ではどうぞ
清涼祭 当日
「いつもはタダのバカに見えるけど、坂本の統率力は凄いわね」
「ホントいつもはタダの馬鹿なのにね」
「普段からそれくらいやる気を出せばいいのにな」
俺達の教室はオンボロな状態から一転して、綺麗な中華喫茶に変貌を遂げており。明久と島田さんはそれを実行した坂本に感心していた。
「このテーブルはパッと見は本物と区別がつかないよ」
明久の言う通り、この教室にあるテーブルはみかん箱を詰め合わせ、そこに白のクロスを掛けただけのものだ。
「あっ、それは木下君が作ってくれたのですよ。どこからか綺麗なクロスを持ってきて、こうテキパキと」
流石は秀吉だ。おそらく白のクロスは演劇部で使っている小道具を借りた物でそれをここまで仕上げるなんてな
「ま、見かけはそれなりの物になったがの。その分クロスを捲るとこの通りじゃ」
秀吉がクロスを捲ると山積みになったみかん箱が露になるが
「これを見られたら店の評判はガタ落ちね」
「まあそれは大丈夫だろう。さすがにそんな事する奴はいないと思うけど」
「そうですよ。わざわざクロスを剥がしてアピールをする人はいませんよきっと」
もしそんな事をする人は営業妨害か何かしかいないだろう。
「室内の装飾も完璧だし。これなら問題ないよね」
確かに、ここまで綺麗ならきっとお客さんも来るのは間違いないな。
「・・・・・・飲茶も完璧」
そこにはムッツリーニがおり。試作で作ったであろうお茶と胡麻団子を持ってきてくれたのだ。
「わぁ・・・・・美味しそう・・・」
「土屋、・・・・・・これ、ウチらが食べていいの?」
「・・・・・・(コクリ)」
「じゃあ、頂くとするか」
「そうじゃな」
さっそくムッツリーニが作った胡麻団子を味見する俺達。
「お、美味しいです!」
「本当、表面はカリカリ、中はモチモチで食感もいいし」
「甘過ぎないところもいいのう」
「ここまで美味しく作れるとは流石だな、ムッツリーニ」
ムッツリーニの胡麻団子は美味しく、これならきっとお客さんも喜んでくれるし。口コミできっといろんな人も来てくれるのは間違いないな。
「お茶も美味しいです。幸せ~・・・・・」
「本当ね~」
女子二人がここまで満足するって事は飲茶も完璧ってところか
「それじゃ僕も貰おうかな」
「・・・・・・(コクコク)」
明久が残りの胡麻団子を口にする
「ふむふむ。表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ。甘過ぎす、辛すぎる味わいはとってもーんゴパっ」
明久が急に倒れてしまう。ってちょっと待て!?まさかそれは‼
「あ、それはさっき姫路が作ったものじゃな」
「・・・・・・(コクコク)」
「む、ムッツリーニ、どうしてそんな怯えた様子で僕の口に胡麻団子を押し込もうとするの!?食べられないよ」
ムッツリーニはおそらく明久に姫路さんが作った胡麻団子(という名のバイオ兵器)を処分して貰おうと必死だ。
「ちょっと待って姫路さん。厨房はムッツリーニ達に任せてあるから、ホールだけ専念してって頼んだ筈だが」
「えっ、で・・・・・・でも、どうしても作りたくなっちゃて」
(島田さん、ちょっと)
(えっ、何よ)
俺は姫路さんに聞こえないよう声を小さくし島田さんを呼ぶと
(悪いけど、姫路さんが厨房に入らないよう見張っといてくれないか)
(な、何でよ?)
(この際だから言うけど、姫路さんは料理に化学薬品を入れるとんでもないマッドクッキングをする人なんだ。現にそれを食べた明久は今倒れてるんだから頼む)
(えっ!?瑞希が!?わ、わかったわ。ウチが見張っとくから任せといて)
(すまない)
俺が島田さんに姫路さんを厨房に入れないよう監視の頼みをしていると
「うーっす、戻ってきたぞ」
雄二が学園長室から戻ってきた。
「あっ。雄二おかえり」
「ん?何だ美味しそうじゃないか。どれどれ」
雄二はさっき明久が食べかけた胡麻団子(バイオ兵器)を口にする。
「たいした男じゃ」
「雄二、君は今最高に輝いてるよ」
「お前の死は無駄にしないからな」
「んっ?・・・・・・お前等一体どういうことーんゴパっ!」
雄二が倒れてしまった。
「って雄二、大丈夫か!」
俺が雄二の側に駆け寄ると
「ふっ問題ない」
床に伏っしたまま雄二はこう呟く
「あの川を渡ればいいんだろ」
いやそれは三途の川だ‼
「雄二!戻ってこい!その川を渡るともうこっちに戻れなくなるぞ!」
あの雄二がここまでになるなんて、姫路さんの料理はどんだけ恐ろしいんだよ!
「えっ?あれっ?坂本君はどうかしたんですか?」
さきほどまで美味しい方の胡麻団子を食べていてトリップしていた姫路さんは雄二が自分が作った料理の所為でこうなったのに気づかず、坂本を見つめる。
(ね、ねえ東條、これ本当に瑞希の作ったのが原因なの?)
さっき姫路さんを監視するよう頼んだ島田さんが俺に近づき聞いてくる
(ああ、本当だ。こっちは俺達が何とかしとくから姫路さんの方を頼む)
(OK)
「雄二、しっかりしろ‼」
ドンッ‼
俺が雄二を仰向けにし雄二の胸に拳を叩き込むと
「ぶはぁっ、六万だと?バカを言え。普通渡し賃は六文だと決まってーハッ」
雄二の蘇生に成功した。
「オイッ斗真!さっきのは一体どういうー」
「いや何でもないよ(姫路さんの料理って言えば分かるよな)」
「・・・・・・もう一つ食わせるぞ」
俺と明久が雄二にしか聞こえないように言うと。
「足が攣ったんだ、運動不足だな」
雄二は咄嗟に誤魔化した。
しかし雄二が頭の回転が早くて助かったな。こっちだって友達を死なせたくないしな。
(・・・・・・明久、斗真。お前らはいつか殺す)
(・・・・・・殺れるもんならやってみろ)
(・・・・・・上等だ。やられる前にやってやる)
俺達三人は笑顔を貼り付け、小声でやり取りをする俺達はホント仲好しだな。(普通仲好しなら殺すなんて言いません。)
「坂本君って足を攣るんですね」
姫路さんが疑問に思い俺達を怪しむ
「ほらっ、雄二や斗真って余計な脂肪がついてないでしょ?そういう体って結構攣りやすいんだよ。美波も胸がよく攣るから分かるとぐべぁっ!」
「・・・・・・俺が手を下すまでもなかったな」
「明久、お前は一言多いんだよ」
明久はまたデリカシーのない発言をし、島田さんに殴られる羽目に
「ところで、雄二はどうしておったのじゃ?」
秀吉が咄嗟に話を逸らしてくれる。ナイスだ秀吉
「ああ、ちょっと話し合いにな」
雄二にしては珍しく歯切れが悪い
まあそれはそうだ。何せさっき学園長室へ行って対戦科目の指定をしてきたからな。フェアじゃないから話せず。雄二は誤魔化していた。
「そうですか~それはお疲れ様でした」
姫路さんがその言葉を信じ笑みを浮かべる。姫路さんは本当良い子だ、そんな姫路さんに好かれてる明久が羨ま・・・おっと秀吉から睨みがきた。自重しないと
「気にするな。それより、喫茶店は大丈夫だな。」
「大丈夫じゃ」
「・・・・・・(コクリ)」
一番の懸念は姫路さんお手製の胡麻団子が客前に出るかどうかだけどまあ何とかなるか。
「よし。少しの間、秀吉とムッツリーニは喫茶店を頼む。俺と明久、斗真はAクラスの如月と組んで一回戦に行ってくるから後は任せた」
「あれ?アンタ達も召喚大会に出るの?」
確認するように明久を見る島田さん
「えっ?う、うん。色々あってね」
適当に言葉を濁す明久、学園長からは『チケットについては誰にも話すんじゃないよ』って釘を刺されてるからな。明久はどう誤魔化すんだ
「もしかして、賞品が目的とか・・・・・・」
島田さんが探るような視線を向けるが
「う~ん。一応そういう事になるかな」
本当の目的は賞品と設備の交換だがな
確か今回の賞品である白金の腕輪は二つあって、それぞれ能力が違った筈、一つは召喚獣を二体同時に呼び出すタイプと教師に変わって立会人となってフィールドを形成するタイプだったな。
俺は腕輪にはそんな興味ないから別にいいけど・・・・・・ん?腕輪?ひょっとして
「誰と行くつもり?」
「・・・・・・ほえっ」
俺が考え事をしてる間明久は島田さんに詰め寄られていた。
「吉井君。誰と行くんですか?」
姫路さんも明久に疑いの眼差しを向けはじめる
二人が言ってるのは恐らくペアチケットのことだろうな。明久は別に行く相手はおらず、学園長に渡す為に行くんだが本当の事を言えないこの状況をどう切り抜けるつもりだ。
「明久は斗真と行くつもり何だよ」
ちょっと待て!何でそこに俺が含まれんの!?
雄二の言葉を聞き目を丸くする島田さんはと言うと
「えっ?東條と一緒に『幸せになりに』行くの?」
俺の予想の斜めを行く珍回答が出てくる。
(雄二!何故俺を含める。お前が余計な事を言ったから島田さん達だけじゃなく、秀吉も俺に疑いの眼差しを向けてるだろうが!)
(そうだよ雄二!これじゃあまるで僕と斗真ができてるみたいじゃないか!)
(二人共、堪えるんだ。事情を知られたらババアに約束を反故にされるぞ)
(っち!分かったよ)
確かに学園長との取引が張れたら姫路さんは転校してしまうからな。不本意だがここは我慢するか
「斗真は何度も、断ってるがなぁ」
即刻裏切りやがったよコイツは!
「アキッ!アンタはやっぱり東條の方が・・・・・・」
「待って島田さん!その『やっぱり』って言葉が引っかかる!秀吉!悲しそうな目で俺を見ないでくれ!」
「斗真、お主ってヤツは・・・・・・(ウルウル)」
「吉井君。男の子なんですから、できればもっと女の子の方に興味を持っていれば・・・・・・」
「それができれば明久は苦労はしないし斗真にも迷惑をかけないがな」
「雄二、もっともらしくそんな事を言わないで!それと斗真も僕から距離を取らないで!」
明久は兎も角。どうやら雄二はこの手で始末しないといけないみたいだな。
「っと、そろそろ時間だ。行くぞ明久」
「・・・・・・っく!とにかく!誤解だからね!」
そういいながら教室を出ていってしまった明久と雄二。
そして俺はと言うと
「東條、アンタまさか木下やお姉さんを捨ててアキと一緒に行くっていうの!?」
「そんな!あんまりじゃないですか!」
「待て!今のは雄二の戯れ言だ!んな訳ないからな」
「斗真、お主はワシや姉上というものがありながら」
「だから違うって!クソッ!雄二の野郎絶対後でぶっ潰すしてやるからな-‼」
こうして清涼祭は波乱な幕開けとなるのであった。
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