ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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メリークリスマス!というわけで、私からのクリスマスプレゼントという名の投稿です。
今回はフェアリィ・ダンス編のサブのオリキャラ登場します。


ep.2 渦巻く悪意

「もしかして・・・キリトさん?」

 

声を掛けてきた黒髪の少年を見て、パートナーの親友である少年の顔と一致した小春はそう聞き返した。

 

「あぁ、桐ヶ谷和人。向こうでは、キリトって名乗ってたな」

 

そう言って、キリトこと桐ヶ谷和人は小春に笑みを向けた。

 

「驚いた。キリトさん・・・じゃなくて、和人さんもこの病院に?」

 

「まぁな、ちょっとお見舞いに・・・」

 

「お見舞いって・・・ハルトのですか?」

 

「え?ハルトの奴、ここに入院してるのか?」

 

「? はい、あの世界から帰ってきたはずなのに、いつまで経っても目が覚めなくて・・・」

 

「そうか。あいつもなのか・・・」

 

何やら深刻な顔をする和人に、小春は疑問符を浮かべる。

しばらくすると、「付いて来てくれ」と言われ、歩き出した和人に付いていく小春。

和人が向かった先は、別の病室だった。

中に入り、ベットに眠っていた人物を見て、小春は驚愕の表情となる。

 

「アスナ!?」

 

ベットに眠っていたのは、SAOでコハルの友達であり、「血盟騎士団」の副団長を務めていたアスナこと結城明日奈だった。

驚く小春に、和人は説明する。

 

「彼女もずっとこんな感じなんだ。あの時、SAOはクリアされたはずだった。だけど、アスナのように未だに目が覚めないプレイヤーが300人くらいいてな。まさか、ハルトの奴も同じ状態になって、しかもアスナと同じ病院に入院してるとは思わなかったよ」

 

そう説明する和人の表情は暗い。

きっと彼も自分と同じ想いをしているのだろう。大切な人が目を覚まさず、何もできない己の無力さを嘆くしかない毎日を過ごす。

お互い言葉を発さず、暗い雰囲気が続いたが、ふと扉が開き、二人の男性が病室に入ってきた。

 

「来ていたのか桐ヶ谷君・・・おや?こちらのお嬢さんは・・・?」

 

「こんにちは結城さん。彼女は本多小春さん。向こうではコハルって呼ばれていたプレイヤーです」

 

入ってきた男性のうち、恰幅の良い初老の男性と親し気に話す和人。

気になった小春は、和人に男性の事を問い掛ける。

 

「和人さん。この人は・・・?」

 

「この人は結城彰三さん。アスナのお父さんだ」

 

「アスナのお父さん!?」

 

驚きながらも、小春は明日奈の父親である彰三に挨拶する。

 

「は、初めまして、本田小春です!娘さんとはSAOで一緒に戦った仲間で、かけがえのない友達でした」

 

「よろしく本田さん。そうか、君が桐ヶ谷君が言ってた明日奈の友人・・・明日奈は真面目だが人付き合いが苦手な娘でね。あまり友人もいなかった。そんな娘と友人になってくれた事、とても感謝しているよ」

 

「いえいえそんな!明日奈さんには、いつもお世話になってばかりでしたので・・・ところで、そちらの人は?」

 

そう言って、彰三の隣にいる眼鏡をかけた男性に視線を向ける。清潔感のあるスーツを身に纏い、人が良さそうな感じの男性だ。

 

「桐ヶ谷君も彼とは初めてだね。うちの研究所で主任をしている須郷君だ」

 

「須郷信之です。君達の話は社長から聞いています。英雄キリト君に勇者ハルト君のパートナーであるコハルさん」

 

「本田小春です。よろしくお願いします須郷さん」

 

「・・・桐ヶ谷和人です。よろしく」

 

微笑みながら自己紹介する須郷に対して、普通に言葉を返した小春と違い、和人は素っ気なく返事すると、視線を彰三の方に向ける。

その視線に意味に気づいた彰三は、申し訳なさそうに話す。

 

「すまないね。SAOサーバー内部でのことは口外禁止だったんだが・・・彼は私の腹心の息子でね。昔から家族同然の付き合いなんだ。話しているうちに、気が緩んで喋ってしまった」

 

「社長、そのことなのですが、あの話を正式に進めてもよろしいですか?」

 

「そうか・・・しかし、君はいいのかね?君はまだ若い、新しい人生だって歩めるはずだ・・・」

 

「僕の決意は昔から決まっています。明日奈さんが今の美しい姿のうちに、ドレスを着せてあげたいのです」

 

「・・・そうだな、そろそろ覚悟を決めないといけない時期なのかもしれないな」

 

話を進める二人に対して、傍で聞いてた和人と小春は話の流れに付いて行けず、呆然としていた。

しばらくすると、彰三が二人の方に視線を向けた。

 

「私はこの後会議があるから先に失礼させてもらうよ。桐ヶ谷君、本田さん、また会おう」

 

そう言って、彰三は病室から出ていった。

静かになった病室で、須郷はベットに左側に移動し、二人と向かい合うように立った。

 

「君はあの世界で明日奈と暮らしてたんだって?」

 

「え?あ、あぁ・・・」

 

「それなら、僕と君はやや複雑な関係になるという訳だね」

 

「どういうことですか?」

 

「そうだね。さっきの話の事も踏まえて、君たちに教えてあげよう」

 

そう言って、須郷は明日奈の髪を少々摘まみ上げると、顔に近づけてスゥーと匂いを嗅いだ。

 

「ひっ!」

 

「!?」

 

その仕草に、小春は思わず小さな悲鳴を上げ、和人は怒りに満ちた目で須郷を睨んだ。

そんな二人の反応を見て、須郷はニヤリと満足そうに笑いながら口を開いた。

 

「さっきの話はね・・・僕と明日奈が結婚するという話だよ」

 

「「!?」」

 

須郷から告げられた言葉に、絶句する和人と小春。

 

「そんな事ができるわけ・・・」

 

和人が怒りを押し殺した声で言う。もし剣があれば、その場で抜いて、須郷に向けていたかもしれない。

そんな和人を見て、嘲笑うかの様に須郷は言葉を返した。

 

「確かに、本人の意思確認ができない以上、法的な入籍はできない。書類上は僕が結城君の養子に入ることになる・・・実のところ、この娘は昔から僕のことを嫌っていてね」

 

そう言いながら、須郷は左手の人差し指で明日奈の頬に触れた。

それを見て、和人はそうだが、小春も嫌悪と怒りでいっぱいになっていた。ここまで人に怒りを感じたのは初めてだった。

 

「親たちはそれを知らないが、いざ結婚となれば拒絶される可能性が高い。だから、この状況は僕にとって非常に都合がいい・・・」

 

そして、須郷の指が頬からゆっくりと明日奈の唇に近づいたその時、和人が動いた。

 

「やめろ!」

 

和人は素早く須郷の下に駆け寄って、左手首を強く握り締めると、明日奈の顔から引き離した。

須郷は和人の手を振り払い、何事も無かったかのような顔で和人を見る。

 

「・・・あんた、アスナの昏睡状態を利用するつもりか?」

 

「利用?いいや、正当な権利だよ。桐ヶ谷君、SAOを開発したアーガスがその後どうなったか知っているかい?」

 

「・・・解散したと聞いた」

 

「うん、開発費に加えて、事件の補償で莫大な負債を抱えて会社は消滅。そして、SAOサーバーの維持を委託されたのが、結城氏がCEOを務めるレクト。正確には、僕が主任を務めているフルダイブ技術研究部門にだけどね。つまり・・・明日奈や春斗君の命は、今やこの僕が握っていると言っていい。その意味が分からないとは言わせないよ?」

 

「そんな・・・!」

 

「お前・・・!」

 

須郷の言葉に、二人は驚愕し、同時に強い怒りを覚える。

その言葉をそのまま捉えると、この男は明日奈や春斗を含む未帰還者300人の命を人質にして、明日奈との結婚を強引に行おうとしているのだ。

自分に逆らえば、明日奈たちの命はない。逆らう者達をそんな風に脅して・・・

 

「今や僕は、明日奈たちの命を預かる重大な責任を持つ立場にいる人間だ。なら、それくらいの対価は当然だろう。責任が重い仕事には、それ相応の給与が与えられる。社会じゃ常識の話だよこれは」

 

怒りに震える二人に、須郷は聞き分けの悪い子供を論するように言った。その態度すらも、二人の怒りを更に上げるには十分過ぎるものだった。

 

「さて、僕もこの辺で失礼させてもらうよ」

 

そう言うと、須郷は病室の扉の方に歩き出したが、わざわざ歩みを止めて、和人たちにしか聴こえない声で言い放った。

 

「今後、明日奈には関わらないでほしい。結城家との接触も遠慮してもらおう。式は一週間後の一月二十六日にこの病室で行う予定だ。せっかくだし、君たちも呼んでやるよ。何なら、春斗君を呼ぶのもありか。勇者くんもきっと僕たちを祝福してくれるだろう・・・せいぜい、最後の別れを惜しんでくれ。英雄君と勇者の伴侶さん」

 

そう言い残して、須郷は病室から出ていった。

残された二人の間には、須郷への怒りと、どうしようもない虚無感だけが漂っていた。

 

 

 

 

小春たちが病院にいる一方、病院を出た雪斗は、都内にある国立大学の研究室にいた。

 

「――というわけだ。それじゃあ、今日はここまでにしようか」

 

「はい、ありがとうございました。角田(つのだ)教授」

 

自身の研究室で講義を終えた角田プラタールに、雪斗は頭を下げてお礼を言った。

高校に入学するまでの間、雪斗は稀にこの講師の研究室を訪れて、彼の下で(簡単な内容だが)医学に関する知識を学んでいたのだ。

 

「いやはや、雪斗君は物分かりが良くて、教える側としてはスムーズに進んで助かるよ」

 

「いえ、教授の教えが分かりやすいからです。流石、国立大学の医学部の教授です。いつも丁寧にご教示頂き、ありがとうございます」

 

「そうかい?そう言われると、教授として冥利に尽きるよ」

 

事の始まりは一ヶ月程前、プラタールは雪斗の中学校を訪れて、医学に関する特別授業を行った。

と言っても、まだ中学生である彼らに対して、教えれることは限られており、プラタール自身も顔は取り繕ったが、内心はあまりやる気がなかった。

そんな中、ひときわ熱心に講義を聞き、終わった後もプラタールに質問しに来た生徒が一人いた。その生徒こそ、雪斗だった。

話を聞くと、雪斗の母は看護師を務めており、その影響もあって、雪斗自身も医学に興味を持っていたという。本当は兄を超えるための武器が少しでも多く欲しいという想いもあったが、流石にそこまでは言わなかったし、プラタールも知らない。

 

「ところで雪斗君。そろそろ受験の時期だけど、君はもう進学する高校は決めたのかい?」

 

「はい、剣道の強豪校から推薦が来たので、そこに入学します」

 

「ほう・・・となると、将来は剣道の道を進むのかい?」

 

「そうですね・・・実はまだ、明確に決まってません。このまま剣道の腕を極めていくか、母さんや教授みたいに医学の道を進むのも一つの選択肢だと考えています」

 

これからの道を語る雪斗に、プラタールは満足そうに頷く。

 

「まぁ、色んなことに取り込んでいくことは、良いことだと思うよ。僕も大学講師や医師の他に、技術エンジニアの資格とかもいくつか持ってるからね」

 

「それはまた・・・意外ですね」

 

「そうだろう。最近は最先端の技術を使った医術も増えてね。昔と違って、医者も機械に強くなければいけない時代になっているんだ。それに、元々機械系やIT系の仕事にも興味があってね。結局、医師の道を選んだけど、学んだ技術はこうして今も役に立っているからね。一度きりの人生なんだ。色々体験しないと勿体無いだろう?」

 

そう言い切るプラタールを見て、雪斗は思わず感心した。ここまで多角的に様々なことに興味を持ち、挑戦している人は、少なくとも自分は見たことない。

見た目こそやせ細っていて、どことなく胡散臭さを感じるが、知識の豊富さや生徒に対して真摯に向き合う姿勢は、理想の教授に相応しいと言える。

そんなことを思っていると、研究室の扉が開けられ、スーツを着た一人の男性が入ってきた。

 

「副主任、そろそろ会議の時間です」

 

「あぁ、もうそんな時間か」

 

男に言われて、プラタールは席を立つと、視線を雪斗の方に戻す。

 

「さてと、僕はそろそろ行くよ。今は教授の他にレクトのフルダイブ研究部門の副主任を兼任しててね。今も目覚めない300人のSAOプレイヤー、彼らが一刻も早く目が覚めるように、僕も多少無理をしても頑張らないといけないからさ」

 

「相変わらず大変ですね」

 

「まぁね。でも、被害者やその家族の苦しみに比べたら、これくらい安いものだよ。聞けば、君のお兄さんもまだ目が覚めてないんだろう?なら、尚更頑張らないと。一刻も早く、兄弟で再会できるようにさ」

 

プラタールはそう言うが、雪斗自身は複雑な気持ちだった。

彼は雪斗が兄に嫌悪の感情を抱いている事を知らない。だからこそ、自身のことを想って、純粋に優しい言葉を掛けるプラタールに、雪斗は罪悪感を覚えた。

 

「それじゃあ、雪斗君。また会おう」

 

そう言って、プラタールは研究室を出ていった。

残ったのは雪斗とスーツの男だったが、プラタールが出ていった瞬間、スーツの男が口を開いた。

 

「随分、馴れ馴れしく喋ってたな。教授に纏わりつく害虫が・・・!」

 

そう言って、雪斗を侮蔑するような顔で睨み付ける男を見て、雪斗はまたかと内心ため息を付いた。

この男、クリム・ガスパーはプラタールを強く心酔しており、今はレクトに勤めているが、大学時はプラタールの下で医学を学び、医師免許を取得した男である。

しかし、プラタールを崇拝するあまりか、プラタールに絡む人間を見下し、敵のように扱うのだ。彼に教えを請いに来ている雪斗に対して、嫉妬混じりの嫌悪を抱いている。

それは、出会って間もない雪斗でも感じ取れるほど露骨だった。

 

「別に馴れ馴れしくしてるつもりはない。プラタール教授から医学を学びたいと思ったから、こうして教えを請いに来ているだけだ」

 

「立場を弁えろと言っているんだ」

 

クリムはビシッと雪斗を指差す。

 

「あの人は偉大なる医師で、あらゆる難病をも治してきた。正に医学の神と言える方だ。お前のような凡人が簡単に話していい方じゃない!分かったら、二度と私たちの下に顔を見せるな!お前如きが、教授に馴れ馴れしくするな」

 

そう言い残して、去っていくクリムを見届けながら、雪斗は面倒だと言わんばかりの顔で呟いた。

 

「めんどくさい男に睨まれたな・・・」

 

はぁーとため息を吐きながら、雪斗はこの後の予定を確認する。

 

「この後は確か、向こう(・・・)で2パーティー合同で狩りに行く予定だったな。シグルドの奴と一緒に行動するのは面倒だが、あいつらもいるしな。仕方ないか・・・」

 

そう言って、再度ため息をつく雪斗だった。




・須郷信之
SAOの中でも上位を争う程のクズキャラ。正直、アサダサン!で有名な新川君よりもこいつの方が数倍気持ち悪い。今作でも変わらず、クソ眼鏡と化するつもりです。

・角田プラタール
サブのオリキャラその1。見た目は「グランブルーファンタジー」のアイザック。CVもアイザックと同じ鳥海浩輔。日本人とアメリカ人のハーフ。都内の国立大学の医学部の教授であり、今はレクトのフルダイブ技術研究部門の副主任として働いている。前に特別授業で雪斗の中学校に来て授業を行い、自身の講義を熱心に聞いてた雪斗を気に入り、時より自身の研究室に彼を招いて、特別講義を行っている。

・クリム・ガスパー
サブのオリキャラその2。見た目は「機動戦士ガンダムUC」のアンジェロ。CVもアンジェロと同じ柿原徹也。名前が外人だが、国籍は日本。レクトのフルダイブ技術研究部門の一員で、大学ではプラタールの研究室に所属していた。幼い頃、交通事故にあい、生命の淵を彷徨っていたところプラタールに救われ、彼を心酔するようになる。そのため、時よりプラタールに教えを請いに来る雪斗を教授に近づく害虫とみなし、激しく嫌悪している。


今回登場したオリキャラ達のモチーフ等は私のTwitter(x)で見れますので、よろしければそちらもどうぞ。
次回でフェアリィ・ダンス編の投稿は一旦休止します。

SAOIFルート、一緒にするべきか分けるべきか

  • 分けるべきや!
  • 一緒でもええんやで!
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