バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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俺と海辺とお祭り騒ぎ Part 2

 出発すること三時間。

 長い道程を経て辿り着いたペンションは、緑に囲まれつつも潮の香りが届くような好立地に建てられていた。

 

 「わぁ・・・・・・。眺めもいいですね・・・・・・」

 

 「凄いわね〜。風も気持ちいいし」

 

 「・・・・・・絶好のロケーション」

 

 「晴れて良かったよね〜」

 

 「わざわざ遠出をした甲斐があるわね」

 

 車から降りた女子勢+バイクから降りた優子が外を見て感嘆の声を上げた。

 小高い丘の上にあるだけに、眺めも良く、建物自体は古そうではあるものの、夏の海を楽しむには最高であることに変わりはない。

 

 「いたたた。やっと着いたか。良し、早速泳ぎに行くとしようか」

 

 「どうしたのじゃ斗真?何故腰を痛めておるように見えるのじゃが・・・・・・」

 

 「あ、ああ大丈夫だ秀吉。移動してる間に優子にちょっと痛めつけられただけだから」

 

 「姉上!斗真になんてことをするのじゃ!これでは斗真だけが海水浴を楽しむことができぬぞよ!」

 

 「うるさいわね!こればっかりは仕方なかったんだから!」

 

 「じゃからって、なにをどうすれば斗真はああなってしまうのじゃ!やはりワシが斗真と一緒に行くべきじゃったと今更後悔しかねないぞ!」

 

 「な、なによ!自分が斗真と一緒に行けなかったからってそこまで言わなくてもいいでしょ!」

 

 俺は辿り着く前に優子に腰をやられてしまい、立っているのがやっとである程になってしまった。

 秀吉は俺を痛めつけた優子に叱責するが、優子は悪いと自覚しつつもムキになって反論する。

 

 「落ち着けよ二人共。俺は大丈夫だから心配ないって。折角海に来たんだし、ここに来てまで喧嘩するなよ」

 

 「優子。言ってる本人がそう言っているんだからここは弟君と仲直りをしましょう」

 

 「わ、わかったわ・・・・・・」

 

 「斗真がそう言うのなら仕方ないぞい・・・・・・」

 

 俺と愛子が宥めると二人は渋々納得し、喧嘩を止めてくれたのだった。

 

 「で。どうするんだ? 荷物を置いてすぐにでも海に向かうか?」

 

 「そうだね。海が見えたら泳ぎたくて仕方なくなっちゃったし」

 

 「・・・・・・・・・・(コクコク)」

 

 ここまで来たんだ。早く水着に着替えて泳ぎに行きたいし。秀吉と優子がこの前買った水着を着るところを早く見てみたい。

 

 「それでは荷物を部屋に運んだら海に行きましょうか」

 

 「「「はーい」」」

 

 

 

 

 

 「良し。今度はバッチシじゃ」

 

 「待て秀吉。その格好で行ったら監視員に注意されるかもしれないから止めておけ」

 

 秀吉たっての希望により、俺は秀吉と同じ部屋で水着に着替えている。俺がボクサーパンツの水着を履いているのに対し、秀吉はというと男物のトランクスを履いていた。

 

 「何を言うか。ワシは男じゃから別に問題はない筈じゃ」

 

 「いや、そういうつもりで言ってるわけじゃ━━って行ってしまった」

 

 秀吉にはこの前オーバーオールの水着を買ってあげたにも関わらず、自身が男として見られたいあまりトランクスだけを履いて明久達が待っているところへ向かっていったが。俺の予想が正しければおそらく

 

 

 『・・・・・・む。明久たちはあそこじゃな。おーい、お主ら━━』

 『あ、あなたっ! 何をしているんですか!?』

 『んむ? なんじゃ、監視員の方じゃな。そんなに血相を変えてどうしたのじゃ?』

 『どうしたのじゃ、じゃありませんっ! どうしてあなた、上を着ていないんですか!』

 『??? どうしてと言われても、普段男物の水着に上は着ないものじゃと』

 『女の子が男物の水着を着る時点で間違っているんです! とにかくこっちに来なさい!』

 『ま、待つのじゃ! ワシは男じゃからこれで良いと』

 『私の目が黒いうちは、この海水浴場でそんな過激な格好は許しませんからね! ここは子供たちも大勢いるし、怖いお兄さんとかも一杯いるんだから!』

 『だから違うのじゃ! とにかくワシの話を━━』

 『上を着ない限り、絶対に海水浴場には入らせませんからね! 途中で脱いでもダメですよ!きちんと遠くから双眼鏡で監視しますからね!』

 『だから待つのじゃと言うとるのに━━!』

 

 

 やっぱりこうなったか。秀吉は男だが、中性的な顔をしていて体つきが華奢な為、初見の人からすれば女の子が上半身裸でいるように見えてしまうのは当然だ。

 

 「うぅ〜。ワシは間違ってはおらぬのにどうしてこうなってしまうのじゃ」

 

 俺のところに戻ってきた秀吉は監視員にTシャツを着せられ、とてつもなく悲しそうな顔をしていた。

 

 「そうガッカリするなよ秀吉。ほら、この前買ったやつに着替えて明久達が待っているところへ行こうじゃないか」

 

 「斗真。一応聞いておくがお主もワシを女として見ておるのか?」

 

 秀吉は涙目になりながら俺に尋ねる。秀吉の泣き姿は可愛らしいが今はそんなことに感心してる場合じゃないな。

 

 「そんなことはないよ。秀吉だって立派な男だけど付き合ってる俺や実の姉である優子以外の人からしたら秀吉が女の子に見えてしまうのは仕方がないんじゃないかな。だから、そうつまらないことでいじけんなって」

 

 「つまらないこととはなにぞ!ワシにとっては深刻な問題なのじゃぞ!」

 

 秀吉は顔を膨らませては俺の胸にポカポカと手を打ちつける。なんだろう。痛みよりも可愛らしさが勝っているんだが。

 

 「秀吉。斗真が困っているみたいだからやめなさいよ」

 

 「ん?優子か」

 

 そう言いながら注意してきたのは秀吉の姉の優子だ。優子は既に水着に着替えており、この前買った紺色のハイネックビキニを着ていた。

 

 「うん。やっぱり優子にはその水着が似合っているな」

 

 「そ、そうかな・・・・・・」

 

 俺が褒めると優子は顔を赤らめていく。うん。強気な顔をしてるのもいいが、こうやって恥ずかしそうにしてる時の優子も可愛いよ。

 

 「姉上。ワシだって男として見られるように日々努力はしておるのじゃぞ」

 

 「そうは言うけどね秀吉。アンタが監視員にマークされている以上アタシたちも注意されてしまうんだから諦めなさい」

 

 「うぅ〜。それはいくらなんでもあんまりじゃわい」

 

 「なによ。普段から男らしくしていないからそうなったんでしょう」

 

 「ワシだってそれなりに努力はしてきたというのに・・・・・・」

 

 「そうメソメソするなよ秀吉。ほら、俺と優子はここで待っているから早く着替えてこい」

 

 「う、うむ。わかったのじゃ」

 

 秀吉は観念したのか、俺が渡したオーバーオールの水着を手に取ると、着替える為にペンションへ戻った。

 

 「はぁ。まさか泳ぐ前にここまで疲れるとはな・・・・・・」

 

 秀吉が着替え終わるのを待つ間、俺は近くの岩場に腰を下ろす。

 

 「斗真」

 

 「ん?どうした優子」

 

 優子は俺の隣に座るともたれかかるように俺の左肩にくっつき始めた。

 

 「その、さっきはごめんなさい・・・・・・。思わずカチンときてしまったから、つい・・・・・・」

 

 「ああアレか。別に気にしなくていいぞ。さっきも言ったが俺はそんな気にしてはいないし、もう大丈夫だからな」

 

 「そう?」

 

 「ああ。だからさ優子。もうさっきのことは忘れて、思いっきり海水浴を楽しもうじゃないか」

 

 「うん。ありがとう斗真」

 

 俺がもたれかかっている優子の肩に手をやると、優子は少し恥ずかしながらも嬉しそうに微笑む。

 

 「すまぬ。待たせたのじゃ━━って姉上!何故自分だけ斗真にくっついておるのじゃ!」

 

 オーバーオールの水着に着替えた秀吉がこっちに来たが、優子が俺にもたれかかっている姿を見た瞬間、ムッとした顔つきになった。

 

 「別にいいじゃない。斗真はアタシの彼氏なんだからこれくらい問題ないでしょ」

 

 「むぅ。ワシが着替えておる間になんてことを・・・・・・。ええい! 姉上ばかり狡いぞ! ワシも斗真とくっつきたいのじゃ!」

 

 秀吉は俺の右隣に来ると優子と同じように俺の右肩にくっつき始めた。

 

 「お、おい秀吉。いくら優子に嫉妬したからってそんなことする必要は━━」

 

 「ワシも斗真の恋人じゃからこれくらいは別に構わぬじゃろう」

 

 「ちょっと秀吉。いくらなんでもくっつき過ぎよ!斗真が嫌がってるじゃない!」

 

 「いや、俺は別に嫌がっては━━」

 

 「姉上こそ斗真とかなり密接しておるではないか!それなのにワシだけ除け者にするとは頂けぬぞい!」

 

 二人が俺を板挟みにして喧嘩を始めてしまった。はぁ、どうして二人はこうやってすぐに喧嘩してしまうんだよ。誰か助けてくれないかな〜。

 

 「あ、いたいた。おーい三人とも〜。他の皆が待っているから早くこっちに来なさいよ〜」

 

 声のした方に向いてみると、水着を着た愛子が俺達に向かって手を振りながら声を上げていた。

 

 「お、愛子が呼んでるみたいだし。早く明久達のいるところへ向かおうか」

 

 「わかったわ。秀吉、続きはまた後でね」

 

 「了解した。後できっちり話をつけようぞ」

 

 いや、もうこれ以上喧嘩をするのは止せって言いたいところだが、今の二人には多分聞こえはしないだろうしほとぼりが冷めるのを待つしかないか。

 

 「あ、やっと来た。もう、あまりにも遅いから何やってたか心配したんだよ」

 

 「すまないな明久。ちょっといざこざがあって遅れてしまった」

 

 俺達が着くと明久を始めとするいつものメンバーが集まっていた。

 ムッツリーニはここにいる女子の水着を見たからか鼻血を出して失神しており、雄二も鼻血を出してはいるがおそらく霧島さんにやられてああなっているだろうな。霧島さんはビキニを着ている玲さんの胸を揉んでいて、島田さんと姫路さんはおそらく玲さんのスタイルを見て自分達との差を感じたからか海辺で物凄く落ち込んでいた。

 

 「・・・・・・なんで海水浴に来ただけで血は流れて葬式みたいな雰囲気になるんだよ」

 

 「はぁ、これじゃあ先が思いやられるわね」

 

 「まったく持ってそうじゃな」

 

 まぁ折角の海なんだし、ひとまず思いっきり遊び倒すとしますか。

 

 

 

 

 

 「スイカとバットを用意してるとは、明久にしては気が利くな」

 

 「海と言えばスイカ割りだからね。きちんと冷やしておいたし、きっと美味しいはずだよ」

 

 「・・・・・・・・・・暑くて喉も渇いているから、楽しみ」

 

 「そうだな。ひとまず皆が待ってるだろうから早く行こうぜ」

 

 先程まで海で海水浴をした俺達男四人はスイカとバットを抱えてペンションから海へと続く道を歩いていた。

 

 「そういや、そろそろ昼時か。スイカとは別に昼飯も調達しておかないといけないな」

 

 「え? 塩水がいっぱいあるじゃない」

 

 「なんで海水浴に来てまで塩水を勧めるんだよお前は」

 

 「平然とその答えを返せるお前って、ある意味凄いよな・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・よく生きてると思う」

 

 寧ろ塩水だけで生きていけるのはコイツだけなんだがな。

 

 「火を起こせるのなら、海で貝を採っても面白そうだな」

 

 「あ、それいいよね。持って帰れば味噌汁とかにも使えるし」

 

 「悪いけどそれは却下だ。勝手に貝を採ることは条例で禁止されているからな」

 

 「え?そうなの?」

 

 「なら、海の定番の焼きそばやカレーやイカ焼きあたりにしとくか━━ん? どうしたムッツリーニ?」

 

 「・・・・・・・・・・あれ」

 

 雄二が尋ねると、ムッツリーニは遠くに見える玲さん達の姿を指差した。ん?あの様子からしてひょっとすると

 

 

 『カワイイ子ばっかりだね〜。何? どっから来たの?』

 『あ、いえ。私たちは、その・・・・・・』

 『向こうにダチもいるからさ。良かったら一緒に遊ばない? そっちの綺麗なお姉さんも一緒にさ』

 『ちょっと!止めなさいよ!』

 

 

 あ〜。これは海に来たらよくあるアレか。優子達、面倒なヤツに絡まれたな。

 

 「ナンパだな。あの面子なら仕方ないことだが、面倒なことだな」

 

 「明らかに女子達は嫌がってるみたいだし、助けてやらないとな」

 

 「・・・・・・・・・・始末する?」

 

 ムッツリーニは懐からスタンガンを取り出しチラつかせるが。海でそれは扱いを間違えれば大惨事になり兼ねん。

 

 「ああ、そうだな・・・・・・。やっちまうか。その方がてっとり早いだろ━━」

 

 「よし。こっちから仕掛け━━」

 

 「いや、そんなことをしなくても大丈夫だよ」

 

 ムッツリーニを行かせようとした雄二と攻撃を仕掛けようとした俺を明久が止める。

 

 「ん? 大丈夫って、どうしてだ?」

 

 「姫路さんたちだけなら心配だけど、姉さんがいるからね。うまくあしらうはずだよ」

 

 明久はそう言ってはいるけど、俺が思うにあの人は非常識な事をしでかしそうな気がするんだがな。まぁひとまず様子だけ見てみるか。

 

 

 『申し訳ありませんが、お断りします』

 

 

 玲さんは相手の押しの強さに左右されず毅然とした口調で断りを入れた。これだけなら心配はないかもしれんが

 

 

 『え? なんで? カレシでもいんの?』

 

 

 向こうも引き下がりはせず、なんとかしようと食い下がっている。顔ぶれからしたら簡単に諦めたくないと思うのも当然かもしれんが。

 しつこくせまりくる相手に玲さんが生真面目に返事をする。

 

 

 『いえ。彼氏はいませんが』

 『え? いないの? ラッキー♪ だったらさ、オレたちと』

 『彼氏はいませんが、代わりに弟がいます』

 

 

 は?なんでそこで明久を出してくるんだ? ナンパを断る口実としては弱すぎるんだが

 

 

 『はぁ? 弟? そんなの別にどうでもいいじゃん。オレだって弟くらいいるぜ』

 

 

 やはりその程度では引き下がらないようだ。まぁ弟と彼氏は違うし、弟がいるからとはいえ別に障害になるわけではないしな。

問題はそこからどうやってナンパを断るかだが

 

 

 『侮ってはいけません。私と弟の関係は凄いですよ』

 『へ?関係が凄いって、ナニ?』

 『あまり大きな声では言えませんが、実は・・・・・・(ゴニョゴニョ)』

 『へ・・・・・・、変態だっ!』

 

 

 ちょっと待て。ナンパ男に何を吹き込んだかめちゃくちゃ気になるんだが

 

 

 『それだけではありません。他にも毎日・・・・・・(ゴニョゴニョ)』

 『そ、それは日本の法律で許されるのか!?』

 

 

 ナンパ男の動揺が遠くからでも見てわかるくらいだから俺の予想通り、玲さんはナンパ男にろくでもない事を吹き込んだとみて間違いなさそうだ。

 

 「こうしちゃいられない!早く止めないと!」

 

 明久も玲さんに危険信号を感じたのか、声の方へとダッシュする。

 

 

 『いえ。驚くのはまだ早いですよ。更に、弟の要求次第では(ヒソヒソ)を使った(モニョモニョ)なども━━』

 『う、嘘だろ・・・・・・っ!? これ以上、俺の中の常識を壊さないでくれ・・・・・・っ!』

 

 

 あ〜あ、どうやら手遅れになってしまったようだな。

 

 

 『ちょっと姉さん!何を話してるの!?』

 『っっ!? ね、『姉さん』だと・・・・・・? ってことはコイツ━━』

 『あの、何を言われたかわからないけど、多分それは誤解で』

 『で、出たぁーっ! 鬼畜変態の弟だぁ━━っっ!! 身内も性別も気にしないケダモノの王だぁ━━っっ!!』

 『こら待てぇっ! 誤解したまま逃げるなっ! お願いだから待ってぇ━━っっ!!』

 

 

 ナンパ男は凄い速さでその場を走り去っていった。どうやら明久は実の姉にもう二度とここには来られないほど酷いイメージを植え付けられてしまったようだ。

 

 

 『まったく、ああいうのは困りものですね』

 『僕にとっては姉さんが一番の困りものだよ・・・・・・』

 

 

 明久、ご愁傷様。俺が玲さんと実の姉弟になっていたら俺は間違いなくグレてしまうだろうな。




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