元トリコ世界の料理人、遠月学園の教師になる(強制)   作:揚げ物・鉄火

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皆様お久しぶりです。
久しぶりにこの小説を開いたら☆1評価が付いていてショックを受けた作者です。
ゆっくりじっくりネットリと小説を進めて行きますので気長にお待ちください。

では、どうぞ。ごゆっくり!


三皿目

遠月学園進級試験の日

 

受験者達は、各グループごとにランダムに分けられ、そのグループを受け持つ教官の出す課題に応じて料理を作り合否の結果を得る。

というシンプルかつ厳しい試験が待ち受けていた。

 

そしてこの遠月学園の受験会場として使われる教室に入って来た受験生達が目撃したのは…

 

絶命して間もない規格外のデカさを持つ大熊(血抜き済み)とその熊の横でパイプ椅子に座りアーサー・コナン・ドイル著の『シャーロックホームズシリーズ』を読む新任の教師。

 

「え、ええと…」

「あら?もう時間なのね。早く入って来なさい入学試験を始めます」

一人の受験生が疑問の声を上げたのに気付いた教師はすぐに入って来るように促す。

 

ゾロゾロゾロ…

全ての入って来たのを確認した新任教師は、さっそく試験の説明を始める。

 

「さて全員揃った事ですし試験を始めます。審査員を務める『神野 龍華』と申します」

「「「っ!?」」」

自己紹介を終えた龍華の言葉に受験生達の数人に衝撃が走った。

 

「か、『神の料理人』!?」

「世界最高の料理人が審査員だと!?」

「上等だ…!」

「はいはい。雑談はそこまでにして下さい。私の審査を受ける自信が無い人は出て行っていいですよ」

その言葉とともに半数ほどの受験生達が一気に会場から出て行った。

 

「本当に出て行くとは…まあ良いです」

「今回のお題は『スープ』です。どのようなスープでも構いません。制限時間内に私が美味しいと思えるスープを作りなさい。食材は隣の部屋に置いてあるので好きなだけ使って下さい」

「制限時間は2時間です。じゃあ、始め!」パンッ!

龍華が手を叩き始まりの合図を出すと全員が一斉に駆け出し食材を持ってきて調理を始める。

 

 

カカカカカカカカッ!!

ズガガガガガガガガガガ!!

ダダダダダダダダダッ!!

包丁で食材を刻む音が教室中に鳴り響き、その数分後に食材を水に入れ火を点ける者も現れる。

 

「おーおー、張り切ってるねぇ。出来上がりまで暇だし続きを読もう…」

料理をしている受験生達たちを横目に読書を再開する。

 

 

 

 

「ふ〜ん…凄いわね」

小説の内容に関心しながら時計をチラリと見ると調理開始から1時間が経っていた。

 

「すみませ~ん。審査お願いしま~す」

「あら?」

声を掛けられ前を向くと目の下の隈がすごい男子生徒が立っていた。

 

「そうね。じゃあ…いただきます」

伊勢海老が丸々一匹入った器を受け取り一口飲む。

ズズ…ゴクッ

「これは…海鮮ベースのトマトスープね。甲殻類から採れる出汁を惜しみなく使っている。そして魚や海藻から採れる成分もふんだんに使われてトマトの酸味でさっぱりとしながらもしっかりと味に深みを持たせている」

「美味しいわ。合格よ」

「あざっす」

合格を言い渡すと頭を下げて出て行った。

あとなぜか白髪の女の子が「リョウ君なら当然よ!」とか言ってた。

 

「俺もお願いします」

「うん?」クンクン

次に来た皿から途轍もないスパイスの匂いが漂って来る。

 

目の前の褐色男子から皿を受け取り一口スープを飲む。

「あら?(さっきより期待出来そう)どれどれ…」

ズズズ…

(口の中で味と何十種類ものスパイスの香りが大暴れ…今年は面白そうねぇ)

「ふふふ…面白いわね。あなた名前を教えてくれるかしら?」

「葉山 アキラです」

「そう…合格よ。次も期待してるわ」

「ありがとうございます」

教室を出て行く受験生、葉山アキラの事を少し考えているとすぐに次の受験生が料理を持ってきた。

 

「あの俺も!」

「ズズ…不合格よ」

「な、なぜ!?味も食材も完璧なはず!なにが駄目だと言うのですか!!」

「完璧ねぇ…あなたの作ったワンタンスープ。僅かに肉の臭みが残ってるし味に癖があるのに薄い。これじゃあ合格は出せないわ。帰りなさい」

「クッ!」

私の言葉に受験生は顔を歪めながら教室から出て行った。

 

 

それから暫くは同じことの連続だった。

「薄いわ…不合格」

「下処理がなってない。不合格よ」

「食材の風味が調味料に負けてる。不合格よ」

「高級な物を使えば良いって訳じゃないわ。不合格よ!」

「食材の良さを殺してる。駄目ね…不合格!」

「臭みが強い…ちゃんとした処理した?不合格」

「味が濃すぎる。これじゃあ途中で飽きるわ。不合格!」

「うん?あなた…やる気あるの?不合格!」

「次からは、ちゃんと別々に煮込みなさい。不合格」

こんな感じでずっと不合格を出し続けていたら白髪の女の子がスープを持ってきた。

 

「審査お願いします。先生」

「あら?これは…ガスパチョね。スペイン発祥の冷製スープ…期待できそうね」

ズズ…

「う~ん!火照った体に染み渡るこの冷たさ!そして野菜等で栄養も豊富。美味しいわ!合格!」

「ありがとうございます」

 

「あ、あの…審査お願いします」

火照った体を冷ましてくれたスープの味を思い出しながら次のスープを待っていると青髪の女の子が少し大きめのお椀を持ってきた。

「これは…のっぺい汁?終盤へ来て郷土料理とはねぇ…では、一口」

ズズズ…ッ!

 

『ねえねえ龍華ちゃん!今度お母さんたちと一緒に料理作ろう?』

『いいわよ!今度こそ勝ってやるわ!』

『別に勝負をしてるわけじゃないんだけど…』

 

一口飲むと唯一無二の大親友との思い出が脳裏に蘇り自然と頬が緩む。

「(家族の温かく優しい味…面白い事やってくれるじゃない)…合格よ!」

「あ、ありがとうございます!!」

私が合格を言い渡すと女の子が何度もお辞儀をしながら教室から出て行った。

 

 

それから少し時間が経ち時計を見ると3時5分前を指していた。

「あと5分…こんな所かしら?」

「あの!審査お願いします!」

「…良いわよ」

残り五分で最後の受験生から皿を受け取り一口だけ口に含む。

その瞬間、口中に素朴ながらどこか懐かしく温かい味が広がり思わず口角を持ち上げた。

 

「鶏ガラベースに作った出汁…それに数種類の野菜や調味料を投入したコンソメスープ。素朴で面白みの無い味だけど何処か懐かしい…合格よ」

「あ、ありがとうございます!」

合格を言い渡すとその受験生は泣きながら頭を下げて来た。

その姿がかつての親友と重なって見えた。

気弱で泣き虫でそこか放って置けなくて…でもやる時はやる私の大親友。

 

「ねえ、あなた…」

だからだろうか…

「私の作るスープ飲んでみない?」

「え?」

つい声を掛けてしまったのは…

 

 

名も無きモブ視点

 

 

コトコトコト…

「あなた、何かアレルギーとかある?」

「いえ!大丈夫です!」

「そう…それは良かった」

審査員の神野 龍華様の言葉に反射的に答えた。

 

どうしてこんな事になってるのだろうか?

俺は、全国にチェーン店を持つレストランの店主の息子だ。

それも三番目の息子。

俺の二人の兄の内、片方は遠月を卒業し薙切グループの経営するレストランの料理人となった。

そしてもう片方の兄は、店を継いだ。

 

残された俺にはもう何もない。

それでもこの遠月の試験を受けに来た。

この試験に合格して少しでも父や兄の役に立ちたい。その一心で試験に臨もうとしたが審査員を見て絶望した。

 

審査員は、世界最高と名高い『神の料理人』の異名を持つ神野 龍華だった。

料理界に身を置く者で彼女の名を知らない者はいないと言っても過言ではない程の有名人で彼女の学生時代の逸話もいくつか残されている。

 

例えば、友を侮辱されたという理由だけで当時の十傑 第一席に食戟を挑み完膚無きなまでに叩き潰しその地位を奪った。

編入生でありながら常に遠月のトップであり続けた。

食事の前の挨拶を強要し応じなかった審査員から料理を奪いそれ以降、その審査員に一度も料理を提供しなかった。

連帯食戟の際、神の御業と称される究極の調理技術を駆使したった二人で(・・・・・・)当時の十傑を8人同時に打ち負かした。

等々、上げて行けばキリが無い…

これだけの事をやって置いて卒業後は、料理界から身を引き忽然と姿を消した。

それほどの料理人が何を思ったのかこの遠月に帰ってきた。

それも教師としてだ。

 

 

彼女を見た瞬間、合格は絶望的だと感じた。

彼女に『美味しい』と言わせるスープが課題だったがそんな料理、自分には作れないと思った。

『自信が無ければ出て行け』と言われ自分もそうしようと考えたが足が竦んで動けなかった。

そしてそのまま調理開始の合図が出され自分も調理を始めた。

それからの記憶はあまり残ってない。

気が付いたら昔、母さんが良く作ってくれたコンソメスープを作っていた。すぐに作り直そうと考えたが時間がまったく残ってない事に気が付き仕方なくそのスープを出した。

「ああ、これで終わりだ…父さんごめんなさい」と心の中で考えていると彼女が少しだけ口角を上げ合格を言ってくれた。

その言葉に思わず泣きながら崩れ落ちてしまった。

 

そしてその直後に「私の作るスープ飲んでみない?」と聞かれ今に至る。

 

 

龍華様が作っている物はスープらしいが…さっきから異常なまでの量の食材を使い出汁を取っていた。

乾物、海産物、野菜、骨、鶏がら等を同時に煮込み何度も濾してスープの透明度が増していき、それと同時に食欲を直接刺激する匂いが漂って来る。

 

「出来たわ…」

「…」ゴクリ

料理を作り終えた龍華様が俺の前にスープの入った皿を出してから俺の前の席に座った。

 

「料理名は…そうねぇ?『なんちゃってセンチュリースープ』ってとこかしら?気にしないで食べなさい」

「は、はい!いただきます」

「どうぞ…」ニコッ

 

ゴク…

「っ~~~~~~!!!??」

一口だけ口に含めた瞬間、口内で様々な味が大暴れを始めた。

乾物や海産物の味の深み、野菜特有の甘味、豚骨や鶏がらから採れる旨味、そしてそれらを全て一つに纏め上げる数々のスパイスの香り。

控えめに言って最高だった。

これまで料理人として生きて来た人生の中でこれほど美味な物を食べた事はないと断言できるほどに美味かった。

 

 

それから夢中になって食べ続けた。

「ふぅ…」

「美味しかった?」

「は、はい!!とても美味かったです!」

「そう?なら良かった。食後の挨拶は?」

「ごちそうさまでした!」

「お粗末様」

龍華様は、微笑んだまま食器を片付け洗い場に立ってから話を始めた。

 

「一つだけアドバイスして置くわ…あなたは料理人としての自分を信じなさい。あなたの料理人のとしての信念に従ってあなただけの料理を作りなさい。実家や家督を継ぐとか関係なしに自分が成りたいと思う自分を目指しなさい。これが『己を信じ切った料理人』としての唯一のアドバイスよ」

「龍華様…」

「分かったら出て行きなさい。目障りよ」

「はい!ありがとうございました!!」

その言葉を聞いて心の枷が取れたような気がして一気に楽になった。

これからは、なりたい自分に成ろう。そう決心して教室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに彼は、宿泊研修で退学となりましたとさ。

チャンチャン♪




龍華さんは、凝った料理よりも素朴で優しい味わいの家庭的な料理を好みます。
その理由は、またいつか作中で説明出来たらと思っています。
質問等が御座いましたら遠慮なくして下さい。
感想お待ちしてます。

では、また次回!
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