バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

47 / 126
第六問 二日目 夜

夕食を食べ終え、いよいよ入浴の時間になる中。俺達は割り当てられた部屋で顔を突き合わせて話をする。

 

「僕は工藤さんが犯人だと思うけど」

 

「その可能性は高いだろうな」

 

「いや待て。愛子にはお前達を陥れる理由が見当たらないから白だと思うが」

 

明久と雄二は愛子が犯人だと思ってるみたいだ。っていうか明久。自習の時に愛子は白だから容疑者から外しておけと言ったのにまだ疑っているのかよ。

 

「でもさぁ、昼間の録音機の使い方を見る限りじゃ、工藤さんしか思えないんだよね」

 

「俺が言ったことを忘れたのかお前は。あの程度の操作はやろうと思えば誰でもできるって言っただろ」

 

「まぁ落ち着け斗真。お前が工藤を庇うのも分かるが、他に手掛かりがない以上、工藤を調べるしかないだろ」

 

雄二の言い分も最もだが、それだけで愛子を犯人と決めつけるのはいささか疑問に思う。

 

「それじゃ、工藤さんを一気に取り押さえる?」

 

「・・・・・・・・・・それはやめたほうがいい」

 

「やめた方がいいって、問題があるの?」

 

「・・・・・・・・・・チャンスは一度きり。失敗したら犯人は見つからない」

 

ムッツリーニの説明に明久は理解していないのか。頭に?マークを浮かべている。

 

「もし取り押さえて、間違いだった場合、それを見た真犯人がどうするかをよく考えてみろ、ってことだろ?」

 

「・・・・・・・・・・(コクコク)」

 

「ああ、そっか。証拠を隠滅するとか、自分を探さないように更に脅迫するとか、そういった事を考えるね」

 

「そういうことだ」

 

雄二の発言にムッツリーニが首を縦に振り、それを聞いた明久は理解したのかその答えを言う

 

「けど、あんなに怪しいのに手が出せないなんて・・・・・・」

 

「例の火傷の痕を確認できたら良いのじゃが・・・・・・」

 

「仕方ないだろ。その痕跡がお尻にあるんじゃ迂闊に手を出せないしな」

 

それ依然に他に調べる方法がないか考えろよ。

 

「いっそ、怒られるのを承知でスカート捲りでもしめみる?」

 

「明久。自習の時、愛子がお前をからかった後ムッツリーニは言ってただろ?」

 

「・・・・・・・・・・ヤツは、スパッツを履いている・・・・・・!」

 

「げっ。そういえばそうだった」

 

「愛子は捲られても気にしないが、それを姫路さんや島田さんに見られでもしたらお前はただでは済まないぞ」

 

「そ、そうだね・・・・・・。危なかった~」

 

全くこいつは

 

「・・・・・・・・・・確認するには女子風呂を覗くしかない」

 

「やっぱりそうなるんだね・・・・・・」

 

いやそこは姫路さん辺りに頼めばいい筈なんだが。まぁ昨日の事があった以上頼みにくいし、寧ろ姫路さんに『お尻を見てきて』なんて言ったら姫路さんは明久を勘違いしてお仕置きしてしまうからな。

 

「けど、どうしようか?何か作戦を練らないと先生たちのあの警備を突破するのは難しそうだよ」

 

「作戦とは言うが、あの場所はただの広い一本道みたいじゃからの。正面突破しかないと思うぞい」

 

昨日覗きに行った明久から聞いた所によると、女子風呂は地下にあり遮蔽物が存在しない一本道だそうだ。

 

「そうだな。作戦を立てる時間もないし、基本は真正面から攻める以外はないな」

 

雄二も秀吉の言葉に賛同する。

午前中はあの騒ぎで、午後は昨日失った点数を補給する為にテストを受けていたからな。作戦を考える時間がなかった以上それしか方法がないか

 

「だが、方法がないわけでもない」

 

「え?作戦があるの?」

 

正面突破しかない以上。思い付く方法といえばアレしかないが

 

「作戦なんて立派なもんじゃないがな。要するに、正面突破を成功させたらいいだけだろう?」

 

「いや、それが難しいから困ってるんだけど・・・・・・」

 

聞いた話によれば向こうの戦力は教師の召喚獣が二体と鉄人先生が一人。それに対するこちらの戦力はAクラス並の点数を取れる俺と雄二。単科目特化型のムッツリーニと操作技術に優れた明久。総合的に点数が低い秀吉の五人だ。戦力の差を考えると圧倒的に不利だが、唯一の希望は向こうには点数を補充する時間があまり取れないところだ。

 

「正面突破しか方法がないのなら、それを成功させるだけの戦力を揃えたらいい。質は向こうが上でも、数で上回れば勝機はある」

 

「えっと、それってつまり覗き仲間を増やすってことかな?」

 

「そうだ」

 

「だが増やすと言っても協力してくれそうなのは他のFクラスの男子達しかいないが」

 

「おっ、流石に斗真は気付いたか」

 

「何せアイツらはバカだから普通に頼めば協力してくれるからな」

 

「それじゃ、すぐにでも話をしてこないと。もうすぐお風呂の時間になっちゃうよ?」

 

「安心しろ。夕食時に既に声はかけてある。そろそろ来るはずだ」

 

雄二がそう言った直後。まるでタイミングを測っていたかのようにノックの音が聞こえてきた。

 

「坂本、俺たちに話って何のようだ?」

 

須川を先頭に、Fクラスの男子がぞろぞろと入ってくる。雄二まさかFクラス全員に声を掛けたのかよ

 

「よく来てくれた。実は皆に提案がある」

 

部屋に入りきらず廊下にもいるメンバーに聞こえるように、雄二は告げる

 

『提案?』

『今度はなんだよ。正直疲れて何もやりたくないんだけど』

『早く部屋に戻ってダラダラしてぇな~』

 

全員がダルそうに聞いてくる。勉強嫌いなコイツらからしたら今日一日漬けだったんだし無理もないか。そうやってざわめく皆を見ても雄二は焦って話を切り出すような真似はせず、静かになってから口にした。

 

「ー皆、女子風呂に興味はないか?」

 

『『『詳しく聞かせろ』』』

 

俺はこのクラスが嫌いだ。

 

「昨日俺たちは女子風呂の覗きに向かったんだが、そこで卑劣にも待ち伏せをしていた教師陣の妨害を受けたんだ」

 

『ふむ、それで』

そこは雄二の台詞に突っ込みが入らないことに突っ込みを入れたいが

 

「そこで、風呂の時間になったら女子風呂警備部隊の排除に協力してもらいたい。報酬はその後に得られる理想郷(アガルタ) の光景だ。どうだ?」

 

『『『乗った!』』』

 

この時コイツらがバカで良かったと俺は思う。

ここで雄二が正直に『俺たちを脅迫している犯人を見つけたいから協力してくれ』と言わなかったのは正解だ。

単純に覗きが目的と言ったほうが協力を得やすいしな。

 

「ムッツリーニ、今の時間は?」

 

「・・・・・・・・・・二○一○時」

 

入浴時間は二○時からだから、おそらく脱衣を終えて、今は入ってる頃合いか。

昨日と違ってFクラスの男子全員が協力してくれるから可能性は高まるかな。

俺としては本当は覗きには参加したくないが、これも明久と雄二を脅迫している犯人を捕まえる為だと思って行くしかないか。その前に

 

「今から隊を四つに分けるぞ。A班はー」

 

「雄二。悪いけど俺は秀吉と二人で行動したいんだが構わないか?」

 

「別にいいけど理由はなんだ?」

 

「うむ?なぜなのじゃ?」

 

「ちょっと犯人について調べたい事があるから覗きは雄二達に任せたいんだ。勿論ピンチになっていたらすぐに駆けつけるから」

 

「そうか。じゃあA班は俺に、B班は明久、C班は須川、D班はムッツリーニにそれぞれ従ってくれ」

 

『『『了解っ!』』』

「いいか、俺たちの目的は一つ!理想郷(アガルタ)への到達だ!途中に何があろうとも、己が神気を四肢に込め、目的地まで突き進め!神魔必滅・見敵必殺!ここを我らが行く末の分水嶺と思え!」

 

『『『おおおおっ!』』』

 

「全員気合いを入れろ!Fクラス、出るぞ!」

 

『『『おっしゃぁぁーっ!』』』

 

一つの崇高な目的の為、俺達Fクラスは一致団結し女子風呂へと突入を開始した。

 

 

 

 

「それで斗真よ。ワシらは一体何をするのじゃ?」

 

「昨日アランが知り合いに見てくるよう頼んであるって言ってただろ。それでどこまで情報を得られたか聞くために態々外して貰ったんだよ」

 

「そうじゃったか」

 

「とにかく、成果を聞くために俺達はアランの所に向かうぞ」

 

「うむ。確かAクラスは一階じゃったな」

 

そして俺と秀吉はアランと合流する為、アランがいるであろう部屋に向かうことに

 

 

 

 

一階 Aクラス 客室

 

コンコン

 

「アラン、いるか?」

 

俺はアランがいるであろう部屋の前でノックをする

 

ガチャ

 

「やぁ斗真。それに秀吉君も」

 

「アラン。早速だけど、昨日秀吉に言っていた件についてなんだがー」

 

「それに関しては未だ情報が入ってないね。何せ昨日のことだし、誤魔化しながら頼むのに苦労したからね」

 

「そうか。それはすまなかったな」

 

どうやらアランの方はまだ分かってないみたいだ。それに頼んですぐさま情報が得られないのは当たり前か

 

「それで、坂本君達は懲りずに女子風呂へ向かったのかい?」

 

「ん?もう知ってたのか?」

 

「当然さ。あんな大声を上げながら女子風呂へ向かっていく所を見れば一目瞭然だからね」

 

「ははっ、言われてみればそうだな」

 

「斗真よ。ワシらも早く向かわねばならぬぞ」

 

「いや、俺達は部屋に戻るぞ秀吉」

 

「な、何故なのじゃ!?明久達を見捨てるというのか!?」

 

秀吉が疑問に思い、俺に声を荒げながら聞いてくる。

 

「別に俺は明久達を見捨てたわけじゃないよ秀吉。理由は数ではこっちが勝ってるといっても、おそらく向こうも女子が防衛に回ってるかもしれないから結果が見えてる以上行ったところで反省文を書かされるだけだからだよ」

 

「斗真。君の予想は当たってるよ。女子の方は代表をはじめ数人が防衛に付いてるからね」

 

「となると、明久達は今日も失敗して反省文を書かされるな」

 

「そうじゃのう。明久達に悪いことをした気がするのじゃが・・・・・・」

 

秀吉は明久達に対し罪悪感を感じているみたいだ。

 

「大丈夫だ秀吉。明日から参加すればいいんだしさ」

 

「といってもチャンスは後二回しかないからね」

 

「となると雄二はおそらく明日以降も戦力を増やしていくつもりだろうな」

 

「斗真、それは一体どういうことじゃ?」

 

「雄二は今回の経験から覗きを成功させる為に他のクラスから戦力を増やしていくだろうってことだ。まあ、他のクラスが協力してくれるかは雄二の腕次第だが」

 

「本当なら僕も君達に協力してあげたいけど、Aクラスという立場であるから迂闊に手を出せないしね」

 

アランは俺達に寄り添うような事を言ってくれる

 

「それについては問題ないよ。雄二なら何らかの手を使って他のクラスからの協力を得られる策を思い付くに決まってるし。アランはそれに便乗すればいいんだよ」

 

「そうだね。じゃあまた何か情報が得られたら教えるよ」

 

「ああ、じゃあまた明日なアラン」

 

「協力感謝するぞい」

 

「お休み斗真」

 

そして俺達はアランと別れた後自分達の部屋へ戻ると

 

「皆・・・・・・ごめん。必ず僕は生き延びて、いつか理想郷(アガルタ)に辿り着くことを誓うから・・・・・・ 」

 

「その様子からして失敗したみたいだな」

 

「すまぬ明久。協力してやれなくて」

 

「いいんだよ秀吉。無力な自分がいけなかっただけだからさ」

 

明久が部屋の中で膝を抱いて座っており、自分一人だけ生き残った事を悔やんでいる。でもな明久、いくら逃げ延びることができたとしても

 

《ー放送連絡です。Fクラス吉井明久。至急臨時指導室に来るように》

 

面が割れている為、呼び出しを受けた明久は向かわねばならなかった。

 

「それでワシらは今からどうするのじゃ?」

 

「とりあえず、ひとっ風呂浴びるとするか」

 

「そうじゃな」

 

明久達が反省文と指導を受けている中俺と秀吉は先に風呂に入り、そのまま寝てしまったのであった。

皆悪かったな。




評価・感想をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。