「酷い・・・・・・。酷いよ秀吉・・・・・・。なんでこんな仕打ちを・・・・・・」
「・・・・・・・・・・“土屋香美”って一体・・・・・・」
「ムッツリーニはまだいいだろ・・・・・・。俺なんか“洪 雄麗”だぞ・・・・・・。まさか女装の上中国人扱いされるとは思わなかった」
「確かに、バレーボールの選手とかだと中国出身なら雄二ぐらいの体格の人もいるもんね・・・・・・」
控え室の隅にて女装した明久達は膝を抱えて嘆いていた。明久達は“吉井明子”“土屋香美”“洪雄麗”という名で登録され、三人はまるで大切な物を失ったかのように落ち込んでいたのだった。
「三人とも、浴衣もとても似合ってますよ♪」
「ホント・・・・・・ぷぷっ。すごく、可愛いわよ・・・・・・っ」
「・・・・・・雄二のは少し、丈が足りないけど」
「アキくん。キレイに成長してくれて、姉さんはとても嬉しく思います」
「後で皆で写真撮ろうねっ」
対照的に、明久達を囲む女子達は凄く楽しそうだった。
脱走防止の為、明久達は腕を掴まれており、今か今かと出番を待っている最中である。ただ一人を除いては。
「ところで雄二。僕らがこうして女装しているのに肝心の斗真はどうしたのさ?」
「あぁ。アイツなら今秀吉と木下姉にメイクを施されているぞ。あの野郎がどんな風に生まれ変わったかその面を拝ませてもらおうじゃねぇか」
「そうだね。斗真がどれほど無様な姿を晒してくれるか期待しとかないと」
「・・・・・・・・・・(コクコク)」
明久達がイヤな笑みを浮かべながら待っていると
「すまぬ。待たせたのじゃ・・・・・・」
「お待たせ。ほら斗真、皆待っているんだから観念して出てきなさいよ」
「お、おう・・・・・・」
秀吉と優子に引っ張られ、控え室に来たのは女装をさせられた斗真だ。
その姿を見た明久達はと言うと
「え?・・・・・・キミ、斗真だよね・・・・・・?」
「う、嘘だろ?アイツがここまで美人に変わるなんざおかし過ぎるぞ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・意外過ぎる・・・・・・」
「ふえぇぇっ!?こ、これがあの東條君ですか!?どちらかと言うとお姉さんの方に見えますけど・・・・・・」
「あ、アンタ。中々やるわね・・・・・・」
「・・・・・・見違えた」
「うっそぉ〜!?斗真君だと言われなきゃお姉さんと間違えてしまうくらいそっくりじゃない!?」
「東條君。アキくんに負けないくらい可愛らしいですよ」
「姉さん・・・・・・。それは僕と斗真にとっては褒め言葉でも何でもないからね・・・・・・」
皆がそれぞれ感想を口にするが俺からすれば恥ずかしいほかならない。
俺は浴衣にセミロングのカツラを付けており、元々顔つきが姉ちゃんと似ている為、明久達からすれば姉ちゃんと見間違えるほど美人に成り代わっている。それも全部秀吉が徹底的にメイクを施してくれたからな。
「なんで、俺がこんな目に・・・・・・」
「良いではないか。メイクをしたワシが言うのもなんじゃが、お主も明久やムッツリーニに負けぬくらい綺麗になっておるぞい」
「斗真。女装写真を真理さんに送ったら『可愛くて似合ってるわね』って返事が来たわ」
「姉ちゃん・・・・・・。俺からすればそれは褒め言葉でもなんでもないのに・・・・・・」
「そう落ち込むでないぞい。ワシも一緒に出るから元気を出すのじゃ」
「ほら、もうすぐ始まるからさっさと行きましょう」
俺は二人に手を握られ、今にも出番を待ち構えることとなる。
『それでは、予選がはじまりまーす! 出場者の皆様は特設ステージの裏までお集まり下さいー!』
係員の人の呼びかけが聞こえてくるが俺達からすれば処刑台に立たされる罪人が呼ばれるようなものだ。
「どうやら始まるようですね。行きましょうか、皆さん」
「明久君、坂本君、東條君。逃げたりしちゃダメですよ」
姫路さんがそう告げるが俺達は手を強く掴まれているから逃げようにも逃げれない状況だ。
(雄二、ムッツリーニ、斗真、どうしよう・・・・・・?)
(どうもこうもあるか・・・・・・。逃げられないのなら、さっさと選考で落とされるしかないだろ・・・・・・)
(他に方法が思いつかない以上やり過ごすほかないな)
(やっぱりそれしかないか・・・・・・)
(・・・・・・・・・・不本意極まりない・・・・・・)
こんな悲しい黒歴史は、一生の心の奥底にしまいたいものだ。
《それでは、いよいよ今年から始まりました新企画! “納涼ミス浴衣コンテスト”を開催致します!》
スピーカーが割れそうな勢いでアナウンスが会場に響き渡る。快晴で海の近くという好条件だった為、会場には大勢のお客さんが犇めいていた。ん?この声、聞き馴染みがあるんだが。
《このコンテストは“浴衣の小畑”協賛による浴衣を題材としたミスコンテストでありまして、名前の通り浴衣の似合う美女を見つけようというものです!》
今回は浴衣だから良かったものの、水着審査なんてものがあれば俺達は社会的な死を迎えてたに違いない。
《審査方法は得点式で、予選は三名の審査員たちによる独断と偏見で、決勝は審査員プラス観客の皆様の投票によって行われます!》
今は夕飯時&予選ということで人数は少ない方だ。決勝に進出してしまえば更に多くの人目に晒され、下手したらネットにバラまかれる可能性もあり得る。今の俺達がすべきことはただ一つ。予選で敗退し、これ以上無様な姿を見せないことだ。
《予選参加者はなんと五十九名、この中から決勝に進むことができるのはわずかに十名となります!》
その五十九名のうち、五人が男。もうミスコンという言葉が当てはまらないから名前を変えるべきなんだがな。まさかお客さんもこの大会に男が出てるなんて想像できるわけがない。
《では、最初の十名の方に入場して頂きましょう! どうぞっ!》
係員に促され、俺達は嫌嫌ながら前へと進む。
最初の十人の中に男は四人。謎の中国人“洪雄麗”こと坂本雄二、スケベな少女“土屋香美”ことムッツリーニ、謎の美少女“吉井明子”こと吉井明久、そして“東條斗子”になっている俺。この場にいるミスコン参加者のうち四割が男という恐ろしい事態。
この町がこれで町興しを考えているのだとすれば、俺達は町の経済を破綻寸前まで追い込むことができる。それ以前に、一介の高校生である俺達が何故企業スパイみたいな立場になっているんだ。
そして、俺達がステージに上がると司会が俺達に気付いたのか顔を見た瞬間、顔を引きつらせた。それもそうだ。ミスコンで司会をしていたのはアイツだからな。
(と、斗真!?何で君達は女装してミスコンに出ているの・・・・・・!?)
(すまないアラン。色々とワケあって参加してるだけなんだよ。てかお前こそ何で司会をやってるんだよ!?)
そう、ミスコンの司会をしていたのは俺達と同じ学園の生徒で優子達と同じAクラスのアランだった。アランは麦わら帽子にアロハシャツを着て片手にマイクを持ちながら周りに聞こえないよう読唇術で俺に声を掛ける。
(僕の父さんがこの町の役員をしているから祭の手伝いに来たんだよ。それでミスコンの司会をやってくれと父さんに頼まれたからやってるだけなんだけど・・・・・・)
(そういうことか。とりあえず、ここは互いに適当にやり過ごすぞ)
(わ、わかった・・・・・・)
俺達は話を済ませた後、アランは顔を引きつったまま司会を続行し始める。
《で、では、一番の方から。お名前を教えて頂けますか?》
『はいっ。えっと、旅行で東京からきました東野聡美と言います』
《東京からご旅行ですか。羨ましいです。では、特技などはございますか?》
『あ、はいっ。特技は━━』
アランは最初の人にマイクを渡し、予選が開始された。
ここで重要な課題があるならば、それは俺達はここで予選敗退をしなくてはいけない。
何故ならば、受付ではあっさり通されたが、今は違う。ステージ上で衆目をされているからだ。ここで女装なんてことがバレて、学校関係者なんかに見られでもしたら取り返しのつかないことになる。女装だけでも痛いのに、更にミスコンなんてものに出てることが話されたら、俺は『俺って女装したらそこらの女よりよっぽど綺麗だぜぇっ!』なんて思い込んでる痛い男となってしまう。そうなれば俺だけじゃなくそんな激痛男と付き合っている秀吉と優子も変な目で見られることになる。
だからこそ。俺達は『女装している事実を隠しつつ、華麗に予選敗退』をしなければならない。
《ありがとうございました。では、次は2番の方お願いします》
考え込んでいるうちに俺の番が回ってきた。
今はとにかく、適当に笑顔を作ってこの場をやり過ごさないと。
係員から渡されたマイクを両手で持ち、顔を下に向けて話をする。
「と、東條斗子です・・・・・・(裏声)」
声は極力抑えておく。そうしなければ地声で男だとバレるからな。
《特技などはありますか?》
下手に誤魔化すとバレる恐れがある為正直に話そう。
「・・・・・・はい、空手が得意です・・・・・・」
《空手ですか。意外ですね〜では、ここで披露して頂いてもよろしいでしょうか?》
なんてことを言いやがる!?自分で言っておきながらあれだけどここで披露したら男だとバレるだろうに!
(アラン、てめぇ・・・・・・!)
(し、仕方ないでしょ。斗真が空手が得意だと言ったんだから自分でなんとかしないと・・・・・・)
(くっ!・・・・・・仕方ねぇ・・・・・・)
俺は演舞を披露する為に渋々前に出る。
「で、では・・・・・・行きます」
すぅぅぅと深呼吸をして浴衣越しに型を構えその場で素早く突き、蹴りを繰り出し、最後に一礼をして後ろに下がった。その結果
『うぉおおっ!凄えぞあの女性は!』
『動きが少し男ぽかったけど素敵だわ!』
『見た目とは裏腹に中々じゃねぇか!』
まさかの大絶賛で、物凄い拍手につつまれることに。
《流石ですね! ここまで美しい型を披露してくれるとは。東條さんありがとうございます! どうですか、協賛かつ審査員の小畑さん!》
《できるなら君に一度ヤラれてみたいね》
《はい。あなたがスポンサーでなければこの場で脳天をかち割りたいですがそうもいきませんので質問を変えさせ頂きます。東條斗子さん、今回はミス浴衣コンテストということですが、今日の浴衣を着る上で気を付けたポイントなどはありますでしょうか?》
答えにくい質問を振るなよ!
とりあえず、ボロを出さないようにしないと
「・・・・・・あ、足が見えないようにしてきました・・・・・・。でも、さっき空手を披露しましたので・・・・・・」
一応秀吉が見えないようメイクを施してくれたから大丈夫かと思ったが先程空手の型を披露した為意味がなくなっている。
《そうでしたか。先程から恥ずかしそうにしているのもわかりますし、東條斗子さんはかなり緊張しているみたいですね。浴衣を提供された小畑さんは、東條さんの着こなしについて何か質問はありますか?》
《どんな下着をつけているかお聞かせ願いたい》
《はい、あなたに飛び蹴りを仕掛けたいような反吐が出る質問をありがとうございます》
ちょっと待て!いくら女装してるとはいえ、女物の下着は履いてないぞ!とりあえず断っておかないと。
「・・・・・・は、恥ずかしくて答えられません・・・・・・」
『『『うぉおおお━っ!!』』』
《み、皆さん落ち着いて下さい! か、彼━━じゃなかった。彼女は物凄く震えていますので余計に刺激を与えるようなことはしないで下さい!》
なんでここで歓声が上がるの!?俺は特に可愛らしく言ってないのになんで男性客は妙に興奮しているんだ!?
《決めたよ。彼女は決勝には進ませず、私の愛人として置いておきたい》
《はい皆様空耳ですよー。スポンサーがお客様を愛人などと呼ぶなどおこがましいにも程がありますからねー。とにかく、東條斗子さん。色々ありがとうございました。そして、本当にすみませんでした・・・・・・》
『ねぇ秀吉。今からあの審査員の関節を外してきていいかしら♪』
『あ、姉上。怒りを沈めるのじゃ!?今ここで審査員の関節を外すと姉上の地の姿が大勢の観客に知れ渡るぞい・・・・・・!』
『ゆ、優子。落ちついてってば・・・・・・!』
係員にマイクを渡し、次に自己紹介をする明久へと渡した。
とりあえず、決勝に進めないとわかったから安堵していいんだな。はぁ、マジで危なかったぁ〜。
《失礼しました。では、気を取り直して3番の方お願いします》
『は、はいっ。吉井秋子です・・・・・・(裏声)』
明久も俺と同じように声を小さくして地声を抑えながら自己紹介をしていく。
《特技などはおありですか?》
『え、えっと、強いて挙げれば料理です……。パエリアとか、カルボナーラとか』
《お料理ですか。家庭的で素晴らしいですね~。では、ご家庭でも?》
『はい、一応毎日・・・・・・』
期末以降あのお姉さんが同居することになったから自分で料理をしているからそこらへんは明久にとっては大丈夫だな。
《毎日ですか!今時の若いお嬢さんにしてはとても珍しいですね。これはポイントが高そうです!それでは更に突っ込んで・・・・・・彼氏さんはいらっしゃいますか?》
『い、いませんっ!今まで一度も・・・・・・』
それはそうだ。女装してるとはいえ明久は男だ。これで彼氏がいると言ったら後で女子達に殺されるからな。
《おおーっ!これは男性陣にはとても嬉しいお話です!どうですか、協賛かつ審査員の小畑さん》
《携帯番号を教えてくれたらオジサンがあとでお小遣いをあげよう》
《あなたがスポンサーでなければ殴り倒していたところですが、そうもいかないので質問を変えさせて頂きます。吉井秋子さん、今回はミス浴衣コンテストということですが、今日の浴衣を着る上で気をつけたポイントなどは?》
彼氏がいないと言ってしまったからか、観客からは大きな歓声が響き渡る。先程の発言は裏目に出てしまったようだ。
『その・・・・・・あまり、か、身体の線が、出ないようにと・・・・・・』
身体の線が出てしまえば男だと一発でバレてしまうからな。
《先ほどから真っ赤になって俯いていることからもわかるように、吉井秋子さんはかなりの恥ずかしがり屋のようですね。浴衣を提供された小畑さんは、吉井さんの着こなしについて何か質問はありますか?》
《下着をつけているかどうかをお聞かせしたい》
《一周回って心地よくなってしまいそうなほどゲスな質問をありがとうございます。気のせいかわたくし、先ほどから冷や汗が止まりません》
アランも怒りが溜まってるのか、審査員に殺意の目線を向けているよ。
『し、下着なんてつけてませんっ!』
明久、今の状況でそれを言ったら。
『『『うぉおおおーっ!!』』』
《よ、吉井さん!?こんなセクハラな質問に答えなくても大丈夫ですよ!?男性客の皆様、ウェーブはおやめ下さい!ここはそういう会場ではございません!》
《決めたよ。彼女は決勝に進ませない。衆愚に晒すにはあまりに惜しい人材だ》
《はいまた空耳ですよー。スポンサーがお客様を衆愚などと呼ぼうはずがございませんからねー。とにかく、吉井秋子さん。色々ありがとうございました。そして、本当にすいませんでした・・・・・・》
何はともあれ。明久も決勝進出は免れたようだ。良かったな明久。
その後、アランが次の女性に話を振るが審査員は全く興味を示さず、適当に流しておりアランも殺気を隠せずにいられなかった。
《井村さん、ありがとうございました。今度は5番の土屋さん、自己紹介をどうぞっ》
『・・・・・・・・・・土屋香美です』
前髪で顔を隠しつつ、かすれた小さな声で自己紹介をするムッツリーニ。どうにかして目立たないようにしている。
《ちょっとハスキーな感じの声がたまりませんね。今日はお友達と海水浴ですか?》
『・・・・・・・・・・はい』
《その浴衣の着付け、大変お上手ですけどよく着たりさせるのですか?》
『・・・・・・・・・・いいえ。友人にやってもらいました』
《そのご友人は会場に来ていらっしゃいますか?》
『・・・・・・・・・・はい』
ムッツリーニは“はい”か“いいえ”で淡々と話を続ける。これなら審査員も興味をそそらず予選に落ちるだろう。
《ええっと・・・・・・では、浴衣の他にはどのような服がお好きですか?》
『・・・・・・チャイナドレスや着物は言うに及ばずレースクイーンにチアガール看護婦にキャビンアテンダント更にはファミレス店員に女性警官制服やレオタードとOLスーツにセーラー服やブレザーや巫女服に加えてメイド服やテニスウェアなども素晴らしいと何でもありません』
ムッツリーニ。ここで墓穴を掘ったか。
《こ、これは驚きました・・・・・・。土屋さんはこのクールな態度と可憐な外見に加えて、コスプレが趣味のご様子。一部の方にはたまらないでしょうね》
『・・・・・・忘れて下さい・・・・・・っ!(ブンブンブン)』
ムッツリーニは必死に首を振っているが女装している為、可愛らしい小動物に見えてしまう。
『『『こ・う・み!こ・う・み!』』』
『・・・・・・・・・・こ、困る・・・・・・っ!(わたわた)』
会場から香美コールが響き、ムッツリーニこと香美はあたふたと取り乱していた。どうやらムッツリーニは決勝進出が決まったみたいだな。
《これは凄い手応え!土屋さんの決勝進出は決まったも同然でしょう!土屋さん、ありがとうございました!》
『・・・・・・・・・・あ、あの・・・・・・本当に困る・・・・・・っ!』
なんとか取り消させようとするも、マイクは次の人に渡り、言い訳ができなくなった。こうなってしまった以上ムッツリーニの決勝進出は確定だ。
「・・・・・・・・・・なぜ、こんなことに・・・・・・」
ムッツリーニががっくりと肩を落とす。まぁこれは日頃から女子の写真を盗撮してるバチが当たったかな。ざまぁないなムッツリーニ。
さて。ムッツリーニが終わった現在、残るは雄二だけだ。アイツがどんな様子で待っているか見てみると。
(ふふん。バカどもが。所詮お前らは男らしさが足りないってことなんだよ)
雄二のヤツ。余裕を浮かべていやがる。まぁ、俺達が女装してる中で雄二が一番男らしいからそう思うのも当然か。
(そんなことを言ってられるのも今のうちだよ雄二。きっと自分の番になったら慌てふためくはずさ)
(お前も後で後悔するかもしれんぞ。謝るなら今のうちだ)
俺と明久が視線で返すが
(何をバカなことを。俺のこのガタイを見てみろ。身長だけならまだしもこの骨の太さだ。どう考えてもマイナス要因にしかならないだろ。俺の予選敗退は決まったも同然なんだよ)
雄二。自分は問題ないからって勝ち誇りやがってっ!。でも雄二が言うように、あの体格はミスコンに出る人には不向きだからな。あの野郎・・・・・・っ!
《はい。ありがとうございました。それでは7番。今度は中国からの参加です。洪さん、どうぞっ!》
(まぁそこで俺の隠しきれない男らしさを見ていることだな)
雄二がそう目線で語ると、前に出てマイクを受け取った。アイツ、余裕そうな笑みを浮かべやがって・・・・・・っ!
『洪雄麗デス。ヨロシクオ願イシマス』
中国人という設定だからかわざと片言の日本語で喋る雄二。リアクションが難しい質問がきたら言葉がわからないと誤魔化せられる。なんて卑怯な真似を・・・・・・!
《これはまた・・・・・・背の高い方ですね。どうですか、小畑さん》
アランも扱いに困ったのか、審査員に話を振っていた。この調子だと雄二が一番評価が低くなるからな。アイツ。まだ敗退することが決まってすらいないのに嫌な笑みを浮かべていやがる!
『素晴らしいですね。個人的に私、背の高い方が大好きなんですよ』
あ、審査員の口から予想外の言葉が出てきたからか雄二のヤツ、困ったような顔をしているぞ。ふっ、どうやらアイツの読みは完全に外れてしまったみたいだな。
《おおーっ!審査員の高評価が得られました!では小畑さん。洪さんに何か質問をどうぞっ》
《ハネムーンはカンボジアなんてどうですか?》
《はいわたくしツッコミませんよ!色々と言いたいことがあっても相手次第で全て堪えて飲み込むのがプロフェッショナルですよー》
何故か妙に審査員の食い付きが以上だぞ。まるで見を乗りださんばかりに雄二を見つめているし。
『・・・・・・あの審査員、始末してくる』
『お、落ち着くのじゃ霧島!今動けばせっかくのミスコンが台無しになりかねんぞ!?』
『だ、代表!?何しようとしてるの!?』
『・・・・・・離して。二人とも』
舞台裏にいる霧島さんもあの審査員に対する怒りが半端じゃなかったのかお仕置きをしようとしたが秀吉と優子に押さえつけられているようだ。
雄二も慌てふためいていたが、息を吹き返し、質問に答え始めた。
『こ、国籍違ウノデ困リマース』
《愛があれば大丈夫です。マイハニー》
『愛ナンテアリマセン』
《私には愛が生まれる自信がある》
『ワタシハアナタノコト嫌イデース』
《友達からでも構わない。一生大切にする》
『いい加減にしろ殺すぞおっさん』
《君になら殺されても構わない》
雄二!お前、仮面が剥がれて素が出ているぞ!
《はい、小畑さんも大喜びの洪雄麗さんでした。ではお次・・・・・・》
《待て。まだ私の質問は終わってない。雄麗、ご両親への挨拶はいつ行けばがふっ!?》
《殴ってませんよー。蚊が飛んでいただけですよー。それよりそろそろ次の方に行きましょうね小畑さん》
《・・・・・・仕方ないな》
《それでは気を取り直して・・・・・・エントリーナンバー8番。渡会さんです!》
《渡会美紀です。宜しくお願いします》
《渡会さんは地元からの参加のようです。小畑さん、同じ地元民としてなにかお聞きしたいことは?》
《興味ないね》
《そう言わずに何か質問を。洪さんの時のようにやる気をみせて》
《仕方がない・・・・・・。そうですね。それでは8番さん。貴女の目から見た洪雄麗さんの印象を教えて下さい》
《お前もう裏行って洪さんを口説いて来いよ!そして二度と戻ってくるな!》
《なんだ貴様スポンサーに向かってその口の利き方は!》
《今更常識人面かコルァ!上等だ!司会なんてこの場で辞めてやらぁ!》
《か、顔はよしたまえ!雄麗のご両親に会う前なのだから!》
《殴った方がちったぁそのブサイク面もマトモになるってもんだ!》
《・・・・・・雄二は、渡さない・・・・・・》
あ〜あ。アランも我慢しきれなかったのか、完全にブチ切れてるよ。霧島さんも裏から出てきてしまったし、もうミスコンは滅茶苦茶だ。
それと、このミスコンが開かれることはおそらく二度とないだろうな。
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