ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
朝日が昇り、山の奥の広場が陽の光に照らされている中、コハルは未だに岩を殴り続けていた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息切れしながらも、着実に岩を破壊していくコハル。
岩はひびが目立つようになり、もう少しで割れそうだった。
「ふぅー・・・」
手を握りしめ目を瞑りながら深呼吸をしたら、コハルは目を見開き
「やぁーーー!」
岩に向けて思いっきり拳を振るった。
すると、岩はひびを更に大きくし、真っ二つに割れた。
「や、やった・・・」
コハルはその場に倒れこみながらも笑顔を浮かべた。
そんなコハルの前に、老人が近づき話しかける。
「見事じゃ。汝に我が秘技<体術>を授けよう」
コハルの目の前にはハルトの時みたいに<体術>を取得しましたと描かれているメッセージウィンドウが表示された。
スキルを獲得したコハルは起き上がると、その場に座り込んだ。
「(ハルトに待っててって言われてたし、このままここで待とう)」
そう思ったコハルは、せめてクエストをクリアした報告をしようとハルトにメッセージを送ろうとした瞬間
「おーい!コハルー!」
いつも傍で聞いているパートナーの声が聞こえた。
コハルはその声を聞いて笑顔になりながら、声が聞こえて方を振り返った。
そこに映った光景はというと・・・
「「ハァ!ハァ!ハァ!」」
「ブオーーー!!」
こちらに向かって走ってくるハルトとアルゴ。
その後ろには一体の牛が雄叫びを上げながら二人を追いかけていた。
「えぇーーーーーー!!?」
予想外の光景にコハルは思わず驚きの声を上げた。
ネズハの件から翌日。
ハルトとアルゴは<体術>を獲得できる山の広場に向かっていた。
《自然洞窟》を進む中、アルゴは様々な説明をした。
「オレッチが情報を集めている最中、第二層のボスに関する情報が貰えるクエストがあってナ。そのクエストをクリアしたらNPCが『洞窟を抜けた先にある山の広場にある仙人が座りし大岩砕かれたとき、新たな真実が分かるだろう』て言ったんダ」
「大体のことは分かった。けど、仙人が座っている大岩を砕くって結構時間が掛かりそうだよ。ただでさえ、岩を砕くだけで三日ぐらい掛かったし」
納得した様子のハルトだが、大岩を砕くことになると聞いて、結構時間が掛かると思い、不安になっていた。
そんなハルトの様子を見て、アルゴは笑みを浮かべながら話す。
「まっ、そこら辺は裏技を使うつもりだがら大丈夫サ。おっと、そろそろ出口だな」
アルゴの言う裏技に疑問を感じながらもハルト達は《自然洞窟》を抜けた。
山道を歩いていたが、しばらく歩くとアルゴが足を止めた。
「ハル坊。ここから先は広場に向かって全力疾走ダ。もし、途中で走るのやめたら・・・死ぬゾ」
「え?」
突然アルゴから発せられた死亡発言に言葉を失うハルト。
どういう意味か問おうとする前に、アルゴは道に落ちていた石ころを拾い、道脇に投げた。
アルゴが投げた石ころはそのまま林の中に入り
「ヴオっ!?」
林の中にいた牛の頭に当たった。
牛は石を当てられた痛みに耐えながらも、石が投げつけられた方向。アルゴとハルトの方を見る。
怒りの表情で二人を見た牛は、徐々に二人の方に近づいてき
「ヴオーーー!!」
「よし、逃げるゾ!ハル坊!」
「えぇーーーーーー!?」
「というわけで、あの後、僕たちは十分くらい走って、ここにたどり着いたんだ」
「そして、アルゴさんの裏技。牛の突進を利用して岩を砕くを使って、おじいさんが座っていた岩を割ったと。何というか・・・めちゃくちゃだね」
ハルトからここに来るまでの経緯を聞いて呆れるコハル。
現在三人は老人が座っていた岩を砕いたことで現れた地下への階段を下っている。
ちなみに、岩を砕くために利用した牛は、突進で岩を砕いた後、衝撃でダウンしてたところをハルトによって倒された。
しばらく階段を下りていると、三人は一枚の壁画を見つけた。
その壁画には二体のミノタウロスのような絵が描かれており、その上には下の二体よりも大きいミノタウロスのような絵が描かれていた。
この三体のミノタウロスの絵が何を示すのかはハルトとコハルには分からなかった。
しかし、アルゴだけは驚いた表情で壁画を見ていた。
「これは間違いない。ここに描かれているのはこのフロアのボスダ」
「「えぇ!?」」
アルゴの発言に驚くハルトとコハル。
彼女の話を聞くと、ここに描かれているミノタウロスの内、下の二体はβテストの時のボス《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》と取り巻きの《ナト・ザ・カーネルトーラス》であるということ。
どちらも巨大なハンマーを持っており、まともに食らえば、スタンして二発目の攻撃で麻痺して三発目でそのまま・・・
きちんと、モーションを見極めれば対処できるボスであることを説明された。
「あの二体がβテストの時の第二層のボスだということは分かりました。それじゃあ、その二体の上に描かれているのって?」
「おそらく、オレッチの知らない第三のボス。すなわち・・・」
「βテストとの変更点。ということか・・・」
コハルの疑問にアルゴが説明し、ハルトが結論付ける。
βテストとの変更点。それは第一層のボスの武器がタルワールから野太刀へ変わっていた時と同じであり、この第二層のボスにもβテストとの変更点があるのだろう。
この壁画を見る限り、第二層のボスは二体ではなく、上の巨大なミノタウロスを含めた三体ということだろう。
「見て!壁画の下に何か書いてあるよ」
コハルが壁画の下に書かれている文字を見つけた。
『王の眼に光が宿る時、雷光の息吹が全てを打ち倒す』
「雷光の息吹ってどういう意味なんだろう?」
「おそらく、ブレス攻撃だと思う。まともに食らえば一発で麻痺だ」
「王の眼に光が宿る時。ってことは、ブレス攻撃の直前に目が光るんだろうナ」
コハルの疑問に再度答えるハルトとアルゴ。
ブレス攻撃は放たれたら遠くまで一直線に攻撃する遠隔攻撃だ。
発射の速度は速く、事前に発射のモーションを知らなければ、回避するのは非常に困難である。
「とりあえず、このことを攻略組にも伝えよう」
「頼んだゾ。オレッチはもう少し、ボスに関する情報を集めているよ」
「とまぁ、これが話の内容の全てです」
キバオウとリンドをメッセージで《枯燥の草原》に呼んだハルトは、彼らに一通りの説明をした。
「大体は分かったわ。βテストと違ってボスが三体いて、特にブレス攻撃をする奴は目が光るタイミングで回避しろちゅうこともな」
「とりあえず、俺たちはこの情報を参考にボス攻略の会議を行うことにするよ」
説明をし、彼らに納得して貰えたことに安堵するハルトとコハル。
キバオウとリンドが去ったのを見て、コハルが口を開いた。
「どうして、同じ攻略組の人たちはが仲良くできないんだろう。この世界に閉じ込められたのは皆同じなのに・・・」
コハルの言葉にハルトは答えることができなかった。
ハルトもまた、攻略組が二つに分かれてしまったのか理解できていなかったからだ。
考えはそれぞれ違うけど、皆このゲームをクリアするために戦っているのに、何故こうもバラバラになってしまったのか。
「ディアベルさんがいれば、分裂せずに済んだのかな?迷いのない真っ直ぐな人だったし」
「コハル。ディアベルさんにも悩みはあったよ」
「そうなの?みんな色々なことを考えて抱えてて、それでも前に向かっていくことが本当に強い人なのかなって。あなたを見ているとそんな風に思うよ」
コハルの言葉に、またもや言葉を詰まらせるハルト。
ハルトは自分のことを強いと思ったことは一度もない。現に自分は目の前で死んだプレイヤーを助けることはできなかったし、ディアベルの時だって、あの後キリトが駆けつけていなければ自分はディアベルと共に死んでいたかもしれない。
自分一人では守れないものが多すぎる。ハルトはこの世界に来て嫌というほど実感させられた。
そんな自分が強いとはとても言い切れなかった。
だか、ここで自身の強さを否定してしまえば、目の前にいるコハルを不安にさせてしまうかもしれない。
「・・・この層も必ず突破しよう」
「うん、あなたと一緒にまた新しい景色を見たいから頑張るよ」
だからハルトは、話題を変えることで自身の強さを誤魔化した。
数日後、キリトからメッセージが届いた。
内容は詐欺のトリックが分かったから来てほしいということ。
ハルトはコハルに事情を説明し、一人でキリトが指定した場所に向かった。
指定された建物に入ると、中にはアスナとアルゴがいた。
「よっ!数日ぶりだナ」
「久しぶり。それで詐欺のトリックが分かったって」
「それに関しては、今からキリト君が実際に見せるわ」
そう言いながら、アスナは窓の外を覗いた。
窓の外には、店を開いているネズハの姿があった。
道端にカーペットを敷いてそこにいくつかの商品が置かれている。
そこに一人のプレイヤーが姿を現した。
全身防具に覆われていて顔が見えないプレイヤーはネズハに武器の強化を依頼した。
「あの人は?」
「あれはキリト君よ。今は変装しているけど」
ハルトの質問に答えるアスナ。
おそらく、一度顔を見ているから警戒されないために変装をしているのだろう。
変装しているキリトについて話していると、ネズハが強化をし始めた。
「いいカ、絶対に武器を見ていろヨ。素材を入れた時の炉の光は思わず見入っちゃうけど、見逃しちゃだめだヨ」
アルゴの忠告を聞いて頷く二人。
ネズハが素材を炉に入れた次の瞬間
「っ!」
「アルゴさん、今!」
「入れ替わったナ」
ネズハは左手に持っていた武器をクイックチェンジで同じような武器と入れ替えた。
クイックチェンジの動作は店に置かれている商品の後ろでひっそりと行われていた。更に、クイックチェンジを行う前にプレイヤーの目線は青白く光る炉に持っていかれるため、クイックチェンジをしたことがばれることはない。
「そういうことか。となるとあの武器は・・・」
「ハルト君の予想通り、あの剣は強化上限回数がゼロの武器よ。そして、上限がゼロの武器は強化すると必ず失敗する。そのペナルティは・・・」
アスナがその言葉を言う前に、強化しようとした剣が四散したことで示された。
「詐欺のトリックは分かった。けど、彼の動機は?」
「そのことに関しては場所を変えるから、移動しながら話すわ」
アスナの言葉を聞きながらハルトはもう一度窓の外を見た。
そこには変装を解いて正体を現したキリトと、キリトを見て驚愕の表情をするネズハの姿があった。
場所を移したハルト達はネズハから様々なことを聞いた。
ネズハの話によると、騙し取った武器は全部換金して、換金したコルは飲み食いや高級宿に使ってほとんど残ってないと。
申し訳なさそうな表情をしながら椅子に座るネズハを、四人は黙って見続けていたが、アスナが一本の投擲用のナイフを取り出した。
「これは前にフィールドで偶然会った剣士の忘れ物。アルゴさんに調べてもらったけど、この武器はどこのお店にも売ってない。つまり、持ち主は作り主。そして、今のSAOでこういうのを作れるのは、SAOで一人しかいないプレイヤーの鍛冶屋のあなただけよ」
アスナの言葉に言葉を詰まらせるネズハ。更にキリトが追撃を駆ける。
「飲み食いなどで使ったというのも嘘だろ。俺たちはアルゴに頼んで君の生活を調べたんだ。その上で君の質素な生活と稼いでいるコルを比べてみたんだが、君はプレイヤーの鍛冶屋として稼いでいる上、強化詐欺も行っている。計算が全く合わない・・・俺たちは今こう疑っている。君は稼いだコルを誰かに貢いでいるんじゃないかって」
キリトの言葉を聞いたネズハは、焦りながらも誤魔化し続ける。
「そ、そんな!一体誰に何の根拠があって・・・」
「
「!?」
誤魔化してたネズハだが、ハルトが発した名前に驚愕の表情をする。
こっちを向いてネズハを見ながら、ハルトは言葉を続ける。
「君の本当の名前だ。『ネズハ』じゃなくて『ナーザ』。『ナタク』って呼ぶこともあるけど、中国の小説に出てくる少年の神」
「あぁ、オルランドやベオウルフに引けを取らない」
「「「「
四人から発せられた「レジェンド・ブレイブス」の名を聞いて、下に俯くネズハ。
キリトは机をバンと叩きながらネズハを問い詰める。
「正直に話してくれ!君たちは何故こんなことができるんだ?もし、今のペースでいけば、レジェンド・ブレイブスは攻略組すらも超えるほど強くなる。悪事を厭わない集団がだ!そんな奴らが圏外で襲われても返り討ちにしてしまえばいいと開きっ!?」
「落ち着くんだキリト。ネズハが困っている」
ネズハに詰め寄ってたキリトの頭を叩くハルト。
キリトが何するんだ的な表情でハルトを見たが、ハルトの言葉を聞いてネズハの方を見る。
ネズハは震えながら何かに耐えているような表情をしていた。
その表情を見て、冷静さを取り戻したキリト。代わりにアスナがネズハの前に立って投擲用のナイフを持った右手を差し出す。
「取って」
アスナに言われるがままに右手の投擲用ナイフを取ろうとするネズハ。
しかし、手にナイフが届く直前に彼はナイフを取る動作をした。
「やっぱり、あなた片目が・・・」
「見えないわけじゃないんです。ただ、ナーブギアを被ると、遠近感が分からなくなるんです・・・」
「FNCか!」
ネズハの言葉に反応するキリト。
FNC(フルダイブ不適合)。フルダイブマシンと脳とのやり取りの際にごく稀に起きる接続障害。
五感が上手く機能しなかったり、最悪の場合ダイブすることができないこともある。
ネズハの場合は両目視機能不全。目が見えても奥行きを判別することができない。
一通り説明を終えたところで、アスナが口を開いた。
「これは私の予想だけど、ブレイブスの人たちはこの人を見捨てなかったのよ」
「!?」
アスナ言葉にネズハは再び下に俯く。
しかし、先程の表情はしておらず、目元にうっすらと涙が浮かんでいた。
「SAOが開始された直後、プレイヤー達がリソースを奪い合っていた頃、彼らはハンデを抱えた仲間のカバーを優先していたんだと思う。あなたの<投剣>スキル、第二層で通用するレベルまで高めるのは凄く大変だったんじゃないかしら?」
「そっか・・・弓があれば遠近感を無視して高いダメージを与えることができるけど、第二層ではまだ弓が手に入らないから、<投剣>スキルがないと戦うのは厳しい。そして、<投剣>スキルを高めるために足止めを食らっていれば、出遅れるのも当然か・・・」
「それが本当なら凄いよ・・・俺には絶対マネできない」
「どう、間違ってる?」
ハルトとキリトが話している中、アスナはネズハに自分たちの考えていることが合っているのか問う。
ネズハは両手で顔を隠し震えていたが、やがて震えが止まり、椅子から立ち上がった。
「おっしゃる通りです。僕はレジェンド・ブレイブスの、仲間の情けに縋りついて、皆の夢を台無しにしてしまった!」
ネズハは眼に涙を溜め、悔しそうな表情で話した。
「レジェンド・ブレイブスは何年も前から活動してきたチームです。色々なゲームで常に一位を取っていた最高のチームです。SAOが発表されたら、そりゃもう意気込んでいましたよ。メンバー六人でアインクラッドでてっぺんを取って、本物のヒーローになるんだって。なのに!僕のFNC判定で全てが狂ってしまった!」
ネズハは窓を思いっきり開けながら叫んだ。
「あの日以来、散々皆を修行に付き合わせてしまいました。不満を漏らす仲間もいました。けれども、オルランドさんは決して僕を見捨てようとはしなかった!」
ネズハは自身の手に持っている投擲用のナイフを見ると、弱々しく喋った。
「結局、どんなに<投剣>スキルを極めても使い物にならないことに気づいて、戦闘職を諦めた頃には最前線からの遅れは取り返しのつかないほどになってました・・・そんな時です。あいつが声を掛けてきたのは」
「あいつって?」
アスナが突如現れた謎の人物について問いかける。
ネズハの話によれば、話し合いが終わって酒場から出ようとしたネズハ達を引き留め、ネズハに強化詐欺の仕方を教えた男がいたという。
その男は黒ポンチョに覆われてて顔は見えなかったが、喋り方が独特で綺麗な笑い方をしていたという。
四人が黒ポンチョ男について考える中、ネズハは大声で叫んだ。
「でも、勘違いしないでください!全部僕が!僕自身の為に勝手にやったことなんです!だから!・・・どうかこれで・・・」
そう言うとネズハはバルコニーに出て四人の顔を見た。そして・・・
『!!』
そのまま飛び降りた。
「(これでいい・・・これで全て終わる・・・)」
ネズハが死を覚悟し、目を瞑ったその瞬間
がしっ!
「!?」
突然、右足を掴まれ、目を見開くと自身の右足を掴んでいるハルトがいた。
「うおーーー!」
ハルトはそのままネズハを引き上げ、引き上げられたネズハは転がりながら部屋に戻された。
「な、何するんですか!?」
ネズハはその場に座り込みながら自身を助けたハルトを睨んだが、ハルトはネズハの方に近寄り彼の頬を叩いた。
「逃げるな」
ネズハを叩いた後、ハルトは小さく呟く。
頬を抑えながらこちらを見るネズハをよそに、ハルトは言葉を続ける。
「この世界には、戦えなくて毎日始まりの町で怯え続けている人だっているんだ。君はFNCのリスクを背負っていても、レジェンド・ブレイブスの人たちと一緒にてっぺんを取りたい。その思いで今日まで戦ってきたんだろ。だったら、逃げないできちんと自分の罪と向き合うんだ」
「!? あなたに何が分かるっていうんですか!僕がこの世界で味わった苦しみが!仲間の為に何か役に立ちたいと思っても、何もできない悔しさが!」
「分かりたくないよ。そんな思いをした結果がこれなんだから」
ネズハの気持ちを否定するハルト。
こちらを睨み続けるネズハをよそにハルトは言葉を続ける。
「そもそも、レジェンド・ブレイブスの人たちがなんで君を追い出そうとしなかったのか考えたことある?」
「そ、それは・・・」
突然の質問に言葉を詰まらせるネズハ。
ネズハは今までいつ追い出されるのかは考えたことはあったが、厄介者でしかない自分が未だに追い出されない理由は考えたことなかった。
「そんなの決まっている。あの人たちも君と同じで、メンバー全員で勇者になりたいと思っているからだ!その夢を叶える為にも、レジェンド・ブレイブスは一人も欠けちゃいけないんだ!だから、どんなに辛くても、あの人たちは君を追い出そうとしなかった。そうじゃないのか!?」
「!?」
ハルトの言葉を聞いて、ネズハは一つの光景を思い出した。
それはSAOにダイブする前の日、現実世界でメンバー全員集まって、必ずSAOでトップに立って、勇者になろうって誓い合ったあの日の光景が。
ネズハの目元に涙が浮かぶ。そこにアスナも声を掛ける。
「大切な仲間に迷惑をかけたくないって気持ちはよく分かるけど、あなたは本当にそれでいいの?憐れまれたまま見返すことなく終わっていいの?」
アスナはネズハを見て、真剣な表情で言葉を発した。
「死にたいなら、勇者として死になさい!」
アスナがそう言った直後
「うぅ、うあぁぁぁ・・・」
ネズハはそのまま顔を下に向け泣き崩れた。
「キリト君、お願い・・・」
「頼むよ・・・」
二人の何とかして欲しいという願いを聞いて、キリトはネズハに近寄る。
「遠距離攻撃ができる武器なら、遠近感がなくてもシステムアシストで上手く攻撃することができる。そこで、君が取るべき道は二つだ。一つは弓が実装されるまで待ち続けるか。その場合、攻略組からの遅れは大変なことになるだろう・・・もう一つは<投剣>スキルを極めるか。君の<投剣>スキルは中々のものだと聞いている。だから、極め続けば・・・」
「分かってます!でも、あんな一発の威力が弱い武器、実践じゃなんの役にも立ちませんよ!弾数が無制限じゃない限り!」
「そうだ。弓だろうと投擲武器だろうと、遠距離攻撃ができる武器は弾数に限りがある。弾数が無制限なんて、そんなチート武器は存在しない。だが、戻ってくるものならある」
そう言いながら、キリトは自身のストレージから一つのアイテムを取り戻した。
それは、先のフィールドボス戦でボスのLAでドロップした武器、チャクラムだった。
「これを使うためには、あるスキルが必要になる・・・ネズハ、スキルスロットに空きはあるか?」
「あ、ありません」
「では、質問を変えよう」
こちらを見上げるネズハにキリトは意を決して言った。
「鍛冶スキルを捨てる覚悟はあるか?」
ネズハの件から翌日。
ハルトはコハルと共にフィールドに出ていた。
その道中、ハルトは昨日起きたことをコハルに話した。
「そんなことがあったんだ・・・」
話を聞いてどこかやるせない表情をするコハル。
「私、あの人の気持ちが少し分かる気がする。やり方はダメだけど、自分の仲間のために力になりたいって気持ちは、誰にでも持っていると思うんだ」
「うん、ネズハも詐欺を行った動機は、その気持ちから来ていたのかもしれない・・・」
コハルの言葉に共感するハルト。
彼が詐欺を行ったのも、自分のせいで迷惑を掛けている「レジェンド・ブレイブス」の面々に少しでも力になりたいっという気持ちがあったからこそ、悪いことだと分かった上で行っていたのだろう。
「とりあえず、後はキリトに任せよう。キリトは僕らより数倍も、この世界の知識を持っているんだ。きっと、ネズハのことを助けてくれるはずだ」
「そうだね、私たちは私たちで今できることを精一杯やろう」
その言葉を最後に二人は攻略を再開した。
様々な思惑の中、第二層ボス攻略の日は着実に迫っていた。
・ボスの情報を知った攻略組
SAOIF通り、彼らにはボスが三体いることを知った上でボス攻略に挑んでもらいたいと思います。
・目の前で死んだプレイヤー
詳しくはep.1を。
・見捨てなかった「レジェンド・ブレイブス」
このシーンを見た時、私の中で「レジェンド・ブレイブス」の面々に対する株が爆上がりしました。
・弓
SAOIFに登場する武器の一つ。この世界では始まりの町では手に入らず、何層か突破しないと手に入れることができない仕組みです。
(SAOIF生放送を見て思ったこと)
・1000万ダウンロード突破おめでとう!
・レイン誕生日ガチャのレイン可愛い(引くとは言ってない)
・アシストキャラにアリス参戦!・・・えぇ~(既に片手直剣が三人もいることを思いながら)
アシストキャラで片手直剣使いが四人になる件について
せめて、リーファを斧に変えて欲しいよねぇ~
ということで第二層編、一通り終わり、後はボス攻略だけです。
情報を知った上でどうボス攻略に挑むのか。お楽しみに。