ムッツリーニが血の海に沈んだトラブルはあったものの、秀吉と姫路さんの浴衣姿を写真に収めることに成功した。プリントアウトは済ませてないが、撮影するところを見た明久は『あれを見て奮いたたない男子はいない。それを見て奮いたたないやつはおそらく同性愛じゃないか』と言っていたがそれは大袈裟な気がする。まあ写真を撮り終えたし、後は明日の朝にその出来映えを見るのみだな。
写真を撮り終え姫路さんが自分の部屋に戻った後。俺達は今日の覗き騒動で体力を使ったからか疲労が溜まっていて、すぐさま部屋の明かりを消して寝床についた。
そして俺達が寝静まってから数時間たち
「・・・・・・キ、起きて・・・・・・」
小声で誰かの声が聞こえ、俺は目が覚めてしまう。
「・・・・・・もう、どうして寝てるのよ・・・・・・」
「んにゃっ!」
どうやら明久の方からだな。誰か来ているのか気になって見てみると
「起きなさいっての」
ゴキッ ゴキン
普段髪をポニーテールにしている島田さんが髪を下ろした状態でこの部屋に来ており、何故か明久にロメロスペシャルを掛けていた。
「アキ。起きた?」
「え?ああ、なんだ美波か。それなら納得だよ」
何で関節技を掛けられて納得するのかおかしいと思うが。
「ってどうして美波がここにムグゥッ!?」
「大声出さないの!」
慌てた様子で明久の口と鼻を塞ぐ島田さん。でもどうして島田さんがこんな真夜中に忍び込んで来たんだ?
「目が覚めた?落ち着いたなら手を離すけど・・・・・・」
「・・・・・・!(コクコクコク!)」
明久は呼吸できず早く解放されたいのか激しく首を縦に振る。あの島田さん、口はともかく鼻まで塞いだら流石に危ないんだが。
「大声を出しちゃダメだからね・・・・・・」
そう告げながら明久から手を離し、気道を解放する。
解放されてすぐに深呼吸をした明久は自分の真正面にいる島田さんを見る
「・・・・・・えっと、美波だよね・・・・・・?」
「・・・・・・何よその目は」
どうやら明久は普段の姿からは想像がつかない島田さんを見て驚いてるようだ。
「・・・・・・可愛い」
明久。本音が漏れているぞ
「・・・・・・アキ・・・・・・?」
島田さんが不安気に明久を見上げている。
一方の明久は何でこんな夜中に島田さんがいるのか疑問を抱いている中。
ギュッ
「ん?」
それを見てた俺は上に何かが乗っかった気がしたので見てみると
「・・・・・・斗真」
「へ?何で優子がここにいるの?」
そこにいたのはなんと優子だった。しかもどういうワケか優子は浴衣を着ており、浴衣を開けてるからか肩幅が見えて思わずドキドキしてしまう。
「ちょっと待て優子。何でここに来てるんだよ!しかもそんな格好をしてさ」
俺が優子に聞いてみると
「えっと、これは・・・・・・その・・・・・・愛子が飲んでいたジュースがアタシが着ていた体操服にかかっちゃってね。それで代用の服がないから乾くまでの間にこれを着てるのよ」
「ああそういうことか。ん?じゃあ俺のいる部屋に来た理由はなんだ?」
「代表が坂本君に呼ばれたから行くっていってね。それを止めようと思ってついてきたんだけど」
「霧島さんが?・・・・・・ってことは」
もしやと思い、雄二の寝ている方を見てみると
「んー!んー!」
雄二は今猿轡をされた上に縛られており、その上には浴衣を着た霧島さんが乗っていた。
「・・・・・・何これ?」
「えっと、その・・・・・・」
ギュッ
「ん?」
今度は横から誰かに掴まれた感触がしたので見てみると、そこには俺に抱きつくように秀吉が眠っていた。
「ちょっと秀吉!アンタ何斗真に抱きついてるのよ!?」
「まあ落ち着けよ優子。秀吉だって無意識にやってるだけなんだしさ」
「でも・・・・・・」
「とりあえず、明久達を見てみるか」
明久は何で島田さんがここに来たのか考えており、その結果
「あれ!?やたらと単純!?」
「アキっ!邪魔者が起きちゃうでしょ!?」
「むぐうっ!?」
何か勘違いしたのか明久は大声を出すが、即座に島田さんに口を塞がれてしまう。
「あのバカ。何を勘違いしてるんだよ」
「吉井君。何を想像してたのかしら?」
明久は島田さんがここに来た理由を再び考えていき。その結果
「・・・・・・美波。せめて苦しまないように頼むよ・・・・・・」
「・・・・・・アンタってどういう思考回路しているの・・・・・・?」
「ねぇ斗真。吉井君は島田さんを普段どう見てるのかしら?」
「あれはおそらく自分を暗殺しに来たと誤解してるだけだ」
日頃のやり取りを見ている限りじゃ明久がそう思うのも無理はないか
「・・・・・・そ、その、ウチだって勇気を出してここまで来たんだよ・・・・・・?だから、その、ああいうことはメールじゃなくてきちんとした言葉で・・・・・・」
成程。明久はメールで島田さんに告白じみた何かを送って。それを見た島田さんはそれを確認する為にここに来たってわけか。
だが明久はその意味を分かってないどころか、自分を殺しに来たと未だに勘違いしており、周りを見渡す。
現在明久の周囲にあるものはー
・何故かカメラを構えているムッツリーニ
・浴衣姿で雄二の布団に侵入しようとしている霧島さん
・浴衣姿の優子に馬乗りにされ、秀吉に抱きつかれている俺
「・・・・・・・・・・」
明久が違和感を感じたのか頭を振ってもう一度確認すると
・静かにシャッターを切るムッツリーニ
・慌てふためく雄二をよそに浴衣の帯を緩めようとする霧島さん
・さっきと同じ優子に馬乗りにされ、秀吉に抱きつかれている俺
「困った・・・・・・。今の僕に役立ちそうなものがない・・・・・・。後斗真が羨ましすぎる‼」
「その前に俺を助ける気はないのか!?」
「明久、寝ている秀吉以外はもう気付いてるからな」
雄二に関しては通常運転な為敢えて無視するとして、俺は明久をフォローする為布団から起き上がり口を開いた。
「ちょ、ちょっと!木下以外は起きてるの!?早く言いなさいよねっ!」
超至近距離にいた島田さんは慌てて明久から距離を取り、何故か明久は命拾いしたと思い込んでいた。
この調子だと二人の仲が進展するのは難しそうだな
「ねえ・・・・・・斗真。ちょっといいかな?」
「ん?どうした優子?」
すると優子が急に目に涙を浮かべ始めたのだ。
「あのね斗真・・・・・・ごめんなさい(ウルウル)」
「え?何で急に謝るんだ優子?」
優子は何故か涙を流しながら俺に謝りはじめ。それを見た明久達も驚いている。
「愛子が言ってたの。斗真達が覗きをしてる理由が自分達にかけられた濡れ衣を晴らす為だって聞いた時。アタシ、斗真を信じてあげることができなくて、本当に・・・・・・ごめんなさい」
「そうか愛子から聞いたんだ・・・・・・」
ギュッ
「と、斗真?」
俺は優子を自分の胸元に抱き寄せる。
「俺は気にしてないよ優子。俺だって日頃明久達と一緒にいるからとばっちりを受けるのは仕方ないと思ってるし、元々明久達がこんなバカな真似をしてる原因は俺にあるからな。だから優子も気にしなくていいんだよ」
「・・・・・・斗真。ありがとう」
そう言いながら優子は自分の顔を俺の胸に埋める
「ねぇアキ?冤罪ってどういうこと?」
「え?あ、ああ実はね美波ー」
明久が島田さんに説明しようとすると
バァン‼
「お姉さま無事ですか!?美春が助けに来ましたよ!」
空気を読まずに入ってきた人がおり、いい雰囲気が台無しになってしまった。
ってか!何で男嫌いの清水さんがここに浴衣を着て来るんだ!?
「み、美春!?どうしてアンタがここにいるのよ!?」
「さっきお姉さまのお布団に入ったら誰もいなかったから、もしやと思ったら・・・・・・!やっぱりここに来て正解です!」
いや『布団に入ったら誰もいない』から探しに行くって、最早清水さんのやってることは普通じゃないよ。
「あ、危なかったわ・・・・・・。昨日で懲りたと思って完全に油断していたもの・・・・・・」
え?昨日も来てたのこの人?
「お姉さま!男の部屋に来るなんて不潔です!おとなしく美春と一緒に裸で寝ましょう!いえ、勿論イロイロするので寝かせませんけど!」
うわぁ。最早ストーカーどころか変態と言っても過言じゃないよこの女は、んでもって自身が着てる浴衣をはだけはじめたよ。
「やめるんだ清水さん!それ以上の会話はムッツリーニの命に関わる!」
「・・・・・・・・・・‼(ボタボタボタボタ)」
「・・・・・・私も寝かせない」
「翔子!お前は本当にマイペースだな!」
「な、なんじゃ!?目が覚めたら姉上と女子が三名もおる上に雄二は押し倒されてムッツリーニが布団を血で染めておるぞ!?」
「あ、秀吉起きたか。起きて早々悪いけど清水さんを止めるぞ!秀吉、手を貸せ!」
「わ、わかったのじゃ!」
「ちょっと代表!今はそれどころじゃないわよ!」
俺と秀吉が清水さんを島田さんから剥がし、優子が霧島さんを止めようとしている中
「皆静かにしてよ!それに騒いだりしたらー」
『コラッ!』
「「「!?」」」
『何を騒いでおるか?』
廊下から鉄人先生が声が聞こえ、ドシンドシンと足音を鳴らす音が近づいてくる。
「ヤバイぞ二人とも」
「部屋に半裸の女子が四人もいるところをみつかったらー」
「指導どころか停学にされる恐れがあるとみて間違いないな」
「またワシも入っておるのか?」
「まあ、そこは気にしないで秀吉」
すると明久は入り口の前に立ち
「僕と雄二が囮になる。その隙に女子は逃げて!」
「じゃあ女子の護衛は俺がするから二人とも頼んだぞ」
「オーケー。任せたよ斗真!」
そして鉄人の足音がすぐそこまで近づくと
「行くぞ!」
「おう!」
明久と雄二は扉を開け、鉄人が来る方とは反対側へ全力疾走する。
ガシ
「覚悟はできてるんだろうな吉井?」
「でき・・・・てま・・・・せん!」
明久は鉄人先生に襟を掴まれたが着ていた浴衣をルパンダイブで抜け出しパンイチで走り出す
「なら覚悟しろおぉぉぉぉ‼(ドドドドド‼)」
一方の鉄人先生も見掛けによらず物凄いスピードを出して、明久達を追いかけはじめた。
明久、雄二。お前達の犠牲は無駄にしないからな
「よし。鉄人先生は向こうに行ったか。それじゃあ女子の皆は自分達の部屋に戻ろうか。途中までは俺が護衛するけどいいかな?」
「ごめんね斗真。アナタだけじゃなく吉井君にも迷惑を掛けてしまって・・・・・・」
「うん。・・・・・・ごめんね。ウチらのために」
「・・・・・・ありがとう」
「お姉さま、愛してます」
ドスッ‼
「ぐぇっ!」
俺は清水さんの項に手刀を当て、気絶させた。
「この女は適当なとこに放置しておけば、後で鉄人先生が回収してくれるとして、島田さんの部屋に行った後一階に降りて優子達の部屋に行くとするか」
「・・・・・・分かったわ」
「ありがとう。斗真」
そうして俺は優子達を各自の部屋に送り届けた後。清水さんをそこら辺に置いて自身の部屋に戻ろうとしたが。運悪く鉄人先生に見つかってしまった。鉄人先生は両脇には頭にたんこぶができて失神している明久達を抱えており、俺も連れていこうとしたが、夜風に当たりにきただけと言ったら今後気を付けるようにと厳重注意されただけに留まったのであった。
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