ソードアート・オンライン IF(アイエフ) 作:イノウエ・ミウ
そこで、今回というより今年最後の投稿は一ヶ月遅れのSAOIF7周年記念の番外編です。最早お馴染み、フェアリィ・ダンス編の先行公開です。
今回はひと味違った話になると思います。それでは、どうぞ!
ピピピピピピ!!
スマホから流れるいつも通りのアラームの音で目が覚める。
耳に響く音を止めて、ベットの上にゴロゴロとのたうち回ることはせずにゆっくりと起き上がり、寝る前に閉めていたカーテンを開ける。
窓から差す朝日がぼやけている意識を徐々に覚醒させる。
やがて、意識がハッキリと覚醒し、そこから洗面所に向かって顔を洗い、自分の顔を確認する。鏡の先には、いつもと変わらない神宮寺統夜の顔がそこに写っていた。
己の顔を確認した統夜は、そのまま歯磨きを行う。それを終えると、今度は台所へ向かう。
フライパンを取り出し、上に油を敷いたら、冷蔵庫から卵を取り出すと、殻を割って中身をフライパンの上に乗せる。
そのフライパンを一人暮らしを始めた時に買ったIHのコンロに乗せて温める。その隣に、冷蔵庫から取り出した昨日のオニオンスープが入った鍋を置き、こちらも温める。
更に食パンを一枚袋から取り出して、これまた買ったばかりのトースターに入れると、電源を入れて焼いていく。
本当なら、もっと凝った物を作りたいところだが、今日はいつもと違って、出掛ける予定があるのだ。だからこそ、手短に作れる物で済ます。
目玉焼きに火が通り、フライパンから皿に移す。同時にトースターの音が鳴り、焼いた食パンを別の皿に移すと、手にそれぞれの皿を持って、テーブルまで運んでいく。
台所に戻り、温まったオニオンスープをお椀に入れて、こちらもテーブルに運ぶ。
買ったばかりのソファーに座り、いただきますと手を合わせてから作った朝食を食べていく。
素朴で簡単な物ばかりだが、一日の活動を始めるための英気を養うなら、このぐらいが丁度いいだろう。
朝食を終えた統夜は、着ていた寝間着を脱ぐと、クローゼットから愛用のジャケットとジーンズを取り出して、それに着替える。
前の日に荷物を詰め込んだハンドバッグを手に持ち、玄関まで行ったら靴を履いて、入口の扉の鍵を開けて外に出た。
「「あ」」
鍵を閉め終えた途端、同様に部屋の鍵を閉めていたであろう隣の住人である眼鏡の少女と目が合った。
一ヶ月程前から統夜はこのアパートに住み始め、その時から隣に住んでいるがこの少女だ。
目立ったお洒落はせず、少しクールな雰囲気を持つ文系っぽい見た目の少女。季節は2月で寒くなるこの季節、上着を羽織って首にマフラーを巻いており、その下から僅かに制服が見える。恐らく高校生だろう。
初めて挨拶しに行った時は、自分と同い年くらいの少女が出てきて大いに驚いたが、今ではこうして偶然会っては軽く世間話をするし、年が近いこともあって、仲はそれほど悪くはないと統夜は思っている。
統夜に気づいた少女が彼に話しかける。
「珍しいね。神宮寺君がこの時間に出歩くなんて・・・」
「今日は春に俺が通う学校の説明会があってな。それで、早く起きることになったんだ」
「そうなんだ・・・(この時期に説明会なんて、珍しいわね。中学生なら、まだ受験のシーズンなのに・・・)」
まだ2月であるにも関わらず、既に説明会を行う学校に、少女は内心疑問を浮かべていた。
彼女は知らないだろうが、これから統夜が通う予定の学校は、ある意味特殊な事情持った学校なのだ。
「元々その学校に通う為に、実家からここに引っ越して来たからな。まぁ、電車で通うから、途中近くの駅まで歩く必要があるんだが・・・」
「っ!?私と同じね・・・せっかくだし、途中まで一緒に登校しない?神宮寺君、ここに引っ越して来てから、まだそんなに経ってないでしょ?もし良かったら、駅まで案内してあげるわよ」
「・・・そうだな。地図で見るより、場所を知っている人間に案内してもらう方が効率的だな。それじゃあ、案内よろしく頼むよ」
少女の提案に、統夜が断る理由はなかった。
冬の寒さが猛威を振るうこの時期に隣同士で歩くクールな雰囲気の男女。傍から見れば、学生カップルにも見える光景だが、生憎と二人共そんな色気付いたことは一切考えていなかった。
隣同士で歩きながら、統夜と少女は会話していた。
「そう言えば、この間の連中、あれからどうしているんだ?」
統夜がそう聞くと、少女は少しだけ顔を俯かせた。
この間の連中というのは、統夜が引っ越して来て間もない頃、隣の部屋がやけに騒がしかったことがあったのだ。
最初は耐えていたが、あまりにもうるさ過ぎて、注意しようと統夜は隣の部屋を訪ねたのだが、そこで見たのは、食べ物のカスやゴミがあちこちに散らばっている室内、そこに居座って盛大に笑い合う男女の集団。
そして、その光景を部屋の隅で見守る少女。その顔は今まで統夜が見たことない悔しそうな顔をしていたのが印象的だった。それは目線の先にいる男女ではなく、自分自身に対しての悔しさを露わにしていると、見てた統夜はそう感じた。
何故少女がそんな顔をしているのか疑問を抱きながらも、統夜は周りに迷惑だから静かにするよう注意したのだが、向こうは聞き耳持たずで、終いには痺れを切らした集団の内の男子の一人が統夜に殴り掛かってきたのだ。
しかし、統夜とて元々身体能力が高く、小学5年の頃に総司と一緒に集団相手に喧嘩して勝ったこともある。増してや、SAOで命懸けの戦いをいくつも切り抜けてきた統夜にとって、この程度の暴力は赤子同然だった。
殴り掛かった男子の腕を掴み、そのまま一本背負いして床に叩きつける。
そして、少し殺気の籠った声で再度注意すると、今まで騒いでた集団は顔色を変えて、一斉に部屋から出ると逃げるよう去っていった。
部屋に残ったのは、この部屋の住人である少女だけ。
少女は「ありがとう」とお礼を言ったのに対して、統夜は先程抱いた疑問について問おうとしたが、少女の安堵しきった顔を見て、やめることにした。
それ以来、少女の部屋にあの集団が訪れることはなかったが、統夜自身は少女の生活に何か支障がないか、ずっと気になっていたのだ。
「心配しなくて平気よ。あの人達は学校の同級生で、普段は普通に話すし、特にいじめられているわけでもないから安心して」
そう言って笑う少女だが、それが強がりの笑顔だということは見てすぐに分かった。自分もよく、似たように笑うことが多々あるからだ。
しかし、それを無理矢理追求しても、本当のことを言うつもりはないと、少女の様子を見て判断した統夜は、少しだけ忠告する。
「・・・人の関係について、どうこう言うつもりはないが、友達はもう少し慎重に選んだ方がいいぞ。最近は友達と言い張って、いじめを行う下劣な奴も多いからな」
「うん・・・気をつけるわ」
今度は少女が統夜に問い掛ける。
「神宮寺君は・・・そんな人とは違うのよね?」
「・・・さぁな。友と呼べる奴はいるが、俺自身がそういう人間かどうかは・・・まだ分からないな」
「分からないって・・・?」
「そのままの意味だ。誠実に生きてるつもりであっても、どこかで自分は間違いを犯したのかもしれない、あの時ああすれば良かったと後悔したり、悩んだりすることもあるってことだ」
「・・・神宮寺君でも、そんな風に悩んだり、後悔することがあるのね」
「人間だからな。誰だってそうだろ?」
「そう、だね・・・」
統夜の言葉に、少女はコクリと頷くのであった。
そんな話をしている内に、最寄りの駅へ辿り着いた。
駅内は既に人で埋め尽くされていた。出社、或いは出校のため、数多くの学生や社会人が溢れかえっている。
人混みに押されながらも、二人は駅内を進んでいく。
電光掲示板を確認しながら、少女は統夜がどの電車に乗るのか問い掛ける。
「神宮寺君はどの電車に乗るの?」
「俺はこの電車だ」
「あ、私と違う電車ね・・・ということは、ここでお別れってことになるのかしら?」
少女がそう言うと、統夜は「そうだな・・・」と少し名残惜しそうに言いながらも、別れを告げた。
「またな・・・○○」
ということで、今回の先行公開はトウガこと神宮寺統夜がメインの現実世界での話でした。途中登場した眼鏡の少女は果たして誰でしょうか?原作キャラかそれともオリキャラか?
今年の投稿はこれで終わりです。来年も引き続き、フェアリィ・ダンス編を中心に投稿していきます。来年の周年記念は、先行公開以外の特別編を執筆したいなぁ・・・