バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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 2週間ぶりの投稿ですが、続けていきますので応援お願いします。


第四問 Eクラス戦 中編

 『プレイボール』

 

 主審の寺井先生がコールをしてゲームが始まった。試合は召喚獣がするため俺達自身はどこに立ってもいいのだが、やりやすさを考慮すると必然と召喚獣の後ろに立つことになる。気分からすれば実際に野球をしている感覚と何ら変わりもなかった。

 

 「しゃーっす! 試獣召喚(サモン)

 

 Eクラスのトップバッターが挨拶をしては打席に付く。守備側は立ち位置の規定がないが、バッターはボックスの真後ろに立たされる。理由は相手のサインやミットの位置が見えないようにする為だ。

 

 

 

Eクラス 園村 俊哉 117点

VS

Fクラス 吉井 明久 71点

 

 

 この試合の科目は、一回は古典、二回は数学、三回は化学、四回は英語、五回は保健体育になっている。

 召喚獣は変化球は使えないらしいので、雄二はマウンドに立っている明久にコースと投げる球しか指示ができない。そして、雄二が明久に要求したコースは━━ド真ん中だが。ちょっと待て。いくら相手が召喚獣の操作に慣れてないとはいえ、そんな甘いところに投げてしまったら。

 

 

 キンッ

 

 

 『ホームラ━━ン』

 

 

 「ちゃんと投げろボケがぁー!」

 

 「ちゃんと指示しろクズがぁ━━!」

 

 ボールは甲高い音を立て、青空へと消えていった。バカだろ。

 

 「お主ら・・・・・・。いくらなんでも、運動部の面子を相手にど真ん中のスローボールはどうかと思うぞい・・・・・・」

 

 「相手を舐め過ぎたのが仇になったな・・・・・・」

 

 初回でいきなりホームランを打たれ、0対1になってしまった。

 

 「おねっしゃっす! 試獣召喚(サモン)っ!」

 

 ノーアウトランナー無しで2番バッターが現れる。明久はボールを受け取り、雄二と視線を交わしてはサインを確認して、2番バッターへ初球を投げる。

 

 

 キンッ

 

 

 『ホームラ━━ン』

 

 

 「「バットをよこせぇっ!!」」

 

 それぞれがベンチに向かってバットを要求する。どうやら明久はここでK.Oだな。

 

 

 『ええいこのバカ野郎どもが! もうお前らには任せておけねぇ!』

 『そもそも吉井と坂本に任せた俺たちがバカだった!』

 『こうなりゃ、ここから先は俺が投げる! ピッチャー交代だ吉井!』

 『それならボールは俺が捕るっ! キャッチャー交代だ坂本!』

 

 キンッ

 

 【Eクラス 3 VS Fクラス 0】

 

 

 「・・・・・・やべぇ。いきなり大ピンチだ・・・・・・」

 

 「いやもうピンチっていうか点数取られまくった後なんだけど・・・・・・」

 

 ピッチャーとキャッチャーを替えても、ホームランを打たれてしまい初回からピンチになった。相手を侮り過ぎてしまったな。

 

 「仕方ない。次は俺が投げるけど良いよな?」

 

 「あぁ。こうなるなら最初からお前に任せとけば良かったとつくづく後悔してるよ」

 

 「それはこっちの台詞だよ。雄二が甘いコースを要求したんだしさ」

 

 「ふざけんな!元はと言えばお前の投げる球が遅いせいだろうが!」

 

 「なんだとぉ!僕は雄二のリードに従って投げただけだから責められる筋合いはないよ!」

 

 「あ〜はいはい。下らない喧嘩は後にしろお前ら。とにかく俺がマウンドに上がるから明久はサードに付け」

 

 二人の喧嘩を宥めると俺がマウンドに上がり、明久がサードに付く。Eクラスは四番打者がバッターボックスに立つ。

 

 「お願いしま〜す」

 

 打席に立ったのは中林さんと同じくらいの勝ち気がありそうな目をしている女子生徒だ。

 

 

 

Eクラス 三上 美子 122点

VS

Fクラス 東條 斗真 312点

 

 

 さて、試しにワインドアップからのオーバースローでボールを軽く投げみると。

 

 

 ズドォオオ━━ン!

 

 

 「・・・・・・・・・・え?」

 

 『・・・・・・は、速すぎて見えなかった・・・・・・』

 

 俺は軽く投げた筈が、ストレートは唸りを上げては雄二の構えるミットに吸い込まれるかの如く収まり。打席に立っていた三上さんはあまりにもの速さと球威に腰を抜かすのだった。

 

 「ねぇ秀吉。斗真の召喚獣が投げた球なんだけど・・・・・・」

 

 「うむ。見るからに球速は160kmは超えておったのう」

 

 「だとしたら。打たれる心配はなさそうだね」

 

 「あの、明久君」

 

 「ん? なに、姫路さん?」

 

 「東條君の投げた球はそんなに凄いのですか?」

 

 「うん。日本のプロ野球でもあんなに速い球を投げる人はそんなにいないからね。斗真の投げる球は召喚獣とはいえ、メジャー級だし」

 

 「そうですか。だとしたら、安心して見ていられますね」

 

 「だね。益々斗真が味方にいて良かったと心の底から思うよ」

 

 二人は俺が味方で良かったと安堵する。

 四番打者を三振で仕留めると、次の打席に立つ五番打者はEクラス代表の中林さんだ。

 

 『東條斗真・・・・・・!吉井明久と同じように人を全身筋肉呼ばわりしてくれたわね・・・・・・! 絶対に、絶対に許さない・・・・・・!』

 

 中林さんは凄い気迫を見せてはいるが、雄二に濡れ衣着せられた俺と明久からすればいい迷惑だ。

 

 《斗真。相手が中林とはいえ。気を抜くなよ》

 

 《言われなくてもそのつもりだ》

 

 雄二からのアイコンタクトに俺は頷く。

 深呼吸をしては投球モーションに入る。雄二が構えるミットに狙いをつけ、オーバースローでボールを投げる。だが、力みすぎたのかボールは大きく反れてしまい

 

 

 ゴスッ

 

 

 『デッドボール。 一塁へ』

 『殴らせて! あの男を一度でいいから殴らせてよ!』

 『落ち着け中林! 折角勝っているのに乱闘でノーゲームにするのは勿体ない!』

 

 投げたボールが中林さんの肩に当たってしまい。暴れる中林さんをEクラスの男子が必死に宥めている。一応、当ててしまったコチラ側に非があるため、形とはいえ帽子を取っては頭を下げる。多分許してはくれそうにないな。

 

 《さて。遊びはもうナシだ。真面目にやるぞ》

 

 《そう言ってる割には嬉しそうな顔をしているのが気になるが》

 

 ったく、元はといえば雄二が誤解を招くようなことを言ったから中林さんはああなってるのに。

 その後も俺は相手打者を三振で仕留めて攻守交代。今度はコチラが打席に立つ番だ。

 

 「よし! さっきはちょっとしたハプニングがあったが、だいたい計算通りだ! さっさと点取ってブッ倒すぞ!」

 

 「「「おおーっ!!」」」

 

 雄二の言葉に全員で拳を掲げて応える。

 俺達Fクラスはどっちかっていうとバッティングで攻めるタイプだから真価を発揮するのはここからだな。

 

 「トップバッターは秀吉だな。頼んだぞ」

 

 「任せるのじゃ」

 

 「試合はまだ始まったばかりだからあまり力みすぎるなよ」

 

 「言われなくてもわかっとるぞい」

 

 秀吉がバッターボックスに向かう。頑張れよ秀吉。お前をしっかり見守ってやるからな。

 

 

 『木下。まずはアンタを打ち取って波に乗らせてもらうわよ!』

 

 

 マウンドにはピッチャーを務める中林さんが立っている。体育会系クラスだからか、かなり闘志を燃やしているように見えるぞ。

 秀吉がバッターボックスに入ったのを確認してから、中林さんがボールを投げる。秀吉はその球筋をじっくりと見極めてはその球を見逃した。

 

 『ボール』

 

 審判がボールを宣告する。キャッチャーを務める三上さんが受けた球をピッチャーに返すと、中林さんは第二球を放つ。

 

 『ボール』

 

 二球目もストライクゾーンから外れ。中林さんは悔しそうにボールを受け取ると、慎重に振りかぶって三球目を投げた。

 

 『ストライク!』

 

 今度はインコース高めにボールが決まりストライクがカウントされた。相手ピッチャーの中林さんはコースが定まらないのかずっとやりにくそうに顔を歪めていた。

 そのまま、投球が続き、カウント2ストライク・2ボールとなる。そして更にもう一球投げられた段階で、秀吉がバットを振る。

 

 『ファール!』

 

 あまり気のないスイングで、ボールにバットを当てるだけのバッティング。俗に言うカットだ。

 

 「ねぇ二人とも。あのスイングだと、秀吉は」

 

 「ああ。多分フォアボール狙いだな」

 

 「相手ピッチャーの中林さんも投球リズムが狂ってきてるし、出塁はできそうだな」

 

 人間同士の勝負じゃないから色々と特殊ルールはあるが、基本は野球のルールと同じだ。ストライクが三つカウントされたらアウト、ボールが四つカウントされたらフォアボールで、打者は一塁へと進む。ボークなどの細かいルールに関しては審判のさじ加減によるが。

 

 『ファール』

 

 その次の球もカット。只でさえ相手は召喚獣操作に慣れてなおらず、数多くの球を投げさせられれば疲労は溜まっていくばかりだ。心理的にも追い詰められているに違いない。

 

 『ボール』

 

 更にもう一つのカウントが増えて、現在2ー3。

 

 『く・・・・・・! いやらしいやり方してくれるじゃない・・・・・・!』

 

 マウンド上で中林さんが歯噛みする。勝負の世界では問題ないがプライドの高い彼女からすれば許されざる行為みたいだ。

 

 『思いっきり振ってきなさいよ木下! 勝負よ!』

 

 『すまぬが、それはできん。なにせ、0対2という状況じゃ。五回までしかない以上、ワシらは確実に点を返さねばならんからの』

 

 今回の野球勝負は時間の関係上、五回まで短縮されていおり。チャンスが少ないため、確実に攻めるという判断は間違ってない。

 

 

 『何よ! 私が怖いの!? フォアボールなんか狙わないで、ちゃんとヒットで塁で出なさいよ!』

 『なんと挑発しようと無駄じゃ。ワシはワシの仕事をきっちりこなすだけじゃからな』

 『く・・・・・・っ! いいから勝負をしなさいよ━━男らしく!』

 『・・・・・・・・・・男らしく、じゃと?』

 

 

 あ。秀吉の気に障ることを言ってしまったか。秀吉は本気で振りに行く構えになってしまった。

 

 『━━トライクッ! バッターアウッ!』

 

 「すまんお主ら。無理じゃった」

 

 「いや、まぁ仕方ないけど・・・・・・どうして最後だけあんなに大振りだったの?」

 

 「気にするでない。ワシにも色々と譲れんものがあるのじゃ」

 

 「ふ〜ん・・・・・・?」

 

 「ま、次の打席でヒットを打てばいいんだし、気持ちを切り替えていこうか」

 

 秀吉は凡退に終わり。次はムッツリーニの番だ。アイツは運動神経も良く、召喚獣操作にも慣れているから期待できるだろう。・・・・・・保健体育だけならな。

 

 

 

Eクラス 中林 宏美 105点

VS

Fクラス 土屋 康太 22点

 

 

 「どうしようか二人とも。僕にはコールド負けの光景まで見えるんだけど」

 

 「奇遇だな明久。俺もだ」

 

 「おそらくバットに当てても押し戻されそうなほど差が開いているからどうしようもないな」

 

 「けどまぁ、大丈夫だ明久」

 

 「いや、大丈夫って言われても・・・・・・」

 

 「とにかく、何がなんでも出塁しろ。そうすれば次の打席で俺が打ってやるから」

 

 「斗真の言う通りだ。信じろ。信じていれば、きっと妖精とかがなんとかしてくれる」

 

 「あ。もう神頼みしかのこってないんだ」

 

 「しかもえらそうでファンタジーな他力本願だし」

 

 「頼む、大量虐殺の妖精・・・・・・!」

 

 「気をつけて! ソイツは多分妖精の名を騙った邪神だから!」

 

 恐らく願いと引き替えに生け贄を要求する質の悪いヤツだろう。

 

 

 『アウト!』

 

 

 下らない願いを言っている間にムッツリーニもゴロをピッチャーの前に転がしてアウト。ここで2アウトだから次は3番の明久だ。

 

 「よし、ここは一発、デカいのかましてくるか!」

 

 「おう。期待しているぞ明久」

 

 「任しとけっ」

 

 明久はどん、と胸を叩いてバッターボックスに入る。が

 

 

 ゴスッ

 

 

 『デッドボール。一塁へ』

 

 

 「痛みがっ! 顔が陥没したような痛みがぁっ!」

 

 初球から顔面にデッドボールを当てられ、明久はバットを振りもせず、塁に出た。フィードバックにより痛みと引き換えにだが。

 

 「ここから先、アンタの打席は全部デッドボールよ」

 

 「最悪の予告だ! 絶対さっきのことを根に持ってるよね!?」

 

 あの〜中林さん。これが通常の野球ならあなたは即刻退場処分を食らわされるんですけど。

 そうして、明久が痛みを引きずっては一塁へと進んだ後。俺の番に回ってきたのでバッターボックスに入る。

 

 

 

Eクラス 中林 宏美 105点

VS

Fクラス 東條 斗真 312点

 

 

 互いの点数が表示された。

 俺と中林さんとの差は200点もの差があり。俺自身、運動はできる方だから結果は言うまでもない。

 

 『う・・・・・・。コイツも怖いけど、この次は坂本でその後にはあの姫路だし・・・・・・。ここは勝負で・・・・・・!』

 

 中林さんが表示された俺の点数を見て呟く。

 俺の次が大したことない人だったら、おそらくわざとフォアボールを出して勝負を避けていたかもしれん。だが、今の雄二はAクラス並でその次に控えている姫路さんは学年次席だから彼女が打席に付く前にランナーを溜めるわけにはいかない。

 

 

 キンッ

 

 

 『ホームラ━━ン』

 

 

 俺は初球から振りに行くと、ボールは真芯に当たっては彼方へと飛んで行き。1点差になった。

 

 「東條、見事なホームランだったね」

 

 「・・・・・・・・・・ナイスバッティング」

 

 「流石じゃな。斗真」

 

 「まぁな。雄二、次はお前が決めろよ」

 

 「ああ。ここで真打登場というワケだな」

 

 今度は5番バッターの雄二がバッターボックスに入り。俺に続くようにホームランを打っては同点になる。

 

 『く・・・・・・っ! 次からは東條と坂本にもぶつけるしかないっていうの・・・・・・!』

 

 「「「普通に敬遠しろ!」」」

 

 呻く中林さんにツッコミを入れる俺たち。

 出会った当初は普通の人だと思っていたが、やはり彼女もどこかしら常識がズレているかもしれんな。

 

 「さて、次は姫路じゃな。ここはホームランで一気に逆転したいところじゃが」

 

 「う〜ん。それはちょっとあの子には厳しいかもしれないわね・・・・・・。瑞希はテストの点数はいいけど、あの通り運動神経はあまり良くないから」

 

 島田さんが苦笑を浮かべてはそう呟く。姫路さんは身体が弱いからスポーツをやってないだろうし、仕方ないかもしれんな。

 

 「そう思って、俺も姫路には無理して打たないでいいと言ってある」

 

 「ってことは、四球狙い?」

 

 「だろうな。既にこちらが1点差でリードしてるし。姫路さんのあの点数じゃ満塁ならともかく、無理して勝負する必要もないからな」

 

 「そっか。こっちのチームは斗真と雄二と姫路さん以外は純粋にFクラスの学力だし。ランナーがいないなら敬遠して他の人と勝負した方が良いしね」

 

 『ボール。フォアボール。一塁へ』

 

 『あ、はい。ありがとうございます』

 

 話している間に、姫路さんがフォアボールで塁に出る。これで再び2アウト、ランナー一塁。次に打席に立つバッターは

 

 「うぅ・・・・・・。ウチの番ね・・・・・・」

 

 島田さんに打席が回るが、なんだか随分自信がなさそうだ。まぁ理由があるとすれば今の科目が古典だからだろう。

 

 「あれ? 美波って野球が苦手なの?」

 

 「あ、ううん。野球もできないことはないわよ。ただ、ちょっとね・・・・・・」

 

 「???」

 

 溜息を吐きながらバッターボックスに立つ島田さん。その点数はというと

 

 

 

Eクラス 中林 宏美 105点

VS

Fクラス 島田 美波 6点

 

 

 比べるまでもなく、歴然としていたのだった。

 

 「さぁ守備だ! きっちり守るぞ!」

 

 「「「おう!」」」

 

 『ウチまだ打ってないんだけど!?』

 

 そんな叫びも虚しく、島田さんはサードゴロでアウトとなり。俺達は再び守備に付くこととなった。




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