バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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 更新が遅れてすみません。ここのところ、モチベーションが下がっていて中々上げれませんでしたが更新は続けていきますのでよろしくお願いします。


俺と海辺とお祭り騒ぎ Part 5

 「僕たち、よく生きてるね・・・・・・」

 

 「ああ・・・・・・。よく覚えていないが、リアルに地獄を見てきたような気がするぞ・・・・・・」

 

 「お主ら二人のうわごとがつながった時は、正直もうダメかと思ったぞい・・・・・・」

 

 「瀕死寸前の状態から助かったのは奇跡としか言いようがないな・・・・・・」

 

 五人でペンションのリビングのソファにかけてお互いの無事を喜び合う。まぁ女子を放ったらかしにしてナンパしに行った明久らに非があったのだが、拷問がマシに思えるほど凄まじいお仕置きから無事に生還できたのは流石としか言いようがない。

 あの後、暴走していた姫路さん達をなんとか取り押さえて明久を救出した後、人命救助やら通報を駆けつけてきた警察からの事情聴取やらで後始末に追われてしまい。折角の海水浴が台無しになりかけた。

 

 「けど、意外だよね」

 

 「ん? 何がだ?」

 

 「いや、僕と雄二って相当マズいことやったんじゃない?」

 

 「ああ、そうだな」

 

 「・・・・・・・・・・異性と一緒に出かけているのにナンパなんて、失礼極まりない」

 

 ムッツリーニが咎めるように明久達を見つめる。こればっかしは明久と雄二の自業自得だ。

 

 「その割には罰が軽いと思わない?」

 

 「確かにそうだな。この程度で済ませるとは随分甘いな」

 

 「世間一般では臨死体験を軽い罰とは言わんと思うのじゃが・・・・・・」

 

 「諦めろ秀吉。俺達の周囲にいるヤツは世間とは常識が合っていないからな」

 

 こればっかしは仕方ないとして。問題はここからだ。

 

 「ということは、つまり」

 

 「ああ。まだ何かあるだろうな」

 

 「ま、そうなって当然だな。で、この後の予定なんだが━」

 

 「どうする?逃げる?」

 

 「いや、相手の考えが見えないうちから逃げるのもまずい。万が一、もう許されているのだとしたらまた余計な怒りを買うだけだからな」

 

 「俗に言う藪をつついて蛇を出す、か」

 

 雄二が言うように、楽しい旅行という目的で来ているので、もしかしたら姫路さん達の機嫌が良くあの程度で済まされた可能性もあるかもしれん。そう考えると、追い詰められるのがわかっていながら逃げるのは愚かとしか言いようがない。

 

 「それに、今から近くの町でやってる祭に出かけるんだろ? 何か酷い目に遭うようなこともそうそう起こらない━━と、信じたい・・・・・・」

 

 「まぁ、荷物持ちや何かを奢るくらいはあり得るだろうね・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・それは、いつものこと」

 

 「寧ろその程度で済まされればありがたいんだが」

 

 「まぁいっか。なるようにはなるよね」

 

 「だな。どうせ逃げ回っても殺されるんだ。気にするだけ損だぞ」

 

 「だよね」

 

 「・・・・・・・・・・達観してる」

 

 「それに当てはまるのは俺達以外考えられないけどな」

 

 ま、とりあえずお仕置きに関してはここまでにするとして、早速女子達と合流しますか。

 

 「それにしても、随分と遅いな。着替えに何分かけてるんだ?」

 

 「ん?そういやそうだな。ひょっとすると、この前みたいに浴衣に着替えてるんじゃないかな」

 

 「え? 浴衣? てことはこの間みたいに姫路さんたちはあの可愛らしい格好をするっていうの?」

 

 「ああ。なにせ、祭に行くんだから女子が浴衣を着ていくのは当たり前だからな」

 

 普通に着替えるだけならそんなに時間は掛からないと思うが、この間の肝試しみたいに浴衣に着替えてるとするのなら時間が掛かってしまうのも頷ける。

 

 

 「「「お待たせー」」」

 

 

 華やかな声が上がり、それと同時にリビングのドアが開かれる。そして俺の予想通り、女子達は浴衣を身に着け華やかな姿を俺達に見せつける。

 

 「皆、随分と時間がかかってたんだね」

 

 「お、凄いな。そんなもんを用意していたのか」

 

 「・・・・・・・・・・時間がかかるのも納得」

 

 「全員似ておるではないか」

 

 「思わず見惚れてしまいそうだな」

 

 ドアから姿を覗かせた女性陣は、青や紫、ピンクに白と色とりどりの浴衣を着ていた。

 浴衣にはそれぞれ柄が入っており、朝顔や牡丹、葡萄と様々な模様がしてある。しかしまぁ、並んでいるのを見る限りじゃ、まるで浴衣のモデルショーをするみたいなもんだな。それも全部、皆が可愛らしく、スタイルが良いから成り立っている。

 

 「へぇ〜。綺麗だね〜。髪型も変えてるから、グッと色っぽくなってるよ」

 

 「姫路さんは元から可愛いから浴衣が似合うのも当然だな」

 

 「そ、そうですか?」

 

 姫路さんが揃ってくるっと回ってみせる。うん。姫路さんは元から可愛いし、浴衣も着ているから尚更━━痛だだだだ!

 

 「斗真。アンタは相変わらず懲りないわね」

 

 「痛ってぇな。ちょっと見惚れてただけなんだしそう怒るなって」

 

 「ふん!どうせアタシは瑞希みたいに可愛らしくありませんよ」

 

 優子は妬いてしまったのか。姫路さんに少し見惚れてただけで俺の頬を抓る。

 

 「そうでもないよ。優子だって浴衣姿は姫路さんに負けないくらい似合ってるし綺麗じゃないか。俺からすれば今すぐムッツリーニに写真をとって現像して欲しいくらいにな」

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 え?褒めてあげたのにどうして疑ってるような目を俺に向けるの?俺は冗談で言ったつもりじゃないのに。

 

 「あ、あの・・・・・・優子さん?」

 

 「・・・・・・斗真」

 

 「え?」

 

 「・・・・・・バカ」

 

 優子は顔を赤らめながら恥ずかしそうに口にする。どうやら俺の言ったことは優子にとって嬉しかっただろう。

 秀吉は口をムッとして面白くなさそうな顔をしているが。

 

 (斗真君。相変わらず優子の扱いは上手いわね)

 

 愛子が俺に近付き耳打ちをしてきた。

 

 (ま、まぁな。優子とは一年以上の付き合いだし。これくらいのことは━━)

 

 (ふふふっ。浴衣だと優子、特に可愛いよね〜。ほら、着物ってあんまりおっぱい大きくなくても格好つくでしょ? そうなると、優子って他はレベルが高いから特に可愛く見えちゃうんだよ。着物って優子や島田さんやボクみたいに胸が小さい女の子には助かるよね)

 

 (そ、そうだな。でもまぁ愛子だって可愛いんだし。そこまで胸の大きさを気にしなくてもいいんじゃないか)

 

 (ふ〜ん・・・・・・? そう、だったら良いもの見けてあげる。いい、見てて)

 

 (は?)

 

 愛子はそう言いながら裾の辺りに手をやると、俺の方に向いた。

 

 「ちらっ」

 

 

 『・・・・・・・・・・っ!?(ブシャァアアッ!)』

 

 

 愛子が浴衣をはだけると肌を露出する。それを見たムッツリーニは鼻血を大量に噴出した。

 

 

 『む、ムッツリーニ!? 何事じゃ!?』

 『・・・・・・・・・・俺が一体、何をしたと・・・・・・?』

 

 

 ムッツリーニは恨めしそうに俺と愛子を見ながら床に沈んでしまう。

 

 「どう? ムッツリーニ君もいつもより興奮していたでしょ? これもボクの胸が小さくても浴衣のおかげで色っぽく見えてるからだよね」

 

 「いや、ムッツリーニが興奮して鼻血を出すのは何も愛子に限ったことじゃないと俺は思うんだが・・・・・・」

 

 心なしか鼻血の勢いが凄まじかった気がするが。

 

 

 『生きておるかムッツリーニ!? 一体誰がこんな酷い真似を!』

 『・・・・・・・・・・もう、ダメかもしれない・・・・・・』

 『しっかりするのじゃムッツリーニ!まだ死んではならん!』

 『・・・・・・・・・・だが、これはこれで・・・・・・満更でもない・・・・・・』

 『・・・・・・なんというか、心配しておる自分が阿呆のように思えてくるぞい・・・・・・』

 

 

 そう言えば、ムッツリーニって輸血パックのストックは足りてたかな?

 その後、明久がクーラーボックスから輸血パックを取り出し、秀吉に渡していると、後ろの方では霧島さんが雄二に話しかけていた。因みに霧島さんが着ている浴衣は玲さんが用意していたとのことだ。

 

 「・・・・・・雄二。私の浴衣、どう?」

 

 表情からはあまり窺えないが、霧島さんはどこか照れ隠しそうに雄二の前に一歩出て浴衣姿を披露する。

 

 「ん? ああ、そうだな〜・・・・・・。まぁ似合ってるんじゃないか?」

 

 ナンパの件で負い目があるからか、雄二は霧島さんを形だけ褒めている。少しくらい誠意があってもいいと思うが。

 

 「・・・・・・じゃあ、私と結婚したい?」

 

 「全然」

 

 「・・・・・・じゃあ、私と婚約を結びたい?」

 

 「微塵も」

 

 「・・・・・・じゃあ、雄二━━」

 

 「まっぴらだ」

 

 「━━生きて、いたい・・・・・・?」

 

 「おおっ! 翔子は本当に可愛いな! 見間違えたぜっ!」

 

 「・・・・・・雄二は素直じゃない」

 

 「お前な・・・・・・。一応、言っとくと、今のは“脅迫”って言うんだぞ・・・・・・」

 

 「・・・・・・恋愛では手段を選んじゃいけないって、お義母さんが言ってた」

 

 だからって、彼氏に脅迫するのはどうかと俺は言いたい。

 

 「さて。それじゃあお祭りに行きましょうか。こんなことをしていると間に合わなくなってしまうかもしれませんからね」

 

 玲さんがぱんぱん、と手を叩いて皆を促す。ん?間に合わないって玲さんは言っているけど今はまだ日が沈み始めたばっかで、屋台が閉まるまでにはかなりの時間があるんだが。

 

 「そうですね玲さん。間に合わなくなったら困りますものね」

 

 「急ぎましょ。ウチ、日本のお祭りってまだこれで二度目だから楽しみなのよね〜」

 

 「・・・・・・遅れたら、まずい」

 

 「ボクもすっごく楽しみ。早く行こっ」

 

 「ほら、時間も迫ってるんだし、さっさと行きましょう」

 

 俺が感じている疑問をよそに、女子達は『急げ急げ』と繰り返す。なんだろう。嫌な予感がするのだが。

 

 「雄二、皆あんなに急いで何かあるのかな?」

 

 「さてな。やっぱり色気より食い気ってことなんじゃないか? 俺もかなり腹が減ってるからな。気持ちはわからんでもない」

 

 「ま、今の状況じゃ女子達は何を考えているかわからないしな」

 

 「・・・・・・・・・・たこ焼き、焼きそば、お好み焼き」

 

 ムッツリーニが食べ物の名前を口にすると、少し腹が減ってきた。俺も早く何かを口にしたい。

 

 「ほら、アキくんも用意をして下さい」

 

 「はーい━━ってあれ? 姉さん、車で行くの?」

 

 玲さんが車のキーを手に持っているところからして、祭が行われている場所はかなり距離があるみたいだ。となると俺もバイクで行くしかなさそうかな。

 

 「はい。海よりは離れていますし、着替えも持っていきますので車の方がいいでしょう」

 

 「ふ〜ん」

 

 浴衣だから歩きにくいって可能性も考えられるが。玲さんのことだし、何か良からぬことをしでかしそうだな。着替えを持っていくのはどうしてだかわからないが。

 

 「それじゃ、海に続いて夏の風物詩を楽しもうか」

 

 「そうだな」

 

 「・・・・・・・・・・良いショットが撮れるはず」

 

 「まさに、夏という感じじゃな」

 

 「じゃ、さっさと向かうとしますか」

 

 これから聞こえてくるであろう祭り囃子を想像すると、楽しみで一杯になるな。

 

 

 

 

 

 近くの学校の校庭を使った臨時駐車場から歩くこと五分。大きな公園を使ってた夏祭り会場は大勢の人で賑わっていた。

 

 「斗真。あれ買ってよ〜」

 

 「ん?あんず飴か。いいよ」

 

 「ありがとう」

 

 「斗真よ。ワシはあれが食べたいのじゃが」

 

 「焼きそばか。オーケー、買っとくよ」

 

 「すまんのう」

 

 「ねぇねぇ斗真君。ボクは君を食べてみたいかな〜」

 

 「俺か?いいぜ、早速━━」

 

 「ちょっと愛子!アンタは何を言ってるのよ!」

 

 「お主には絶対に斗真を渡さぬぞ!」

 

 「お、おいお前ら。今のは冗談に決まってるから真に受けるなって。てか、こんな人混みの中でくっつくなよ」

 

 屋台に着いて直ぐ様、あれやこれやと見て回っては買食いをしていく俺達。秀吉は焼きそばを美味しそうにズルズルと食べ、優子はあんず飴を口にする。

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 「な、何よ斗真・・・・・・?」

 

 「あ、悪い悪い。優子が飴を口にする姿が綺麗だったから思わず見惚れてしまって・・・・・・」

 

 「・・・・・・そ、そう・・・・・・」

 

 「むう。それじゃったらワシもあんず飴を買えば良かったかのう・・・・・・」

 

 「まぁまぁ落ちつきなよ。時間はたっぷりあるんだしさ」

 

 愛子が秀吉を落ち着かせ、俺達四人は適当に回って行く。屋台には定番であるたこ焼きや焼きそばは勿論、かき氷、ベビーカステラなど種類が様々で同じ食べ物が重なっている屋台もあるのでどれが美味しいのか迷ってしまいそうだ。

 

 「う〜ん。俺はどれにしようかなぁ。どれも皆美味しそうだし・・・・・・」

 

 「規模の大きい祭りだと同じ種類の屋台が複数出てたりするでしょ?」

 

 「するわね・・・・・・」

 

 「例えば焼きそばなら、入口から二件目は五十円安かったとか。四件目は具材に海鮮が入ってて他よりボリュームがあったとか。ボクってばいつも買ってから後悔するんだ」

 

 「それはわかるな。俺もそうやって複数ある場合は大抵客の出入りか値段で決めるけど」

 

 「アタシは食べたいと思ってから一番最初に出会った屋台の焼きそばを買うわ。それ以外選択肢に入れなければ後悔しないもの・・・・・・」

 

 「へ〜」

 

 「嘘じゃ!?去年、後から買ったワシの焼きそばの方が美味しそうだと横から・・・・・・」

 

 「秀吉、ほら、アタシのあんず飴を食べなさい」

 

 「ん?確かその時に優子があまりにも買食いしまくったからいつもより体重が増えたって秀吉から━━」

 

 「斗真。アンタは黙ってなさい」

 

 「痛だだだだ!どさくさにまぎれて俺の関節を外そうとするな!」

 

 「あははは。三人とも。相変わらずだね〜」

 

 そんなこんなで楽しい時間を過ごしていき、およそ三十分くらい経った後。

 

 「ねぇ斗真。なんか催し物があるみたいだよ」

 

 公園の野外ステージの近くを通りかかると、何らかの看板が置いてあったので見てみることに。そこには明久達もいて看板を見ていた。

 

 「『納涼、ミス浴衣コンテスト! 町一番の夏美人を見つけ出せ』か」

 

 「なんか面白そうじゃのう」

 

 「そうね。このお祭りは町興しも兼ねてるからか、色々手間がかかってるみたいね」

 

 「・・・・・・・・・・撮影チャンス」

 

 「ムッツリーニ。いつの間にいたんだ?」

 

 「へぇ〜。ボク、ミスコンがあるなんて、全然知らなかったよ〜」

 

 先に看板を見ていた明久達を中心に皆が集まってきた。

 

 「・・・・・・面白そう」

 

 霧島さんが雄二の裾を掴んでそう呟く。霧島さんがこういった催し物に興味を持つのは意外だな。

 

 「じゃあ、いっそのこと出場してみたらどうかな? 皆ならきっといい線までいくと思うよ」

 

 明久が言うように、ここにはかなりの美人が勢揃いしている。浴衣も似合っているから優勝は間違いなしだな。問題はこの大会に出てくれるかどうかだが。

 

 「あ、それはいいですね。頑張って、皆でこれに出てみませんか? きっと良い思い出になると思います」

 

 意外にも姫路さんはミスコンに出ると返事をする。まさか、本当に出てくれるとは。

 

 「えぇぇっ!? いいの、姫路さん!? 嫌じゃないの!?」

 

 「はい。恥ずかしくはありますけど、そのくらいへっちゃらですっ!」

 

 ホントにどうしたんだ? あの姫路さんがここまで積極的になるなんてあまりにもおかし過ぎるぞ。

 

 「ホントにホントに、いいの? ステージに出るんだよ」

 

 「はい。大丈夫です。皆と一緒なら頑張れますし、良い思い出になると思いますから」

 

 姫路さんは笑顔を崩さずにそう呟く。ここまで言うのなら本当に出る気満々だな。

 

 「どうする優子?姫路さんがああ言ってる以上出ないわけにもいかないだろ?」

 

 「当然よ。アタシだって瑞希には負けてられないんだし、アタシも出場するわ」

 

 「そうか。じゃあ早速申し込んで来いよ。優子や姫路さんだけじゃなくここにいる皆は可愛いから勝てるかもしれんしな」

 

 俺がそう言ってる一方、姫路さんは笑顔でここにいる皆にこう告げた。

 

 

 「はい。出てみましょう! ・・・・・・・・・・ ここにいる、全員で(、、、、、、 、、、)

 

 

 「だな。やっぱり皆で出たほうが・・・・・・え?」

 

 「「散開っ!!」」

 

 

 ガッ!

 

 

 明久と雄二はその場から離れようとしたが、即座に島田さんと霧島さんに捕まってしまった。

 

 「アキ。どこへ行こうとしてるのかしら?」

 

 「・・・・・・雄二。コンテストに参加する。この場にいる、全員で(、、、、、、 、、、)

 

 あれ?二人共。顔は笑ってはいるんだけど物凄い殺気を放っているのは俺の気のせい━━じゃないな。

 

 「ね、ねぇ。何を言っているのかな・・・・・・? 僕には全然意味がわからないんだけど・・・・・・」

 

 「だ、だよな明久。なぜ俺達の肘関節を極めているのか、全然理由がわからないよな」

 

 ああそういうことね。通りで優しかったわけだ。

 

 「明久君。坂本君。まさかとは思いますよけど━━」

 

 「・・・・・・昼間のナンパ━━」

 

 「あの程度で許された、なんて思ってないわよね?」

 

 ようやく繋がった。

 何故明久達を生かしておいたのか。

 何故女子達は優しい態度を取っていたのか。

 それは全部この為の伏線だったとはな。

 

 「全ては、この為の伏線か・・・・・・!」

 

 雄二も漸く気付いたものの、既に手遅れになっていた。

 

 「「「罪には罰を、駄犬に鞭を」」」

 

 うわぁ。これはどう取り繕うが明久達は女子達から免れることはできないな。

 

 「で、でも、いきなり女装なんて言われても無理があるよね?」

 

 「だ、だよなぁ。俺たちは見ての通り男だぜ?」

 

 「前に明久が女装した時は準備があったけど、今回ばかりは無理があるんじゃないか?」

 

 「「ナイス斗真」」

 

 二人に助け舟を出したが、姫路さん達はそれを嘲うように腕を組んでこう言い放った。

 

 「お二人ともあろう人が、察しが悪いですね」

 

 「へ?」

 

 「・・・・・・雄二。頭を使うべき」

 

 「そうよ。アキならともかく、坂本は気付いても良かったんじゃない? 車に乗った時点で」

 

 車に乗った時点?・・・・・・まさか。

 

 「アキくん。姉さんは言ったはずですよ? 『着替えがあるから車で行くと』」

 

 なるほどね。あれは女子達が着るためじゃなく、明久達が着るためのものだったのか。

 

 「だ、だが待ってくれ! 細身の明久ならともかく、俺のガタイで女装は無理があるはずだ! この場はどうか明久の女装だけで納めてくれ!」

 

 「キサマ雄二! 一人だけ助かろうというかこの裏切り者!」

 

 「ええい放せ明久! 俺はお前と違って女装趣味なんてこれっぽっちも持ち合わせていないんだ!」

 

 「僕だってそんなもん持ってない!」

 

 雄二が明久に押し付け、自分一人だけ逃れようとしている。はぁ、なんで祭りに来てまでこんなやり取りを見ないといけないんだよ。

 

 「だいたい、僕だってミスコンに出るなんて無理だよ! どこからどう見ても男なんだから!」

 

 「・・・・・・雄二も吉井も、往生際が悪い」

 

 「まったくよ。少しは男らしく覚悟を決めた土屋を見習いなさいよね」

 

 「・・・・・・・・・・っ!?(シュパッ)」

 

 

 ガッ!

 

 

 「ダメだよムッツリーニ君。友達を見捨てて逃げちゃ、ね?」

 

 「・・・・・・・・・・俺は・・・・・・無関係・・・・・・っ!(ジタバタ)」

 

 「知ってるんだよムッツリーニ君。こっそりキミがボクたちの水着姿を撮っていたのも、浜辺でお姉さんたちにナンパされていたのも、全部」

 

 「・・・・・・・・・・!!(ブンブンブン)」

 

 「照れなくてもいいんだよ。ムッツリーニ君ならきっと良い線まで行くと思うよ♪」

 

 「・・・・・・・・・・俺は、ただの被害者で・・・・・・っ!!」

 

 どうやらムッツリーニもミスコンに出るのは確定だな。

 

 「さて、アイツらが出るのは決まったとして、俺は高みの見物でも━━」

 

 

 ガシッ×2

 

 

 「へ?」

 

 「斗真。なに一人だけ逃げようとしてるのかしら?」

 

 「お主にもワシが日頃味わってる苦しみを受けて貰うぞい」

 

 「ま、まさか・・・・・・」

 

 「斗真。皆で出ようって言ってるんだし、アンタもミスコンに出場しましょ♪」

 

 「ま、待て!なんで俺も出なきゃいけないの?俺はあのバカ二人と違ってナンパなんかしてないんだぞ!?」

 

 「別にいいじゃない。斗真が出ないって言うのならアタシも出場するのは止めようかしらね」

 

 「だ、だからってそんな・・・・・・」

 

 「安心せい。お主はメイクを施せば明久に負けぬくらい女らしくなるからのう。ワシの腕の見せどころじゃわい」

 

 「いや、だから俺はミスコンに出るつもりは━━」

 

 「「斗真」」

 

 「・・・・・・了解しました」

 

 




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