ソードアート・オンライン IF(アイエフ)   作:イノウエ・ミウ

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2カ月も遅れてしまいましたが、どうにか投稿できました。
今回の戦闘シーンでセツナの戦闘スタイルが完全に披露されます。そのお披露目となるお相手は前回の最後に登場したあの男です。


ep.11 《セブンソード》VS《狂狼(ヴォルフガング)

「サクヤ!」

 

地上に降り立ったセツナは、呆然としてたシルフの領主サクヤに声を掛ける。

 

「セツナ、それにリーファも。どうしてここに?」

 

「お前がサラマンダーに狙われていると聞いて、急いでここに駆けつけてきたんだ」

 

「せっちゃん!久しぶり!」

 

「うわっ!あ、アリシャか・・・」

 

困惑するサクヤに説明すると、横からケットシーの領主アリシャ・ルーがセツナに抱きついてきた。

 

「会談には来ないってサクヤちゃんから聞いてたけど来てくれたんだネ!」

 

「あ、あぁ、お前たちが危ないって聞いたから・・・」

 

「嬉しい!心配してくれたんだネ!ところで、そろそろケットシーに転生する気はない?今なら三食おやつ付きだヨ――」

 

顔を若干赤らめてしどろもどろになるセツナに抱きつきながら彼をケットシーに勧誘するアリシャ。

そこに険しい表情をしたサクヤがアリシャを引き剥がす。

 

「おいルー。何度も言っているがセツナは私の大切な部下だ。そう簡単に渡すはずないだろう」

 

「えー、お堅いサクヤちゃんのところよりウチに来た方が絶対いいと思うヨ」

 

「誰がお堅いだ。種族のエースを引き抜かれそうになって黙って見てる領主がいるか」

 

「相変わらずだなお前ら・・・」

 

自分の意向を完全に無視して奪い合おうとするサクヤとアリシャを見守るセツナ。いつものことなので気にもしていない。

 

「むぅ・・・」

 

そして、その様子をリーファが不満気な顔で見守るのもいつも通りの光景であった。

 

「それよりサクヤ。ここで何があったんだ?会談を襲うはずのサラマンダーは全員撤退。ユージーン将軍を倒したあのインプはいったい・・・」

 

気を取り直して、セツナは崖の下にいるザントの方に顔を向けながらサクヤに何が起きたのか聞くと、彼女は深刻な顔をしながら語り出した。

 

「あれは戦いというより、一方的な蹂躙だった・・・」

 

 

 

 

数分前、サクヤ率いるシルフとアリシャ率いるケットシーは同盟に向けた会談を行っていた。

そこにユージーン率いるサラマンダーの大部隊が現れ、瞬く間にサクヤ達を囲った。

応戦しようにも相手は多数でこちらは少数。圧倒的な戦力差があり、状況は絶望的かと思われた。

その時、睨み合っていた両者の間に一人の男が現れた。

 

『おうおう、ここは随分と大所帯だな。なんか祭りでもやんのか?』

 

突如として現れた灰色の髪をした目つきの悪いインプに、場にいる者たちは困惑した。

すかさずユージーンが前に出て、彼に話しかける。

 

『インプが何故ここにいるのか知らんが、早急に立ち去った方がいい。貴様も命は惜しいだろう』

 

サクヤ達に構えていた火矢をザントに向けさせるよう周りのサラマンダー達に指示しながらそう警告するユージーンだったが、ザントは不快そうに眉をひそめながら言った。

 

『あぁ?なんで俺がテメェらの命令でどかなきゃならねぇんだ』

 

その傲慢な態度が引き金となり、ユージーンの号令の基、サラマンダーは一斉に火矢を放ち、ザントに攻撃を仕掛けてきた。

迫り来る火矢を前にザントを笑みを浮かべていた。

 

『チュートリアルがてらに、さっきそこら辺の雑魚を相手してたが、飛行の方はまだイマイチでよぉ。いい実験台になってもらうぜ!』

 

そう言いながら、ザントは紫の羽を出して空を飛び、降り注ぐ火矢の雨を躱していく。ちなみに、彼が持っている両手剣はその辺の雑魚(野良のプレイヤー)から奪い取った武器だ。

そして、火矢の雨が収まった瞬間、両手剣を構えながら猛スピードで接近し、火矢を放ったサラマンダーの内一人の首を斬り落とした。

そこから先は蹂躙だった。接近してくるランス隊の腹に剣を刺したら迫り来る火矢を刺したサラマンダーを盾にして防いだり、飛行時間をを節約するために斬り倒したサラマンダーを踏み台にしてジャンプしながら次のサラマンダーを倒してまた踏み台にしたりと、常識を超える戦い方で60人もの大軍をザントは次々と葬っていった。

そして、30人程倒したところで満を決して大将のユージーンが前に出て、ザントに攻撃を仕掛けてきた。

最初はユージーンの愛剣《魔剣グラム》のスキルに驚いていたザントは、彼と互角の戦いを繰り広げていたが・・・

 

『その剣の性能とテメェの動きと癖は分かった。もう十分だ。くたばれ』

 

冷たく言い放った瞬間、今まで拮抗してたのが嘘だったかのように、ザントは巧みな剣技と体術でユージーンを斬り刻んでいき、最後は両手剣をユージーンの腹に刺して、そのまま地面に叩きつけた。

自分たちの大将が倒されてしまい、生き残ったサラマンダー達はザントから逃げるように退散。その光景をセツナ達が見つけて今に至る。

 

「そんなことが起きたのか・・・」

 

サクヤから一連の流れを聞いたセツナは、崖の下にいるザントに視線を向ける。

ユージーンを葬った彼は、持っていた大剣を背中にしまうと、つまらなそうな顔をしながら呟いた。

 

「あーあ、どいつもこいつも話になんねぇな。戦いの'た'の字も知らねぇド素人ばっかだ。最近のVRMMOってのはヌルすぎてつまんねぇぜ・・・お前らもそう思わねぇか?」

 

そう言いながら、視線をこちらの方に向けるザントを見て、サクヤ達は一気に警戒する。

そんな中、セツナが前に出て、彼に話しかける。

 

「一応礼を言えばいいのか?偶然とはいえ、あんたがサラマンダーの連中からサクヤ達を助けてくれたことには変わりないからな」

 

「あー、気にすんな。元々眼中になかったからよ」

 

そう言うザントだが、どこか不満気な様子だった。

 

「けどなぁ、どうもこっちも不完全燃焼気味でよぉ。さっきの奴はALO最強つーから戦ってみたが、とんだ期待外れだったぜ。お前は俺を楽しませてくれんのか?」

 

「楽しませれるかは分からないが、俺はユージーン将軍のように簡単にやられてやるつもりはない」

 

そう言って、セツナは冷たく、けれども燃え上がるような目でザントを見つめると、彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「おもしれぇ。氷みてぇな面してる割には意外と熱い目してるじゃねぇか。少なくともさっきの奴よりかは楽しめそうだ」

 

そう笑いながら、ザントは空を飛ぶと両手剣を構えた。どうやら完全に戦う気のようだ。

その意図を察したセツナは、サクヤに決闘の許可をもらうべく彼女に声を掛ける。

 

「サクヤ、奴とサシで戦う許可を」

 

「許す。だが、相手はかなりの強敵だぞ」

 

「分かっている。ユージーン将軍を倒した相手だ。絶対に油断はしない」

 

そう言うと、セツナは背中の《聖剣デュランダル》を引き抜いて、ゆっくりと歩き出した。

その後ろ姿をリーファが心配そうな顔で見つめていた。

 

「セツナ君・・・」

 

「心配するなリーファ。あいつはシルフが誇るナンバーワンの剣士だ」

 

「そうそう、せっちゃんは強いんだから。あんな狼みたいなインプなんかに負けないヨ」

 

そんな彼女をサクヤとアリシャがフォローした。

一方、彼らのやり取りを近くで見ていたキリトとコハルは微妙な顔をしていた。

 

「・・・あの凶暴な顔に超が付くほどの戦闘狂な性格。やっぱり、あの人って私たちの知ってるザントさん?」

 

「いや、もしかしたら同姓同名の可能性も。けど、あんな性格の奴、あいつ以外にいるのかな・・・」

 

そんな会話をしていたが、セツナには聞こえることなく、彼は羽を広げて空に飛ぶと、ザントの正面に立った。

両者武器を構えながら互いの動きを読み合う。

しばらくして、セツナは《聖剣デュランダル》を振り上げて上段の構えになると、ザントも合わせて両手剣を腰の位置まで持ち上げて水平にし、少し膝を曲げた姿勢になる。

周囲に緊張感が走り、ピリピリとした重苦しい空気が漂う中――

 

「行くぞ!」

 

先に動いたのはセツナだった。

真っ向から突撃してくるセツナにザントは冷静に見極めて両手剣を振るう。

 

「遅ぇ!!」

 

鋭い怒号と共に迫り来る両手剣に、セツナは体を仰け反らせた。

両手剣の刃がセツナの頬を掠った瞬間、彼は《聖剣デュランダル》を振り下ろす。

ザントは咄嗟に後ろに飛んだが、《聖剣デュランダル》が生み出した風の刃が彼の体に斬り傷をつける。

 

「とんでもねぇ威力だ。ここまで肌にピリピリ来やがるとはなぁ!」

 

そう笑いながらザントは両手剣を大上段から振り下ろす。

セツナはすぐに反応して後ろに下がろうとしたが、予想以上に攻撃の速度が速くて回避できなかったので仕方なく剣で受け止めた。

 

「ウッ!?(なんて鋭く重い一撃だ・・・!)」

 

あまりの威力に思わず呻き声が漏れてしまうセツナ。

剣を受け止めた際の衝撃波が二人の激しく吹き荒れていた。

彼は何とか耐えて弾くと、体勢が崩れて隙が出来たザントを斬ろうと《聖剣デュランダル》を振り上げる。

 

「甘ぇんだよ!」

 

だが、ザントは腕を上げたことでがら空きになったセツナの腹部に蹴りを入れる。

 

「!?」

 

常人であれば食らってたであろう蹴りをセツナは瞬時に手首を回して《聖剣デュランダル》で防いでみせた。

その技術にザントも感心する。

 

「どうやら、武器頼りの雑魚じゃねぇみたいだな」

 

「これでもシルフ最強を名乗らせてもらっているからな」

 

「ハッ!そりゃ良かったぜ。強ぇ奴ほど斬りがいがあるってもんだ!」

 

そう言って、一度離れてから再度セツナに攻撃を仕掛けるザント。

お互い高速で移動しては止まって剣を交え、それを何度も繰り返しながら、セツナとザントは激闘を繰り広げる。

その光景に周囲で観戦していた一同は度肝を抜かされていた。

 

「凄い・・・」

 

「こんな激しい戦い、見たことないわ」

 

「ザントは勿論だが、セツナもかなり強いな」

 

「あれは本当にインプなのか?まるでサラマンダーの如き闘気を感じるぞ・・・」

 

「あのインプ凄過ぎ!せっちゃんと互角に戦ってるなんて信じられないヨ!?」

 

圧倒されるコハルとリーファ、冷静に見守るキリト、驚愕するサクヤとアリシャ。

それぞれの感情を抱きながら戦いを見守る中、セツナは剣を交えながら戦いの現状について考えていた。

 

「(デュランダルの攻撃範囲が見切られているな。このままこいつで戦い続けても、向こうに隙を見つけられて反撃を食らってしまうのも時間の問題だ。なら――)」

 

セツナは《聖剣デュランダル》を背中に仕舞うと、二本の刀を鞘から抜いて、ザントに振り下ろす。

 

「今度は二刀流か!いいぜ、受けてやるよ!」

 

ザントは嬉々とした顔でそれを迎え撃つ。

《聖剣デュランダル》と違い、威力は落ちたが小回りが利くようになったことで素早く剣を振ることが出来るようになった。

だが、ザントはその連撃を防ぎ、反撃しようと両手剣を振るが、セツナもまた二本の刀で防いでいく。

そして、何度目か剣を交えた瞬間、セツナは腕に力を入れて、ザントが持つ両手剣ごと彼の腕を上に上げると、彼の腹部目掛けて回し蹴りを入れる。

しかし、セツナの蹴りは空振りに終わり、その隙を逃さずザントが両手剣を振り上げようと瞬間だった。

 

「!?」

 

突如脇腹に剣で斬られたかのような感覚に見舞われ、ザントは思わず後ろに下がる。

己の脇腹を見ると、そこには確かに斬られた跡がエフェクトとして残っていた。

 

「斬られた!?けど、ただの蹴りでどうやって・・・」

 

「見て!セツナ君の足の裏!」

 

キリトが疑問を浮かべる横でコハルがある物に気づいて指を指した。

彼女が指した先には、セツナの靴の裏仕込んでいたナイフの刃が太陽光に照らされて光り輝いていた。

 

「あれは仕込み刀か!なるほど、昨日俺はあれに斬られたんだな」

 

昨日自身が食らった技の仕組みに納得していると、横からリーファが説明する。

 

「セツナ君はあんな風にいくつかの武器を隠しているの。戦況を常に見極めて相手の虚を突くために、それに適した武器を使いこなしているのよ。メインの刀二本、腰にしまってるダガー二本、左右の靴に仕込んでるナイフ、そして背中の《聖剣デュランダル》・・・合計で七本の刃で戦うスタイル《セブンソード》。それがセツナ君の戦闘スタイル。彼が最強と言われてる理由の一つよ」

 

彼女から説明を聞いたキリトとコハルは感心していた。

セツナの戦い方はどんな時でも臨機応変に動ける柔軟な発想力とその状況判断能力を活かせる技術と反射神経が必要となる。少なくともセツナは、それができる程の力を持ち合わせているのだ。

彼の他にそんな戦い方ができる人間がいるとすれば、二人が知るところただ一人しかいない。

二人にとって特別な存在である少年。そんな彼の面影をセツナから感じていた。

 

「凄いですね。全部刃とはいえ、使っている武器の種類はそれぞれ違っているはずなのに」

 

「そうだな。七つの武器で戦うのはかなりの技術がいるはずだ。それを使いこなしてあんな多彩な戦い方ができるんだ。セツナは間違いなくこのゲームだと上位のプレイヤーだ。ただ――」

 

キリトがそう言った直後、セツナのキックと靴に仕込んだ刀がザントの脇腹を刺そうとした。

 

「――それでもザントの方が強い」

 

しかし、ザントは己の左腕と左膝で刀の峰を挟んで止めてみせた。

 

「!?」

 

「こんな小細工が二回も通じる程俺は弱くねぇんだよ!」

 

その遠吠えと共に、カウンターの蹴りが腹部に入る。

あまりにも突然のことに防御が出来なかったセツナは、その蹴りをモロに食らってしまう。

 

「がっ!!」

 

後ろに飛ばされながらも必死に体勢を整えるセツナ。

そんな彼に追い打ちをかけるようにザントは両手剣を頭上に掲げて襲ってきた。

 

「おらおら!もっと俺を楽しませろ!」

 

お互い高速で動きながら激しい剣戟を繰り広げるが、徐々にセツナの劣勢が続いていく。

 

「どうした!曲芸はもう終わりかぁ!?」

 

「くっ!」

 

動きを大分読まれてしまい、セツナは防御するのがやっとで反撃することもままならない状態に追い込まれていく。

それでもセツナは勝つことを諦めていなかった。戦い続けながら勝つための方法を考えていた。

 

「(こっちの動きが読まれている!恐らく、ユージーン将軍も同じように動きを読まれて負けてしまった。このままだと俺も負ける・・・)」

 

セツナの頭に過る敗北の二文字。それは彼にとって最も忌むべき道でもあった。

 

「(嫌だ・・・!俺は負ける訳にはいかないんだ!あの人を・・・兄さんを超えるまでは!)」

 

自身にとって最も遠い存在でもある兄。その兄に届く日が来るまで、セツナは誰にも負ける訳にはいかない。

心を奮い立たせながら剣戟を繰り広げていくと、遂にザントの一閃がセツナの肩に入ってしまう。

その瞬間、後ろに下がって距離を取ったセツナは大きな声でリーファに向かって叫んだ。

 

「リーファ!俺にあの魔法を掛けろ!」

 

「え!?でも、あの魔法は――」

 

「早くやれ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

リーファは戸惑いながらも、セツナに言われた通り詠唱を始める。

 

「呑気にお喋りしてる暇あんのかよ!」

 

戦いの最中外野に声を掛けたことが気に食わなかったのか、ザントは怒りの表情でセツナに襲いかかる。

セツナはその怒涛の攻撃を必死に凌いでいくが、徐々に押されてしまい、ザントの両手剣の一撃がセツナが持っていた二本の刀を上に跳ね飛ばした。

 

「あばよ!曲芸師!」

 

その隙を逃さず、決着を付けるべく、ザントが両手剣をセツナに振り下ろそうとしたその時、セツナの姿が消えた。

 

「っ!どこ行きやがった――ガハッ!?」

 

目の前から消えたセツナを探すため辺りを見渡すザントだが、突如自身の背中が斬られた。

何事かと思い視線を向けると、そこには先程まで消えていたセツナが腰から引き抜いた二本のダガーを持ちながらこちらを見下ろしていた。

 

ブロロロロロロ!

 

しかし、先程と違って背中に広げている緑の羽は激しく震えており、羽音が大きく響いている。

 

「い、今、セツナさんが消えましたよね!」

 

「何が起きたんだ?」

 

突如変化したセツナを見て、コハルとキリトが驚く中、隣で詠唱を終えたリーファが安堵した顔で口を開いた。

 

「間に合ったようね」

 

「リーファ、彼に何をしたんだ?」

 

先程まで魔法の詠唱をしていたリーファにキリトが問い掛ける。

 

「さっきセツナ君に掛けた魔法は飛行速度を上げる魔法よ。通常の3倍くらいの速度で飛べるけど、ほとんどの人はそんな殺人的なスピード制御できないし、体に激しいGが掛かるせいで、飛んでいる間はダメージを食らい続ける不人気魔法よ。あたしもあのスピードを制御するのは難しいけど、セツナ君はこのALOで唯一、この魔法を使いこなせるプレイヤーよ」

 

リーファが誇らしそうな顔でセツナを見る。

困惑した顔でこちらを見つめるザントに対して、セツナは堂々と話す。

 

「悪いが、時間を掛けるとこちらの体が持たないからな。すぐに終わらせる!」

 

そう言った瞬間、セツナは残像を生み出す程の速度で移動して、ザントの右足を斬り落とした。

 

「なっ!?」

 

気づかない内に右足が落とされて驚愕の表情を浮かべるザントに対して、セツナは容赦なく次々と斬っていく。

 

「クソッ!なんだこの速さは!?目で追いつけねぇ!」

 

焦りながらザントも反撃しようとセツナが近づいたタイミングで両手剣を振り下ろすが、どれも残像に当たってセツナ本人に剣が届くことはない。

自身のHPが減っていくのを気にもせず、セツナは高速移動しながらダガーでザントのHPを削っていく。

 

「これで終わりだ!」

 

ザントの残りHPが少なくなったタイミングで、セツナは決着をつけるため二本のダガーを構えながら接近し、ザントに振り下ろす。

 

「舐めるな!」

 

しかし、ザントは驚異的な速度で反応し、振り下ろされた二本のダガーに両手剣をぶつける。

ダガーと両手剣が火花を散らし、鍔迫り合いの状態となる。

次の瞬間、セツナは加速させると同時に手首を僅かに捻らせて、手に持つダガーごと両手剣を上に跳ね上げた。

自身の武器を手放してしまい、ザントは思わず上を見上げてしまう。その隙を逃さず、セツナは背中の《聖剣デュランダル》に手を掛ける。

ザントがこちらに顔を戻すと、既にセツナは《聖剣デュランダル》を引き抜いて――

 

(どう)!」

 

横一線の一太刀がザントの体を腹から真っ二つに斬り裂いた。

上半身のみとなったザントは驚愕ではなく満足そうに笑みを浮かべた。

 

「参ったぜ。俺の負けだ」

 

そんな呟きが聞こえた直後、彼の体は消滅して紫色の残り火が残った。

それを見届けたセツナは《聖剣デュランダル》を背中にしまう。その後ろでは上に跳んだ両手剣と二本のダガーが下に落ちて、地面に突き刺さるのであった。




・サクヤ
シルフの領主。古参プレイヤーの一人であり、セツナがリーファの他にシルフ同士で話せる数少ない相手。
サクヤ自身はセツナのことを気に入っており、自身の命令に対して彼が独断で行動するのを許している。

・アリシャ・ルー
ケットシーの領主。サクヤとは旧知の仲であり、今作でも世界樹攻略のため彼女が率いるシルフと同盟を結ぶ。
セツナとも知り合いで、サクヤ同様彼のことを気に入っており、スキンシップ多めの行動に出ることも。

・《セブンソード》
七本の刃を些細に使いながら戦う。これがセツナの戦闘スタイルです。そこ!エクシアかよとか言わない!

・飛行速度強化魔法
セツナの奥の手。この魔法をリーファから掛けてもらうことで、通常の3倍ものスピードで動き、相手を一気に追い詰める。しかし、とんでもないスピードで高速移動するので体が持たず、動く度に体力が削れてしまう諸刃の刃。トランザムではない
詠唱もかなり長い。一応セツナ自身もこの魔法を使うことは可能だが、詠唱しながらだと戦闘に集中できなくなるため大抵はリーファに掛けてもらっている。


通りすがりのザントという天災。こちらから喧嘩を売らなければ基本巻き込まれませんが、向こうが強い奴と判定したら襲われる理不尽な存在です。
ちなみに、ザントは今日初めてログインし、数時間散歩&自身を襲ってきたプレイヤーを返り討ちにして装備を強奪した後、たまたま出会ったユージーン将軍とサラマンダーの大軍を倒し、彼と同じくらいの実力者であるセツナとギリギリの戦いを繰り広げて負けました(即興で調達した装備なので万全の状態じゃないです)・・・うん、普通に化け物。
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