バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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第六問 二人三脚 前編

 「お。戻ったか明久」

 

 「さっきは色々と災難だったな」

 

 「ご苦労じゃったな、明久」

 

 「・・・・・・・・・・おかえり」

 

 「あ、うん。ただいま・・・・・・」

 

 先程のEクラス戦は勝ったものの、明久は試合途中で試験を受けに行った為一人だけ疎外感を味わった。それを見た俺達は明久があまりにも可哀想だと思い、補充試験を終えて戻ってきた明久を温かく迎え入れ。明久は少しだけ疎外感が和らいだ。

 明久が戻ってきた後周りを見回すと、Fクラスの皆が妙に真剣な顔をしては箱の前で騒いでいた。

 

 

 『頼む・・・・・・! なんとか最高のパートナーを・・・・・・!』

 『いいから早く引けよ。後がつかえているんだから』

 『わかってるから急かすなよ! ・・・・・・よし。これだ━━チクショー!!』

 『『『っしゃぁああーっ! ざまぁ見やがれぇーっ!』』』

 

 

 「えっと、あれは何をやってるのかな」

 

 「ん? あれか? ただのくじ引きだが」

 

 「いや、それは見たらわかるよ。そうじゃなくて僕が聞きたいのは、何のくじ引きをやってるのってこと」

 

 「次の種目は二人三脚だからその時に組むペアを決めるくじ引きを今やっているんだよ」

 

 「ふ〜ん。そうなんだ」

 

 二人三脚では誰と組むかによって勝敗が決まる為。個々の能力よりも、相方と如何に息を合わせられるかを競うからな。

 

 「なんじゃ。随分と落ち着いておるではないか明久」

 

 「だって、僕は別に誰がパートナーになっても気にならないから。どうせ男女別になっているだろうし━━」

 

 「今回は男女混合だな」

 

 「全然問題ない試獣召喚(サモン)

 

 「落ち着け明久。教師の許可もなく召喚獣が喚べるわけないだろ」

 

 「これが落ち着いていられるかぁーっ! 誰!? 女子勢のパートナーには誰がなってるの!?」

 

 「安心せい。まだ決まっておらん」

 

 「え? そうなの?」

 

 「・・・・・・・・・・決まっていたら、あんなに騒がない」

 

 「あ。それもそっか」

 

 まだ女子と組むペアが決まっていないと知った明久はホッと一息ついて安心する。まぁ明久が女子と組むとなった瞬間異端審問会に処刑されるのは目に見えているが。

 

 「なるほど。だから皆ああやって祈りながらくじを引いているんだね」

 

 「そういうことだ」

 

 現に箱の前ではFクラスの男子達が箱を前に我が先にと懸命に祈っていた。

 

 「でも、姫路さんや美波が男女混合を許可したよね。雄二か斗真がうまく言いくるめでもしたの?」

 

 「いや。俺は何もしていないぞ。他のクラスの女子は同性だけでくじを作っているし、男女混合はFクラスだけみたいだな」

 

 俺がそう説明しているのに対し、雄二は心外だといったように肩をすくめた。

 

 「バカを言うな。俺はむしろ男女別を推奨したくらいだ」

 

 「え? なんで━━って、ああそっか。下手なことがあったら殺されるもんね」

 

 「わかってもらえて何よりだ」

 

 「おそらく霧島さんのことだから雄二が女子とペアを組むと知れば、どこに待機していようがお仕置きするに決まってるよ」

 

 まるで一途な乙女の恋心に不可能なんて存在しない、とばかりに。

 

 「こんな競技よりも、俺としては野球の方が重要なんだがな」

 

 「・・・・・・・・・・同意」

 

 エロ本奪還を目的としている雄二とムッツリーニからすれば野球以外の競技はどうでもいいかもしれんが、体育祭に出てる以上参加しないわけにはいかない。

 

 「そう言えば、次の相手は決まったの?」

 

 「いや、次に戦う予定の三年が向こうで試合をしている筈だから決まってはいないな」

 

 中央(第一)グラウンドでは従来の体育祭が行われて、校舎裏にある第二グラウンドではさっきまで俺達二年生の野球大会が、体育館では三年生の野球大会が行われていた。俺達は今試合をしている三年の勝者と次に試合をする予定だ。

 

 「・・・・・・・・・・まだ試合途中。延長戦」

 

 「ふむ。うまくいけば次の試合は不戦勝になりそうじゃな」

 

 時間の都合上、この野球大会では七回までに決着が付かないと、ドロー扱いになる。引き分けと言えば聞こえはいいが、トーナメント表では両者敗退扱い。もしそうなれば、俺達は三年と戦わずに三回戦進出することとなる。

 

 「まぁ、一応試合があるという前提で作戦を考えておくか・・・・・・。確か、次の勝負は数学・物理・現国・政教・地理だったよな」

 

 雄二がプログラムを出しては確認する。挙げられた科目は、一般的な普通のラインナップだ。

 

 「・・・・・・・・・・保健体育がない」

 

 ムッツリーニが寂しげに呟く。保健体育しか高得点を取れてないムッツリーニからすればショックなことはなかろう。

 

 「ってことはムッツリーニは体育祭のクラス競技に参加?」

 

 「そうだな。二回戦はそうしてもらうか」

 

 「・・・・・・・・・・了解」

 

 ムッツリーニはここで戦線離脱することに。一般科目が明久より取れてない以上足手まといの他ないからな。

 

 「打順と守備位置もちょっと弄る必要あるな。最初の科目が数学となると島田を1番でピッチャーは引き続き斗真に配置するとして・・・・・・2番は須川あたりか。アイツはバントが上手そうだしな」

 

 「ならそこから俺と雄二と姫路さんで一気に点を稼ぐか」

 

 「僕はどうなるの? 数学は苦手なんだけど」

 

 「数学も、だろ。明久は後ろに回しても物理の点数が壊滅的だし、この際明久は3番に配置してそのままバントしてもらった方が良さそうだな」

 

 「ん。了解」

 

 俺と雄二が打順と守備位置を次々と決めていく。

 そうして話し合っていると

 

 「あ、あのっ、明久君っ」

 

 「ん? どしたの姫路さん?」

 

 明久が振り向いた先にいたのは姫路さんと島田さんだ。何やら真剣な顔付きをしているようだが。

 

 「別に用ってほどじゃないんだけど、ね」

 

 「その・・・・・・明久君は、何番ですか?」

 

 「えっ? 何番って・・・・・・3番だよ。ナンバースリー」

 

 「「はうぅっ!」」

 

 明久が答えると、二人は呻き声を上げていた。あぁそういうことか。

 

 「明久。二人が聞いてたのは打順じゃなくて二人三脚のくじの番号だ。後二人共。明久はまだくじを引いていないから誰と組むかは決まっていないぞ」

 

 俺が明久に代わって告げると

 

 「「え?」」

 

 さっきまで打ちひしがれていた二人が顔を同時に上げる。

 

 「そう言えば、野球の話ですっかり忘れてた。僕も早くくじを引かないと!」

 

 「あ、あのっ。明久君っ!」

 

 「ちょっと待ってアキ!」

 

 明久がくじを引きに駆け出そうとすると、姫路さんと島田さんに呼び止められた。

 

 「なに? どうかした?」

 

 「いえ、あの、その、なんというかですね・・・・・・。私は7番なんですけど・・・・・・」

 

 「う、ウチは6番なんだけど・・・・・・」

 

 二人が言いにくそうに自分の番号を伝える。おそらく、自分と組んでほしいから同じ番号を引いてくれとお願いしたいようだ。

 

 「「絶対その番号を引かないで(下さい)っ!!」」

 

 ちょっと待て。それじゃあ明久が二人からは嫌われてると誤解してしまうだろうが。

 

 「りょ、了解・・・・・・。じゃあ、行ってくる・・・・・・」

 

 明久はかなりショックを受けたからか、落ち込みながらくじを引きに行った。

 

 「お主ら、今の台詞は絶対に誤解されると思うのじゃが・・・・・・」

 

 「あれじゃあ二人から嫌われてると勘違いするだろうに」

 

 「だ、だって、相手はあの明久君ですから・・・・・・。この番号を引いて下さい。なんて言ったら━━」

 

 「そ、そうよ。絶対にその真逆の方向に進むに決まってるわ。坂本の番号とか、そのあたりを引いてくるのは目に見えてるもの」

 

 「・・・・・・お主らも、色々と苦労しておるんじゃな・・・・・・」

 

 「ったく、後でちゃんと誤解は解いておけよ」

 

 「「わ、わかったわよ(わかりました)」」

 

 ま、後は二人に任せるとして。くじを引きに行った明久はどうなってるかというと

 

 

 『『『あ。6ば』』』

 『殺れ』

 『『『イエス、ハイエロファント』』』

 『バカな!? もう囲まれた!?』

 

 明久が番号を言い切らないうちに異端審問会に取り囲まれた。迂闊に番号を告げたのが仇になったな。

 

 

 「ろ、6番ね・・・・・・。そっか、アキはウチとペアなんだ・・・・・・」

 

 「うぅ・・・・・・。美波ちゃん、とっても嬉しそうです・・・・・・」

 

 「そ、そう? そんなに嬉しくなんて」

 

 「そう言ってるわりにはやけに顔が輝いているように見えるけど」

 

 「う・・・・・・」

 

 「きっと美波ちゃんはこのチャンスに明久君の胸とかお尻とかに触るつもりです・・・・・・。狡いです・・・・・・」

 

 「あの〜姫路さん。君は一体何を想像しているの?」

 

 「な、何言ってるのよ瑞希っ。ウチがそんなことするわけ━━って、はい? 触る? 触るって・・・・・・何を言ってるの瑞希・・・・・・?」

 

 「あ・・・・・・っ! ち、違いますっ! 触るじゃなくて、えっと、その・・・・・・仲良くなるつもり、の間違いですっ!」

 

 「瑞希・・・・・・。アンタ、アキに何をするつもりだったの・・・・・・?」

 

 卑猥な想像をしていた姫路さんは置いておくとしてだ、明久は一瞬で腕関節を決められ、くじを奪われてしまった。たかが、二人三脚でペアを組むだけなのにそこまでやるか?

 

 

 『さて。この6番のクジだが、オークションを』

 『わかりました。美春が言い値で買い取りましょう』

 『『『なんで清水がここにいるっ!?』』』

 『残念ながらこれはクラス内のもので・・・・・・ん?』

 『どうしましたか、須川会長』

 『いや、これ・・・・・・6じゃなくて、9だな。9番の見間違いだ』

 

 須川が手にしているくじを広げて見せると、9という数字の下に、上下を見分ける為のアンダーバーが引かれていた。

 

 『なんだ、9番か。驚かせやがって』

 『人騒がせな』

 『くだらないことで体力を消費しちまったぜ』

 『所詮は吉井だな。数字すらまともに読めないなんて』

 

 異端審問会のメンバーが愚痴りながら去って行く。そうなるなら最初から明久を襲撃するなって言いたい。

 

 「また災難にあったな、明久」

 

 「うん。でもさっきは僕がちゃんと読めてなかったのがいけないんだけどね」

 

 「あの、アキっ」

 

 肘関節を擦りながら戻ってきた明久に言葉を交すと。島田さんが明久の元に駆け寄ってきた。

 

 「ん? なに美波?」

 

 「なんて言うか、その・・・・・・本番の前に、ちょっとそこらへんで脚を縛って練習でもどう? ほら、二人三脚ってチームワークが大事だから、息を合わせる為に先に少し練習しとかないと・・・・・・」

 

 「あのさ島田さん。明久が引いたくじなんだけど」

 

 「何よ東條。アキはウチと一緒になったんだから別に問題ないでしょ」

 

 「いや、だから。それに関しては明久の引いた番号は6番じゃなくて9番だから島田さんとは組めないんだってば」

 

 「え?」

 

 「明久。さっき引いたくじを見せてやれ」

 

 「うん。僕の番号は9番だからさ。美波は6番でしょ?」

 

 明久が引いたくじを見せる。それを見た島田さんはさっきまで輝いていた顔付きがまるで嘘かの様にしょんぼりとした。

 

 「そ、そうなの・・・・・・。それなら、別にいいわ・・・・・・」

 

 島田さんは心なしか肩を落として去っていった。明久とペアを組めると思ってたのが番号が違ってたが為に組めずに終わったのが余程ショックだったみたいだな。

 

 

 『ごめんなさい美波ちゃん。私、今ちょっとホッとしちゃいました』

 『いいのよ瑞希・・・・・・。ウチも同じ立場なら、キッとホッとしただろうから・・・・・・』

 

 

 戻っていった島田さんが姫路さんと囁き合っている。内容はともかく、俺も雄二のところに向かうとするか。

 雄二は野球の作戦が決まったのか、打順を書いた紙をしまってこちらを向いた。

 

 「なんだ明久。その様子だと当たりは引けなかったみたいだな」

 

 雄二はからかうように言っているが、もし明久が当たりを引いていたらどこかに埋められていたかもしれないからこれはこれで当たりかもしれんな。

 

 「そう言えば、雄二たちは何番なの?」

 

 「ん? そういや、まだ引いてなかったな。アイツらが落ち着くを待っていたらすっかり忘れてた」

 

 「俺もまだくじを引いていないから、まだ決まってないな」

 

 「ワシもじゃな」

 

 「・・・・・・・・・・同じく」

 

 俺達四人はまだパートナーが決まっていないし、さっさとくじを引くとするか。もしペアを組めるとするなら勿論━━

 

 「頼んだよ、秀吉。なんとしても9番を」

 

 「んむ? なんじゃ、明久はワシと組みたいかの?」

 

 「そりゃそうだよ。当たり前じゃないか」

 

 「おい待て明久。それは一体どういう意味だ」

 

 明久は俺達の中から選べるとするならば秀吉と組みたいと言い切るが、秀吉の彼氏である俺の前でそんなことを言うとはいい度胸をしているな。まぁ明久は後でどこかに埋めるとしてだ。

 

 「んじゃ、ちょっくら引いてくるか。名目上は野球大会よりも体育祭のクラス種目が優先されるわけだしな」

 

 「・・・・・・・・・・表面上は参加しないと拙い」

 

 「とりあえず、さっさとくじを引くとするか」

 

 「そうじゃな」

 

 俺達がくじ引きの箱に向かって歩いて行く。まだくじ引きをしていないのは俺達だけで、パートナーが決まっていないのは明久と姫路さんと島田さんと須川。くじの結果次第では悲惨な結末になるかもしれん。

 誰もが固唾を飲んで見守る中、最初に秀吉がくじを引く。

 

 「む。9ば━━」

 

 

 「っしゃぁ全員かかってこいっ! 僕は死んでもこのくじを守りきってみせるっ!」

 「「「生きて帰れると思うなよボケがぁっ!!」」」

 

 明久は一瞬で膨れ上がった殺気に負けないように声を張り上げ、拳を構える。ったく、秀吉とペアを組むだけだってのに何やってんだか。

 

 「━━ではないの。6番じゃ」

 「「「・・・・・・・・・・」」」

 

 殺気が一瞬で萎んでいく。秀吉は島田さんとペアを組むのが決まったし。俺としてはこれで良かったかもしれん。

 残されたくじは明久と姫路さんと須川の番号のみ。

 

 

 「・・・・・・・・・・(がさごそ)」

 

 ムッツリーニが箱の中に手を入れる。ムッツリーニがもし姫路さんとペアを組むことになれば、姫路さんの胸と接触することになるだろうし、アイツのことだからそれで命を落とすことになろうと、躊躇いなくその幸福へと身を委ねるに違いない。

 

 「・・・・・・・・・・2番(ガックリ)」

 

 ムッツリーニが引いた番号を確認しては肩を落とす。番号からしてムッツリーニは須川と組むことになってしまったか。さて、次は俺が引くとしますか。俺がくじ箱に手を入れ、残っていた二つの紙の内一つを手にして番号を読み上げる。

 

 「んっと、俺は9ば━━」

 

 

 「さらばだっ!」

 「逃がすなっ! 坂本を捕らえて血祭りにあげろ!」

 「「「おおおーっ!!」」」

 

 

 この間、一秒未満。俺が明久と同じパートナーになると発覚した瞬間に、残った雄二が姫路さんとペアになると判断すると素早い行動をとる。

 体育祭という行事に相応しい速さで全力疾走する雄二を眺めていると、くじを引き終えた秀吉とムッツリーニが戻ってきた。

 

 「まったく、皆元気がいいね」

 

 「アイツら、こういう時だけ無駄に力を発揮するよなまったく・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・騒がしい」

 

 「なんじゃ。明久は雄二を処刑しようとはせんのか?」

 

 秀吉が明久に疑問を投げかける。確かに普段の明久なら雄二が不幸な目に合っていたら我先にと攻撃する筈なんだが。

 

 「大丈夫。僕がそんなことをしなくても」

 

 

 『・・・・・・浮気は許さない』

 『ぐぁあああっ! 翔子!? お前はどこから湧いたんだ!?』

 

 

 「━━霧島さんがやってくれるから」

 

 「なるほど。どちらにせよ、雄二の命は風前の灯じゃったか・・・・・・」

 

 「どの道雄二が殺られる運命は決まってたみたいだな」

 

 雄二はいつの間にか現れた霧島さんにアイアンクローを掛けられるのだった。あれは冗談抜きで痛そうだ。

 

 「あ、代表ここにいたのね。もう、急にいなくなったからビックリしたわ」

 

 「ん? どうしたんだ優子。Aクラスのお前が何故ここに来ているんだ?」

 

 「アタシは代表を探しに来ただけよ。代表のことだからもしかしてここにいるかもしれないと思ってね」

 

 「なるほど。案の定探しに来たらあそこにいて今雄二にお仕置きをしているってわけだ」

 

 「それはそうと。どうして代表は坂本君の頭を鷲掴みにしているのか教えてくれる?」

 

 「大したことじゃないよ。二人三脚で姫路さんとペアを組むだけなのに霧島さんは浮気してると勘違いして雄二にああしてるんだよ」

 

 「そういうことね。まったく、代表ったら愛が重いにも程があるわ」

 

 俺と優子が親しげに話している中、霧島さんが雄二にアイアンクローを掛けながら尋ねる。

 

 

 『・・・・・・ところで雄二』

 『おい待て翔子。この状態で何事もないように話を始めるな。普通は手を緩めるだろ』

 『お義母さん、何か預かってない?』

 『ん? お袋から? ああ。あれなら』

 

 雄二は顔面を鷲掴みにされつつ話をする。

 待てと言いながらそのまま話ができる雄二も普通じゃないと俺は思うが。

 

 

 『・・・・・・あれなら?』

 『持ち物検査の日に、お前が持っていた袋の中に入れておいた』

 『・・・・・・袋って?』

 『催眠術の本とかが入っていたやつだ』

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に?』

 『本当だ』

 『・・・・・・嘘じゃ、ない・・・・?』

 『嘘じゃない』

 『・・・・・・・・・・』

 『どうした翔子。それがどうかしたのか?』

 『・・・・・・んて・・・・・・とを・・・・・・』

 『だから、どうしたと━━』

 『・・・・・・なんてことを、してくれたの・・・・・・っ!』

 『ぎゃぁああああっ! 死ぬほど痛ぇええっ!』

 『・・・・・・あの袋、中身ごと全部没収されたのに・・・・・・!』

 『ぐぎゃぁああ━━ぁぁ・・・・・・』

 

 

 パキュッと乾いた音がすると同時に、雄二は力なくその場に横たわるのだった。

 

 

 『・・・・・・雄二のバカ・・・・・・っ』

 

 

 そんな雄二を捨て置いて、霧島さんは走り去って行った。

 

 「じゃあアタシはAクラスのところに戻るからまた後でね」

 

 「おう、またな」

 

 優子も霧島さんを追ってはAクラスの待機スペースへ戻って行った。

 雄二と霧島さんの間に何があったかわからないがとりあえず雄二を介抱してやらないと。

 

 「雄二。何をやったのさ」

 

 「明らかに霧島さんの怒りは尋常じゃなかったぞ」

 

 俺と明久が雄二を起させつつ、話を訊いてみる。雄二は頭を振りながら答えるが、あれだけの攻撃を喰らいながらも起き上がれるのはどう見たって普通とは思えない。

 

 「あぁ・・・・・・どうも俺のせいでお袋に預けていた物を雑誌類と一緒に没収されたらしいが・・・・・・」

 

 「預けていた物、ねぇ」

 

 「あの様子からだと、結構大事な物を取られたみたいだな」

 

 「お袋に預けた、となると━━まさか、婚姻届の同意書かっ!」

 

 そういうことか。雄二と霧島さんは未成年だから、両親の同意が必要で、折角手に入れた書類を取られたんだからあそこまで怒るのも頷けるな。

 

 「危なかった・・・・・・。そういうことなら、あの持ち物検査に感謝してもふぐぅ!」

 

 再び雄二がその場に倒れる。後ろには、Fクラスの皆がスタンガンを持って立っていた。

 

 

 『連れて行け』

 『ハッ』

 

 

 ぐったりとした雄二が担ぎ上げられ、そのまま校舎裏へ連れて行かれた。おそらくこの後酷い目に合うのは間違いないだろうが・・・・・・ひとまず、二人三脚の方を優先するとしますか。




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