バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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第七問 二人三脚 後編

 「とりあえず、僕のパートナーは斗真ってことだよね。宜しく」

 

 「こちらこそ。一緒になったからには一位を目指すぞ」

 

 俺と明久はグッと握手を交わす。速さに関してはムッツリーニに劣るが、勝負の上のパートナーとしては秀吉やアランに次いで相性がいいからな。

 

 「木下はウチとペアよね。宜しく頼むわ」

 

 「そうじゃな。宜しく頼むぞい」

 

 秀吉と練習をする為か、島田さんは俺と明久の近くに来ていた。その隣には不安そうな顔をする姫路さんがいた。

 

 「私は坂本君とペアですか・・・・・・。脚を引っ張っちゃわないか心配です・・・・・・」

 

 「ああいや、その心配はいらないんじゃないかな」

 

 「何しろ今の雄二はまともに走れそうになっていないし」

 

 くじ引きの組み合わせは

 

 【俺&明久】

 

 【秀吉&島田さん】

 

 【姫路さん&死体】

 

 【ムッツリーニ&須川】

 

 となってしまったが、まぁこれはこれで余計ないざこざが起きなくて済むから良かったかもしれない。

 

 「? なによアキ。パートナーが木下じゃなくて東條だったのに、ちょっと嬉しそうじゃない」

 

 「え? そ、そう」

 

 明久は誤魔化してはいるが、本心としては姫路さんと島田さんが他の男子とペアにならなかったことにホッとしているだろう。

 

 「ワシは斗真とペアを組みたかったのじゃが」

 

 「まぁ落ち着けよ秀吉。俺だってお前とペアを組みたかったけど、一緒になれば優子や他のFクラスが見過ごしてはくれないからここは我慢してくれ」

 

 「斗真・・・・・・。わかったのじゃ。ここは大人しく我慢するぞ」

 

 「悪いな。体育祭が終わったらまたいつか飯奢ってやるよ」

 

 「約束じゃぞ」

 

 「ああ。勿論だとも」

 

 俺とペアを組めなくて残念そうにしている秀吉を慰めてると

 

 「まぁ、斗真なら雄二よりはいいよね」

 

 「ふ〜ん。どうして?」

 

 「だってほら、可愛かったからさ」

 

 「・・・・・・・・・・は?」

 

 明久の口からトンデモナイ発言が出た瞬間、島田さんは真顔で聞き返す。

 

 「明久。今の発言は一体どういうことか詳しく聞かせてもらおうか?」

 

 俺が詰め寄りながら尋ねると明久は後ずさりしながらこう返す。

 

 「前に海で斗真が女装したじゃない。あれが結構可愛かったと━━あ痛っ」

 

 話をしている途中で秀吉が不機嫌そうな顔をしては明久を軽く叩いた。

 

 「秀吉? どうしたのさ」

 

 「・・・・・・明久。斗真はワシの恋人じゃから今の発言は聞き捨てならぬぞい」

 

 「あ、ごめん秀吉」

 

 秀吉の気持ちを理解したのか明久は秀吉に謝る。秀吉は優子と違ってちょっと癪に触ると手を出すヤツじゃないから先程の明久の発言が余程気に入らなかっただろうな。

 

 「最近、明久君の好みの幅が広がりすぎて困ります・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・変態」

 

 「ご、誤解だよ二人ともっ! 別に僕は本気でムッツリーニの女装姿に興味があるわけじゃなくて、純粋に勝負で勝ちやすいパートナーだから嬉しいだけで!」

 

 「だったら最初からそう言えっつーんだよこのバカ。危うくお前とできてると誤解されるとこだったんだぞ」

 

 遠巻きに見ている姫路さんとムッツリーニに対し明久は弁明する。ったく、明久が変に誤解を招くようなことを言うからこうなってるのに。

 

 「・・・・・・へぇ〜。アキ、アンタ凄い自信じゃない」

 

 明久の発言に思うところがあったのか、島田さんがそんなことを言ってきた。

 

 「まぁ、斗真は勉強だけじゃなく運動神経も良いし、僕も運動は苦手じゃないからね」

 

 「ふぅん、そうなんだ。・・・・・・それじゃ、さ」

 

 「ん?」

 

 「ウチらと━━勝負、してみない?」

 

 「え? 勝負?」

 

 「そういや二人三脚は各クラス二組ずつ出場することになってるからそれで俺達と勝負しようってか?」

 

 「そうよ。で、どうするアキ? この勝負引き受ける気あるのかしら?」

 

 島田さんからの提案に明久はというと

 

 「うん。オッケー。それなら勝負しよう」

 

 明久は勝負を引き受けると返事を返す。

 

 「それで、負けた方は罰ゲームね」

 

 「へ?」

 

 島田さんが更に条件を加えてきた。島田さんのことだから碌なものにならない気がする。

 

 「どうする明久? この勝負断るか?」

 

 「なによアキ。まさかアンタ、女子のペアが相手なのに勝つ自信がないの?」

 

 「いや島田。ワシは女子ではないのじゃが」

 

 「そ、そんなことはないさっ! オッケー、その勝負引き受けた!」

 

 島田さんが挑発的な台詞を言ってくるや、明久はそれに負けじと勝負を引き受けると強気に言った。ま、俺としてはその方が面白くなるから別にいいけど。

 

 「じゃあ、ウチから提案する罰ゲームなんだけど」

 

 「うん。何でも言いなよ。勝ってみせるからっ」

 

 「おいおい。まだ勝負すら始まっていないのに強気でいられるな」

 

 あまり言い過ぎると碌なことにならないってのに明久は自信ありげに言う。後で酷い目に合っても知らないぞ俺は。

 

 「ウチが勝ったら━━」

 

 「うんうん」

 

 「━━ちょっと、付き合って」

 

 「へ? ちょっと付き合うって・・・・・・週末とか? 買い物に行くの?」

 

 明久は何らかの形で利用されるかもしれないと思っているかもしれんが、島田さんの狙いはおそらく。

 

 (明久とデートすることが目的だな)

 

 (じゃな。島田も相変わらず不器用じゃのう)

 

 「う、うん。まぁそんなところ。買い物とか、ご飯とか、映画とか、色々」

 

 「そ、そんなに一杯・・・・・・。一日で回り切れるかな・・・・・・?」

 

 (当の明久は島田さんの狙いに気付いてないな)

 

 (あれでは先が思いやられるのう)

 

 「・・・・・・別に、一日だけっていうつもりじゃないから・・・・・・」

 

 (島田さんも島田さんで別の意味になってるし)

 

 (はぁ。二人の今後が心配じゃわい)

 

 俺と秀吉は島田さんの狙いに気付いてない明久と途中でヘタれてしまった島田さんに呆れるしかなかった。

 

 「ん〜・・・・・・まぁでも、それくらいならいっか。乗ったよ。その代わり僕が勝ったら・・・・・・そうだなぁ、ご飯でも奢って貰おうかな」

 

 「わかったわ。約束する」

 

 「これで賭けは成立だね」

 

 「そうね。・・・・・・ウチが勝ったら━━本当に、付き合ってもらうから」

 

 「秀吉。お前はどうする?」

 

 「そうじゃな。もしワシらが勝ったら姉上に内緒で二人でどこかに遊びに行きたいのじゃがそれで良いかのう?」

 

 「それくらいなら別に構わないよ。寧ろ大歓迎さ」

 

 「くっ! 秀吉と二人っきりでデートなんて羨ましいよ斗真は・・・・・・!」

 

 俺と秀吉が約束事をしては明久が下らない嫉妬心を露にする。お前だって島田さんや姫路さんがいるってのにコイツは。

 

 

 『これより、第二学年の二人三脚を行います。二年生の生徒はスタート位置に集合して下さい』

 

 

 グラウンドでアナウンスが響き渡り、俺達はスタート地点へと歩き出す。

 

 「よしっ。そろそろ行くよ斗真! 最高のタイムを叩き出そう!」

 

 「あ〜明久。あまり俺にくっつくなよ。お前とできてるってことが優子に知られでもしたら後が怖いからな」

 

 「いやだからそれは誤解だってば!」

 

 

 

 

 

 多くの参加者が並んでざわめくスタート地点。俺達は秀吉&島田さんペアと勝負をする為に、二人と同じ位置に並んでいた。

 

 

 『位置について! 用意━━』

 

 

 ━━パァン

 

 

 乾いた音が鳴り響くと同時に前方に並んでいた走者が一斉に走り出す。俺達の出番は次の次だから念の為に準備はしておくか。そう考えながら軽くストレッチをしては隣を見てみる。

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 同じタイミングで走る島田さんがやけに真剣な顔をして待っているがやる気満々だな。

 

 「美波、随分とやる気だね」

 

 「えっ!? そ、そう? そんなことないけど?」

 

 「あははっ。何をそんなに緊張してるのさ」

 

 「き、緊張なんて━━」

 

 「してないの?」

 

 「・・・・・・し、してるけど・・・・・・」

 

 「ほら、やっぱり。クラスの為に真剣なのはいいけど、もう少しリラックスしないと勝てるものも勝てないよ?」

 

 明久は未だに気付いてないみたいだが、島田さんが真剣になっているのはクラスの為じゃなくて明久と一緒にいる為なんだが。ま、今更本当のことを言ったところでこのバカが理解できるわけないか。

 

 

 『位置について! 用意━━』

 

 

 合図とともに目の前の組が走り出す。次は俺達の番だな。

 

 「やろう斗真。僕らがトップでゴールするんだ」

 

 「ああ。端からそのつもりだ」

 

 「お願い、木下」

 

 「うむ。全力を尽くそう」

 

 「わかりました。美春も頑張ります」

 

 ん? 一人余分な声が聞こえたんだが、どういうことだ?

 

 

 『次の組。位置について! 用意━』

 

 

 パァンという乾いた音と同時に、俺と明久は動き出した。左足、右足とリズム良く交互に足を出していっては、中々良いスタートを切った。

 徐々にペースを上げては、スピードも速くなり、隣には誰もいないと思ってしまう程の一体感を感じた。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ。どうやら僕たちがトップみたいだね」

 

 「あぁ。今頃二人はどうなって・・・・・・」

 

 「どうしたのさ斗真。美波と秀吉はもうとっくに着いてもいいはずなんだけど」

 

 「いや、それどころじゃないみたいだな」

 

 「へ? それって一体?」

 

 「あれを見てみろ(スッ)」

 

 俺が指差した方向を見てみると、島田さんが秀吉の他に清水さんとも脚を縛られては三人四脚になっていた。

 

 「あのチーム・・・・・・なんで三人四脚になっているんだ・・・・・・?」

 

 

 『え!? あ、あれ!?清水さん!? ちょっとアンタ何してんのよ!』

 『美春とお呼び下さい。 ああ、お姉様・・・・・・密着しても決して存在を感じさせない、その奥ゆかしいお胸がたまりません・・・・・・』

 『ドサクサに紛れてどこ触ってんのよ! さっさと離れなさい! この勝負は、ウチにとって凄く大事なものなんだから!』

 『何を言ってるのですか! 美春はお姉様の為を思ってこそ、こんな行動に出ているのです!』

 『これのどこがウチの為よ! ウチのことを思うなら━━ってちょっとぉぉぉっ!? 今アンタ背中に手を回してホックが外さなかった!?』

 『大丈夫です! お姉様なら固定しなくても何の邪魔にもなりませんから!』

 『アンタ後で覚えておきなさいよ!』

 『はいっ! この感触、絶対忘れませんっ!』

 『そういうことを言ってんじゃないのよ!』

 『ワシは、こんな時はどうすればいいのじゃ・・・・・・?』

 

 

 一応この勝負は俺達の勝ちになっているから、もうそろそろ終わってもいいんだが。あの様子だともう少し掛かりそうだな。

 

 

 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。清水さん。アンタねぇ・・・・・・!」

 

 「お姉様、素敵でした・・・・・・」

 

 「なんというか、異様に疲れる二人三脚(?)じゃったぞ・・・・・・」

 

 俺達が脚を縛る紐を解いていると、漸くゴールし、通常以上に体力を使ったのか三人はかなり息が上がっていた。

 三人四脚で二位とは、一位よりも案外凄いかもしれない。

 

 「清水さん! アンタのせいで負けちゃったじゃない!」

 

 「ではこのへんで失礼します! またお会いしましょうお姉様!」

 

 「あっ! こら! 清水さん━━っ!!」

 

 島田さんに頭を下げ、俺と明久を一睨みすると、清水さんは脱兎の如くその場から去っていった。

 

 「ったく、余計な邪魔が入らなかったらいい勝負ができたかもしれないのに」

 

 その後、結果が結果なだけに明久は勝負は無効にしてもいいよと言ったが、島田さんが卑怯なやり方をしてもいずれ後で後悔するから別に構わないと言ってくれたので結果として島田さんは明久にご飯を奢ることとなった。

 

 「ところで島田よ」

 

 「ん? どうかした、木下?」

 

 「いや。その・・・・・・まだ外れておるようじゃが、着け直さんでも良いのか?」

 

 「え?」

 

 秀吉が自分の胸をトントン、と叩く。

 俺と明久もそれが気になっていたがあまりにも言えそうになかったため敢えて静観していた。

 

 「・・・・・・・・・・!(////)」

 

 あ。やっと気付いたか。

 

 「あ・・・・・・。ち、違うのよ! 別に外れていても大差がないとか、違和感がないとか、そういうのじゃないんだからぁーっ!」

 

 島田さんは背中に手を当てて気付いたのか、胸元を押さえて校舎の方へと爆走して行った。ていうか、支えがなくても違和感がないから気付かないとかどんだけ胸が小さいんだよ島田さんは。

 

 「・・・・・・・・・・(クタッ)」

 

 隣では人知れず、ムッツリーニが出血多量で倒れていた。




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