」
光り輝く日差しを見つめながら、小春はSAOで苦楽を共にしたパートナーの名を呟く。
彼が今どこにいるのかは分からない。この病院にいるとは限らないし、もしかしたら自分が住んでいる地域からかなり遠い所にいるかもしれない。
「また、会えるよね?」
それでもと少女は決意する。
いつの日か必ず、あの世界で心を通わせてきた少年にもう一度会うために・・・
アインクラッド編原作ルート、遂に完結!ここまで来るのに3年半も掛かってしまいましたよ。
最初はコロナ過で何処にも遊びに行くことできず、暇だからという想いで書いた小説でしたが、書いている内に執筆することが楽しくなっていき、気づいたら3年半も経っていました。我ながら驚きです。
元々SAOIF自体サービス開始からプレイしてるゲームで、ディアベル生存など原作とは違ったIFならではのストーリーが面白くて、今年で6周年を迎える今でも楽しくプレイさせていただいております。
特にSAOIFのヒロインのコハルは、プレイしていく中で色々な一面が見れて、主人公とのやり取りも(イチャイチャ)もキリアスとはまた違った魅力を感じ、いつの間にかユウキやフィリアに続くSAOの推しキャラになっていました。
さて、今後に関してですが、ひとまずはフェアリィ・ダンス編の序盤(ALOにダイブするまで)を執筆した後に、ずっと放置しているハイ魂(「ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍」)の執筆を再開したいと考えています。
毎回、SAOを楽しみにしている方がいるように、ハイ魂の方にも再開を待ち望んでいる方がいますし、私自身そろそろ再開させたいなと思ったことも理由の一つです。
ですので、SAOを楽しみにしている方には申し訳ございませんが、フェアリィ・ダンス編の序盤を執筆し終えたら、またしばらく時間を空けますが、どうか再び再開される日まで、そのままお待ちいただけたら幸いです。
また、アインクラッド編SAOIFルートに関しても、ハイ魂の執筆がひと段落したら、執筆を進めようと思っていますので、そちらの方もお楽しみに。
それでは最後に、フェアリィ・ダンス編、アインクラッド編SAOIFルートの予告をどうぞ!
<フェアリィ・ダンス編予告>
SAO事件から経った。
浮遊城から帰還した少女に待ち受けていたのは・・・
「ハルト・・・あなたの心はどこにあるの・・・?」
未だに目覚めないパートナーだった
「本田さん、あなたは兄さんの何ですか?」
帰還した現実世界で出会ったのは
「時枝雪斗。この人の・・・弟です」
SAOで共に過ごしたパートナーの弟だった
「心の奥では、このまま目覚めないで欲しい・・・そう願っている自分がいます」
「雪は所詮春には勝てないんですよ。どれだけ大量に積もろうが、結局最後には春の日差しに溶けて消えてしまう・・・」
「俺はいつだって、あの人の影だった」
弟から語られるのは、兄に対する憎しみ
「明日奈や春斗君の命は、今や僕が握っていると言っていい。その意味が分からないとは言わせないよ?」
「お前如きが、教授に馴れ馴れしくするな」
渦巻く陰謀。平和な日常の中で暗躍する悪しき者達
「アルブヘイム・オンライン・・・それが、このゲームの名前だ」
「そこにアスナがいるんだな」
物語の舞台は、
無限の空が広がる美しき妖精の世界
そこで出会うのは・・・
「私はリーファっていいます。それで、こっちが・・・」
「セツナ・・・それが俺の名前だ」
新しい仲間と
「俺はザント!どこにも属さねぇ一匹狼だ!!」
「そのために、俺たちはここに来た」
嘗ての仲間たち
「それならいっそ、嫌われたままの方が良かった!」
妹は嘆く。嘗て兄に抱いていた報われない恋の行方は・・・!?
「分からないんだ。俺はあの人に、なんの感情を抱いているのかも」
弟は苦悩する。恨んでいたはずの兄に対する本当の感情について
「ここまで来た褒美だ。聞かせてやろう。この世界の真実を・・・!」
世界樹を超えた先にある事実とは・・・!?
「ソードアート・オンライン IF」フェアリィ・ダンス編、近日公開!
「これが、お前の忘れていたものだ」
失われていた兄弟の絆が今、蘇る!
<アインクラッド編SAOIFルート予告>
「インテグラルシリーズ?聞いたことないわね・・・」
「ここが三十五層・・・クォーター・ポイントから、もう10個も進んで来たんだね」
「四十層のテーマは巨大監獄らしいよ」
「噓・・・嫌だよ、ピナ・・・!」
「このままでは、全滅してしまいます!」
日に日に厳しくなっていく攻略
「こいつ、強ぇな・・・」
「やるじゃねぇか。噂に聞く《
原作ルートでは出会うことがなかった
「すみませんねー。自分もこのクエスト攻略中なんですよー。というわけで、レア素材は頂いていきますねー」
「イッツ・ショー・タァーイム!」
襲い掛かるPK集団
「私、リーファって言います!」
「久しぶりだな・・・兄さん」
「シノン。見ての通り、ソロの弓使いよ。よろしく」
「僕はユウキ!早速だけど、僕のパートナーになってくれないかな?」
本来なら浮遊城で出会うはずのない新たな仲間たち
「俺は!皆を守れるヒーローに!なるんだぁぁぁぁぁぁ!!」
「ユナ・・・!君を、死なせはしない!」
「ハルト!行きまーす!」
そして物語は、
「ソードアート・オンライン IF」アインクラッド編SAOIFルート第一部『集いし剣士たち』、フェアリィ・ダンス編がしばらく進んだ後に公開!
――さようなら、私の・・・大切なパートナー
これは、もう一つの