バカとライブメタルと召喚獣   作:閻魔刀

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暫く喉を傷めて体調を崩していました。
喉全体がやられていた様で完治するのに2週間以上はかかってしまった……
今はもう大丈夫ですけど。




バカテスト!

第12問

以下の英文を訳しなさい

「This is the bookshelf that my grandmother had used regularly.」


・姫路瑞希・グレイの答え
「これは祖母が使用していた本棚です」
教師のコメント
『はい、正解です。 よく勉強していますね』


・パンドラ・ヘリオス・テティスの答え
「これは今は無き祖母が使用していた本棚です」
・パンドラの追加コメント
この英文は現在進行形と過去完了形の単語が一つの文に同居しています。 なので状況をある程度想像で補完して最も考えられそうな状況の下で答えを導き出す必要性が出てしまいました。
教師のコメント
『え…… ちょ、ちょっと待ってください……
…………確かに混在させてしまっていました。
なので今回は私が用意した本解に近い解答は全て正解にしたいと……』


・プロメテの答え
「これはオレが始末したババアが後生大事にしてやがったボロっちい本棚だ」
・坂本雄二の答え
「こいつはババアから強奪して売り飛ばした薄汚い本棚だ」
教師のコメント
『思ったのですがこの二人だけは例外として不正解にしたいと思います』


・土屋康太の答え
「これは………………」
教師のコメント
『訳せたのはThisだけですか……』


・吉井明久・シャルナクの答え
「dsl;あうといあえ;jglhごjgれ;ぅあdghんfd;おgじょい;sghfsづいl;ghsdf;gjsぢ;おつgjflk…………」
教師のコメント
『せめて地球上の言語で訳してください……』


・島田葉月の答え
「えっと……『これは……』……はう、滅茶苦茶でわかんないですっ(英単語帳を片手に……)」
教師のコメント
『ご、ごめんなさい! この英文はおかしい事はパンドラさんに言及されていますので無理して解かなくても大丈夫です!!』


第6話

 営業妨害から少し経った後の時間、一緒に遊びたがる葉月を説得しながら明久とパンドラは次の試合に備えていた。

 今、次の対戦相手の確認を行っている。

 

「吉井、次の対戦相手……」

「うん、雄二に対戦表を見せたらこの人達が上がりそうだってくれたけど…… 本当に言った通りになったよ……」

 

 試合場にて対戦表を再度確認したら坂本の予想通りになっていた。

 

 

「Bクラス代表の”根本恭二”とCクラス代表の”小山友香”さんか……」

「強いの……?」

 

 文月学園に来て間もないパンドラはこの二人の事を知らないのか、明久に質問する。

 

「強い弱いというより”面倒くさい”かな?」

「どういう意味?」

「小山さんの方はあまり知らないけど、根本君の方は有名だよ。 ある意味僕らロックマン組やプロメテよりもね。 正直相手にしたくない……」

 

 明久相手にそこまで相手にしたくないと言われる根本と言う人物がどんな人物なのかが無性に気になって仕方が無いパンドラ。

 

「テストではカンニングの常連とか、喧嘩では必要以上にナイフで滅多刺しにするなんて当たり前だとか。 それで相手もなぜか死なないらしいし…… 後はその辺の何処にでもいる他人を脅迫して無理矢理自分の奴隷のように使い潰すとか目的の為なら手段は選ばないらしいんだ。 使い潰された人の中には今だ病院から出られない人物もいるらしいし」

「それだけ聞いていればただの小物にしか聞こえない……」

 

 パンドラの言う通り、それだけでは『稀代のクズ野郎”根本君”』程度で終わっていただろう……

 

「しかもかなり粘着質で、ヘリオス達が勝手に学園に編入したばっかりの頃に、根本君がヘリオスに物凄い絡んできたらしいんだよね」

「それで……?」

「最初はヘリオスもライターと噴射型殺虫剤を組み合わせた”簡易火炎放射器”で頭をキノコ風に焼くとか、屋上からプールに目掛けて投げ捨てるとか、消火栓に入ってるホースで血の流れが止まる様に縛り付けて置く程度の軽い罰で済ましていたらしいんだけど……」

「ふーん……」

 

 明久の話を聞いて、周りの皆は軽く引いていた。

 中には『何かの冗談だろう』などと言って苦笑いをしている人物までいる。

 

「あんまりにもしぶとくて、ついに根本君がさっき言ったみたいに他人を脅迫して僕達の住んでるマンションを爆破させようなんてたくらんじゃったんだよね。

今の僕の家を襲うなら最低でも軍の一個大隊くらいは連れてこないとまともにダメージを与えられないというのに……」

 

 あまりにも現実離れした話に周りで話を聞いていた人達は全く信じておらず、99%の人間が笑いをこらえていた。

 因みに残り1%は反応に困っているか聞かなかった事にしようとしている。

 

「結局根本君の計画がヘリオスにバレて、オシオキと称してこれまでに脅迫してきた人間の情報を全部探し出して抹消した後、ロックマンとしての姿で地獄の空中遊泳を体験させてあげたらしいよ? 戻ってきた時の根本君、完全に老け込んでいたよ。 元からジジイだって言われた方が信用できるくらいに」

 

 ヘリオス曰く、『高度6000メートルから落として、地面にぶつかる直前で回収する』というのを数回繰り返しただけらしい……

 

「意外…… そのまま突き落としても誰も文句は言わないと思う……」

「今のヘリオスの思想を考えたらそんなことはしないよ。 だって今のヘリオスは『愚者に死を』から『愚者に正しき導きを』に変わっているんだし」

「今のヘリオスのやり口のどこに『正しさ』があったの……?」

「始末しないででギリギリで生かしておいてあげる優しさ?」

「死んだ方がマシと思える拷問だってある……」

 

 パンドラの言う事も物騒で十分恐怖するに値する物だが、明久の基準も大概である。

 話をしている間に試合場に着いたようだ。

 どうやら相手の方が先に到着していた様で、既に明久とパンドラの前には恨めしそうな目でにらんでくる根本とそのパートナーの小山の姿がそこにはあった。

 

「吉井ィィィィ、ヘリオスの前にお前から始末してやる!!」

 

 怒りのあまり、不快な歯ぎしりを立てながら睨んでいる根本。

 その眼には普通の人間なら恐れおののくほどの殺気が込められている。

 

「き、恭二…… 別に今回は試召戦争なんだからFクラスのバカ共が相手なんだからこの勝負は貰ったようなものじゃない。 だから一度落ち着きなさいよ……」

 

 どうやらパートナーの小山も十分性格が悪い部類の人間のようである。

 根本の殺気に若干ビビりながらも、どうにか根元を宥めて落ち着かせようとしている。

 

「では試験召喚大会第2回戦を始めて下さい」

 

 今回の立会人は英語の遠藤先生だ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)」」」」

 

 この場にいる4人の召喚獣が呼び出される。

 

 

 吉井明久・パンドラ vs 根本恭二・小山友香

 

 教科 英語

 

 点数 49点・599点 vs 199点・165点

 

 

 

 

 

 

「「「『………………はい?』」」」

 

 

 パンドラの点数にこの場の3人が目を見開き……

 

「「「『はああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???』」」」

 

 一斉に絶叫をあげた。

 いくら帰国子女同然とは言え、同じ帰国子女の美波もドイツ出身という事で英語も苦手だと言っていたのに、同じドイツ出身のパンドラが純粋な英語でここまで点が取れているという事実に驚きを隠せない明久とモデルZ。

 小山と根本はどちらかと言えばFクラスの生徒がこんな点数をたたき出したという事実自体が信じられないと言った様子だったが……

 

「ね、ねぇパンドラ?」

「何、吉井……?」

「なんでこんなにも点数が取れてるの!?」

 

 まくしたてるように明久がパンドラに問い質した。

 

「わたしはプロメテや島田と違って学校できちんと勉強にも励んでいた……

イギリスに行く事もあったから英語は必須だった……」

 

 パンドラの言葉が事実ならプロメテはあまりきちんと勉強をしてこなかった様である。

 雄二チームの安否が心配になって来た明久だった……

 

「試合開始!」

 

 遠藤先生が強制的に試合開始の宣言を上げた。

 先程鉄人が来ていたので、時間が押しているなどと言われたのだろう。

 

「吉井…… 15秒時間を稼いで……」

「え~…… また僕をおとりにする気?」

 

 第一回戦でのパンドラの所業を忘れたわけではない明久はパンドラの言葉を疑心暗鬼レベルで疑い始めている。

 

「今回は本当に意味がある…… わたしの腕輪は強力な力を出そうとすると下準備に15秒はかかる……」

 

 そう言うパンドラの目はあくまでも嘘を付いている様には見えなかった。

 その話が本当なら、発動までに時間がかかってしまうのだろう……

 

「よし、15秒だね? 任せて!!」

「腕輪発動…… ”聖獣召喚”」

 

 

 パンドラの言葉を信じた明久は、敵二人の召喚獣を同時に相手取る為に先手を取って攻撃する。

 格下に攻撃を当てられたという事実に動揺した根本と小山は先に明久の召喚獣を始末しようと挟み撃ちにするように追い込んでいく。

 

「オシラサマ・オシラサマ・ありがたや…… 感謝の念にてお願い奉る……」

 

 その一方で明久の隣ではパンドラが何かの呪文を唱え、その瞬間に召喚獣の前で出来た木彫りの人形が宙に浮き始めた……

 

「出でて遊べや、遊びて舞えや…… オシラ遊ばせ!」

 

 呪文を唱えたのとほぼ同時であった。

 先程までただ浮いていただけの木人形がどんどん大きくなっていき、その姿をくたびれた人形から鎧武者のような巨大な鬼神へと変貌させていく。

 

「「「聖獣を呼び出すんじゃなかったのかよ(なかったの)!?」」」

 

 いきなり現れた鬼神を見た根本と小山は驚きのあまり、空いた口が全く塞がらないでいた。 

 

「す、すごいよパンドラ! よし、後は僕が離脱して巻き込まれないように……」

 

 おとりを務めていた明久は頼もしい鬼神を呼び出したパンドラを褒め称え、それと同時に距離を取って離脱しようとする。

 

「何を言ってるの……? そんなの気にしていたら二人に当てる事は出来ない……」

 

 ……が、その前にパンドラが呼び寄せた鬼神が腰に差していた日本刀を構えている。

 その目標は根本・小山チームと明久の召喚獣に向けられている!

 

「は、謀ったなパンドラァァァァァ!!」

「今更気が付いても遅い…… オシラサマ・”怒髪衝天疾風連打”……」

 

 パンドラが”オシラサマ”と呼んだ鬼神は、明久の召喚獣ですら対応が出来ない程の怒涛の斬撃を持って襲い掛かる。

 その攻撃は敵味方の識別を一切せず、召喚獣と地面の区別が一切付かなくなるまで切り刻もうとしているかのようだった。

 それほどに強烈な攻撃…… 明久の召喚獣にとって、言葉通り”全身を粉微塵に細かく裂かれる”かのような激痛となって召喚者に襲い掛かってくるだろう……

 

「ギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ……………」

 

 

 

 

 

「し、勝者"パンドラ"!」

 

味方を平気で切り捨てて勝利を収めたパンドラはまだ全身の痛みで悶えることすら出来ずにいた明久に追い打ちをかけながら退場していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロメテてめぇよくも俺の人生危険に晒しやがって!!」

「作戦を簡単に見破られたお前が悪いんだろ!!!」

 

 明久とパンドラが教室に戻ってきた瞬間だった。

 扉を開けた先で見た光景は雄二とプロメテが殴り合いをしている光景だった。

 

「どうなってるの……?」

 

 事態が全く読めないでいるパンドラはすぐ近くにいたエールに事情を聞くことにした。

 

「詳しい事は私にも分からないわ。 どうやら今度はプロメテが雄二君を罠に嵌めてその挙句に負けてきたらしいけど……」

「俺が事情を説明する」

 

 そう言って土屋はノートパソコンを開いてあるビデオ動画を開く。

 そのビデオは雄二達のチームのこれまでの行動をまとめ上げた物だったのだが……

 

 

 

 

 

 another story  坂本side

 

 

「今回はオレ達だけじゃなくて秀吉とムッツリーニとシャルナクにも協力してもらう。 プロメテはそれに合わせてもらうだけでいい」

「そう言えばあいつ等何の仕事もしねぇでどこほっつき歩いてるのかと思ったらそう言う事か……」

「ああ、あの二人に弱点はねぇが付け入る隙はあるからな。 今回の狙いは秀吉の姉、木下優子だ。奴を利用して形勢を一気に傾ける」

「あん? おい、あの女も”一応”ロックマンなんだぜ? しかもこんな大会に出るあたりよほど召喚獣にも自信があるって事だろ? そんな女相手に何をしでかそうってつもりなんだ?」

 

 大体の予想は付いているプロメテだが、一応雄二に確認は取っておきたいようだ……

 

「まっ、狙いが双子の姉だって地点で想像つくだろ? お楽しみは後に取っておこうぜ」

 

 そう言ってあくどい笑みを浮かべた雄二を見て、つまらなさそうにしているプロメテ。

 係の人に呼ばれた二人は一度その悪意に満ちた闘気を完全に隠して次のステージへと歩み始める。

 

 

 

「……雄二、邪魔しないで」

「そうはいくか。 俺にはまだやりたい事がたくさんあるんだ!!」

 

 本当に行きたくないのか霧島の頼みを躊躇なく断る雄二。

 

「つーかよ、そこのクールぶった女とデートに行きたくねぇなら素直に『行く気なんてさらさらねぇよ、このブス』ぐらい言えばいいのによ」

「ちょっとプロメテ、アンタ何気に代表の事を侮辱している訳? それにさっきからその態度、アタシ達の方から手を出させようってつもりで挑発してるつもりなの?」

 

 その一方でプロメテの何気に混ざっている暴言に気が付いた優子?がプロメテに突っかかっている。

 この険悪な空気だと喧嘩に発展する可能性が高い……

 

「……雄二、そんなに私と一緒に行くのが嫌?」

「ほう、上目遣いで媚びを売る位は出来るんだな。 あれやられたら並みの神経じゃ断り切れねぇだろ」

「これで断れたらそいつはどっちかって言ったらプロメテ寄りの腐った神経してるんじゃ……」

「嫌だね」

「「プロメテ(オレ)寄りの腐った神経してやがった!!」」

 

 あまりにも冷酷非情すぎる雄二の発言に優子?はドン引きしながら、プロメテは爆笑しながらツッコミを入れている。

 

「……やっぱり、一度お互いに同棲して分かり合う必要がある」

 

 プロメテも霧島のタフな心には敬意を払いたくなって来たようで、少しは真剣になっていた。

 それを感じ取ったのか優子?も一度距離を取り、右手をポケットに入れながらもすぐに召喚獣を呼べるように構えている。

 

「はっ、残念だったな! そんな寝言は俺達に勝ってから言うことだ!!」

「……分かった、そうする」

 

 二人の言い合いがようやく終わり、ようやく試合開始である。

 

「おい赤ゴリラ、作戦ってぇのは上手く行ってんのか?」

「その辺に関してはぬかりはねぇよ。 頼むぞ、秀吉っ!!」

 

 『やっぱりそう言う作戦かよ』と考えながら優子?のほうを見るプロメテ。

 

「だからシャルナクの奴が付いて行ったのかよ。 それならうまく行ってるだろ……」

「……ふふっ」

 

 プロメテの言葉を遮るように口元に手を当てながら笑う秀吉?

 

「秀吉? 秀吉って、”誰かに”全身を銃で撃ち抜かれたシャルナクを半泣きで保健室に運んでいったバカの事かしら?」

「「何だと!?」」

 

 そこでいきなり全身を光に包ませたのと同時に正体を現した木下”優子”。

 先程までズボンを履いて”一応”男装しているかのような感じだった物が、いきなり女子らしい服に戻った光景に観客たちも手品として驚いているようである。

 

「本当に便利ねこのモデルA。 能力的な個性が全く違うとは言っても一応”双子”なんだし、流石にデータ上ではほとんど同じである秀吉からコピーしたデータで”トランスオン”を使うなんて真似は出来っこ無いと思っていたけど……

意外と簡単に出来たわね。 代表の読み通りに」

「「何だと!!」」

「……雄二の考えていること位はお見通し」

 

 子供みたいな無邪気な笑顔でガッツポーズを決める霧島。

 

「だが、そこの女ははロックマンじゃねぇハズだ! だったら、モデルAの声なんて聞こえねぇはず!

それが何でモデルAの特性を十二分に把握していやがるんだよ!?」

 

 雄二の作戦に対してこの対処法を思いついたのが霧島であるという事にも驚いているプロメテ。

 だが、一番の気がかりな所はロックマンではない霧島がモデルAの特性を完全に理解している点であった。

 

「プロメテ、アンタそんな事も分からないのかしら? この程度小学生でも簡単に気がつくわよ?」

「何だと!!」

 

 先程とは逆に優子の方がプロメテを挑発する形になっている。

 

「だって、代表がモデルAの言葉が聞こえなくても、アタシが聞いた説明をそのまま代表に伝えればいいだけなんだから、声が聞こえないくらいなら大した問題じゃないわよ」

 

 こんな単純すぎる事にも気が付かなかったプロメテはショックのあまりに膝を付いて落ち込んでしまう。

 先程から大きすぎてダボダボの制服が裾周りからどんどん汚れ始めている。

 

「ちっ、ムッツリーニから連絡が入った…… 今秀吉はシャルナクと一緒に保健室で休んでるそうだ。

……聞き間違いじゃなければ、保健室内で”ギシギシ”と何かが軋む音とシャルナクの悲鳴が聞こえたらしい」

「マジかよ……」

 

 いろんな意味でツッコミ所が満載だが、後半の雄二の言葉に関しては聞かなかった事にしておきたい……

 

「大人しく降参してくれると嬉しいな。 弱い者いじめは好きじゃないし」

 

 優子の降参勧告に顔を歪めてしまう雄二。

 このまま直接戦っていては敗北は必至だろう。

 

「ちっ、結局こうなっちまったじゃねぇか。 おい赤ゴリラ、俺に作戦がある。 俺の指示通りにセリフを言え」

「おいプロメテ、いきなり何を言って……」

「迷ってる時間はねぇ。 とにかくやれ」

「お前に命令されるのは癪だが仕方ねぇ。 今回はお前に任せよう」

 

 雄二が小さくうなずいた。 その瞬間プロメテの口元が思いっきり歪んでいる所を優子は見逃さなかった……

 

<翔子、俺の話を聞いてくれ!>

「翔子、俺の話を聞いてくれ!」

<どうしても俺は優勝したい!>

「どうしても俺は優勝したい!」

<俺はそうやって自分の手で如月グランドパークのプレミアムチケットを手に入れて、そうすることで翔子の前で堂々と胸を張れる漢になって一緒に幸せになる為の道を歩んでいきたいんだ!! 自分でも矛盾した……>

「俺はそうやって自分の手で如月グランドパークのプレミアムチケットを手に入れて、そうすることで翔子の前で堂々と胸を張れる漢になって一緒に幸せになる為の道を歩んでいきたいんだ!! 自分でも……ってちょっと待て!!」

 

 途中でおかしい事に気が付いた雄二が驚いてプロメテの方を向いてしまう。

 その顔は真っ赤になっており、彼にとってどれだけ恥ずかしいのかがよく分かる程だった。

 

「…………雄二」

 

 霧島も雄二からいきなりの告白めいたセリフにうっとりとした表情で雄二とプロメテの方を見ている。

 プロメテの作戦はなかなか上手く行っているようだ。

 

<(続きだ……)自分でも矛盾した事を言ってるのは分かってるつもりだ! だがお願いだ、翔子! ここは俺達に勝利を……>

「誰が言うかボケ……」

 

 強引に続けようとしたプロメテだったが、雄二は激しく抵抗してきた。

 だがプロメテも想定していた様で、反論して抵抗しようとする雄二を間髪入れずにそれでいながら誰にも見られないような角度で拳を叩き込んで一瞬で気絶させてしまった。

 

「ワリィな。 この赤ゴリラ、緊張のあまりに気絶してしまったみたいだぜ?」

「……雄二、大丈夫!」

 

 あまりにも心配だった様で雄二の元に大慌てで駆けつける霧島。

 優しく雄二を膝枕で介抱する姿は女神の様に美しく、その光景にはほとんどの観客が彼女に見惚れてしまっていた。

 

「取り敢えずそいつの言葉の続きだがよ、『自分でも矛盾した事を言ってるのは分かってるつもりだ! だがお願いだ、翔子! ここは俺達に勝利を譲ってくれ。

今すぐにはお前の思いには応えられないが、この学校を卒業したら一緒に結婚しよう。

愛してる、翔子!!』って言いたかったみたいだぜ?」

 

 このセリフだけを聞けば素直じゃない雄二の思いをプロメテが代弁したようにしか聞こえない。

 実際には『プロメテが雄二を霧島に告白させて』しかも『逆らった雄二を気絶させてありもしない事を色々と脚色させて霧島を揺さぶって行動不能にしようとしただけ』である事を忘れてはいけない……

 

「さあどうするモデルAのロックマン! 降参するなら今の内だぜ!!」

「この卑怯者っ……」

 

 事実敵の最強戦力を使い物にならなくさせた事で調子に乗り出すプロメテ。

 彼の隣では雄二の亡骸を介抱している霧島の姿。 手足がダランとぶら下がているのは気のせいだろう。

 

「ヒャァーーッ、ハハハハハハハハ!! これで終わりだぜ! ”試獣召喚!”」

「くっ…… ”試獣召喚!”」

 

 両者の呼び声に答えて呼び出された召喚獣。

 それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fクラス プロメテ  vs  Aクラス 木下優子

 

 教科 英語

 

 点数  56点  vs  321点

 

 

 

 

 

 ……Fクラスのプロメテ程度では太刀打ちできない強さを誇った、木下優子のAクラストップランカーと呼ぶにふさわしい召喚獣だった。

 

 

 

「…………一応聞いて置くけどアンタ、ドイツの方では」

「んなかったるい事してられっかよ。 元の時代に帰る方法探すのに忙しい……」

 

 実力差は歴然。 プロメテは観察処分者達と比べて操作能力にも優れてはいない。

 一方的に攻撃されたまま瞬殺されるのも当然の結果であった……

 

 

 

 another story 坂本side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局負けてる…… プロメテのバカ……」

 

 超が三つは付くほどに情けない兄を見下す妹。

 そのバカ兄は何も言えないのか正座させられたにも関わらず、”オレが悪くない”とでも言わんばかりに妹から視線を逸らしたまま顔を膨らませている。

 

「結局最後に俺が気絶させられた意味って何だったんだよ!?」

「無能リーダーへの制裁」

「うぐっ……」

 

 あまりにも躊躇ない物言いに雄二も若干後ずさってしまった。

 

「だけど坂本のチームが先にリタイアしてしまうなんて思って無かったわね」

「あ、ミナミとヒメジのチームは勝ったのかな?」

「ええ、ウチのチームも余裕勝ちよ。 今瑞希は葉月とグレイ君も一緒に学園内を見て回ってるわ」

 

 どうやら今は客の入りが少ない為、一度休憩も兼ねて瑞希には葉月ちゃんとグレイを連れて学園祭を見て回っているようである。

 

「しかし外はあれだけの来客者がいるというのに、こっちには一人も入って来なくなってしまったな……」

 

 あまりにも暇で仕方が無いのか、机に両足を置きながら須川に命令して作らせた飲茶を飲んでいるチャイナドレスのアトラスの姿。

 

「アトラス…… 女子がそんな態度をとるのは色々とマズいと思う……」

 

 明久がどうにかやめさせようとするが、その言葉が続くことは無かった……

 

「はい、店の店員がそんな態度取らない!」

 

 かなり怒り気味のエールが椅子に蹴りを叩き込んだ事で、アトラスがそのまま転んでしまったからだ……

 

「お前、一体何をするんだ!!」

 

 いきなり椅子が倒れたことに驚いたアトラスがエールに食ってかかる。

 

「それはこっちのセリフよ。 アンタもこの店の店員なんでしょ? だったら客が居ない状況でも店員らしい態度でいてほしいわね」

 

 エールの正論に何も言い返せなくなったアトラスは素直に負けを認めてテーブルを拭いていた。

 

「それにしてもいったい何なのかしら、いくら何でもおかしいわね」

 

 改めてこの異様なまでに客がやってこない理由について考え始める皆。

 

「さっきのアトラスの態度はどうかと思うけど、その前から客足が途絶えていたし……」

「中の様子が外からは見えなかったはずだからそれが原因だとは思えないわね……」

「それ以前に接客中はバウンサー組は表に出ていない」

「ウチが取ったアンケートでも特に不満もないし、お客さんの口から直接”美味しかった”とか”ありがとう”って感謝されることまであったのに……」

 

 アトラスのだらけた行動も客足が途絶えてしまってからの話だ。

 それ以前の客たちに不満がある様には全く見えない。

 

「ふむ…… 恐らくさっきの営業妨害が関係してるかもしれねぇな…… あの二人以外に仲間がいたとか」

 

 口元に手を当てながら、推理を続ける雄二。

 

 

 

「皆さん、大変です!! 先程の営業妨害の人達とは別の人が悪い噂を流しているみたいなんです!!」

 

 葉月ちゃんとグレイを連れて大慌てで帰って来た瑞希。

 その推理を裏付けるような情報に皆が驚いてしまう。

 

「姫路、その悪い噂って一体どんな内容だったんだ?」

「本当に酷いんですよ! 『2年Fクラスの中華喫茶は汚いから行かない方がいい』って」

 

 瑞希の言葉と同時にアトラス・テティス・明久の3人が『そいつら全員ぶっ殺す』と各々のライブメタルを手に外に出て行こうとする。

 

「おい、3人共待て!」

「火災現場での死に様はとてもエグイ物だ…… 水分が失われ、肉体が乾いていく。 そして最後には……」

「あまりにも冷たすぎる冷気ってむしろ熱くて痛いんだよね」

「僕は決めた、もう迷わない。 立ちはだかる敵がいるというのなら……  そのまま叩き斬るだけだ!!!」

 

 

 雄二の制止も聞かずに前へと進んでいく3人。

 

 

「明久、まずはこの俺”近藤勇”に行かせろ。 シャルナクやムッツリーニ程じゃねぇが暗殺には十分自信がある」

「待て近藤、ここは『安心確実自爆王』の異名を持つこの俺、”武藤啓太”の出番だろう」

「いやいや、『正義の殺戮王、推参します』がキャッチコピーの”原田信孝”に任せてくれ。 連中全員をあぶりだして確実に始末してやる」

 

 その3人に便乗するようにFFF団の皆がどこから手にしたのか拳銃と大鎌を構えて鉄砲玉として志願してくる。

 アトラス達も”都合のいい捨て駒”が増えたと内心では歓喜程だ。

 

「だからお前ら落ち着けって言ってるだろ」

 

 雄二は呆れたように肩を竦める。

 

『全く、コイツら短気にも程があるだろ』

『そうか? オレはこういう行動派は好きだぜ』

『そうかしら? わたしにはバカ集団が血迷っているようにしか見えないけど』

『モデルZ達も大変なんだね。 でもリーダーの坂本君のおかげでみんな落ち着いてくれたようだし、これで落ち着いて対策を……』

『モデルX様。 申し訳ありませんが、あのバカ共は暴れるのをやめる為に大人しくしているのではありませんよ……』

 

 雄二の指示で落ち着いた事で安心しかけたモデルX。

 だが、モデルLから放たれた言葉に疑問が残るようだ。

 

『どういう事だい? リーダーがやめるように命令したから落ち着いたようにしか見えないけど……』

『ふっ、モデルXも甘いな』

『モデルX様は何もわかってねーですぜ』

 

 モデルZとモデルFの言葉にさらに動揺し、両者を交互に見てしまうモデルX。

 

『まあこの後の坂本の発言をよーく聞いて置いてください。 このFクラスの規格外っぷりがよく分かると思いますよ』

 

 モデルLがモデルXを一度落ち着かせたのとほぼ同時に雄二の方も準備を終えていたようだ。

 

「そう言う事は、クラス全員で役割分担を決めてしっかりとやるべきだ」

『『『『・・・・・・・・・・・・・・・』』』』

 

 ライブメタルと学園外組もFクラスの妙な連帯感にはドン引きしていた。

 

『モデルX様、ご理解いただけましたか? これがFクラスの絆なので……』

『絶対何かが間違ってる! 少なくとも蔓延る悪事が見過ごせないから行動している側では無い事だけは確かだよね!?』

「モデルX、あきらめなさい…… モデルZ達は変わってしまったのよ…… かつてのモデルZ達はもういないのよ……」

『エール! ”嘗ての旧友が不幸な目にあってしまったばっかりに狂ってしまった”みたいに言わないで! それ以前に僕はなんで一学校のクラスが総出で率先して事件を起こそうとしているのかについてツッコミを入れていたんだよ!!』

 

 Fクラスの異常性に対して反応に困った末に考える事をやめそうになってしまっているエールにとうとうツッコミきれなくなってしまったモデルX。

 プンスカと頭部?から煙を出して机の上で暴れているあたり、一人でツッコミを入れる事にまでなって心労が溜まり始めているようだ……

 

「今は情報が欲しい、チビッ子×2に聞くぞ。 その噂はどこで聞いたんだ?」

「チビッ子じゃないです。 葉月ですっ!」

「ボクにはグレイっていう名前があるんだ! ちゃんと名前で呼べよな!!」

 

 二人とも膨れ顔ですっかりご機嫌ななめである。

 

「ま、このクラスでそんな常識ある奴なんて居ないか」

「え~…… 葉月、バカなお兄ちゃんとも一緒に遊びたかったです」

 

 ギュッと葉月ちゃんから手を握られた明久。

 明久も普通に学園祭を楽しむ為だったら噂がいくら流れても全く気にしなかっただろうが、今回ばかりは大成功をおさめないといけないことを考えると遊びに行けないのが地味につらかった……

 

「ごめんね葉月ちゃん。 僕達はどうしてもこの模擬店を成功させないといけないから、あんまり一緒に遊びに行けないんだ」

 

 葉月ちゃんの頭をなでながら説得するが、葉月ちゃんの頬は相変わらず膨れたままだ。

 

「その程度なら問題ない。 正確な場所を知ってるのはそこのチビッ子二人と姫路だけなんだからな。 せっかくだし、飲食店やってる他のクラスの偵察も兼ねて一緒に遊んで来ればいいだろ」

「なるほど、葉月ちゃんがそれでもいいなら一緒にご飯食べに行く?」

「うんっ、行くですっ!!」

 

 雄二のフォローもあってか、先程まで膨れていた顔を満面の笑みにする葉月ちゃん。

 天真爛漫と呼ぶに相応しいくらいに表情豊かに変わる葉月ちゃんの事を見て皆も笑顔になって行った。

 ……中には怪しい雰囲気を醸し出しながら葉月ちゃんを見ている人物もいてかなり危険な状態だったのだが。

 

「じゃあ葉月。 お姉ちゃんも一緒に行くね」

「だったら、瑞希ちゃんと坂本君も一緒に行って来たらどうかしら? あなた達も召喚大会があるんだし、速めに食事は済ませておいた方がいいとおもうわよ」

「それもそうですね。 だけどエールさん、あんたはどうするんですか? 他にも見て回りたい所だってあるでしょうし……」

「私の事は気にしなくていいよ。 このバカ共(プロメテ・パンドラ・アトラス・テティス)の見張りも兼ねてこの教室にいるんだし」

「そうっすか。 ありがとうございます、エールさん」

「いいんですか? ではもう少しだけ楽しんで来ます」

 

 アトラスとテティスは問答無用でエール(とクラス代表として雄二)によって出動禁止令が出てしまった為、全員で6人。 混雑する学園祭の中を歩き回るには結構な人数だろう。

 

「さっきは悪かったなチビッ子。 話を再開するが、その悪い噂ってどの辺で聞いたのか教えてくれるか?」

「ぷぅ~っ! ……短いスカートを穿いたお姉さん達がいっぱいいるお店でした」

「確か、ヘリオスの奴と優姉ちゃんがそこにい……」

「なんだって!? 雄二、それはすぐに向かわないと!!」

「そうだな明久! 我がクラスの成功の為に、(低いアングルから)綿密に調査しないとな!!」

 

 聞いた瞬間に全力ダッシュをする雄二(・・)

 

「あ……あれ? アキはさっきまで坂本と最低な事を言っていたような気が……」

 

 だが、途中で明久はブレーキを掛け、そのまま女子の元に戻って来てしまった。

 

「あ、うん。 最初はそのまま突っ込んで行こうかと思ったけど、流石に女子と子供だけじゃ不安だから戻って来たんだよ」

「吉井君、十分酷いです……」

「それに、移動中にですら邪魔してきそうだし、雄二にはその辺の露払いでもしてもらおうかと思うんだ」

「やっぱバカのアニキは最低だな…… で、本音は?」

「きれいなスカートを穿いているお姉さんはバイト先で日常的に見ているから別にそこまで反応することじゃないし……」

「お兄ちゃんのバカっ! 少しは反応してほしいですっ!!」

「ええっ!!」

 

 なぜか女子供から罵倒されている明久。 なんで罵倒されているのかが全く理解できない明久はその場で立ち止まって考え込んでしまいそうになっていたので、意外と力があるグレイによって引き摺られて目的の場所まで移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここでいきなりプロメテ・坂本チームがリタイアです。
教科が英語だとカバーできる人物が殆ど居ないんですよねFクラスって……
唯一英語でも問題ない姫路さんは試合に出てるし、当然の結果ですねwww

シャルナクと秀吉の保健室での様子は想像に任せます。

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