第7問
明治時代の日本に西洋の文明が入ってきて、制度や習慣が大きく変化した現象のことを指す言葉は何か答えなさい。
木下優子の答え
『文明開化』
教師のコメント
当時はさらに、「西洋のものなら何でもよい」という、考えが出ていました。
近代化=西欧化そのものは明治時代に於いて一貫した課題でありましたが、文明開化という言葉は、一般に明治初期に、世相風俗がこれまでの封建社会から大きく変わった時期を指して使われる。
吉井明久の答え
『御一新(ごいっしん)』
教師のコメント
……吉井君の解答だと思っただけで×をつけそうになった先生を許してください。
今回の吉井君の回答は『文明開化』の別称ですので特別に正解にしたいと思います。
シャルナクの答え
『御乱心』
教師のコメント
それは今のあなたの心境ですか?
霧島翔子の答え
『文明退化』
教師のコメント
学年主席の貴方がこんな間違いをなさるなんて珍しいですね。
残念ですが不正解とさせて……
坂本雄二の答え
『俺が悪かった、翔子~!!!』
教師のコメント
深くは問いません。
大会が終わり、もう少しで夕日が沈む頃だろうか……
明久達は途中から合流したヴァンとアッシュを含めた全員で霧島の屋敷に案内されていた。
当初は明久の家に押し込んで彼らを魔女裁判にかける予定だったのだが、合流時にヴァンとアッシュの二人が『明久君の家はそんなに人数が入るほどの余裕があるのか?』 ……と言い出してきたのだ。
それも当然だろう。 いくら明久の住むマンションが一人暮らしをするには広すぎるぐらいだとは言っても、流石に20人以上の人間が入れるような広さがあるはずがなかった。
仮に無理やり詰めたとしても長時間の質疑応答なんて出来るはずもなく、どうしようかとみんなに相談したら『……なら私の家に案内する、みんなが入れるだけの大広間がある』と霧島が言ってくれたのだ。
そして今はちょうど広間のような場所に案内され、メイドや執事と思われる人物たちが大型スクリーンや来客用の紅茶などを用意してくれているところだ。
因みに美波はまだプロメテの影に怯え続けており、気分転換も兼ねて美春と一緒にお風呂を借りる事になった。
彼女の貞操が無事であることを祈りたい……
「それで、三人とも何か言うことは?」
アッシュが若干怒り気味で言い放つ。
「「『すみませんでした!』」」
事情があったとは言え、合流が遅れたのも事実の為、エール達3人とモデルXはすぐにヴァンとアッシュに謝った。
ヴァンの方は笑って許してくれていたが、その分アッシュが今後は気をつけるようにとキツく説教をしてどうにか事なきを得ることが出来た。
『でも、二人がすぐに電話を入れてくれて助かったよ。 今、ようやくモデルHの適合者たちを捕まえて詳しい話を聞くところだったから』
「ええ、なかなか集合場所に来ないものだから何かあったのかと思って電話をしてみたらまさかプロメテのやつと戦っていたなんて思いもしなかったわ」
なぜアッシュがプロメテの事を知っているのだろうかと疑問に思うだろうが、未来世界でアッシュは正規ハンターの仲間と共にプロメテとライブメタルの取り合いになり、一度戦った事があったのだ。
しかし、結果は惨敗。 ギルドのメンバーの全員が半殺しにされ(リーダーの撤退指示がなかったら全滅もありえたらしい)、ライブメタルも別ギルドの手柄として横取りされてしまったのである。(正確には、横取りしたギルドでライセンスを登録したグレイが、持っていた為)
「でも本当に良かったよ、集合場所だった学校の中で瑞樹さんを待っていても全然こなかった時にはどうしようかと……」
ヴァンも安心しきっていたからか、アッシュと二人で学園の中で待っていた時の事を語りだす……
ヴァン・アッシュside
「……来ないわね」
「一体何をやっているんだろ、エールとグレイ君もいるから忘れているっていうことはないだろうけど……」
体調が完治したヴァンと付き添いのアッシュは全く来ない瑞希達を学園で待ち続けていたのだが、学園の教師からの避難勧告に従って学園の教室に避難させられていた。
アッシュが不服そうにしていたが、その場で騒いても仕方がないとヴァンが説得したこともあって大人しく避難していたのだが……
「それ以前に全然人が来ないわね、いくらなんでも少な過ぎるわよ」
「避難勧告が行き渡っていないのかも知れない、さっき鬼ごっこがどうとか私財から賞金が出るとか放送していたけど……」
「「…………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」
プロメテとパンドラが賞金首になった放送のことを思い出した二人は適当な武器と薬箱を5秒で用意して神速の速さで外に出ようとする。
校門前にたどり着いた時だった……
「せ…戦死…者は……ほ~しゅ~う~~!!」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「何あれ?」
「オレに聞かれても答えられると思うか?」
50人以上の人間を一人で運んでいく鉄人とすれ違ってしまった。
人間離れしているんじゃないかと思いたくなる光景に、開いた口がふさがらなくなってしまう二人。
「「……って、唖然としている場合じゃない!!」」
気を取り直して、急いで外に出る二人。
出る寸前、学園の教師が止めようとしていたようだが、それに意を介さずに二人は走り出す。
そして近くのコンビニに立ち寄り、公衆電話で瑞希から事前に聞いていた携帯の電話番号にコールし続ける。
ヴァン・アッシュside end
「まさかプロメテとパンドラまでこの時代に飛んでいるなんて思ってもいなかったわ、グレイからは海底火山で助けられなかったって聞いていたから、てっきり死んでしまっていると思っていたわ」
「エール…… 君は……」
「ヴァン、そんなんじゃないわよ。 わたしは……」
「そこまでして自分でトドメを刺したかったのかい!」
「『それは違うわよ(からね)!?』」
ヴァンの頭が少し壊れ気味な気がするエールだった。
……が、ちょうどそのタイミングで説明の準備が出来たようで明久達がスクリーンの前に出て、前口上を述べようとする。
「カンペも無しに大丈夫か?」
「大丈夫、ちゃんと頭に入ってるよ」
「「『『……不安が拭えないんだがな……』』」」
「モデルZ達もひどいよ、僕だってやるときにはやるんだからね!」
無用な心配をするヘリオス達をよそに、明久は自信満々な態度でテティスに持たせておいたマイクを受け取った。
そして、全ての視線が明久に注がれる中、大きく息を吸って……
「えー、本日はお日柄もよく(ゴスッ)痛い!!」
開始早々でヘリオスのゲンコツで遮られてしまった。
「何するんだよヘリオス!?」
「愚かなる前口上!! 貴様は結婚式の友人代表スピーチでもする気か!?」
「え、何かまずかった?」
『むしろ違和感だらけだったぞ!』
『まずい部分しかなかったし、明久の事だからこのまま続けさせてもグダグダになるだけに決まっているでしょう!?』
「というかこんな早いタイミングで私の手を煩わせるな! 例えば、これまでに見た演説などを参考にするなりしてその出だしを何とかしろ!」
「あ、うん、分かった。 今度こそうまくやって見せるよ」
どうにかヘリオスのアドバイスを参考にした明久は最初から前口上をやり直そうとする……
「えー……失敬。 本日……進行を……つと…務めさせて頂きます、モデルZの適合者にしてヘリオス達の……ヘリオス達で……その……ヘリオス達を束ねる者! 剣術の…あのアレ?…僕はその……何でもな(ゴスッ)痛あっ!! 今度はシャルナク!?」
「何デモ無イト言ウ事ハ無イダロウガ! 最早何ヲ言ッテイイノカガ分カラナクナッテイルダロ!」
「こんなことなら事前に内容を紙か何かに書かせてチェックするべきだったんじゃない?」
「うう…… テティスもひどいよ……」
「吉井君、プレリー…… 私の上司から聞いたんだけど『こういう時はガチガチにならないで肩の力を抜いて、頭に浮かんだフレーズを、そのまま言う感じでやってみるといい』ってアドバイスをもらったことがあるわ。
やっぱり最初は慣れないものよ、多少ぎこちなくても言いたいことが纏まっていればきちんと伝わるものだから諦めずに頑張りなさい」
「あ、はい、分かりました。 エールさんありがとう」
エールが緊張をほぐすように肩を軽く叩き、優しくアドバイスをしてくれる。
その優しさに感動までした明久は、どうにか頭に浮かんだフレーズを整理し、再度進行役を挑戦しようとする。
「えー、本日はお日柄もよく(ガン・ガン・ガン!)イテテテッ!!」
今度はシャルナクとヘリオスだけでなくテティスまで混ざって合計3発ものゲンコツが叩き込まれた。
「過大なる疑問!? なぜ同じことを繰り返すのだ!?」
「だって最初に浮かんだフレーズがこれだったから……」
『本当にどんな頭をしているんだお前は!?』
「モデルZの言う通りだぞ、それ以前にスピーチの出だしから離れろ! とりあえずそれで始めればなんでも一応は上手くと行くと思っているのか!?」
「…………………………」
「ソウナノカ!? オイ、ソウナノカ明久!?」
「いや……だって、最近読んだ本にそう書いてあったし……」
『どんな本だ!? 明久殿の読む本などせいぜい漫画か保健体育の参考書ぐらいなものでござろう!?』
「失礼だなモデルP! 最近は教科書も少しと……あとは新メニュー考案用の料理のレシピ本や、緊急時の心肺蘇生の手引き法なんかも読んでいるよ!」
「さっきからやめろ生々しい! つーかそんなデタラメな内容が書いてある本は捨てろ! なんの役にも立っていないだろ!」
あまりにも話が進まないために、雄二達が明久達の話に入ってくる。
「……雄二、言い過ぎ。 吉井、その本は捨てなくていい」
「やめろ翔子、別にこいつを庇わんでも…………待てよ? なんでお前がこのタイミングで口を出す?」
「……私があげた本だから」
一体、どこで接点を持ったのだろうか? どんな本をあげたのか気になるが、今は彼女を尋問する時だろうと頭を切り替える。
「あ、霧島さん。 あの本はきちんと読んでいるからね。 あと2日もあれば全部覚えられると思う」
「……ありがとう。 そのときは吉井、よろしく」
「おい明久! お前が翔子にもらった本ってのは何なんだ!?」
「えっと確か…… 『結婚式におけるスピーチの基本』っていう……」
「なんでそんな本の内容を説明会の前口上に使うのかとか言いたい事はたくさんあるが、まずはその本のタイトルに違和感を覚えろ!」
「またまたぁ、そんなに照れる必要なんてないと思うんだけどねぇ?」
「照れてねえよテティス! むしろ怖いんだよこのガキ!」
「事情は分かったから安心するがいい坂本…… 私が責任を持って完璧なスピーチをできるように……」
「しなくていい! 確実に俺の人生が破滅する!!」
「……それにテティスにも頼んでいるから、吉井と一緒にやってくれるように」
「余計なことをしてんじゃねえ! なんでテティスにまで……」
天然漫才に拍車が掛かっていくその時だった……
(……ドン!!!)
話を中断させるためにテーブルを叩く音が聞こえた場所に全員が振り向く。
「いつになったら話が始まるかな? いい加減、そろそろ始めない?」
その席に座っていた人物は工藤であった。
表情は笑顔だが、明らかに激怒している。
「……すまん。 ……では明久が進行役では話が進まない為、今度は私が進行役を担当させてもらう」
((普段おおらかな女が激怒したら滅茶苦茶怖ぇぇぇぇ~……))
あまりにも怖すぎる工藤の怒気にみんなビビりまくりである。
いや、シャルナクだけは涼しげな態度で軽く流している……
結局、大まかな進行役はヘリオスが担当することになり、明久は雄二たちのグループの所に戻っていった。
「実際、木下姉には何本も取られているからな、どんな質問でも一人一問ずつだけだが質問に答えよう」
「一人一問? いくらなんでも少なすぎるんじゃないかしら?」
ヘリオスの言葉に納得がいかないのか、優子は抗議しようとモデルAを構えるが……
「これでもかなり多めにしたつもりだ、こうでもしなければ貴様らはどうでも良さそうなことまで聞き出してきて収集が付かなくなる可能性があるからな」
そう言ってヘリオスが目を向けた先には土屋・工藤・葉月の三人。
自覚があるのか、3人は口笛を吹きながら目を逸らしてごまかそうとしている。
「……ヘリオス、ごめんなさい」
言いたいことが分かった優子は普通にヘリオスに謝りすぐに座り直した。
実質、十回以上も質問が許されるのだから、無駄なく質問をすればむしろ余るくらいだろう。
「それじゃあ、聞きたいことを問うがいい。 私が知る限りでならどんな質問でも誠意を持って答えて見せよう」
「その前に質問!」
「なんだ明久?」
「なんで不利な立場なのにそんな上から目線でいられるんですか?」
「「いきなりの爆弾発言!?」」
「おい明久!いきなり質問権を無駄遣いするんじゃねえ!?」
「………………明久、家に帰ったら私の部屋に来い」
「「ヘリオスが怒った!?」」
完全に担任の教師に呼び出しを喰らって怒られる生徒みたいな感じになっている。
「では、貴様らは何が聞きたい? 私達の正体についてか? 明久と優子がロックマンになった経緯か? ロックマンという存在についてか? 貴様らの足りない知恵を限界まで使って問うがいい。 私は決して誤魔化したりはしない」
今のヘリオスの言葉に質問をしようとした皆がキレそうになるが、どうにか落ち着きを取り戻し、ヘリオスから情報を聞き出そうとする。
「まずはあまり関係のなさそうな俺から質問をするぞ、『お前らは一体何者だ? お前らの正体は一体何なんだ?』」
最初に質問をしたのは雄二だった。
「二回問いだしたが同じ意味だと思って一つにまとめる事にする」
「私達の正体は『ライブメタル』と言う特別な力を持つ金属の力を引き出す『ロックマン』と呼ばれている存在で、未来世界からやってきた『未来人』と言った程度の……」
「「ツッコミどころが今の地点で3箇所あったんだけど!?」」
「なるほど、ツッコミ所が足りなかったか…… 今後はツッコミ所を増やせる様に精進を……」
「こんなくだらない事に精進なんてしなくていい! つーか俺が聞いているのはそんな冗談じゃなくて、お前らが何者かってことなんだよ!?」
「何を言っている? 私は誠意を持って本当の事を答えたつもりだぞ?」
実際にヘリオスは嘘を言っていない。
だが、内容が突拍子すぎてなかなか信じられないのだ。
「ヘリオスが言っていることは本当だよ、雄二」
「「……は?」」
「うん、実際証拠もあるでしょ? 今、僕と木下さんも持っているものだよ?」
珍しく明久がまともな事を言っていることに全員が驚いてしまう。
「……明久、何を言っている?」
「いいから答えて見てよ。」
「……それって、エロ本(カチャ……)あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「あら、土屋君はアタシがそんな人にみえるんだ~?」
それは心外だとばかりにモデルAから作り出した二丁拳銃を土屋の頭に押し付ける優子。
土屋は恐怖のあまりについ叫び声を上げてしまう。
「ライブメタル……ですね?」
「佐藤さん、正解だよ。 因みに今僕が持っているライブメタルはモデルZって言って、様々な剣術が使える赤のロックマンに変身することができるんだ」
「おいおいマジかよ、ならなんで……」
「……雄二、その質問は私がする」
「ちょっと待て翔子! いきなりスタンガンなんて向け……ギャアアアアアアアアアアア!!」
一度質問権を使ってしまった雄二がまた質問をしようとした為、霧島が無理やり気絶させて雄二が言おうとしたことを代弁するように質問する。
「……その未来人でロックマンなんて事をしている貴方達がなんでタイムスリップしてこの時代に来たの?」
「そもそも私達はこの時代に来たくて来たわけではないのだ」
「どういうことじゃ?」
「俺達ハ、未来ノトアル場所デ最後ノ戦イニナルハズダッタ場所デ最終決戦二望ンデイタノダガ、ソノ時二起キタ事故デ光二包マレ、気ガ付イタラ4人デコノ時代二飛ンデ来タト言ウ訳ダ」
シャルナクの説明に納得した皆は、ヘリオス達に関しての質問を切り、また別の質問をすることとなった。
「……俺からの質問だ、『プロメテとパンドラはなぜお前たちを攻撃した?』」
「ボクも気になるね『あの二人も同じロックマンじゃないの?』」
次に疑問を投げかけたのはムッツリーニこと土屋康太と工藤愛子の二人だ。
「フッ… ここ最近は明久の影響で仲が良くなってしまっていたからな、勘違いするのも無理はない」
「「えっ?」」
これまでのロックマン達の関係とヘリオスの説明では勘違いしても仕方ないのだが、本来のロックマンとはどんな存在なのかを説明する必要があるとヘリオスは判断した。
「むしろ同じロックマンだからこそ攻撃してきたんだぞ? 全てのロックマンに勝利し、モデルVを回収して未来世界の王となるためにな」
「「世界の王だって!?」」
さらにとんでもない話が出てきて、全員が慌てふためく。
「ヘリオス君、いくら冗談でもそこまで来たら笑えないよ?」
「ほう? 先程といい貴様らは私の誠意を持って答えた私の言葉が冗談にしか聞こえんようだな」
「「普通はそうとしか思わないからね!?」」
ヘリオスからしてみれば、日常的に誰かをリンチにかけようとしたり、召喚獣なんていうオカルトまがいなものを使って小さな戦争をしていたりする学校があるなんて言う事が冗談にしか聞こえない。
実際に文月学園に入るまで、ヘリオスは全く信じていなかった事を思い出した。
ならば…と、実際にライブメタルの力がどれほど凄まじいものなのかを証明するためだけに、とんでもないことを思いつく。
「どうやら貴様らにはライブメタルの力を証明する必要があるようだな、少し待っていろ……」
そう言って、ヘリオスはテティスに何かを指示している。
かと思えばいきなりケータイを取り出して、何処かに電話をかけ出す。
「どこに電話をかけているんでしょうか?」
「もしかしてこの街に来た者以外にロックマンがいるって言うのかのう?」
「秀吉、それはないわよ」
「どういうことじゃ姉上?」
「モデルAから聞いていた限りでは、もうこの時代にライブメタルは来ていない」
「……つまり、もう新しいロックマンは現れない?」
雄二と土屋と木下姉弟が話をしている間に、ヘリオスは電話が終わったようだった。
「ヘリオス君…だったかい? どこに電話していたのかな?」
どうやら、ヴァンがヘリオスに電話先を確認しているようだった。
「なぜ、貴様に教えねばならん?」
「なぜって、あんな話の後でいきなり電話ってどういうつもりか気になるのが普通でしょ?」
「電話の内容によっては……」
「あなたたちを全力で止めさせてもらうわよ?」
ヴァンの加勢に入る為に、アッシュ・グレイ・エールの3人がヘリオスを囲むように詰め寄る。
流石に意味もなくクラスメイトの家で暴れたいとは思っていないヘリオスは素直に電話の内容を話す事にした。
「私が電話をかけた場所は『官邸』にいる『内閣総理大臣』だ」
「へ? 誰それ?」
だが、エール達はヘリオスがどれだけとんでもないことをしているのかが分からず、つい瑞希に質問してしまう。
「この日本の政治面における事実上のトップです。 一体どんな電話をしたのかがわからないですけど、直接話ができるというだけでとんでもない……」
「因みに電話の内容は今から1時間後に総理をぶちのめしに行くという脅迫電話だが?」
「「ギャアアアアアアアアアアア!!」」
いきなり日本の執務拠点に脅迫電話をかけたと言う事実にほぼ全員が顔を青くして悲鳴をあげてしまう。
感情をあまり表に出さず寡黙を貫いている土屋や霧島ですらが悲鳴を上げるのだからどれだけ危険な事をしているのかが分かるだろう。
「工藤・土屋・木下弟の3人は私について来い、ロックマンの力がどれほど強大な物かを見せてやろう」
「ちょっ! 分かった、お願いだから離『ロックオン!』してぇぇぇぇぇぇ!!」
「………俺は絶対行かな ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「なんでワシまで巻き込まれているのじゃ!? 頼む、ワシは別に殴り込みなんて行きたくないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……………」
ロックマンの力を見せる為、日本の最重要施設の一つに殺害宣言の脅迫電話をかけてから奇襲をかけたという事実の証明の為だけに、3人を巻き添えにして連れ去ってしまった。
「で? 進行役のヘリオスが出て行ってしまったけど?」
「あ、ヘリオスから伝言なんだけど『本気で殺す気はないけど、適当に2.3発ほどぶん殴ってから帰ってくる』ってさ」
「「その前に射殺されてしまえ!」」
本当に賢者らしからぬ方法で証明しようとするあたり、ヘリオスも壊れ気味になってきている。
明久いわく「最初会った時は当時の思想も相まって余計ひどかった」らしいが……
「あの、ヘリオス君が戻ってくるまでの間に聞いておきたいことがあるんですけど……」
おずおずと小動物のように手を挙げるのは姫路だった。
「なに? 僕達にわかる範疇だったら正直に答えるから遠慮しないで聞いてよ」
「あ、ありがとうございます」
瑞希はテティスの言葉に満面の笑みを浮かべる。
「吉井君はどんな女の子が好きだと言っていたかわかりませんか? アトラスさんみたいなタイプですか? それとも美波ちゃ…(モゴモゴ!!)」
「ちょっ! 瑞希ちゃん、貴方いきなり何を聞いているの!?」
「エールさん! 金と女に関係する話はありとあらゆる事件において常に重要な要素なんですよ? 学園の噂ではアトラスさんと吉井君が付き合っているなんて噂も出ていて私も気になっているんです」
「……姫路さん」
「吉井君?」
「ちょうど僕の家に戻ってきていたアトラスに連絡を入れておいたから、『隣の部屋でボクシングでもしようか? ラウンド制限無しで』だって、『そっちはコンビでグレイが一緒でもいいって言っていたけど?』」
明久の言葉に顔面蒼白になる瑞希。
なぜかグレイまで巻き添えを喰らっており、アトラスに連れられる前に早く優子からモデルAを返してもらわないといけないと思い始めたグレイだった。
「それは勘違いだよミズキ、あのふたりの関係は『ロックマン』としての師弟関係っていうだけで、恋みたいなうわついた話は全くなかったよ。 明久の格闘技もアトラス仕込みで最初の頃は何十回と気絶させられてたよ」
ヘリオスが工藤と土屋の質問の解答として外に出かけてしまっている間はテティスが代わりに質問に応じる様だ。
「まあアトラスはともかく、バイト先の女の子達にはモテモテみたいだよ? それでもその中に本気で恋をしている女の子がいるのかどうかなんて分からないし、ボク達からしてみれば別に興味も沸かない話なんだよね」
戦いばかりの日々に明け暮れていた彼らからしてみれば、一個人の恋愛事情など最早どうでもいいのだろう。
テティスとシャルナクはつまらなさそうにしながら、質問に答えた。
「アタシも貴方達に聞きたいことがあったのよ。 なりたてのロックマンだからって答えないって事は無いわよね?」
「うん、むしろ君からの質問は早めに答えたいと思っていた所なんだ。 君も『一応』ロックマンだから、きちんとボクらの戦いのルールを説明しておきたい位だとと思っていたからね」
「そう、なら『どうしても貴方達の時代に戻らないといけないのかしら? そうしないといけないくらいの理由があって急いで元の時代に戻らないと一生叶わないような、それにはタイムリミットのある切迫した問題なの?』」
優子の質問は元の時代に戻る理由のようである。
どうやら、せっかく大人しく話し合いで済ませようとした約束を平気で反故にされたり、滅茶苦茶な理由で誤魔化されている身である優子にとってはどうしても聞いておきたいことのようだった。
「さすがユウコ、なるほどいい質問だよ。 悪いけど僕らはお互いの理由の為にどうしても元の時代に戻りたいと思ってはいるよ。 それだけは否定しない」
「ダガ、タイムリミットガアル訳デハ無イ、学校二通ッテ馬鹿ナ事ヲヤッテイルノガイイ証拠ダ」
「なら、その世界の王を決める戦いなんて馬鹿げた事をこの場でする必要もないし、少なくともあなたたち4人がこの街の皆を巻き込む気はないって事をちゃんと認められる?」
「……ソウナルナ」
シャルナクの言葉に安堵する優子、これでクラスメイトが敵になるという事がなくなったのは優等生として猫を被っている彼女に取っては非常にありがたい話だろう。
クラスメイトを相手に銃で撃つという事もなくなるのだから、極端に周りからの心象が悪くなることも無い。
「どうしたの佐藤さん、今までの説明で信じられないものでもあったの?」
「いえ、そうではないんですけど気になる事がありまして……」
「気二ナル事……ダト」
「はい、ならなぜプロメテさんとパンドラさんは私たちを襲ったのでしょう? 『未来』の世界の王になるというのならここでヘリオスさんたちと戦っても全く意味がないはずなのに……」
「それに関してはボクたちにもよくわからないかも。 あらかた、ロックマンという存在自体が気に入らないから攻撃したっていうだけかもしれないし?」
テティスの発言にまだ疑問が残るようだったが、分からないのなら仕方が無いと判断した佐藤は素直に引く事にしたその時だった。
部屋のドアがいきなり、(ドン!)と強引にこじ開けられたのだ。
そして、そのドアの向こうにはワカメやら貝類やらを全身にくっつけたまま仁王立ちしている女性の姿があった。
「き~さ~ま~らァァァァ!!」
「「『ギャアアアアアアアアアアア、お化けェェェェ!!』」」
「『誰がお化けだ! アタシ(オレ)だ!』」
激怒した女性は頭に乗っかっていた大きな海藻を床に思いっきり叩きつける。
同時にその正体が見えてきたが、その正体はモデルFでロックマンとなったアトラスであった。
「プロメテに吹き飛ばされた後、2時間もの時間をかけて急いで戻ってきてみれば今度はプロメテが星にされている!、大会は中止になってしまってこれまでに手に入れた景品が後日配送になっているとかどうでもいい説明を延々と話されて足止め喰らうなどと散々な目にあったというのに、キサマら等言う奴らは……」
「ア・アトラス? 落ち着いてよ。 そ・そうだ! ここは一度美波達と一緒にお風呂にでも入って……」
「ア・タ・シはちゃんと落ち着いているぞ?」
明久の胸ぐらをつかみ、ゼロ距離で睨みつけている光景を見て、アトラスの言葉に同意することなどできはしないだろう。
「……アトラス、とりあえずどうやって中に入ってきたとかは置いといてあげる。
……だから浴場でその汚れを落として、服はこっちで用意する」
そう言われたアトラスは、霧島に背中を押されて風呂場まで強制的に連れて行かれた。
それから入れ替わるように美春・美波の二人が戻ってくる。
「ねぇアキ、何人かいなくなっているみたいだけど、どこにいるのよ?」
どうやら、美春があらん限りの手を尽くしたのだろう、美波が元に戻っていた。
「ヘリオスは工藤さんとムッツリーニと秀吉を連れて、総理大臣に喧嘩を売りに行っている所だよ?」
「一体何をどうやったらそんな状況を作れるんですの?」
明久は二人に今までの状況を説明することにした。
美春は「ヘリオスって実は馬鹿なんですか!?」などと膨大な量のツッコミを入れていたが、ヘリオスから急にテレビ電話が繋がった事で、質問会どころでは無くなってしまった。
another story ヘリオスside
「……繋がった、これでいいかヘリオス?」
「鮮やかな手際、見事だ土屋康太」
「本気でやる気かヘリオスよ? 相手は完全に殺る気になっておるぞ? 今ならまだ引き返せる……」
「って、もう正門に向かっているし、ねぇ~待ってよ~!!」
そう、今彼らは本当に官邸の正門近くにいるのである。
3人には適当なフードを被せ、ヘリオス自身はロックマンに変身して、目元にはバイザーを装着する事で顔がわからないようにしているようだ。
「A班はこのまま正面からの警備を固め、B班は内部の警備を担当してもらう。
まもなく、男の襲撃予告の時間に差し掛かる、第一目標に『敵の制圧』第二に……」
「た・隊長! アレ……」
部下の言葉に疑問を持った隊長らしき人物が、部下が指を指した方向に目を向ける。
そこにいたのは、フードをかぶった(その内ひとりはムッツリーニでケータイで録画を続けている)3人組と風のロックマンに変身していたヘリオスだった。
「おい貴様、内閣総理大臣はいるのか?」
「あの、どんなご要件でしょうか?」
「とぼけるな、総理を抹殺すると言っただろうが?」
「君達、ちょっとこっちに来て ……うおっ!」
ヘリオスのむちゃくちゃな発言に驚いた隊長は、ヘリオスの肩を掴んで事情聴取の為に適当な場所に連れて行こうとするが、そのタイミングに合わせたヘリオスがいきなり足払いをかけて隊長を転倒させる。
「ほう、いきなり転ぶなど貴様にはドジっ子属性あたりでもあるというのか?」
「「か、かかれぇぇぇぇ!!」」
いきなりの不意打ちに驚いた隊員たちは一斉にヘリオス達を抑えにかかる。
それに対し、ヘリオスはまるで予想していたかのように両手のセイバーを一瞬で構え、風の力を持って襲いかかる敵を薙ぎ払う。
「退避だ、退避しろ!!」
だが、わざと力を抑えているのか、吹き飛んでいく人数が少なく、各所に散らばって警備をしていた人達が集中し、徐々にヘリオス達を囲んでいく。
「無駄な抵抗はやめなさい、君たちは完全に包囲されている!!」
「ちょっ! これは流石にマズイぞい!!」
「……終わったな」
「うえ~ん! こんなことならもっとシュークリームでも味わっておけばよかった~!!」
強制的に連れてこられた3人も最早諦めモードである。
そんな中、ヘリオスは……
「もっとだ、もっと集めろ…… 我が持つ力の証明の為に!」
余裕綽々で待ち構えていた。
どうやら、ダブルセイバーに力をチャージしているようだったが……
「十分な力を込めることができた ……いい頃合だな」
そう言って、ヘリオスが使った技は「プラズマビット」と呼ばれる3本のプラズマを発するビットを二つ同時に射出する技だった。
「この攻撃を躱せるか!」
いきなりの新兵器に驚いた隊員たちはどうにか退避しようととするのだが、人が密集してしまったばっかりに逆にヘリオスの技の餌食となってしまったのである。
「嘘だろ…… 100人はいるんだぞ……?」
大型のビットから大量のプラズマが放射され続けた事で完全にパニックに陥っている隊員達。
そのスキに、ヘリオスは3人を掴んで空を飛び、そのまま正門を突破。
強引に扉を突き破り、中で待機していたSPを素手で蹴散らしながら奥深くに侵入していく。
そして、謎の大きな扉の先には……
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
ターゲットである総理であった。
彼がおびえている中、ヘリオスは悠々と正面から中に入っていく。
そして、ヘリオスは彼の髪の毛を鷲掴みにして、こう言い放った。
「浅薄なる危機意識…… 警備体制が全くなっておらんな」
完全チートなライブメタルの力を使っておきながら、よくもまあそこまで偉そうにできた物だとモデルHは思ったが、彼に言いくるめられて力を貸している地点で彼はもう何も言え無くなってしまっていた。
その一方でヘリオスは何を思ったのか、剣を一度しまい、握手を求めるように手を差し出した。
「ご、ご忠告ありが……」
ヘリオスの言葉と行動を見て、その場を取り繕うように握手をする総理であった。
「(チェストーォォォォ!!)ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
いきなり襲いかかる衝撃波が机を木っ端微塵にしたヘリオスの行動に恐怖を抱き、尻餅を突いてへたり混んでしまう総理。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
どこぞのオーガのような叫び声をあげながら強引に窓を蹴破り、飛び降りて脱出するヘリオス。
脱出と呼ぶにはあまりにも堂々としすぎていたが……
それから少し遅れて3人がついていくように出ていくことも忘れない。
愛子は流石に申し訳なく思っていたのか、困ったような笑顔で総理に「ゴメンねー!」と謝りながら出て行った。
そして、官邸襲撃開始から脱出まで6分37秒という驚異的記録を叩き出した(その内の大半は警備部隊の人間数百人が集中するまでの時間)
ヘリオスside end
「「……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」
ヘリオスが本当に襲撃に成功した映像を見せつけられた文月学園組は、驚きのあまり叫び声を上げる。
「どうだ! これでロックマンという存在が世界の王となりうる力を持っているということが証明できただろう!」
「「そんな事の為に、いちいち国を相手に喧嘩を売るような真似をするな、この馬鹿!!」」
ヘリオスの滅茶苦茶なやり方に、全員からツッコミが飛んでくる。
「それよりも、ウチもアンタたちに聞きたいことがあったのよ。 ちょうどヘリオスも戻って来たところだしウチもいいかしら?」
「構わんぞ、私の返答にケチを付けるような事が無いならばな!」
「一体何があったのよ…… ウチからはひとつだけ『そもそも一人1問ずつしか認めておらん』うるさいわね……
ウチから聞きたいことは……」
「どうすれば胸が大きく(バチン!) おぶっ!?」
「ほう、貴様はどうやら一度デリカシーというものについて一度教育する必要があるようだな」
風呂から戻ってきたアトラスが、デリカシーのない明久の発言に対して制裁を兼ねて腕を関節を極めにかかる。
彼女の怪力で関節を極められたら常人では一瞬でちぎれてしまうレベルである。
「ギャアアアアアアアアアアアア! アトラス、ごめんなさい! お願いだから腕の関節だけは……」
「問答無用!」
「明久君も反省して下さい!」
そんな怪力に耐え切るだけでも十分すごいが、それでも十分ボロボロな状態でダウンしてしまう明久。
「ムッツリーニ君、アトラスのスカートを覗こうとするなんて勇気あるね~」
「(スリスリ)……なんのことやらさっぱり分からない」
土屋と工藤の言葉を聞いていれば分かるだろうが、実はアトラスは霧島から服を借りているのだ。
因みに服装は白い薄手のカーディガンとその下に桃色のカットソー、下は薄手の膝上までのスカートに中に下着が見えないようにだろうか? インナーらしきものが中から見えた。
「……めざせ、ワールドカップ!」
「なで○こジャパン!?」
普段はあまり土屋の奇行については気にも止めていないアトラスだが、今回はさすがにウザかったのだろうか、思いっきり足元にあった土屋の顔をカメラごと蹴り飛ばそうとする。
今回も本気ではなかったのだろうが、それでも十分危険な蹴りが襲いかかってきて驚いた土屋は一瞬で飛び退いて回避する。
「しかし霧島、本当によかったのか? これほど良い服だとかなりのお気に入りではないのか?」
「いい、似たような服がまだ何着もあるから……」
霧島の寛大な言葉に感謝するアトラス。
男性陣は全員、あまりの変わりように声も出ないようだ。
正直な話、アトラスは黙っていればかなりの美人である。
お姫様の影武者か演技でもやらせ、ドレスを着せて愛嬌振り撒けば、ほぼ全員がお姫様だと言われても信じられる程だ。
これほど綺麗な服をもらったあとでは姫路・グレイとのボクシングなど出来はしないだろう。
せっかく譲ってくれた服を暴力で汚したくないのは当然だ……
「うみゅ~……」
何だかんだで騒ぎも多かった質問会だったが、どうやら葉月ちゃんの方が限界のようで、時間も見てみると既に夜になっており、そろそろ帰らないと明日の学校に支障をきたすだろう。
「それじゃあ、今日はこの辺にしとこうか? 明日だって学校があるんだし、みんなの事も家に送らないといけないしさ」
そう言ったテティスの言葉をきっかけに皆を家まで護衛しながら送る事となった。
「霧島さん、今日はありがとうございました」
「今日はありがとうです、綺麗なお姉ちゃん」
ヘリオスは佐藤、アトラスは土屋と工藤、テティスは島田姉妹の、シャルナクは1度モデルAをグレイに返した優子と秀吉を、明久が美春の護衛をする事となった。 美春が「なぜ美春がこの豚野郎なんかに守られないといけないんですか!?」と不満げだったが……
なお、雄二は霧島から「今夜は帰らせない……」と言って一瞬で縛り上げて動きを完璧に封じ込めてしまう。
「おーい、グレイ君!」
「えーっと、そこの……グレイ君だったかしら?」
「あ、お姉さんが優子さん?」
どうも敬語になっているグレイだったが、どうやら姫路の影響を受けて年上のお姉さんには敬語を使うことを覚えたようだ。
とは言っても、年上のお姉さん限定(エールは例外)だけのようだが……
「ええ、あなたのライブメタルを一応返しておこうと思ってね」
『グレイィィィィィィー! ようやく帰って来れたよ~!!』
モデルAが飼い主に再開した子犬のように優子の手から離れ、グレイの元に帰って行く。
「おかえり、モデルA!」
『グレイ~!』
生き別れになった兄弟が再開したかのような感動的な光景に姫路は目に涙を浮かべて感動している。
それから、姫路の仲裁で明久とグレイが話し合いを始めようと思ったのだが、どうやらモデルAが戻ってきてくれたこともあり、グレイは特に明久に対して恨んでいないとのことだった。
「本当にごめんね、グレイ君」
「もういいって、バカの兄貴」
「ははは…… バカの兄貴……か」
「キャアアアアアアアアアアアアア、吉井君、そんなに落ち込まないでください!」
「おーい、そろそろ帰らないと、お父さんに怒られちゃうぞ~!」
「あ、はーい。 グレイ君、そろそろ行きますよ」
「じゃーねー、バカの兄貴」
「はーい、また今度遊ぼうね~」
姫路家で居候と化しているグレイ達は、ヴァンの呼びかけに応えるように家にそのまま帰る。
それに続くように『佐藤とヘリオス』・『アトラスと土屋と工藤』・『テティスと島田姉妹』の順に各自の家に向かっている。
「……雄二」
「あれ、翔子? 一体どうした?」
「……お父様に事情を説明して、プロメテとパンドラについて調べてもらった」
「お前ん家は普段何やってんだ?」
「……お父様の人脈の中に探偵がいるだけ。 それよりもとんでもないことが分かった」
「アイツ等の事か? もう何が分かっても……」
「……あの二人と同じ名前の二人組がドイツの学校の名簿にあった」
「それで?」
「……その学校はその州では屈指の名門校で、近い将来には新たに試召戦争を導入する予定だった」
「だったって…… おい、まさか!」
「……日本時間で私たちが振り分け試験を受けた前日に、全生徒600人と教師陣が行方不明になったまま廃校にされた」
「されたって…… おい、嘘だろ!?」
「……私もこの調査結果を見た時には信じられなかった、でも事実」
「あれ~? 雄二、霧島さんと何を話してるの?」
先程から縛られっぱなしの雄二と霧島のふたりがプロメテとパンドラの調査資料を持って話しているところに明久は気が付き、途中からだが話を聞こうとする。
「……プロメテとパンドラの事を調べてもらっていた。 ……ちょうどヘリオス達にも渡しておきたかったから、吉井がヘリオスに渡しておいて」
そう言って霧島が渡すのはかなり厚みのあるA4サイズの封筒。
「え? あ、うん分かったよ。 こんなに丁寧に調べてもらってありがとう。 これから三日間だけ雄二を自由にしていいから。 もし照れ隠しが過ぎるようだったら僕を呼んでね。 こう見えても得意なんだ、雄二ハント!」
「ふざけんな明久! 三日間もやられたらガチで洗脳されちまう!!」
「……洗脳じゃない、これは教育、素直に私への愛を囁いてくれるようにするための……」
「おい、ならなんで鉄格子の扉で作られた部屋があるんだ?」
「……(ポッ!)」
「顔を赤らめて誤魔化すんじゃねぇ!! 一体どう言う意味だよおい!!!」
自身の自由が勝手に取引されて激怒する雄二。
「じゃあ、この封筒はヘリオスに渡しておくから! 霧島さん、また明日」
それを無視して明久は先程から待たせっぱなしの美春の所に戻り、そのまま彼女を家に送って行った。
「全く、未来世界だのライブメタルだのロックマンだとか完全に特撮ヒーローの世界じゃないですの。 しかもその力を悪用する馬鹿二人だなんて、一体どう言うつもりなんですのあの二人は?」
何も話さないほうが空気が悪くなるからだろうか、美春から話しかけてくる。
「美春さん、その件でアトラスが言っていたけど、『なんでこの街に来たのか』よりも『なんでわざわざ騒ぎを起こしに来たのか』っていうことらしいよ?」
「何言っているんですの? そんなの豚野郎であるお前みたいなロックマンがいるからでは……」
「でも、それならFFF団や学園長が送り込んだ賞金稼ぎまで攻撃したりする意味なんてないんだよ。
べつに事件を起こしたいだけなら、わざわざあんな目立つようにしなくても影で色々とやればいいだけだから、ここで僕達に襲いかかって大騒ぎする意味なんて無いって事」
「確かに、言われてみればその通りですね」
「それでもこうやって暴れまわった以上、何かしらの意味があるはずなんだ。
その理由如何によっては文月学園どころじゃない、この国の危機に匹敵する何かが起こる! ……って理由如何とか難しい言葉使っちゃったよ!」
「バカが難しい言葉を使おうとしてもなんだか滑稽なだけですわね」
「美春さん、言葉の刃でメッタ刺しだね!!」
明久がツッコミを入れている風で喜んでいると、美春の家が見えてきた。
「それじゃあ豚野郎、明日もお姉様といられる時間を作って下さいね?」
「うん、明日は改修工事が終わって新しいFクラスの教室に移る日だから、それを利用すれば行けると思う」
「ええ、ならそのタイミングで読んで下さいね。 期待していますわよ、吉井君」
「こういう時だけ都合よく…… 分かったよ、期待して待っていてね美春さん。 今日はありがとう! また明日ね」
明久は大会のイベント攻略を手伝ってもらった事へのお礼を言った後、そのまま大急ぎで家に帰っていった。
家に帰ったら、まずはヘリオスの部屋に行って霧島から預かった封筒を渡しに行くことになるだろう……
そしてその封筒の中身を見て、明久とヘリオスは驚きの情報を知ることとなる……
another story ???side
「藤堂カヲル、貴方にはなんの恨みもありませんが、私個人の都合の為だけに踏み台になってもらいますよ」
不敵に笑う中年の男性。 彼が今見ているのはプロメテとパンドラのプロフィールファイルである。
「Rockm○n ...... Ma○saker ......」
そんな彼の隣にいるのは先に撤退していたパンドラと、セルパンと鉄人の召喚獣によって星にされたはずのプロメテであった。
「Ich plötzlich, was Sie sagen, Puromete!(っていきなり何を言っているのかね、プロメテ君!)」
いきなり何が聞こえたのだろうか、謎の中年男性は聞こえた内容に驚き、先程言ったことを聞き返してしまう。
「Haha ~ tsu! Zwar würde nicht sagen, wie eine schwierige Sache. Ja Onkel und der nicht mehr senile?(ははっ! そんな難しいことは言っていねえだろうがよ。 もう耄碌してんのかよ、おっさん?)」
そして、このあとにプロメテが続けた言葉はとんでもない事だった。
「Die obere gefärbt die Jungs von jeder in der Schule in Angst und Verzweiflung Ich werde mit Cyber elf Te ändern.(学園にいる奴らの全員を恐怖と絶望に染め上がてサイバーエルフに変えてやる)
Weil schlechte Gefühle Nante werden normalerweise nicht in dieser verrückten Welt verbracht.(だってこんな狂った世界で普通に過ごしていられるやつらなんて気持ち悪いからよ。)」
another story ???side end
はい、ここ数ヶ月でアニメ版のロックマンエグゼを見ていた閻魔刀です。
そのことを何度も話そうと思いつつもいざ新しい話を投稿するときに忘れてしまっていました。
今回で第1章の本編は終わりになります。
次で番外編を一つはさんでから、今度は清涼祭編へと突入します。
因みに、もしここで姫路・島田・木下優子の内誰かと恋仲になる設定でしたら、この第1章の地点で恋愛要素が深く絡んでいましたが、彼女達は落選してしまったこともあり、このストーリーは明久達の日常と、ロックマン達との出会い位しか書くことがなかったですね。
実際、バトルのほうがはるかに多いですしwww
一応、もし彼女達の内の誰かがヒロイン化したらどうなっていたかを簡単に書いておきたいと思います。
1.姫路瑞樹
ヴァン達を保護して助けた人物が木下姉妹(間違えた・姉弟だwww)になっていた。
モデルAの調子がおかしくなり、グレイがしばらくロックマンになれなくなってしまう設定が追加された(合宿編以降で治る予定だった)
2.島田美波
プロメテのせいで植えつけられたトラウマの影響で明久のロックマン化を見た瞬間に発狂しかける。
そのトラウマと向き合いながら恋仲になっていく話になる。 BADENDの展開分差路を書いたらもっとも多くなるかもしれない。
今とは逆に清水美春とは完全に対立し、バイト先がセルパンの店になる。
展開次第によっては姉妹で付き合っていく事もあり得た。
3.木下優子
ロックマンX7のゼロとアクセルのような関係がしばらく続く。
変な正義感と猫を被った性格のせいで、ロックマン関連の事件が起こる度に明久の後ろをついていくような展開になる。
きちんとコンビを組めば相性は抜群だが、最初はお互いの考え方が合わないために迂闊な連携を組むより別々で動く事が多くなる。
例:明久は学園で良い方向に変わっていくヘリオス達なら未来世界に帰ってもきっと「正しい世界の王になれると信じている」のに対して、優子は未来世界に帰る事で悪人として嫌われ続けるより今の世界でロックマンとしての人生を捨てて平穏に過ごしてほしいと言って「王としての器が無い」と思っている。
……と、言った感じの設定で作っていく予定でした。
なので、ただでさえ長くてカオスなストーリーがさらにとんでもないことになってツッコミきれなくなったと思います。
さて、次回で番外編を投稿して、それから清涼再編を始めたいと思います。
感想を楽しみにして待っていま~す!!
2月3日・召喚獣設定を更新しました。
そちらの方もよかったら見て下さい!!