ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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何とか4月中に投稿できました。


ep.8 世界樹を目指して

世界樹を目指して空を飛んでいるコハル達は、《イビルグランサー》という羽の生えた単眼のモンスターの群れと戦っていた。

 

「でやぁ!」

 

「フッ」

 

大剣を振り回して一撃で倒していくキリトに対して、セツナは飛行能力を活かしながら刀二本を振って着実にダメージを与えながら倒していく。

取り逃がした分はリーファとコハルが放った魔法の刃で倒された。

 

「オッケー、初めてにしてはいい腕してるじゃない」

 

「ありがとうございます。これが魔法・・・凄く楽しいです!」

 

「でしょでしょ。ハマると楽しいよね」

 

初めての魔法に心躍らせるコハルを見て、リーファも共感しながら笑う。

そこにキリトとセツナがやって来る。

 

「ナイスファイトだったぜ」

 

「そっちもね。それじゃあ、移動再開しよっか。と言いたいところだけど、そろそろ羽が限界だし、一旦地上に降りましょう」

 

ちょうど飛行時間の限界が来たので、地上に降りようと提案したリーファの言葉に賛成し、コハル達は地面に着地した。

長時間飛行したのもあって、コハルは「うーん」と腕を上げて伸びをした。見ると、キリトも同じ事をしてた。

そんな二人にリーファが声を掛ける。

 

「疲れた?」

 

「少しだけ疲れましたけど、まだ大丈夫です」

 

「俺もまだまだ行けるぜ」

 

「お、頑張るわね。だけど、空の旅はしばらくお預けよ」

 

そう言って、リーファは森の先にそびえ立つ山脈を指差す。

 

「見えるでしょ、あの山。あれが飛行限界高度より高いから、山にある長い洞窟を抜けないといけないの。シルフ領から世界樹へ向かう一番の難所らしいわ。あたしもここからは初めてなのよ。セツナ君は確か、行ったことあるんだっけ?」

 

「あぁ、前に領主含む20人程のパーティで世界樹を攻略しに行った時に。洞窟はそれなりに距離があるけど、途中で中立の鉱山都市があるんだ。前はそこで休んだ」

 

「そっか。二人は今日時間大丈夫?」

 

リーファに言われて、ウインドウを開いて時間を確認すると、今はまだ夜の7時だった。

 

「私は大丈夫です」

 

「俺も今日はまだ大丈夫かな」

 

「それならもうちょっと頑張ろう。ここで一回ローテアウトしよっか」

 

「「ローテアウト?」」

 

初めて聞く単語にコハルとキリトは首を傾げた。

 

「交代でログアウト休憩することだよ。中立地帯だと即落ちできないの。だから、代わりばんこにログアウトして、残った人が空っぽのプレイヤーを守るのよ」

 

「なるほど。それなら、先にコハルとリーファからでいいぜ。レディーファーストってことで」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

「20分後にまた会いましょう」

 

そう言い残して、コハルとリーファはログアウトした。

すると、キリトはウィンドウを操作し、何か赤い棒のような物を複数本取り出した。

 

「さてと、待っている間こいつで小腹を満たすとしますか」

 

そう言って、キリトは取り出した赤い棒を一本口に入れると、「おぉ、美味いな」と言いながら次々と口に入れた。

その様子を見て、純粋に気になったセツナがその食べ物について問う。

 

「何を食べているんだ?」

 

「雑貨屋で買い込んだやつだ。《スイルベーン》特産だってNPCが言ってたぜ」

 

「特産だと?聞いたことないが・・・」

 

「何本か買ってあるからセツナにもやるよ」

 

そう言って、キリトは赤い棒を一本セツナに渡した。

 

「(《スイルベーン》の特産品。いったいどんな味が――)っ!?ゴホッゴホッ!」

 

未知の食べ物に期待を寄せながら口に入れた瞬間、口内を刺激するような感覚が襲い掛かり、セツナは瞳孔を大きく見開いて思わず口に手を当てながら咳き込んだ。

 

「へぇー、お前もそういうリアクションするんだな」

 

その様子を見たキリトが意外そうな顔で喋った。今まであまり感情を出さなかったセツナが初めて人間らしい感情を見せたのだから。

やがて辛みが収まったセツナは、ギロっとキリトを睨んだ。

 

「そんな顔するなよ。ほら、もう一本やるからさ。さっきより辛みが少ないやつ」

 

「・・・いらない。自分の分はちゃんと用意している」

 

そう言うと、セツナもまたウィンドウを操作して、キリトが持っている物とは違う白い棒を取り出した。

 

「俺が買ったのとはまた違うやつなんだな。どんな味するんだ?」

 

キリトが純粋な疑問を述べると、セツナはそれに応えるように一本キリトに差し出した。

それを受け取ったキリトが口に入れた瞬間、彼の口内に強烈な甘さが襲い掛かった。

 

「うっ!?」

 

その甘さにキリトは先程のセツナ同様口を手に当て、咳き込みはしなかったがその場で悶絶した。

 

「ず、随分と強烈な甘さだな・・・」

 

「フンッ、あんたの舌はこいつと相性が悪いみたいだな」

 

悶絶するキリトを見つめながら呟くセツナ。

そうしている内にコハルとリーファが戻って来て、今度はキリトとセツナがログアウトした。その際、例の赤い棒をコハルとリーファも食べて、セツナのような反応をする一悶着があったが。

 

「ところでさ。あたしコハルに聞きたいことがあるんだけど」

 

キリトとセツナがログアウトし、リーファとコハルの二人(ユイもいるので正確には三人だが)だけになった時、リーファがコハルに聞いてきた。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「コハルとキリト君って・・・もしかして付き合ってるの?」

 

「ふぇ!?違いますよ!キリトさんとは前にプレイしたゲームで知り合った友達で、別にそういう関係じゃないですよ!」

 

顔を赤くしながら慌てて否定するコハル。

コハルの言葉を聞いたリーファは、何処か安堵した様子で呟いた。

 

「そっか・・・」

 

それを見て女の勘というものが働いたのか、コハルは率直な疑問をリーファにぶつけた。

 

「リーファさんって・・・もしかしてキリトさんのこと好きなんですか?」

 

「えぇ!?」

 

今度はリーファが顔を赤くする番になり、彼女は慌てて言葉を返す。

 

「ち、違うわよ!そりゃ、何回か助けてもらっているし、多少はかっこいいなと思うけど、異性として意識してるわけじゃないからね!」

 

そう言うリーファだが、否定している割にはどこか本気でないように感じられた。

 

「そうですか。でも、それはそれで良かったかもしれませんね。もしキリトさんが好きなら、リーファさんにとって辛い結果になってたかもしれませんし」

 

「え?」

 

ふとコハルが呟いた言葉に、リーファは思わず呆けてしまう。

そして、コハルの次の言葉は彼女にとってあまりにも衝撃的なものだった。

 

「キリトさんには既に付き合っている恋人がいるんです」

 

「っ!?」

 

その事実にリーファは目を見開いて固まってしまう。

 

「その人とキリトさん、前に私がやってたのと同じゲームで出会って、よくコンビを組んでたんです。それで、一緒にコンビを組んでいくうちにお互い惹かれ合って・・・」

 

「そう、なんだ・・・」

 

暗い顔をするリーファを見て、コハルが心配そうな表情で声を掛ける。

 

「えーと、リーファさん?」

 

「!? な、何?」

 

「もしかしてリーファさん、本当に――」

 

「ちょっと驚いただけよ。さっきも言ったけど、キリト君のことは異性として意識してるわけじゃないから・・・」

 

そう言うリーファだったが、何処か悲哀に満ちた顔をしているのをコハルは感じた。

二人の間に神妙な空気が流れる中、沈黙を破ったのはポケットの中で会話を聞いていたユイだった。

 

「リーファさん」

 

「うわっ!あなたご主人様がいなくても動けるの!?」

 

キリトのポケットからヒョコっと出てきたユイにリーファが驚く中、ユイは真剣な表情で告げる。

 

「パパには確かにママがいます。でも、それと同時に多くの人がパパのことを大切に思っています。だから、パパのことを嫌いにならないでください」

 

「ユイちゃん・・・ありがとう。あたしもキリト君のことは大切な仲間だと思ってるよ。コハルもありがとう。キリト君のこと少し知れて良かったわ」

 

そう言って、先程とは違う純粋な笑顔を見せるリーファを見て、コハルとユイも笑顔になった。

しかし、次のユイの言葉によって、その笑顔が赤面に変わる。

 

「そう言えば、さっき聞きそびれましたけど、リーファさんはセツナさんのこと、好きなんですか?」

 

「うえっ!?」

 

「あ!私も気になります。普段から一緒にいますけど、セツナさんはリーファさんのパートナーなんですか?」

 

「パートナー・・・」

 

その言葉にリーファは一瞬たじろいでしまうが、すぐさま首を横に振って言葉を返した。

 

「いや、別にパートナーっていうほどの関係じゃないし・・・ただ、一緒にいると安心するって言うか・・・ドキドキワクワクする感じかな」

 

「何がドキドキワクワクするんだ?」

 

「うわぁ!」

 

いつの間にかログインしたのか、セツナが顔を上げてきて、リーファは思わず後ろに飛び上がった。

それと同時にキリトも顔を上げて、激しく動揺してるリーファを見て疑問符を浮かべた。

 

「ただいま・・・何かあったの?」

 

「おかえりなさいパパ。今、リーファさんとお話をしてました。セツナさんのこと――」

 

「な、なんでもないから!それより、さっさと出発しましょう」

 

慌てながらもリーファは立ち上がって背中に羽を出す。

セツナ達も後に続こうと羽を出そうとした瞬間、セツナが咄嗟に体を後ろに振り向いて叫んだ。

 

「!? 誰だ!」

 

叫ぶと同時に腰にあるダガーを振り向いた方向に投げると、コウモリのような魔物に刺さった。コウモリはそのまま消滅し、ダガーが地面に落ちる。

突然の事にキリトとコハルは驚く中、セツナとリーファは深刻な顔をしていた。

 

「今のって・・・」

 

「恐らくトレーサーだ」

 

セツナがそう言うと、キリトがトレーサーについて問う。

 

「トレーサーって?」

 

「追跡魔法よ。大概はさっきの小っちゃい使い魔の姿で対象の位置を教えるのよ。普通はこういう森の中だと見つけづらいんだけど・・・よく気づいたねセツナ君」

 

「身に覚えのある視線だったから咄嗟に体が動いたが、さっきの奴の色からしてあれはサラマンダーがよく使う使い魔だ」

 

「――ってことは、この森のどこかにサラマンダーが・・・!?」

 

「いるかもしれないってことね」

 

リーファの呟きにより、場は一気に緊張感が高まる。

いち早く口を開いたのはセツナだ。

 

「先を急ごう。サラマンダーが近くにいる可能性がある以上、長居はできない」

 

セツナの言葉に三人は頷き、そのまま羽を出して空へ飛び上がった。

 

 

 

 

その頃、セツナ達がいた森の中に一つの集団が身を潜めていた。

彼らは全員赤い鎧や装備を身に付けており、その中で赤いローブに包まれたプレイヤーが自身の魔法が解除されたのを仲間に報告していた。

 

「魔法が解除された。どうやら、見つかったみたいです」

 

その報告を聞いて、一部のプレイヤーが動揺するも、リーダーと思わしきプレイヤーが冷静になって口を開く。

 

「落ち着け。情報通りなら、奴らの向かう先は分かっている」

 

リーダーは周りの仲間たちに指示を出す。

 

「追いかけるぞ。相手はたったの4人だが、念を入れて迎え撃つぞ。何せあの中には、例の剣士がいるからな」

 

「例の剣士・・・ひょっとして」

 

仲間の言葉に対して、リーダーは重々しく答えた。

 

「あぁ、ユージーンさんと互角の強さを持つと言われているシルフ最強の剣士セツナ・・・!」

 

 

 

 

そして、セツナ達は山の中にある洞窟に辿り着いた。

洞窟の名前は《ルグルー回廊》。灯りが1つもなく、入ったら暗い道が長く続いている。

セツナ達はスプリガン特有の魔法をキリトに使ってもらい、視界が見える状態で難なく進んでいた。

 

「セアーザ、ウラ、ノ、ノート?」

 

歩きながら魔法の呪文(スペルワード)を唱えるキリトだが、片言になってしまい上手く発動されない。

 

「機械的の暗記するんじゃなくて、力の言葉の意味を覚えて魔法の効果と関連を付けて暗記するのよ」

 

リーファがそうアドバイスすると、キリトはガクっとうな垂れた。

 

「まさか、ゲームの中で英語の勉強みたいな真似することになるとは・・・」

 

「言っとくけど、上級スペルなんて20ワードくらいあるんだからね」

 

「うへー、俺もうピュアファイターでいいよ・・・」

 

「キリトさん、こういう勉強は苦手なんですね」

 

落ち込むキリトを見て、コハルは苦笑いする。

 

「あ、メッセージ入った。ごめん、ちょっと待って」

 

リーファにメッセージが届いたようで、ウインドウを開いて確認する。

 

「またレコンからか。えーと・・・『やっぱり思った通りだった。気をつけて、s』、何これ?エス・・・さ、し、す・・・?」

 

「何かの暗号か?それとも間違えて送信したのか?」

 

「多分間違えたんじゃない?あいつ、ドジなところあるし」

 

メッセージの真意を考えるセツナとリーファ。

その時、キリトの胸ポケットからユイが顔を出してキリトに伝えた。

 

「パパ、接近する反応があります」

 

「モンスターか?」

 

「いいえ、プレイヤーです。それも20人!」

 

「20人!?」

 

「どうしてそんなに!?」

 

狩りどころか今からボスを攻略しに行くレベルの大規模な人数の接近に驚くキリトとコハル。

その横でセツナが接近するプレイヤーの正体に気づいた。

 

「まさかサラマンダーか!トレーサーを潰したはずなのに何故ここが分かったんだ?」

 

「どうするセツナ君?隠密魔法でやり過ごすのは・・・」

 

「駄目だ。連中が来ているということは、俺たちがここにいるのを向こうは既に気づいているはずだ。この場はやり過ごせても、鉱山都市の手前で待ち伏せされるだけだ」

 

リーファの提案を一蹴すると、セツナは走り出した。

 

「走るぞ!先に鉱山都市に入ってしまえば、向こうはこっちを攻撃することができない!」

 

そう言われて、リーファ達も慌てて後を追う。

 

「まさかサラマンダーがここまで追ってくるとはな!」

 

「本当しつこい!」

 

「サラマンダーのしつこさは種族一だからな(しかし、何故俺たちがこの空洞にいることがバレた?トレーサーを潰したのはここに入る前。トレーサーは相手を追跡するだけで、相手の会話まで盗聴することができない。だから、奴らに俺たちの行き先なんて分かるはずがない。それとも、こちらの目的地がこの洞窟・・・いや、世界樹であることが初めから分かっていた(・・・・・・・・・・)のか?)」

 

悪態付くキリトとコハルに向かって喋りながらセツナは思案する。

暗い洞窟の中を駆け抜けていくと青黒い大きな地底湖が広がっている所へと出た。

 

「見て!湖の奥に街があります!」

 

コハルが湖の奥にある城門を指差して言う。その手前には石造りの橋が架けられていた。

その橋にセツナ達は足を踏み、奥にある門まで進んでいく。後ろを見ると赤い光が複数見えたが、距離は大分離れていた。

 

「どうやら逃げられそうだな」

 

「油断して落っこちないでよ」

 

橋の上を走りながらキリトとリーファが軽く言葉を交わす。

半分程渡り切り、門までもう少しだと思われたその時、背後から2つの光が高速で通過し、前方の門の前にある地面に命中した。

すると、橋の表面から巨大な岩壁がせり上がってきて、入口の門を塞いだ。

 

「!? ウォォォォォォ!!」

 

それを見たキリトは、スピードを上げてジャンプすると、背負っている大剣を取り出し、壁に目がけて振り下ろした。

 

キンッ!

 

「うおっ!」

 

だが、大きな衝撃音と共に弾き返されて背中から橋に叩きつけられる。

 

「無駄よ」

 

「もっと早く言ってくれよ・・・」

 

「君がせっかちすぎるんだよ」

 

そう言って、リーファは呆れた視線をキリトに向ける。

セツナが壁を見上げながら説明する。

 

「これは土魔法の障壁だ。普通の武器や魔法じゃ破壊されない。威力の高い攻撃魔法を多く撃ち込んだら破壊できるはずだ。だが・・・」

 

後ろに振り向くと、いつの間にかサラマンダーの集団が立ちふさがっていた。

苦い顔をするリーファ達を尻目に、セツナは冷静な態度で呟いた。

 

「どうやら、一筋縄ではいかないみたいだな」




・セツナは甘党
クールに見えるセツナの意外な一面。流石に銀魂の銀髪侍やハイ魂に登場する高校生侍のように、ご飯に大量の餡子をかけて食べる程ではありませんが。

・サラマンダーの数
原作やアニメでは12人ですが、この小説では20人になっています。原作のままだと、このメンバーなら楽に倒せます。


というわけで、正体こそ知られませんでしたが、キリトには既に恋人(アスナ)がいることを知ってしまったリーファでした。原作よりも早い失恋ですが、この後の展開を考えると、ここで知った方が精神的にマシだったのかもしれませんね。
次回は《ルグルー回廊》の戦いです。セツナの実力の一部が明らかになります。
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