誘拐騒ぎが解決し、姫路さん達を家まで護衛してから学校に戻った後。Fクラスの教室には俺と明久、そして雄二とアランの貸し切りとなっている。
「良いのかい。僕も一緒に加わって?」
「ああ。アランも当事者だから聞いてほしいんだ。それでいいか雄二?」
「別に構わねぇよ」
「明久、姫路さんは?」
「うん。さっき自宅まで送り届けたから大丈夫だよ。斗真の方も問題なかった?」
「こっちも大丈夫だ。島田さんと葉月ちゃんは心に傷を負ってなくて助かったよ」
「それはそうと、どうしてここに集まってるんだい?」
「ああ、それはなー」
アランが俺に聞いてきたのでわけを話そうとすると
「待て斗真。その話はもう一人が来てからにしろ。そろそろ来る時間だからな」
「来るって、誰が?」
「ババァだ」
「ババァって、学園長の事?」
「そうだ」
ババァ=学園長ってのも普通に考えたら問題あるが、まあ今回に限っては仕方ないか。
「ちょっと坂本君。いくら何でもその言い方は問題あると思うが」
「まあそれはさておき、ババァがここに来るのか?」
「と、斗真まで・・・・・・」
アランが雄二に注意しようとするが俺がそれを一掃し、アランは俺にも呆れたような顔をする。
「俺が呼んだ。さっき廊下で会った時に『話を聞かせろ』ってな」
「話ねぇ・・・・・・駄目だよ雄二。一応相手は目上の人なんだから、用事があるならこっちから行かないと」
「吉井君、一応は失礼だよ」
アランが呆れながら明久に注意するが明久はまったく気にしてなかった。
「用事もクソも・・・・・・、この一連の妨害は全てあのババァに原因があるはずだからな。事情を説明させないと気がすまん」
「ババァに原因がーえぇっ!?」
雄二から聞いた言葉に明久は一人だけ驚く。俺は最初から分かってたからそんな驚かないが
「あ、あのババァ!僕らに何か隠してたのか!」
「やはり、学園長が一枚噛んでたんだね」
すると
「やれやれ。わざわざ来てやったのに、随分とご挨拶だねぇ、ガキども」
声と同時に教室の戸がガララと音を立て開いた。
「来たかババァ」
「出たな、諸悪の根源め!」
「おやおやいつの間にアタシが黒幕扱いされてないかい?ん?何故ここにAクラスの如月がいるんだい?」
「俺が呼んだんですよ。今回の騒動に関わってしまった以上話すべきでしたので」
「斗真の言うとおりだ。アンタが黒幕じゃないのは確かだが、俺達に話すべき事を話さないのは、立派な裏切り行為だからな」
「ふむっ・・・・・・やれやれ。賢しい奴らだとは思ってたけど。まさかアタシの考えに気がつくとは思わなかったよ」
「最初に取引を持ち掛けられた時からおかしいとは思っていたんだ。あの話だったら、何も俺達に頼む必要はない。もっと高得点を叩きだす優勝候補を使えばいいからな」
「それこそ俺とアラン。或いは霧島さんと優子のペアを使えば良かった筈ですからね」
「そういえばそうだよね。確かに優勝者に事情を話して譲ってもらうとかの手段も取れたはずだし」
「そうだ。わざわざ俺達を擁立するなんて、効率が悪すぎる」
「話を引き受けてきた教頭の手前おおっぴらに妨害することはできない、と考えなかったのかい?」
「それなら教室の補修に関して渋ったりなんかしない筈だ。教育方針なんてものの前にまずは生徒の健康状態が重要な筈だからな。教育者側ましてや学園の長が反対するなんてあり得ない」
「つまり、僕達を召喚大会に出場させる為にわざと渋ったってこと?」
「そういう事だ」
明久はようやく理解したか。
「あの時、俺がババァに一つの提案したのを覚えているか?」
「提案?えっと」
「科目を決めさせろってヤツかい。成程ね。アレでアタシを試したってワケかい」
「ああ。めぼしい参加者全員に同じような提案をしている可能性を考えてな。もしそうだとしたら、ババアが俺達だけが有利になるような話には乗ってこない。だがババアは提案を呑んだ」
「しかしババァは優勝してほしいのは、明久と雄二じゃなければいけなかった。最初からチケットが欲しいならその場にいた俺に頼めば済んでいたからな」
提案を呑んだって事は、他の人ではなく、明久と雄二が優勝しないと学園長は困るってことだ。改修を渋ったり敢えて高得点者ではなく明久達に依頼した事にはそれなりの理由があるのは間違いない。
「他にも学園祭の喫茶店で営業妨害が出たり、俺達の対戦相手に情報を流す密告者がいたりと色々あったしな。それに何より、俺達の邪魔をしてくる連中が姫路達を連れ出したのが決定的だった。ただの嫌がらせならここまでしない」
前者は学校内で済む話だけど後者はどうみたって警察沙汰だ。ムッツリーニが盗聴器を仕掛けてくれなかったら大惨事になってたかもしれん。
「そうかい。向こうはそこまで手段を選ばなかったのか・・・・・・すまなかったね」
すると学園長は俺達に頭を下げる。どうやら態度の割には責任を感じてはいたようだ。
「アンタらの点数だったら集中を乱す程度で勝手に潰れるだろうと最初は考えていたのだろうけど・・・・・・決勝まで進まれて焦ったんだろうね」
「さて、こちらの種明かしはここまでだ。今度はそっちの番だ」
「はぁ・・・・・・アタシの無能を晒すような話だから、できれば伏せて置きたかったんだがねぇ」
「ですが学園長。もうここまできたからには御話願います。僕達だけじゃなく無関係な人達にも被害が及んでいますからね」
アランも何がなんでも聞こうと学園長に詰め寄る。
そして学園長は誰にも公言しないで欲しい、という前置きをして、俺達に真相を話しはじめる。
「アタシの目的は如月ハイランドのペアチケットじゃなかったのさ」
「ペアチケットじゃない!?どういうことですか!?」
「アタシにとっちゃあ企業の企みなんてどうでもいいんだよ。アタシの目的はもう一つの賞品の方なのさ」
やっぱり腕輪の方だったか。学園長が取引の際、腕輪の話をしてなかったからおかしいとは思ってたが。まさか本当にそうだったとは。
「もう一つというと『白金の腕輪』とやらか」
「ああ。あの特殊能力がつくとかなんとかってやつ?」
事前に調べた情報だと、白金の腕輪には二種類の能力があり。一つはテストの点数を分離して二体の召喚獣を呼び出すのと。もう一つは教師に変わって立会人になってフィールドを作れるが科目はランダムに選択されるってヤツだったな。
「それをアンタらに勝ち取って貰いたかったのさ」
「僕らが勝ち取る?回収して欲しいわけじゃなくて?」
「明久、回収が目的ならさっきも言ったが俺達のペアに頼めば済んでただろ?それにデモンストレーションもなしに回収してしまえば新技術の存在自体を疑われるかもしれんからババァにとっちゃ避けては通れなかったんだよ。そうですよねババァ?」
俺が学園長にそう聞くと
「アンタも坂本同様頭が回るねぇ・・・・・・。そうさ。できれば回収なんて真似はしたくない。新技術は披露してナンボのものだからね。先程アンタが言ったようにデモンストレーションも無しに回収なんてしたら、新技術の存在自体を疑われるからねえ」
できればって事は最悪の場合はそれでも考えていたのだろうな。
「それで、何でその『白金の腕輪』を手に入れるのが僕らじゃないと駄目なんですか?」
「・・・・・・欠陥があったからさ」
学園長が苦々しく顔をしかめる。技術屋の学園長にとって、新技術の欠陥は耐え難い恥だろう。それを生徒である俺達に明すんだから無理もないか。
「その欠陥は俺とアランは駄目だが、明久達なら問題ないんですか」
「そうさ。吉井たちが使うなら問題が起こらずに済む。不具合は入出力が一定水準を超えた時だからね。だから一定水準を超えてるアンタ達には頼めなかったのさ」
「なるほどな。得点の高い優勝候補を使えないわけだ」
「そういう事ならどうしようもないな」
俺と雄二が苦笑いをしている一方明久は
「えーっと、つまり・・・・・・」
「アンタらみたいな『優勝の可能性を持つ低得点者』ってのが一番都合が良かったってわけさ」
「よくわからないけど。とりあえず褒められているってことでいいのかな?」
「んなわけあるか。ババァにとっては頭のいい俺達よりバカなお前らの方が都合が良かったって言ってるんだよ」
「何だとババァ!」
「説明されないと分からない時点で否定できないと思うんだが・・・・・・」
雄二も呆れながら言う。ったくそれぐらい聞いたらわかる筈なんだが。
「二つある腕輪のうち片方の召喚フィールド作成用はある程度まで耐えられるんだけどねぇ・・・・・・もう一つの同時召喚用は、現状のままだと平均点程度で暴走する可能性がある。だからそっちは吉井専用にと」
「斗真。これは褒められていると思っていいんだよね?」
「あのな明久。同時召喚用は平均点より低い奴、つまり物凄いバカであるお前にしか扱えないって言ってるんだよ」
「何だとババァ!」
「「いい加減自分で気付け‼」」
あまりにものバカに俺と雄二は怒鳴ってしまう。ったくお前は少しくらい理解力高めろよこのバカ。
それとアランも明久のバカっぷりに呆れてるし。
「そうか。そうなると俺達の邪魔をするのは学園長の失脚を狙う立場の人間。他校の経営者とその内通者ってところか」
「雄二、そうやって僕を会話から置き去りにするのはやめてほしいな」
「ったくこの馬鹿が。要するにだ、俺達の邪魔をするってことは、腕輪の暴走を阻止されたら困るって事だろ?そんな学園の醜聞を良しとするのは、この学園に生徒を取られた他校の経営者しかいないんだよ」
俺が噛み砕いて話すと明久は理解してくれた。
「ご名答。身内の恥を晒すみたいだけど、隠しておくわけにもいかないからね。恐らく一連の手引きは教頭の竹原によるものだね。近隣の私立校に出入りしていたなんて話も聞くし、まず間違いはないさね」
やっぱりな。最初の営業妨害といい明久が材料を取りに行った際チンピラに襲われた時、教頭先生は間近にいたからひょっとしてと思い、準決勝で常夏コンビに話を振ったらあっさりボロを出してくれたからな。
「それじゃ、僕らの邪魔をしてきた常夏コンビとか、例のチンピラは」
「教頭の差し金だろうな。協力している理由は分からんが」
「雄二。常夏コンビは進学が目的で協力してたぞ。さっき戦った時あっさりと吐いてくれたから間違いないよ。ま、アイツらは俺が瞬殺したからもう何もできないしな」
「そうか」
「あのさ、コレってーかなりマズい話じゃない?」
「そうだな。文月学園の存続が掛かっている話になるな」
試召戦争と試験召喚システムは、その特異な教育方針と制度で存在自体の是非が問われてるからな。そんな状態で暴走なんて問題が起きたら、学校の存在意義が問われてしまう。
「じゃあ。明日の決勝はー」
「俺達と明久達によるが、もし俺達が勝っても腕輪だけ譲れば問題は解決するか」
「そうさね。騙していたことはすまなかったが、一応目的は達成されたんだ。このまま何も起きなければ、全てまるく収まるんだよ」
「そっかぁー。良かった~」
「たがな明久。明日の決勝は姫路さんの父親も見に来るんだぞ。下手に負けてしまえば、本来の目的である姫路さんの転校も起きてしまう可能性もあるから。明日はお互い全力を出しきってやるしかないぞ」
「あっ、そうだね。でも斗真、明日は負ける気ないからお互い頑張ろうね」
「ああ」
「学園長、腕輪の方なんですけど総合科目で平均点に行かなければ問題は起きないんですよね?」
「そうさ。一つや二つの単科目が高得点でも、問題は起きないよ。」
「そうですか。それは良かった」
「成程。明日の決勝は今明久が力を入れてるアレだったな。今の話が本当ならおそらく大丈夫だろう」
「雄二。聞きたい事は聞けたし、今日はもう帰ろう」
「そうだな。家に帰ってからやることもあるしー明日も早いしな」
「それじゃあ学園長。俺達はここで失礼します」
「それじゃ、アタシは学園長室に戻るとするかね」
話を終え、学園長は椅子から立ち上がった。
「四人とも、明日は頼んだよ」
「はい」
こうして学園祭一日目は幕を閉じた。
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