バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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 今回から体育祭の野球大会編です。どこまで続けられるか分かりませんが、温かい目で見ていてくださいね。


召喚野球編
第一問 持ち物検査


 「西村先生。知的好奇心を育むには、具体的な目的が必要だとは思わないだろうか」

 

 目の前で腕を組み、静かにFクラス一同を見ている鉄人先生━━失礼、担任の西村先生を相手に、クラス代表の雄二が、諭すようにゆっくりと先の台詞を語りかけた。

 雄二は西村先生の目を真っ直ぐ見つめては、耳だけではなく、心に言葉を紡ぐ。

 西村先生は何の言葉も返さず、雄二が語りだすのを待ってくれた。そんな相手に満足したかの様に笑みを浮かべ、雄二は淡々と話を続けていった。

 

 「だが、それが愚行であっても、そこから学び取れることだって少なからず存在する。それは、『知的好奇心は具体的な目的を持つことで、より良い結果へと繋がり易い』という事実だ。━━ここまで言えば、あとは先生にはわかってもらえるはずだが」

 

 雄二が話を終えると、西村先生はここで初めて反応を見せた。

 

 「・・・・・・お前達の熱意は確かに伝わってきた。確かに、お前の言う通り、知的好奇心は目的の有無でその在り方が変わってくる。それはその通りだ。・・・・・・━━だが」

 

 西村先生は腕組みを解き、冷酷に告げる。

 

 「だが・・・・・・没収したエロ本の返却は認めん」

 

 

 「「「ちくしょぉおおーっ!!!!」」」

 

 

 鉄人先生の無慈悲な言葉に、Fクラス男子一同(秀吉は除く)は涙を流して絶叫した。悔しいことに、鉄人先生の言ってることは何も間違っていないからなんとも言えない。

 

 「どうしてですか西村先生!さっきの雄二の演説を聞いたでしょう!? 僕たちが“保健体育”という科目の学習に対する知的好奇心を高める為には、“エロ本の内容の理解”という本能に根ざした具体的な目的が必要なんです!」

 

 「学習しなければ理解できんほど高度なエロ本を読むな。お前は何歳だ」

 

 「知識を求める心に年齢は関係ないでしょう!」

 

 「よく見ろ。思いっきり成人指定と書いてあるだろうが」

 

 明久の戯言に対し、鉄人先生は正論で突き返す。

 

 

 『お願いします、西村先生! 僕らにその本を返して下さい!』

 『僕には━━僕らには、その本がどうしても必要なんです!』

 『お願いです!僕達に、保健体育の勉強をさせて下さい!』

 『西村先生、お願いします!』

 『『『お願いします!』』』

 

 

 「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」

 

 Fクラス男子全員が鉄人先生にエロ本の返却を懇願するものの、鉄人先生は冷たくあしらう。

 

 「それなら先生。こう考えてみては貰えませんか」

 

 「だからなんだ吉井。これ以上は下らない演説に割く時間はないぞ」

 

 「アレはエロ本じゃなくて、保健体育の不足部分を補っている参考書だと」

 

 「全員きちんと準備をして授業に臨むように。朝のHRを終わる」

 

 取り付く島もなく。鉄人先生は話を打ち切った。

 

 「ええい! こうなりゃ実力行使だ! 僕らの大事な参考書(エロ本)の為、命を懸けて戦うんだ!」

 

 「「「おおおーっ!」」」

 

 「ほほぅ・・・・・・。キサマら、良い度胸だな」

 

 「へっ。舐めた口を言ってられるのも今のうちですよ。鉄人先生」

 

 「ふっ。いいだろう。かかってこい。全力で受けてやろうではないか」

 

 Fクラス男子達は立ち上がっては鉄人先生を取り囲む。だが、そんな危機的状況にも関わらず、鉄人先生は一切の動揺を見せていない。

 

 「全員、かかれぇーっ!」

 

 「「「うおおおぉぉーっ!」」」

 

 堂々と立ちはだかる鉄人先生に男子達は拳を固めて飛びかかった。

 

 

 

 

 

 「あの野郎・・・・・・。絶対人間じゃねぇ・・・・・・」

 

 先程まで熱弁を振るっていた雄二が苦々しく呟く。体格も良く。喧嘩慣れしている筈の雄二は、一本背負いで強かに叩きつけられた。余程効いたのか、雄二は今でも腰を擦っている。

 

 「だよね・・・・・・。どうして四十七人の男子を相手にして、たった一人で戦えるんだろう・・・・・・」

 

 「最早、人の皮を被った化け物としか言いようがねぇな、あの人は・・・・・・」

 

 明久は召喚獣を出す間もなく肩固めで悶絶し、俺は裏投げを食らわされた。周りで倒れているヤツらは足払いや巴投げ、更には腕ひしぎなど、様々な柔道技で徹底的に潰された。いくら体が丈夫とはいえ、四十人以上の男子相手に、しかも怪我させないように手加減しながら戦うとか、鉄人先生は普通の人間を遥かに上回っているとしか言いようがない。

 

 「・・・・・・・・・・あの動き、人間兵器のレベル」

 

 ムッツリーニが肩を落としてはそう呟く。エロを原動力として生きているコイツからすればエロ本没収という辛苦は誰よりも堪えるだろうな。コイツはスタンガンで鉄人先生に特攻したが、一瞬で武器を奪われては返り討ちとして自身がその電撃で沈んだ。ムッツリーニの素早さはFクラスじゃダントツなのに武器を奪うとか、全集中でもしなければ難しいくらいだ。

 

 「アンタらって、こういう時は凄い結束力を発揮するわよね・・・・・・」

 

 「まぁな。基本Fクラスはバカなことをやる時は妙にチームワークが抜群だからな」

 

 「凄い結束力って、そんなに統制が取れてた?」

 

 「統制っていうか・・・・・・どうしてクラスの男子全員が、一人残らずその・・・・・・ああいう本を、学校に持ってきてるのよ・・・・・・」

 

 呆れながら島田さんは言うが、少しだけ顔が赤くなっている。おそらく没収されたエロ本の表紙が目に入ったからだろう。

 

 「まぁ、それは色々と男子の事情があるんだよ」

 

 「だな。隠密に済ませたかった取引の材料を奪われてしまっては何もできんが」

 

 「あんな本を全員で持ってくる事情って一体・・・・・・?」

 

 よりによって夏休み明けの二学期二日目。密かに開催される予定だったムッツリ商会主催の『収穫報告祭(夏)』が行われるタイミングで持ち物検査をされるとは。おそらく、教師達もどこかで情報を入手してただろう。でなければ水面下で動いていたこのイベントを事前に察知するなんて無理だからな。

 

 「でも、没収されたのは仕方がないと思います。その・・・・・・ああいう本は、明久君たちにはまだ早いと思いますから・・・・・・」

 

 姫路さんも島田さんと同じように顔を赤らめては軽く注意する。

 

 「うぅ・・・・・・。そうは言っても、やっぱり納得がいかない・・・・・・」

 

 「俺もだ。取られたヤツがとっておきの品物だったから失うわけにはいかなかったが・・・・・・」

 

 「持ち物検査なぞ、久しくなかったからの。油断するのも無理からぬことじゃ」

 

 秀吉が慰めるように声を掛けてくれるが、失った物が大きいたけに未だに涙が拭えない。

 

 「確かに凄い不意打ちだったわね。ウチも細々としたものを沢山没収されちゃったわ。雑誌とか、抱き枕とか・・・・・・」

 

 「そうですね・・・・・・。私も色々と没収されちゃいました・・・・・・。小説とか、抱き枕とか・・・・・・」

 

 前半はともかく、後半は明らかに普通の女子高生が持ち歩く物じゃない気がするんだが。

 

 「なんだ。姫路や島田も没収されてたのか。んじゃ、秀吉もか?」

 

 「うむ・・・・・・。演劇に使おうと思っておった小物の類なのじゃが、運悪くその小物が携帯ゲーム機などでの・・・・・・」

 

 「前に没収された時は衣装でもアウトだったから、今回もおそらく返却は難しいだろうな」

 

 「じゃな。しかし、ワシと同じFクラスではマトモなお主があんな物を持ってくるとはのう。姉上も物凄く呆れておったぞい」

 

 「そうは言うがな秀吉。俺がエロ本を持ってきたのはあくまで取引の為だからな。アレと引き換えにムッツリーニに頼んだ例の物が取られたんじゃどうしようもないが」

 

 「・・・・・・・・・・持ち物検査についての警戒をすっかり忘れてた・・・・・・」

 

 ムッツリーニが本気で警戒していれば、持ち物検査があることくらいは事前に察知できてたかもしれんな。今回は油断してたのと、収穫報告祭(夏)の準備をしていたからな。

 

 「学年全体での一斉持ち物検査だからな・・・・・・。夏休みの、俺たちがいない間に打ち合わせをしていたってことか」

 

 「まったく、先生たちもやることが汚いなぁ・・・・・・」

 

 「それだけ俺達が不要物を持ってくることを警戒してたってことか。ま、普通は持ってくること自体アウトなんだがな」

 

 狙ってくるタイミングが始業式の翌日というのが実にいやらしく感じる。始業式なら少しは警戒するだろうが、その翌日となれば、警戒心が薄れるのも仕方ない。実際、校則でも授業に関係ない物を持ってくることは禁止だってルールがあるからな。だが、こればっかしはやり過ぎな気がするんだが。

 

 「まぁ、スマホが没収されないのは唯一の救いだよね・・・・・・」

 

 「授業中に使ったり鳴らしたりしたら即没収だけどな」

 

 スマホは緊急時の連絡用という名目があるから没収されることはない。ただ、先程雄二が言ったように授業中に鳴らしたりすれば没収される。

 

 「して、明久と斗真は写真以外は何を没収されたのじゃ?」

 

 秀吉が明久の鞄を指差して聞く。明久が没収の対象になるものを他に持ってくるのは俺と秀吉からすればわかって当然だしな。

 

 「えーっと、本にゲームに、(姫路さんや美波や秀吉の水着)の写真とか・・・・・・」

 

 「俺は小説に、(秀吉と優子の水着)の写真を取られたよ」

 

 「写真集ではなく普通の写真まで没収とは・・・・・・。教師陣も容赦がないのう」

 

 「まったくだよ・・・・・・。今日の朝ムッツリ商会から買ったばかりだから、まだ殆ど見てないのに・・・・・・」

 

 「ったく、こうなるんだったら予めどこかに隠しとくべきだったぜ・・・・・・」

 

 「本当、残念ですよね・・・・・・。私も、あの枕に抱きつくの、凄く楽しみにしていたんですけど・・・・・・。水着の写真だって飾りたかったですし・・・・・・」

 

 「ウチも、今夜は凄く良い夢が見れると思ってたのに・・・・・・」

 

 俺からすれば姫路さんと島田さんが抱き枕(おそらく、カバーの柄は明久)を抱きしめる姿がシュールに思えるんだが。

 

 「雄二はどうだった? 本の他には何か没収された?」

 

 「俺はまたMP3プレーヤーだ。一昨日出た新譜を入れておいたのに、それも全部パァだ。くそっ」

 

 忌々しい、と言わんばかりに雄二が吐き捨てる。そういえば、明久が観察処分者になったあの時も没収されたんだっけな。

 

 「ってことは、ムッツリーニはやっぱりカメラ?」

 

 「・・・・・・・・・・(コクリ)」

 

 沈んだ様子で首肯するムッツリーニ。まぁ思い出作りとか学級新聞に載せる為に撮ってるって言えば、所持することは許してくれ━━るわけないか。撮ってる写真が写真だからな・・・・・・。

 

 「・・・・・・・・・・データの入ったメモリーも没収されたから、再販も当分できない」

 

 「「「えぇぇっ!?」」」

 

 くっ!再販もできないってことは、存在を知っていながら秀吉と優子のあの写真は二度と見れないってことかよ。

 

 「どういうことさムッツリーニ! いつもきちんとバックアップを取っているんじゃないの!?」

 

 「そうですよ土屋君! どこかに予備データが残っていたりはしないんですか!?」

 

 「本当は家のパソコンを探せば出てくるのよね!?」

 

 ムッツリーニはデータのバックアップを取らないなんてヘマはしないからな。再販できない理由があるとすればおそらく

 

 「・・・・・・・・・・バックアップはある。でも、サルベージに時間がかかる」

 

 「「「そ、そんな・・・・・・っ!」」」

 

 やっぱりな。ムッツリーニはかなりの量の写真を撮っては保存しているから、その中から特定のデータを抽出するにはかなりの時間を要する。俺達はそのデータがサルベージされて再加工されて、注文してから納品されるまでの間は我慢を強いられることになる。

 

 

 『おい、今の話を聞いたか・・・・・・?』

 『ああ・・・・・・。再販が未定だとは・・・・・・!姫路や島田や木下姉妹の水着写真がそれまでお預けなんて、死にも等しい苦行だぜ・・・・・・!』

 『それだけじゃない。霧島に工藤に、知らない美人のお姉さんまで水着で写っていたらしいぞ・・・・・・!それを見られないだなんて、俺は、俺は・・・・・・っ!』

 

 

 「じゃからワシは男じゃと言うのに・・・・・・」

 

 「仕方ないだろ。只でさえFクラスは女子が少ないから秀吉が女子に見えてしまうのは無理もないからな」

 

 クラスの至る所から悲鳴が聞こえてくる。ってか、お前らも秀吉と優子の水着写真を買ってたのかよ。それだけ二人が可愛らしく魅力溢れるってことだから、二人と付き合ってる俺はなんていうか━━幸せ者だな。

 

 「どうする雄二? ・・・・・・ やる(、、)?」

 

 「そうだな・・・・・・。こんな横暴を許したら今後の学園生活に支障がでるな・・・・・・。よし、やるぞ明久!教師ども━━特に鉄人が出払った昼休みに職員室へと忍び込み、俺たちの夢と希望を取り戻すんだ!」

 

 「おうっ!」

 

 二人は没収品を取り戻そうとその場を立ち上がる。

 

 「・・・・・・・・・・明久と雄二だけを、戦わせはしない」

 

 ムッツリーニも力強く立ち上がった。その目には強い光が戻っている。寡黙なる性識者って名前なだけはある。

 

 

 『待ちな、お前ら!』

 『俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!』

 『へへっ・・・・・・。俺たち、仲間だろ?』

 

 

 「み、みんな・・・・・・」

 

 気が付けば、先程叩きのめされていたFクラス男子全員が立ち上がっていた。たかが、エロ本を取り戻すだけなのに茶番染みた展開をしているんだか。

 

 「あ、あのっ。皆さん落ち着いて下さいっ」

 

 「? 姫路さん・・・・・・?」

 

 姫路さんは胸の前で手を握りしめながら皆に言い聞かせるように話し始めた。

 

 「明久君、坂本君、それに皆さん・・・・・・。やっぱりそういうのは、良くないと思うんです」

 

 「そういうのって・・・・・・職員室に忍び込むって話?」

 

 「・・・・・・はい」

 

 姫路さんが小さく頷く。それを見た明久は不味そうな顔をする。

 

 「でも、そうしないと没収品は返ってこないからさ。姫路さんだって没収されたものを取り返したいでしょ?」

 

 「そ、それはその、返して貰えるなら返して欲しいですけど・・・・・・。でも、学校のルールを破っちゃったのは私自身ですから・・・・・・」

 

 「確かに。こればっかしは姫路さんの言うことが正しいからなんとも言えんな」

 

 「まあ、瑞希の言う通りよね。元々ウチらが校則違反でやっちゃってるのが原因なわけだし。その罰に納得がいかないからって、また問題を起こすのはちょっとね」

 

 俺と島田さんは姫路さんの意見に同意する。

 

 「はい。だから、そうやって職員室に忍び込むっていうのはダメだと思うんです。そういうのは、狡いような気がします」

 

 「明久。姫路さんがああ言ってる以上無駄なことは止めたほうがいいと思うぞ」

 

 「・・・・・・雄二、どうしようか。そう言われてみると、忍び込むのはなんだかちょっと・・・・・・」

 

 「あ~・・・・・・。どうするも何も、こいつらにそこまで言われたら、流石に考えを直すしかないだろう」

 

 雄二だけじゃなく、クラスの皆も同じ意見のようで、全員が決まりの悪そうな表情を浮かべていた。

 

 「明久君。坂本君、皆さん・・・・・・。わかってくれたんですね?」

 

 「ああ。姫路と島田。それに斗真の言いたいことはよくわかった。つまりはこういうことだろう?」

 

 先程の自分の発言を撤回するかの様に、雄二はこう告げる。

 

 「━━こそこそと忍び込んだりなんかせず、鉄人を殺って堂々と奪い取れ、と」

 

 「全然違いますからね!?」

 

 「寧ろ余計に悪くなってるじゃねぇか!」

 

 俺と姫路さんの説得は虚しく。明久達は昼休みに職員室へ急襲することとなるのであった。

 

 

 

 

 

 そして昼休みになり、明久達は職員室へ行ったものの、教師達は召喚獣を出して待ち伏せしていた為、即座に捕縛され、補習室に軟禁されてしまった。急襲に加わらなかった俺と秀吉、姫路さんと島田さんはEクラスとの合同授業をすることに。

 

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 「どうしたの姫路さん?ひょっとして明久達のことが気になるのか?」

 

 「えっ。は、はい・・・・・・。明久君もそうですけど、皆さんがどうされてるのかちょっと気になりまして・・・・・・」

 

 「斗真よ。お主はどうなっておるのか気にならんのか?」

 

 「ああ、それについては問題ないよ。明久が教室を出る祭、ズボンのポケットに盗聴器を仕掛けといたからな」

 

 「まったく。やることがえげつないのう・・・・・・」

 

 「それ以前に、どうして盗聴器が没収されなかったか聞きたいわよ」

 

 「大したことじゃないよ。持ち物検査の時にカッターシャツの襟の裏に隠しておいたからバレなかったのさ」

 

 「あの・・・・・・。よろしければ、聞かせてもらえませんか?」

 

 「いいよ。俺も今アイツらがどうなってるか気になってたとこだから確かめてみるよ」

 

 俺はスマホを取り出しては盗聴器を受信する為のアプリを起動する。少しノイズが走り、音がクリアになっていった。

 

 

 

 

 

 「だから、どうしてお前らはそこまで単純なんだ・・・・・・」

 

 場所は変わって補習室。明久達は補習室の硬い床に正座をさせられ(椅子すら使わせてもらえず)、鉄人監修の元、補習の問題集をやらされていたのだった。

 

 「くそっ、汚ぇ・・・・・・! 俺たちのお宝をうばってボコったあげく、今度は職員室で召喚獣を用意して待ち伏せとは・・・・・・! 教師の風上にもおけねぇ連中だ・・・・・・!」

 

 「まったくだよ。正々堂々男らしく正面から襲撃に来た僕たちを、卑劣にも待ち伏せて迎え撃つなんて・・・・・・! あんなの、大人のやることじゃない・・・・・・!」

 

 「吉井、坂本。無駄口を叩く余裕があるお前らにプレゼントだ」

 

 「「げっ」」

 

 ドス、と二人の目の前に問題集が一冊追加される。時間的に考えると今日中に終わらせられそうにない。

 

 「酷いっ!このチンパンジー、人間じゃない!」

 

 「さてはこのチンパンジー、俺たちを家に帰らせない気だな!?」

 

 「そういえば、お前らは夏休みの課題もまだだったな」

 

 更にドスンと、問題集が積まれる。

 

 「提出が遅れている分の利子だ。一週間遅れるごとに一冊追加してやろう」

 

 「「うぎいぃぃ━━っ!!」」

 

 鉄人をチンパンジーと言っていた二人が逆にチンパンジーの如く悲鳴を上げていた。

 

 

 『吉井も坂本もバカだな・・・・・・。チンパンジーに逆らうなんて』

 『まったくだ。俺たちみたいに黙ってチンパンジーの言うことに従っていればいいものを』

 『無駄な抵抗をするからチンパンジーに目をつけられるんだ』

 

 

 「そういえばお前らも課題提出がまだだったな。安心しろ。全員平等に利子をくれてやる」

 

 

 『『『うぎいぃぃーっ!!』』』

 

 

 Fクラス男子が使っている机には未提出の課題、補習の問題集、追加の問題集とドンドン増やされていた。

 

 「おのれ鉄人・・・!絶対に復讐しちゃる・・・・・・!」

 

 「あの野郎、今に見てやがれ・・・・・・!」

 

 「・・・・・・・・・・この恨み、忘れない」

 

 『月のない夜道には気をつけろってんだ・・・・・・!』

 

 『見てろ、そのうち靴に画鋲を仕込んでやる・・・・・・!』

 

 『それなら俺は、鉄人同性愛者説を学校中に流してやる・・・・・・!』

 

 

 「更に一冊追加だ」

 

 

 『『『うぎぃいーっ!!』』』

 

 

 急襲に加わらなかった斗真と女子三人『ワシは男じゃ!』を除く、Fクラス男子生徒四十七名は補習で軟禁という大惨事。ただでさえ暑苦しいFクラスから、女子と秀吉を外された上に鉄人が指導するとなれば、恨みは募るばかりだろう。

 

 「まったく、つくづくお前たちは・・・・・・。体力が有り余ってるようだが、そういうものは運動で発散しろ。幸いにも近々体育祭があることだしな」

 

 鉄人が嘆息しながら呟いた。

 

 二学期が始まるや否や、いきなり実行されるイベント、文月学園体育祭。

 長い夏休みで気が抜けているところを、身体を動かす事で引き締めさせようというイベントである。

 

 (どうせ休みボケで授業をやっても身が入らないから、先にイベントを消化しておきたいんだろうね)

 

 (ああ。いかにもあのババァが考えそうなことだな)

 

 「さて、俺はお前たちが暴れた職員室の後始末をしてくる。全員サボらずに課題をやっておくこと。脱走したら・・・・・・地獄を見せてやる」

 

 不穏な一言を残し、鉄人は補習室を出て、ご丁寧に外から鍵を掛けて去っていった。脱走しようにも、監禁体制が整っている以上逃げようがない。

 

 「そういやもうすぐ体育祭だな。体育祭ってことは・・・・・・アレがあるな」

 

 雄二は何か思いついたのか口元が緩んでしまっている。明久やここにいる周りの皆も同じ様に口の端を歪めている。全員が同じことを考えているのは見て取れる。

 

 「思えばこの五ヶ月。俺たちはこの学校の教師陣には随分と酷い目に遭わされてきた」

 

 「廊下に正座させられたり、補習室に軟禁されたり、聖典(エロ本)を没収されたり、酷い設備の教室に押し込まれたり、学年の男子全員が停学になったり、学園長の裸を見せられたりしたよね」

 

 この場にいる全員が「うんうん」と大きく頷いてはいるが、マトモな人からすれば明久達が言ってることは只の逆恨みに他ならない。

 

 「だがもうすぐやってくる体育祭。そこで俺たちは━━この学校の教師たちに復讐することが出来るんだ!」

 

 気分が盛り上がったのか、雄二は立ち上がって拳を振り上げた。

 

 

 『おうっ! やってやろうじゃねぇか!』

 『去年は勝手がわからなかったが、今年はそうはいかねぇ!』

 『あの鬼教師どもめ・・・・・・! 目に物見せてくれる!』

 

 至る所から威勢のいい声が上がる。Fクラス男子達はあるものを利用して教師達に報復を仕掛けようとしていた。

 

 「いいかお前ら!こんなチャンスはまたとない! 今までの学園生活で罵倒され、虐げられてきたこの鬱憤、この機に晴らさずしていつ晴らす!」

 

 

 『そうだっ! 恨みを晴らせ!』

 『この機に乗じて仇を討て!』

 『ドサクサに紛れてヤツらを痛めつけろ!』

 

 

 「全員今は牙を研げ。地に臥し恥辱に耐え、チャンスの為に力を溜めろ。今この時は真に敵を討つ時期じゃない。鬼教師どもに復讐するべき時は体育祭。親睦競技という名の下に、接触事故を装って復讐を果たす。いいか、俺達の狙いは━━」

 

 

 『『『生徒・教師交流野球だ!』』』

 

 

 全員が声を揃えて拳を掲げるのだった。

 

 

 

 

 

 「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

 盗聴器越しに明久達の話を聞いていた俺達はあまりにもの下らなさに呆れて声が出なかった。

 

 「はぁ。要するに事故に見せかけて教師達に手を出すってことかよ」

 

 「呆れてものが言えぬぞ」

 

 「ホント、アイツらはバカとしか言いようがないわ」

 

 「そうですね・・・・・・」

 

 その後、俺達は残り時間をEクラスで過ごすこととなり、明久達は下校時間まで問題を解くのに時間が掛かるのであった。




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