暫くの間は元の職場を辞めることなく、続けることになりそうです……
なんだかんだで遅れましたが、3週間ぶりに投稿したいと思います。
文月トレジャーハンティング大会当日。
明久達は開会式の会場である、学園の体育館でヘリオス指揮の下で構成されたチーム別に集まっていた。
体育館に入ると、かなりの人数が集まっており、その中には優子や霧島、姫路やグレイの姿もあった。
ちなみに明久達のチーム分けはと言うと
・チーム明久「吉井明久・島田葉月・テティス」
・チームヘリオス「ヘリオス・佐藤美穂・清水美春」
・チームアトラス「アトラス・島田美波・土屋康太」
・チームシャルナク「シャルナク・木下秀吉・坂本雄二」
となっていた。
美春の方は明久を介して交渉しようとしたのだが、最初は「汚らわしい豚どもとチームを組む気などないですわ!」と言って頑なに拒否していたのだが、美波が明久達と同じチームに参加すると言ったら手の平を返して参加すると言い出していた(当然ヘリオスの嘘だがwww)
佐藤は「学力が高く、それでいて大会の日に予定がなかった人物」と言う条件でヘリオスが探した際に運よく見つけることが出来た。
せっかく参加するのなら景品の一つ「図書カード2万円分」が手に入ったら譲ってもらおうとも思ったらしいが……
秀吉・雄二・土屋・美波は明久・テティス・アトラス・シャルナクの4人で大会前日にどうにか頼み込んで参加してもらえた。
「皆さんおはようございます。 本日はお日柄もよく……」
開会式が始まり、主宰の文月市の市長が挨拶を始めた……
『オイオイ、いつまで話し込んでんだ、あのジジイ!』
『モデルF、まだ1分も経っていないじゃないの。 もう少し我慢しなさいよ!』
モデルFは長ったらしい市長の言葉を聞いていられないとでも言わんばかりに聞き流し……
「お姉さまと同じチームになれなかったのは残念ですが、美春も……」
「ちょっと美春! 分かったから、……」
美波は頬ずりしながら抱き付いてくる美春をどうにかして抑え……
土屋はそんな二人を見て、妄想の後、大量の鼻血を出して気絶。 秀吉と雄二が輸血パックを持って一時、開会式から離脱して輸血をする羽目に陥っていた。
葉月と佐藤はそんなカオスな光景を見て唖然、残った明久達はいつもの光景と適当に無視して、あいさつを聞いていたり、眠ったりしている。
とても長い開会式のあいさつがようやく終わり、今回の大会のルールが学園長から説明される。
「さて、広告でも告知した通りだが、トレジャーハンティングでは文月市全域を使って、お宝探しをやってもらうよ」
学園長が説明したルールは
1.説明の後に渡す地図に従って、市内各地に散らばるお宝を探し出してもらう
2.地図と共に隠し場所を知る事が出来る問題集が各チームに配布される為、その問題を解いてから行くことになる
3.問題を解くヒントが学園の教室中にちりばめられているので、それを見つけながら最終的にお宝を発見しても良い
4.万が一、ヒントがあっても解けない場合は闇雲に探すのも良しとする。
5.今回のトレジャーハンティング大会において試験召喚獣によるバトルを疑似体験できるように設定された腕輪もチームメンバー全員に配布される為、その召喚獣を使ってのバトルでお宝を奪う事もありとする。
6.又、両チームの合意があれば、お宝を交換するのもありとする。(脅迫や暴力等で無理矢理合意させるのは禁止とし、そのようなことがあった場合、腕輪から電流が流れて加害者チームは即失格となる)
7.文月学園生の召喚獣の点数は、最近受けたテストの点数に準拠するが、外来の参加者の召喚獣には200点の持ち点が与えられる。
8.副賞は希望制となっており、『シークレットアイテム』と呼ばれている物を発見したチームに与えられるものとする。
9.主立った景品は各景品ごとに3枠分あるが、ゲットできるのは1チーム1枠のみとする。
……となっていた。
ルール説明の後、各チームの元に文月市の地図と、今回の景品であるお宝が隠された場所のヒントである問題集や暗号が記載された紙、試験召喚獣を呼び出せる腕輪の3つが配られた。
「じゃあ、堅っ苦しい挨拶は終わりにしてそろそろ始めようじゃないか? 『文月市トレジャーハンティング大会』開始!」
そして、学園長は高らかに開始宣言をした後、そのまま壇上から降りて行った。
「さて、見せてもらおうかね。 バカの一念を……」
ルール説明を終え、自室に戻った学園長は不敵な笑みを見せながら学園中の監視カメラの映像を確認していた。
「学園長、お待たせして申し訳ありません」
「高橋先生が遅れるとは珍しいさね?」
そこにやってきたのは、学園長の補佐の為に準備をしていた高橋先生であった。
「そう言えば、問題集の殆どが暗号解読の問題でしたが、大丈夫なんですか?」
「これが、学園内だけの話なら入れたりはしないんだが、今回は一般の方々や子供までいるんだからね。 こうじゃないとこっちの生徒に有利過ぎてつまらなくなってしまうから、ある程度公平性を保つためにはこれが一番なんだよ」
話をしながらモニターを見ていると、他校を含めた学生チームの殆どは暗号が解けずに頭を抱えていた。
そう、問題集なんて言うから学生たちの殆どは授業で習うような問題の方だと勘違いしてしまったようだが、実際の問題集は「なぞなぞ」や「暗号解読」のような「知恵」や「頭の回転の速さ」が重要視される問題だとは思ってもいなかったようである。
「でも学園長、パッと見でしたが、本当に難儀な暗号だと……」
高橋先生は学園長の判断に思う所があるのか、反対するかのような意見ばかりを述べるが……
「ヨシ、ヘリオス、コレデ良イゾ」
『お? とても速い…… 見事な手際だったな』
「ボクもあと2問で終わるよ」
『こっちも順調ね。』
「え?」
テティスとシャルナクの二人が、大量の問題集を解き明かしていた映像を見て、驚きを隠せなかった。
「いくら何でも速すぎじゃないですか? 実質7分もかかっていなかったですよ?」
「まあ、暗号は暗号だからね。 解ける奴には解けるんさね…… だから問題は
「どういう事ですか?」
問題が暗号解読以外にもあるのか? そんな疑問を持ちながら高橋先生は首をかしげて考え込んでしまう。
その一方で優子チームと姫路チームは
「「(まだ大丈夫! トレジャーハンティングはまだ始まったばかり…… シャルナクとテティス君のチームに先行されるくらいならどうという事は無いわ!)」」
「(いくら何でも速すぎます! 私も急いで解いていますが、それでもおかしいです! それにヘリオスさんとアトラスさんの方は全然動いていません…… まさか!?)」
優子チームはヘリオス達の戦術に気が付かないのか油断していた。
だが、姫路はヘリオスの策に気が付いたようだった。
「ああ、明久とアトラスは皆に集合するように伝えろ。 二人の解答から場所を割り出し次第、4チームで虱潰しに景品を手に入れに行くぞ!」
「「応!」」
明久とアトラスが、開会式の後にトイレに行ったり、飲み物を買いに行ったり、出血多量で離脱したりと一時的にいなくなっていた仲間を呼びに行こうとしたのだが……
「ちょっと待てよ!」
『おい! あの問題集を解いたのはシャルナクとテティスだけだろ!?』
「何で、問題を解いていないチームの人も一緒に行こうとしているのか説明してもらえるかしら?」
ヘリオスの指示と明久・アトラスの行動に納得がいかない、グレイ・優子・モデルAが二人の足を止め、3人の行動に反論してくる。
「木下さん、何を言っているんですか? この大会の主な目的は問題を解く事ではなくお宝探しですよ?」
「それに木下とそこの坊主、ババァは別にチーム同士で組むことを禁止していないぞ」
「「『はああああああ!?』」」
3人の反論に対し、佐藤と先に戻ってきて話を聞いていた雄二の二人で論破しようとしているのだが、なかなか納得してくれない。
そうこうしている間に、飲み物を買いに行ってきていた美波・美春と、出血多量から復活してきた土屋と秀吉が明久・アトラスと共に戻ってきた。
その一方で学園長室では……
「うむ、正解さね」
学園長が頷き、続けて説明しだす。
「ハンティングでは協力できる奴が強いんだよ。 景品の数が絞られるとはいえ、これ以降のイベントをクリアするためには1チームだけではちと厳しいからねぇ」
世の中そんなに甘くないとでも言わんばかりに、学園長が悪どい笑みを見せる。
一体、どんな罠を仕込んでいるのかがとても気になってくる。
「最近没収されたゲームを見てみるとグループ内で同じゲームが何本も没収されていてね。 調べてみたら協力プレイが前提のゲームばかりだったんだよ」
「学園長、没収したものとはいえ、生徒の持ち物を勝手に漁らないでください」
「まあ、固い事言うもんじゃないさね。 ……どうやら、いまどきのゲームは協力プレイが基本らしいからねぇ。 そう言った要素を大会に取り入れられないかと思って、こんな内容にしてみるよう打診したら……」
「だとしたら、今回の大会は明久君たちに非常に向いていますね。 一芸に特化した個性派が集まって連合を組んでいるのですから大抵のイベントはクリアしてしまうでしょう。」
そこまで狙ってやったわけではないだろうが、今回で連合を組むことに成功した明久達は非常に有利な立場にあるという事になる。
画面の向こうでは、優子とグレイが折れて、悔しそうな顔をしながらしぶしぶ下がっていってしまった。
場所を戻して体育館……
明久達が一度体育館から出ようとした時だった。
「あれ? きれいなお姉さんたちはついて来ないですか?」
「ユウコたちも早く来なよ。 そのまま置いていくよ?」
テティスと葉月の二人が急に足を止め、優子のチームと姫路のチームメンバーと手を組もうと誘いをかけている。
「おいテティス! さすがに敵と手を組むのはやり過ぎだ!」
「そうよ! 葉月も変な事言わないで早く行くわよ!」
もちろん、あまりにも常識外れな行動にアトラスと美波が止めに入ったのだが、テティスと葉月は話を全然聞いていない。
「些細なる問題…… 大方、テティスの事だ。 地雷プレイヤーとわざと組むことによる混沌こそが協力プレイの醍醐味だなんて思っているのかもしれん」
「地雷プレイヤーは、はた迷惑なだけだからね! 味方を爆弾で爆殺したりとか!」
『剣使いを募集しているのに銃使いの装備でチームに入り込もうとして「これでも倒せますよwww」とか言って部屋を荒らすなんて言うのもあったな』
「味方を巻き込む攻撃を多用し、注意されたにも関わらずその攻撃を使って味方に迷惑をかけると言う行為もありますね」
「いや、佐藤さんも何でオンラインゲームの事情に詳しいの!? (モデルFも話に乗らないで!)」
そんな二人の後ろで明久がヘリオスと佐藤にツッコミを入れているが、そんな中でテティスと葉月の勧誘は続いている。
どうもそれぞれのチーム内で揉めているようだったが、1分程経った後、ようやく両チームの答えが出た。
「……ありがとうテティス、恩に着る。 でも代わりにプレミアムチケットが出たら譲ってほしい。」
「まあ、代表がそこまで言うならもういいけど…… (モデルAはどうする?)」
『グレイと話し合って、今回は優子と一緒にいることにしたよ。 向こうにはモデルXの適合者もいるんだし、だったら今オイラの護衛が必要なのって優子の方だろ?』
「ボクもみんなと一緒がいいと思うよ? もしかしたらプレミアムチケットの場所も分かるかもしれないし」
テティスの話を聞いて霧島が行くからと言う理由で優子たちのチームは勧誘に乗ったのに対して……
「はっ! 誰が敵の誘いなんかに乗るかよ!」
「葉月ちゃん、こういう問題は自力で解いてこそですよ?」
「健気に誘ってきてくれたのはありがたいけど、二人がこんな調子だし今回はパスさせてもらうわ」
姫路達のチームは葉月の勧誘をきっぱりと断っていた。
「これは性格の差が出てきたさね。」
「それに姫路さんのチーム内でも差が出てきていますよ。」
「あの坊主は見るからに意地だけで反発しているようだが、姫路の方は
「あの青い服をきた女性は一緒に行きたがっていたようですが……」
「どうやら、あの女は二人に合わせて行動する気かい? 見たところこの街に来たのは最近のようだし、何か世話になっているのか、姫路にあまり強く言えないのもあるのかもしれないさね」
「何と言いますか、今回の大会はお互いの性格が出てきますね。」
「表向きには協力プレイで和気あいあいと出来るようにって言っているけど。 本当はそれが狙いさね」
「(あ、暇だからって生徒たちが悶えている姿を見て楽しもうとしていますね)」
完全に下種な笑顔を見せている学園長に軽く引いている高橋先生は、そんな学園長にあきれつつもその目線をモニター画面に戻して観戦することにした。
その一方でヘリオス連合は
「げっ! 翔子が付いてくんのかよ…… っていてててててててて! おい、腕の関節を極めるんじゃねぇ!」
「……雄二、照れてる?」
「間接極められて照れる男がいるか!」
「……でも恋人同士は腕を組む」
「この体制が恋人同士に見えるのか!?」
夫婦? 同士で痴話喧嘩をしている霧島と雄二を放っておいて、最初の目的地を目指す。
「ねえヘリオス。 一体どこに向かっているのかしら?」
「文月学園の図書館だ。 そこで高額景品の一つ「図書カード2万円分」を獲得しに行く」
ここで明久達は首をかしげる。 ヘリオスが1番に欲しがっていたのは商店街の特別割引券だったはずである。
なぜここで、図書カードを取りに行くのかが分からなかった
「あれ? でもヘリオスさんが欲しがっていたのは割引券の方じゃ……」
「些細なる問題…… 割引券の方も確かに欲しいものだが、場所がいかんせん遠すぎる。 先にこちらから終わらせながら全景品の在処を各チームに教えねばならん」
「まだ、教えていなかったんですの! ヘリオスは鈍牛か何かですか!」
「清水! 私でもあのわずかな時間で予定にないチームに情報を与えるのは無理だ!」
『あの女、豚野郎以外にも暴言が出てきたな!』
モデルHが美春の暴言が増えていることにツッコミを入れている間に皆は図書館前の扉についていた。
姫路チームside
「なるほど、こういう事でしたか! やっと解けました!」
『あの頭のいい姫路さんでも解けるのに時間がかかる問題って一体どれだけ難解な暗号まで用意されていたんだろう?』
「本当に頭が痛いわね…… もう当分暗号とか勉強なんてする気がしないわ……」
「でも、まだ大して時間は経っていません。 ヘリオスさん達に多少の遅れは取りましたが、今ならすぐに追いつけます!」
エールが頭を抱え、瑞樹がすくっと立ち上がりヘリオス達を追いかけようとしている中……
「瑞樹姉ちゃん、もう無理ー!」
グレイはもうほとんど問題が解けていなかった。
それもそのはず、グレイはマスターアルバートのバックアップとして作られたため、彼の知識の一部はあるものの、イレギュラーが起こした騒ぎのせいで強制的に目覚めさせられて、しかも活動してから1年と少ししか動いていないのである。
その知識を知恵として生かすだけの経験が全く足りていないのも仕方ない事であった。
「グレイ君、今は一緒にヘリオスさん達を追いかけてみましょう?」
「午後からはヴァンとアッシュの二人と合流して町を回るっていう予定だし、その時にでもゆっくり教えてもらいましょう?」
「分かったよ。 モデルAの様子も気になるし……」
仲間の言う事だと素直に聞いてくれるグレイの手を瑞樹が取り、一緒に図書室を目指す。
その一方で先に図書室に到着したヘリオス達は……
姫路チームside out
一方でヘリオス達の様子はカオスと言ってもよかった。
扉を開けて入っていた先で待っていた物は学園の図書委員達。
何でも高額な景品の場合、一気に狙われてすぐになくなってしまう可能性があった為、それを未然に防ぐためにそれ相応の試練が用意されているとのことだったのだが……
「それで…… 今やっているのが図書委員の全員に本の内容に関係するテーマの問題を出して、図書委員全員が答えられなければ突破なんていう試練なんだけど……」
「姉上、頼むからわしらから目を背けんでくれ…… 正直、悲しくなってくるのじゃ……」
「何で? 何かを賭けに出してからじゃないと挑むことが出来ないからって、そこで合格できなかったら合格できるまで賭けに出したものは大会が終わるまで没収になる訳! そして何でヘリオスと葉月ちゃんと私を除いた全員が衣服を掛けている訳!?」
「そう言うルールなんだから仕方がないだろう! 文句を言うな」
まさか、暗号を解いた先にまた試練があるなんて思ってもいなかった皆は(ヘリオスと雄二は気が付いていたが)この試練にかなり苦戦していた。
今大会に向けて必死になって覚えたのだろう。 図書委員長を含めた7人はこれまでに出したチーム全員の問題に見事に答え切って見せたのである……
「それにしても、健全にお金は賭けないルールなっていたはずなのに何でこんなにも不健全な絵面が出来上がるのかが分からないですね。」
そう言った佐藤さんが見た先では、財布と下着(女子には急遽用意したバスタオルが渡された)だけのチームメンバーたちの姿だった。
「ソレ以前ニ服マデ賭ケル意味ガアッタノカ?」
「やっぱり、美春ちゃんと吉井君が自信満々に自分の衣服まで賭けに出したのがきっかけじゃないかな?」
シャルナクと工藤が見た先には、物凄い邪気を放ちながら膝を抱えて向こうを向いている明久と美春の姿があった。
「……だが、明久の問題には驚いた。 『流〇に剣〇』の主人公の名前は? そんな問題、作品さえ知っていれば誰にでもわかる」
「バカなお兄ちゃんは正真正銘のバカです……」
葉月ちゃんにまで言われ、周りの言葉がチクチクと明久のハートに突き刺さる。
「そこへ行くと、清水殿は貫禄があったのじゃ」
「原作版『とあ〇魔〇の禁〇〇録』全巻の本文の文字数の合計は? だからね!」
「あの問題のせいで、さっきまで自信満々にしていた図書委員の奴らが、しばらく唖然としながら黙り込んでいたからな」
アトラスの発言に全員が「うんうん」とつい頷いてしまう。
「けっきょくは美春も正解を知らなくて反則負けになったんだけどね」
しかし、これ以上は本当にまずいとチームメンバーの殆どが頭を抱えて悩み始める。
「……もう賭けに出せるものは殆どない」
「だったら最終手段としてパンツまで賭けるか?」
「あの変態が欲情するからやめて!」
「えっ! お姉さまがとうとうストリップを……」
「しないから!!」
「……雄二、浮気は許さない」
「おい翔子、やめっ…… ギャァァァァァァァ!」
雄二のとんでもないアイデアに先程まで落ち込んでいた美春が神速の速さで反応し、美波が両腕の関節を極めながら押さえつける。
そして霧島の目つぶしによって雄二はもだえ苦しみ地面でのたうち回っている。
「って言うかアトラス、あんた衣服を賭ける前にその彫り物みたいなやつから賭けに出してもよかったんじゃないの?」
「ふざけるな! これが無くなったら私のキャラが薄れるだろう!」
「「元軍人っていう社会のニーズから大きく離れているだけで十分キャラが濃いよ!」」
「そうは言うが、お前らだってまだ賭けに出せるものはあったはずだろ!」
そう言ってアトラスが指差した先には……
「貴様ら、本当にそれが人としての尊厳以上に大切か!」
婚姻届をタオルの裏に隠そうとしている霧島に、隠密(盗撮)道具を適当な場所に隠そうとしている土屋、演劇用のメイクセットを抱えたままバスタオルを巻いている秀吉に加え、大量の苦無と手裏剣を特製のホルダーの中に持ち込んでいるシャルナクの姿があった。
「まあ、代表たちが持っている者を賭けに出せばまだチャンスはあるのですが……」
「そうじゃのう…… 現実問題7人以上の大量の本を読み漁った図書委員会達お裏をかく方法などあるのじゃろうか?」
「ヒデヨシの言う通り、1・2回のまぐれならあるかもしれないけど……」
佐藤達がどうにか突破できないかと悩んでいる中、こっそりと皆から離れて行こうとしている人物の影があった。
「島田さん? 一体そんな恰好でどこに行く気なのかしら?」
「それよりもボクも島田さんが手に持っている物を見ちゃったなー。 何を隠したのか教えてくれないかな?」
優子と愛子の二人は何かの本を持ってどこかに隠れようとしていた美波を捕まえて、彼女が持っていた本の内容を確認しだす。
「ちょっ! それだけはだめだってば! 読みかけなんだから本当にこの本だけ賭けにだせないのよ!!」
「(読みかけの本? ……そうか! この手があったわ!)」
「どうしたの優子? 島田さんが持っている漫画に何かあった?」
愛子の言葉が聞こえていないのか、美波がまだ賭けに出していなかった借本を見て何か考え出した後、その本をひったくるように一瞬で図書委員の前に持っていってしまう。
「ちょっといいかしら? 好きな本から出題するようにルールには明記していたけど、その本は此方で用意した物でもいいのかしら?」
「ちょっと木下! あんた何する気……」
「島田さん大丈夫よ。 もし出せないならすぐに返すし、そうでなくても100%勝つ自信があるから」
何を考えているのか最初は分からなかった美波と愛子だったが、それを無視したまま優子は図書委員の人たちと話を続ける。
「はい、大丈夫ですよ。 相手の用意したカードでゲームをしようとしないのはギャンブルの基本ですしね」
「しかし姉上よ? 今から本屋に行ってもほかの景品には間に合わん気がするぞ?」
「それに関しては全然問題ないわよ。 だってたまたま
「ちょっと木下!」
「そして、次のチャレンジに
「「「ええええええええええええええええええ!!」」」
この言葉にヘリオスを除く全員が驚いた。 土屋に至っては、例のごとく出血多量で気絶し、ヘリオスに連れられて外に追い出されていたほどだ。
「1回勝負?」
優子の突然の提案に図書委員の皆も判断に困り始めている。
「後…… 皆の服も返して!」
「元からそのつもりですから!!」
むしろ、図書カードよりもそっちの方が重要な気がするが…… そんな優子の提案を図書委員は飲んだようである。 そのまま許可を出した後、優子から問題を聞き出してきた。
「アタシが出すテーマはこの一冊…… 『UQホ〇ダー!』の第1巻よ!!」
「そうですか…… それで?」
「『赤〇健の漫画作品。『週刊少年マガジン』2013年39号から現在まで連載中で、1・2巻地点で約50万部を突破している』その作品からですね?」
「「すげぇ嫌味な言い方だなおい!」」
もう自信を取り戻しているのか、言い方がかなり嫌味なものになっていることにヤジが飛んでくるが、優子は動じずに話を聞き続ける。
「もうあきらめた方がいいんじゃないですか?」
「83ページ目で主人公が目指した場所の名前かしら? 104ページで主人公の友達になった少女の名前かしら? ひょっとして、雪姫のお風呂を覗き?……をしようとした主人公が反撃を受けた際に彼女が放った氷の槍の数かしら?」
本当に読んだことがあるのか、得意げになってしたり顔になる図書委員の面々。
そんな彼らを前に優子が出した問題とは……
「この本は
「「!?」」
「あの?
予想外の問題を出した優子の言葉の意味がよくわからないのか、葉月が佐藤に問いかけてきた。
「
「はい、やっぱり面白い本は読みたい人が多いですし、それに合わせて作らないといけないです」
「刷数と言う物はその本が何回目に作られたものなのかを表す数字なの」
「ふぇぇぇぇ……」
「本の奥付に
「坂本さん、勝手に私のセリフを取らないでください!」
雄二に勝手にセリフを取られた佐藤は憤慨して、半泣き状態でポカポカと雄二の胸板を叩いてきた。
「本によって異なる……? 書かれている数字が……? ってことはつまり……」
「島田さん、そう言う事よ。 彼らがこの本のストーリーを知っていようと関係無いの。」
「この人たちがこの図書館の本の奥付まで全部覚えていたとしても、他人の本の奥付まで覚えるなんて不可能と言う訳だね?」
優子が策を説明している中、図書委員達は必死になって考えていた。
「(島田さんは読みかけって言っていたわよね?)」
「(なら最近買った本じゃないのか?)」
「(でも少し色あせていたわよ?)」
「(一巻目の発売日は去年の12月だったはずだ)」
「(でも、帯がないよ? 発売してから結構立っているんじゃ?)」
「(じゃあ……)」
「……3刷かしら?」
無茶な問題に捨て鉢にならず、必死になって推理して回答した図書委員たちだった。
「こんな引っ掛け問題に捨て鉢にならないで、解答した貴方達には敬意すら覚えるけど…… で、島田さんの答えは?」
優子が美波に正解を問い質す。
先程急に取られた本を取り返し、その本の刷数を笑顔で応える。
「すみません、この本初版なんです。 ウチが4日前からアキから借りてきたものですし!」
ちなみに、明久はヘリオスに「ロックマンとしての戦いの参考になるかもしれないから」と言ってうまい事本代を手にした後、発売日当日に買った物だった。
「『尽く書を信ずれば則ち書無きに如かず』……という事ですね」
負けたにも関わらず、なぜか彼らの表情は笑顔であった。
そして、机の中から封筒のようなものを1枚と今まで賭けに出されたみんなの服が優子に渡された。
「チーム霧島、合格です!」
「「やったぁー!!」」
合格した優子チームの3人は仮設の更衣室(明久と美春のせいで設置する羽目になった)で着替えた後、ヘリオス達の間を悠々と歩き、そのまま図書室を出て行った。
そして……
優子side
堂々と図書室から出てきた3人は少し離れた所でヘリオス達を待っていたのだが、そこには彼女たちが予想もしていない客が来ていた。
「あら? 木下さんはもう景品を見つけたのですか?」
「……姫路?」
「見つけたというか、何と言ったら良いのかな……」
愛子が、姫路チームの3人に図書室で起こったことを説明した。
「エール、何か本を持っていないか?」
「そんなの都合よく持っている訳ないでしょ?」
『もしかしら、そう言う運に頼ったような攻略法以外にも何かあるんじゃないかな?』
「それもそうだよねー? ならキミ達はどうする気かな? 今からでも本屋に行って本でも買いに行く?」
今から本を買ってから図書室の試練に挑もうとしたとしても、他の人たちに取られている可能性が高いことを考えると良い手ではない。
グレイとエールもこの図書室での試練を諦めて、適当な場所にでも行かないかと瑞樹に提案しようとした時だった。
「二人とも、心配ありません」
「「『え?』」」
「だって、そんな本を持っていなくてもこの試練にはちゃんとした突破口が事前に用意されていますから」
グレイとエールはともかく、優子たちまで気付いていないようで、例外的に翔子だけは彼女の考えていることに気が付いたようだった。
それと同時に今度はヘリオスが皆と共に、図書室から出て来た。
そして、佐藤の手には優子たちがもらったものと同じ、図書カードが入った封筒が握られている。
「どうやら、私の予想は正解だったようですね…… 木下さん、ありがとうございます」
そう言う姫路はそのまま図書室に向かう。
それに少し遅れて、エールとグレイは姫路について行く形でそのまま図書室に入って行った。
優子side end
今の職場に残る事になった為に、あと1・2話ほど投稿した後くらいに繁忙期が来て仕事が忙しくなる為に投稿が難しくなります。
それでも、話だけはポンポンと思いつくので、仕事が落ち着いたら投稿を再開したいと思います。