ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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ep.5 風の妖精(シルフ)の街《翡翠の都(スイルベーン)

数分前、セツナと別れたリーファは、追撃してくるサラマンダーの部隊と戦っていたが、複数人相手に苦戦を強いられていた。

一緒にいた仲間のレコンはやられて、尚も迫りくるサラマンダーを前に絶対絶命のピンチに陥っていたその時、空からスプリガンの少年が降ってきたのだ。

少年は巻き込まれる形でサラマンダーと戦闘になった。装備はどれも初期装備であり、少年はニュービーであることが一目で分かった。

しかし、少年は素人とは思えない早さで、あっという間にサラマンダー二人を斬り裂いた。残った一人も勝てない相手だと判断し、見逃してもらう形でこの場を去った。

その後、少年はキリトと名乗り、彼と一緒にいたプライベート・ピクシー(実際は違うが、何も知らない彼女はそう思っている)のユイとひと悶着あったが、ひとまずは先程別れたセツナと合流するべく、指定された場所へ向かうことにした。

キリトにそのことを伝えると、彼も了承した。

 

「着いたわ。恐らく、セツナ君もこの近くに来るはずよ」

 

森の中を少し歩き、セツナが指定した合流ポイントに辿り着いたリーファ達。

しかし、周りを見渡しても人の姿が見当たらない。

 

「誰もいないな。もしかして、やられたとか?」

 

「うーん、それはないと思う。セツナ君はシルフの中でもトップクラスに強い剣士だし、ALOでも上位に入る程のプレイヤーなの。だから、複数のサラマンダーが相手でも、そう簡単にやられるとは思えないわ」

 

「随分と信頼してるんだな」

 

「そ、そりゃ、あたしは普段から彼とパーティーを組むことが多いからね。それに、あたしとセツナ君は同じ時期にALOを始めたから、付き合いもそれなりに長いの」

 

「へー、いつか戦ってみたいモンだ――っ!?離れろリーファ!」

 

キリトがセツナに興味を持った直後、傍から殺気を感じ、リーファに向かって叫ぶと同時に剣を抜いて気配を感じた方に振り向く。

直後、目の前に二本の刀が振り下ろされた。咄嗟に剣を振って、刀を弾き返す。

襲撃者は驚いた顔をしつつも、一度距離を取って、刀をそれぞれの手に持ったままキリトを見る。

キリトもまた、その襲撃者を確認する。

黄緑のジャケットの上に緑のフード付きマントを羽織り、風の妖精シルフには似つかわしくない異質な白い髪の毛。武器は見た感じ手に持っている二本の刀だが、腰の方にも何やら小刀らしき物が収められている。

 

「セツナ君!」

 

後ろにいるリーファが声を上げて驚いていた。どうやら、彼が彼女の言っていたセツナなのだろう。

もっとも、彼の様子からして、明らかに歓迎してる雰囲気ではなさそうだが。

 

「何故スプリガンがここにいる?装備を見るに初心者みたいだが・・・偵察か、それとも別の目的があるのか?・・・いや、どちらでもいい。他種族のプレイヤーを、それもシルフ領の付近で見つけてしまった以上、見逃すわけにはいかないな」

 

そう言って、セツナは右手に持つ刀をキリトに向ける。

 

「(これは穏便に済ませられそうにないな・・・)」

 

戦いたいとは思ったが、まさかこうも早く実現することになり、キリトは心の中で苦笑いする。

リーファに申し訳なさを感じつつも、戦闘は避けれそうにないと判断したキリトは持っている剣を構える。

それが戦闘開始の合図となり、セツナは再度羽を広げて、猛スピードでキリトに迫る。

セツナの猛攻をキリトはひたすらに防いでいく。

 

「(なんて洗練された技だ!早さも俺の二刀流と互角だ!)」

 

嘗て浮遊城で二刀流の剣士として名をはせていた自身の剣技に劣らない、彼の巧みな二刀流の技術に圧倒されるキリト。

しかし、彼とてSAOでトッププレイヤーにまで登り詰めた剣士。そう易々と勝ちを譲るつもりはない。

防御に集中してたキリトだが、徐々に攻撃も仕掛けて、セツナと激しい剣戟を繰り広げる。

 

「っ!?(やるな。初期装備でここまで動けるなんて・・・コハルもそうだが、こいつもただの初心者じゃない!)」

 

セツナも動きが変わったスプリガンの剣士に油断することなく攻め続ける。

しばらくの間、互いの武器をぶつけ合っていた二人だが、キリトの腕がセツナの激しい剣技によって上に上がった瞬間、セツナは横から彼の腹部目掛けて蹴りを入れる。

キリトは咄嗟に後ろに飛んで蹴りを避けた。そう思った瞬間、キリトの腹部に衝撃が走った。

 

「がっ!?」

 

剣で斬られたような感触に驚くキリト。

腹部を見ると、確かにダメージエフェクトで表示された切り傷の跡があった。

 

「(いったいどうやって・・・?)」

 

セツナはこちらを蹴ろうとした。それをキリトはギリギリで避けた。なのに何故切り傷(・・・)ができたのか。

どんな手段を使ったのか分からないが、こちらにダメージを与えた以上、少なくとも手を抜いて倒せる相手じゃないと、キリトは真剣な表情でセツナを見る。

一方、セツナもセツナで自分とここまで対等に戦える相手に内心驚いていた。

 

「(中々やるな。さっきの方法で仕留めれたら良かったが、あのスプリガン相手に二度目は通じるか分からない・・・ここは使うしかなさそうだな。俺のもう一つの刃を・・・)」

 

滅多に見ない強敵を相手に、フードの中に隠している第3の刃(・・・・)を出すか考えたその時、二人の間に割り込む者がいた。

 

「ちょっと待って!」

 

そう言って、二人の間に入ったのはリーファ。

彼女はキリトを庇うように彼の前に出て、正面にいるセツナを説得する。

 

「戦うのを止めてセツナ君!君は誤解してる!」

 

「誤解だと?シルフ領の近くにいたスプリガンが敵でないと言うつもりか?」

 

「・・・確かに、この人はスプリガン。あたし達シルフにとっては他種族で敵かもしれない。でも、彼はサラマンダーに追われてたあたしを助けてくれたのよ!」

 

「何・・・?」

 

リーファの助けてくれたの言葉に、セツナは動きを止める。

しばらく考えたが敵であるはずのリーファを助けたスプリガンの意図が読めず、セツナは視線をキリトに向けると、その視線の意味を察したキリトがセツナの疑問に答える。

 

「別に目的があって助けたわけじゃないさ。たまたま俺が落ちてきたところに、彼女が複数人のプレイヤーに襲われてるのを見つけてな。困ってる女の子を助けないのは、流石に気が引けるからさ」

 

「・・・もう一人、俺の仲間がいたはずだ。そいつはどうした?」

 

「レコンなら、彼が助ける前にサラマンダーにやられたわ。今頃ホームであたふたしてるんじゃない?」

 

「そうらしいぜ。どうだい?これでもまだ俺が怪しいって疑うか?」

 

そう言って、こちらに笑みを向けるキリト。その笑顔に敵意は一切感じなかった。

しばらく無言を貫いたセツナだが、やがて結論を出した。

 

「・・・いや、あんたが良からぬ目的でここにいるのなら、今頃リーファも倒しているはずだ。それに、彼女があんたに助けてもらったと言ったんだ。今は彼女の言葉を信じることにする」

 

そう言うと、セツナは二本の刀を鞘にしまった。

戦闘が終わり、キリトは誤解が解けたことに安堵しながら自分の名前を名乗る。

 

「誤解が解けたようで何よりだよ。俺はキリト、見ての通りALOはこれが初だ」

 

「・・・初めての奴が、あんな動きできるはずがないと思うんだが」

 

「前にこれと同じようなゲームをしてな。空はまだ飛べないけど、(こいつ)の腕なら誰にも負けないぜ。それで、あんたは確か――「キリトさん!」ん?」

 

ふと自分の名前を呼ばれて、振り向くと緑の髪をした女の子・・・今までの戦いを離れて見てたコハルがいた。

 

「キリトさんも無事にログインできたんですね。それも、こんな近くにいたなんて」

 

「その声にその髪型・・・もしかしてコハルか!?」

 

「はい、コハルです。良かったぁ、早めに合流できて・・・」

 

「それはこっちのセリフだ。お前も無事にログインできたんだな」

 

安堵するコハルを見て、キリトもまた安堵する。

すると、蚊帳の外となっていたリーファがコハルに声を掛ける。

 

「えーと・・・そっちの女の子も、ニュービーなのよね?それも同じシルフの」

 

「あ、はい。私はコハルって言います。貴女は・・・?」

 

「あたし、リーファって言います。それで、こっちが・・・」

 

「セツナ。スプリガンのあんたには名乗ってなかったな。コハルとはここに来る前、丁度サラマンダーの部隊を相手してる最中に、いきなり落ちてきたから、そのままシルフ領まで保護することになった」

 

「保護って・・・私は迷子の子供ですか?」

 

「迷子なのには変わりないだろ」

 

「そりゃそうですけど・・・」

 

セツナの言葉に、コハルは不服そうな顔をする。

その横でリーファがセツナにこの後の事について提案する。

 

「セツナ君、これから助けてもらったお礼に、この人に一杯おごろうと思うんだ。どうかな?」

 

「っ!? 他種族をシルフ領に入れるつもりか?」

 

「心配しないで。何かあればあたしが責任を取るから」

 

「・・・まぁ、お前を信じるって言ったからな・・・分かった。こっちに異論はない」

 

「決まりね。それじゃあ、《スイルベーン》まで飛ぼっか。そろそろ羽も回復したと思うし、また敵が来ないうちにシルフ領に入りましょう」

 

これからの動きが決まり、早速飛行しようと羽を出現させるリーファだが、そこにコハルが困った顔をしながら手を挙げる。

 

「あのー、私飛び方について全く知らないんですけど・・・」

 

「俺もそうだな。一応この補助コントローラーを使って飛ぶことはできるけど・・・二人はコントローラー無しでも飛べるのか?」

 

キリトが補助コントローラーを手に持ちながらリーファとセツナに問い掛ける。

 

「まぁね。これでも結構やってるから。でも、確かに初めはコントローラーを使って飛ぶから、いきなりコントローラー無しの随意飛行は難しいかも」

 

「だが、初心者でもすぐに随意飛行ができないわけでもない。コツを掴めば、コントローラー無しでも飛べるようになる」

 

セツナの言葉に、キリトが食いついた。

 

「そうなのか?是非とも教えてくれないか?」

 

「分かった。二人共、コントローラーを使わないで羽を出してみて」

 

「は、はい!こう、ですか?」

 

「出したぞ」

 

リーファに言われるがまま羽を出したら、彼女はキリトとコハルの背中に手を触れてきた。

 

「今触ってるの、分かる?」

 

リーファの言葉に頷くキリトとコハル。

 

「ここから仮想の骨と筋肉があると想定して、それを動かすの。試してみて」

 

言葉通りに実践してみると、二人の羽が徐々に震える。

 

「その調子。後は肩や背中の筋肉を何度も動かして、羽と連動する感覚を掴んで。焦らず、ゆっくり・・・」

 

言葉に従いながら、徐々に羽の感覚を掴んでいき、羽が大きい振動を鳴らしながら震え上がった瞬間、リーファが大声を出した。

 

「今よ!」

 

直後、リーファは力強く二人の背中を押した。

その途端、二人の体はロケットのように飛び上がった。

 

「うわぁー!!」

 

「キャー!!」

 

二人の体はあっという間に空の彼方に消えていき、悲鳴もどんどん小さくなっていく。

 

「「「・・・・・・」」」

 

その光景を地上にいたリーファ達(ユイはキリトから離れてたので無事だった)は呆然と眺めていたが、我に返って二人を追いかけるべく羽を広げて飛び立つ。

 

「おわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「と、止めてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

そんな情けない悲鳴を上げながら、二人はふらふらと夜空を飛び回っていた。

 

「プッ、アハハハハハハ!」

 

「ごめんなさいパパ、コハルさん!面白いです!」

 

「笑ってる場合か・・・」

 

思わず笑ってしまったリーファとユイの横で呆れながら、セツナは二人の下に近づき、両腕でそれぞれ二人を抱えて制止させた。

 

「とりあえず、空を飛ぶことはできたな。後は落ち着いて体を横にしながら態勢を整えるんだ。空に身を委ねるように・・・」

 

「こうか?・・・お、できてきたぞ」

 

「空に身を委ねる・・・」

 

セツナのアドバイスを受けて、キリトとコハルは徐々に安定した飛行をするようになった。

 

「おぉ・・・これはいいな!」

 

「そうですね。空を飛ぶことなんて、一生できないと思っていたのに、こうやって飛べるなんて・・・感動的です!」

 

「うんうん、あたしも分かるよその気持ち」

 

二人の感想を聞いて、リーファは嬉しそうに頷いた。

その後はリーファとセツナを先頭に《スイルベーン》に向かって飛行した。

二人共初心者であるキリトとコハルのことを考慮し、速度をあまり出さないで飛行していた。

 

「もっとスピード出してもいいぜ」

 

「私も構いませんよ」

 

そんな二人の気づかいを察したキリトとコハルが、二人の横に並んで挑発するように言う。

 

「ほほう。これは負けていられないねセツナ君」

 

「フッ、そうだな。先に行っている」

 

セツナは軽く笑うと、キュイイイインと羽音を立てながら猛スピードで加速し始めた。

 

「は、速い!」

 

コハルは閃光のような速さであっという間に先へ行ったセツナを見て驚く。

それに対して、キリトは口元を更に曲げて笑みを浮かべた。

 

「負けてられないな」

 

そう言うと、キリトもまた加速し、セツナの後を追う。

途中一緒に飛んでたユイが耐え切れずキリトの胸ポケットに飛び込んだが、キリトはセツナに追いついた。

自身の横に並んだキリトを見て、セツナは少しだけ驚いた顔をした。

 

「凄いな。この飛行速度についていける奴はシルフどころかALOでも中々いないのに・・・」

 

「へへっ、飛んでたらつい楽しくなってな」

 

そう笑うキリトの横で、同じく速度を上げて追いかけてきたリーファと、その隣で顔が引き攣っているコハルが並ぶ。

 

「その気持ち分かるわ。あたしとセツナ君もよくこんな風に思いっ切りスピードを出して飛ぶからね。コハルは・・・ついてこれてるね」

 

「な、なんとか・・・!」

 

体に来る圧迫感と心理的な恐怖に何とか耐えながら飛行するコハル。

四人共最高速度で飛んでいると、シルフ領のシンボルである《風の塔》が見えてきた。

 

「あれが俺たちシルフ領のホーム《スイルベーン》だ。あの塔の根元に着地する!」

 

セツナが大きな声でキリトとコハルに告げると、二人はうんと頷いた。

すると、リーファがこんな質問をキリトとコハルにしてきた。

 

「ところでさ、二人はランディングのやり方って知ってる?」

 

その問いに対して、二人は一度顔を見合わせ、ゆっくりとリーファの方に戻しながら答えた。

 

「知らないです・・・」

 

「俺もです・・・」

 

二人がそう答えた途端、リーファは冷や汗をかきながら気まずそうな顔をする。

その横でセツナが何食わぬ顔で彼女に聞く。

 

「どうするんだ?塔はもう目の前だぞ」

 

「・・・ごめん、もう遅いや。幸運を祈るね」

 

そう言い残すと、リーファは飛行してるスピードを減速させ、態勢を整えながら降下を開始した。

 

「そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「キャァァァァァァ!!」

 

キリトとコハルは悲鳴を上げながら猛スピードで塔の外壁に向かっていく。

 

「はぁー、仕方ない」

 

一連の流れを見守ってたセツナは呆れ顔をしながらも、加速して二人の方に近づく。

そして、横からコハルの体を腕に抱えると、そのまま急旋回してリーファがいる方に向けて降下し始めた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「ちょ、セツナさん!俺も助けてくれないかなぁ!?」

 

コハルを助けた一方で、自分も助けて欲しいと叫ぶキリト。

 

「・・・お前は男だろ。自分でどうにかしろ」

 

「噓ォォォォォォ!!」

 

しかし、セツナは無情にもその救助を拒否し、哀れキリトはそのまま塔の外壁に激突するのであった。

 

 

 

 

「えーと・・・大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃねえよ。危うく飛行恐怖症になるとこだった。男女差別だろコノヤロー・・・」

 

心配するコハルをよそに、キリトはセツナに恨みがましい顔を向けてきた。向けられた本人はどこ吹く風といった様子であったが。

 

「まあまあ、ヒールしてあげるから」

 

リーファが右手をキリトに向けると何か呪文のような言葉を唱えた。

すると、キリトの体が光ってHPが回復した。

 

「おぉ、凄いな。これが魔法か」

 

「綺麗ですね」

 

キリトとコハルは興味津々といった顔で言う。

 

「高位の治癒魔法はウンディーネじゃないと使えないんだけどね。でも、必須スペルだから二人も覚えた方がいいよ」

 

「へー、種族によって補正があるのか。スプリガンは何が得意なんだ?」

 

「トレジャーハント関連の魔法に幻惑魔法かな。どっちも戦闘には不向きだから不人気種族ナンバーワンなんだよね」

 

「・・・ドンマイです。キリトさん」

 

「うぅ、やっぱり下調べは大事なんだな」

 

コハルから慰めの言葉を貰い、キリトはショックを受けながらも立ち上がり、辺りを見渡す。

 

「にしても、ここが《スイルベーン》かぁ。綺麗な所だなぁ」

 

「本当ですね。とても幻想的で、本物の妖精の国に来たみたいです」

 

「でしょ。このALOで一番綺麗な街だって断言できるわ」

 

リーファは緑色に光るこの幻想的な街を誇らしげに眺めた。

その後しばらく街を歩いていると、誰かがリーファに声をかけてきた。

 

「リーファちゃーん!」

 

そう言って、手をぶんぶん振りながらリーファの下に走って来たのは、黄緑色のおかっぱ頭をした気弱な感じの少年だった。

 

「あ、レコン」

 

「そう言えばいたな」

 

レコンという名の少年に対して、リーファとセツナは同じパーティの一員にも関わらず、彼のことを忘れていたようだ。

そんな二人の心情を知りもしないレコンは、リーファに話しかける。

 

「凄いや!あれだけの数を一人で切り抜けたんだ!あ、セツナも一応無事だったんだ。ヨカッタネーサスガダネー」

 

「なんで俺だけ片言なんだ?」

 

リーファに尊敬の目を向けてくる一方で、セツナには嫉妬染みた目を向けながら片言で喋るレコンだが、二人にとってこれは日常茶飯事なので気にしない。

 

「あれ?後ろにいる人達は誰?シルフに・・・スプリガン!?」

 

レコンは二人の後ろにいるキリトとコハルに視線を向けたが、キリトがスプリガンだと気づいた瞬間、腰にあったダガーに手を掛けた。

それに気づいたリーファがセツナの時同様レコンに待ったをかける。ただし、セツナの時とは違って必死に止める様子は無かった。

 

「いいのよレコン。この人はあたしを助けてくれたから」

 

「え?」

 

腑抜けた顔をするレコンをよそに、リーファがキリトとコハルにレコンを紹介する。

 

「こいつはレコン。あたしの仲間なんだけど、君たちと出会うちょっと前にサラマンダーにやられちゃったんだ」

 

「それは災難でしたね。私はコハルです」

 

「俺はキリトだ、よろしく」

 

「あ、どうも・・・って、そうじゃなくて!そっちの女の人は同じシルフだからまだしも、こっちのスプリガンはスパイとかじゃないの!?」

 

「あたしも最初は疑ったんだけどね。でも、キリト君はスパイにしてはちょっと天然ボケが入り過ぎているしね」

 

「あ!ひでぇ!」

 

「アハハハハ・・・」

 

異議ありと言わんばかりのキリトを見て、コハルが苦笑いする。

レコンはまだキリトの事を疑っていたが、やがて咳払いして言った。

 

「シグルド達はいつもの酒場で席取っているよ。分配はそこでやろうって」

 

「あー・・・ごめん。あたしはパスするね」

 

「俺もだ。それと、こいつをシグルドに渡してくれるか。俺たちが手に入れた分、お前らにやる。お前とあいつらで分けてしまっても構わない」

 

「え?」

 

手に入れたアイテムは基本的にパーティのリーダーであるセツナが預かっているが、そんな彼がウィンドウを操作し、レコンに今日の狩りで手に入れたアイテムを転送した。

 

「リーファちゃんとセツナは来ないの?」

 

「うん、キリト君に助けてくれたお礼に一杯奢る約束をしてるから」

 

「俺はコハルのレクチャーだ。後、一応キリト(こいつ)の監視もするつもりだ」

 

リーファとセツナが理由を説明すると、レコンはキリトに警戒心を含んだ目を向けた。まるでライバルが増えたと言わんばかりに見ている。

そんな彼の視線に気づいたリーファがレコンの足を蹴ってから口を開いた。

 

「妙な勘繰りしないでよね。とりあえず、次の狩りの報せが来たらメールしておいて。まぁ、私たちのパーティのリーダーはセツナ君だから、メールするなら彼にね。それじゃあ、お疲れ様!」

 

「あ!リーファちゃん!」

 

後ろから聞こえるレコンの声を無視し、リーファはキリトの腕を引っ張ってこの場を去る。

 

「えーと、いいんでしょうか?」

 

「いつものことだ。気にする必要はない」

 

コハルが呆然としてるレコンを気にするが、セツナに言われてリーファ達の後を追うのだった。




・キリトVSセツナ
純粋な剣の腕だけなら互角ですが、セツナが本気を出していない、キリトが初期装備で且つ二刀流じゃなかったので、あのまま戦ってたら負けてたのはキリトです。

・レコン
原作でお馴染み常時リーファに付きまとうストーk――ALOのプレイヤー。相変わらずリーファに気持ち悪い程の好意を抱いているが、この世界だと彼女と親しいセツナを呪い殺さんと言わんばかりに憎んでいる。


原作ではリーファとレコンはシグルドのパーティに入ってますが、この小説では基本的にセツナをリーダーとした三人でパーティを組んでいます。また、シグルドのパーティとはあくまで合同パーティとして組んでおり、今回のように度々合同で狩りに行くこともあります。ついでに言うと、セツナはシグルドのことをあまり良く思っていないです。
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