バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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第七問 暗殺

「ムッツリーニ。頼んでおいたヤツは?」

 

「・・・・・・・・・・ここに(スッ)」

 

「おっ。サンキュー、ムッツリーニ」

 

教室に戻った俺はムッツリーニの席に行き、先程雄二を通してある頼みをしており、ムッツリーニから頼んだものを受けとる。

 

「・・・・・・・・・・一応聞いておくが、何の為に使うつもりだ?」

 

「勿論、放課後の交渉に使うために決まってるだろ。いくら島田さんに来てもらうとはいえ、上手くいくか分からない以上少しでも交渉の材料はあったほうが役立つからな」

 

「・・・・・・・・・・そうか」

 

「それはそうと斗真よ。明久と雄二はどうしておるのじゃ?」

 

「明久達には新校舎でアピールをしてもらってるよ」

 

「アピールじゃと?」

 

「ああ。Fクラスは点数を補充していないってアピールすることで、Bクラスに狙られているのに気付いていないフリをして、そのまま点数補充を続けさせる為のアピールだよ」

 

「なるほど。確かにそうすれば少しは時間を稼ぐことができるからのう」

 

「後は雄二がさっき姫路さんに作らせていたゼリーを何に使うかだが・・・・・・」

 

「なんじゃと!?姫路の料理は恐ろしいのは雄二も知っておるじゃろうに、あやつは一体何を考えておるのじゃ!?」

 

「それは雄二に聞かないと分からないな」

 

ガラッ

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。危ないところだった・・・・・・」

 

「ま、まさか、鉄人が、あんなところにいた、なんて・・・・・・」

 

教室の扉が開き、雄二と明久が何故か息を切らしながら戻ってきた。

 

「おっ、ようやく戻ってきたか。そっちはどうだった?」

 

「ああ。このバカと乱闘をしている途中で鉄人が駆けつけてきたが、目的は達成したぞ」

 

「ちょっと待て。何で明久とそんなバカなことをしてたんだよ」

 

「たまたま翔子と出会ってな。その時にアイツが誤解を招くようなことを言った瞬間にコイツが勝手に暴走し始めたんだよ」

 

「・・・・・・ああそういうことね」

 

「なぜ今のやり取りで理解ができるのじゃ?」

 

まあ、そこは置いておくとして

 

「ところで斗真。ムッツリーニは?」

 

「・・・・・・・・・・ここにいる(スッ)」

 

ムッツリーニはまるで忍者の如く、直ぐ様雄二の前に現れた。

 

「丁度良かった。偽情報はどうだ、ムッツリーニ」

 

「・・・・・・・・・・首尾は上々」

 

ムッツリーニは誇るわけでもなく、堂々と答える。

 

「・・・・・・・・・・それで、次の仕事は?」

 

「ああ。今姫路が戻ってくる。そうしたら次の行動に移ろう」

 

教室の中に姫路さんはおらず、おそらく、まだゼリーを作っているのだろう。

 

「そう言えば、わざわざ手料理なんて作ってもらってどうするのさ」

 

「それは俺も気になっていたが、どうしてなんだ雄二」

 

「姫路の料理は暗殺用の武器だ」

 

どうしよう。否定するところが一つも見当たらないんだけど

 

「暗殺用?誰を?」

 

「Bクラスのヤツだ」

 

「まさか、根本に食わせてBクラスを混乱させる為って言うんじゃないだろうな?」

 

「でも、根本君が簡単に僕らの出したものを口にするかな?きっと凄く警戒していると思うよ?」

 

明久が言うように、根本の性格からすれば、俺達以外の人が持っていってもきっと同じことになるに違いない。そんな怪しいものを食べてくれそうにはないが

 

「いや、ターゲットは根本じゃない。今更根本を暗殺したところでBクラスが止まるとは思えない」

 

そう言えばムッツリーニが得た情報によれば、根本は宣戦布告について指示を出していたが、それだけじゃBクラスは止まらないって話だったな。

 

「狙いはBクラスからDクラスに出される使者だ。恐らくBクラスはDクラスに同盟を申し込むだろうからな」

 

「同盟って?」

 

「俺とムッツリーニが流した偽情報でAクラスとDクラスに狙われていると知れば、Bクラスはそれに対応しないといけないからだ。その場合、Dクラスと同盟を結んだ方が手っ取り早いし、越したことはない。それにAクラスに狙われていると知ったら俺達を後回しにする可能性が高まるんだよ」

 

「そういうことだ。Bクラスは連戦にならないよう、Dクラスを根回しにするかもしれんからな」

 

「って、かなりマズいんじゃない?Dクラスに話をしに行かれたら『DクラスがBクラスを狙っている』っていうのが偽情報だってバレちゃうじゃないか」

 

確かに、その話がデマだとバレたら時間稼ぎは失敗。Bクラスの補充も終わる頃合いだから、もし攻められでもしたら俺達は一貫の終わりだ。

 

「だからこそ、その同盟の申込みに行く使者を狙う。同盟に向かう使者がやられたら、Bクラスは間違いなくDクラスに敵意を感じるだろう。そうなれば同盟は成立しないし、連中の疑心は深まるはずだ」

 

流石は雄二だな。根本に負けず劣らず、卑劣な手を何の躊躇もなく行えるのは感服するよ。

 

「けど、暗殺の為ならスタンガンでいいんじゃないか。わざわざ姫路さんの料理で毒殺なんかしなくても」

 

「スタンガンは悲鳴を上げられるからな。周りに気づかれるわけにはいかない」

 

「口を手で押さえればいいじゃないか」

 

「アホか。そんなことをしたら自分も感電するだろうが」

 

「俺もやり方は気に入らないけど、それしか方法がない以上やらざるを得ないか」

 

「そういうことだ。それに姫路の料理を選んだのは俺の趣味だ」

 

雄二。今の発言を霧島さんが聞いたらお前はただでは済まされんぞ

 

「え?坂本君。私の料理が好きなんですか?」

 

あっ

 

「ひ、ひめ、じ・・・・・・?」

 

ギギギ、とブリキの玩具の如く首を動かす雄二。

 

「良かった。そう言ってもらえると嬉しいです。けど、霧島さんに聞かれたら怒られちゃいますよ?」

 

姫路さんは嬉しそうに笑っているが

 

「は、はは、は・・・・・・」

 

切なそうに笑っている雄二を慰める為に肩に手を置く俺と明久。

 

「良かったな(ニヤッ)」

 

「ウェルカム(グッ)」

 

「テメェら、そのムカつくほど嫌な笑みと爽やかな笑顔はなんだ・・・・・・!」

 

俺と明久に対し睨み付ける雄二。

 

「坂本君の分もありますので、良かったらどうぞ」

 

姫路さんは俺達にゼリーが入ったパックを渡してくれた。

 

「そ、そうか。すまないな。後で腹が減った時にでももらおう」

 

「ぼ、僕もそうするよ。姫路さんありがとうね」

 

「俺もだな」

 

「いいえ。これくらいお安い御用です」

 

なんて素敵な子なんだ姫路さんは、せめてその優しさの半分を優子に分けてほしいくらい

 

PiPiPiPi(俺のスマホから鳴る着信音)

 

しまった。今のは禁句だった。

 

「んじゃ、行くぞ明久、ムッツリーニ、斗真」

 

「了解」

 

「・・・・・・・・・・わかった」

 

「オーケー」

 

俺達は武器を手に、A~Dクラスがある新校舎へと向かっていった。

 

 

 

 

(わ。本当に出てきた)

 

(そのようだな。とりあえず俺の読みは当たっていたか)

 

相手に気付かれないよう階段の近くからBクラスを見ていると、教室から男子生徒が一人出てくるのが見えてきた。

 

(相手が一人っていうのも予想通りなの?)

 

(まあな。Bクラスは点数補充に忙しくて使者に人数を割けるわけがないからな。立場の無さも考慮すると、男子が一人で向かうのは予想通りだ)

 

(しかし大丈夫か雄二。姫路さんのゼリーだけでどう暗殺するって言うんだ?)

 

(ムッツリーニなら間違いなくうまくいく。見ていろ)

 

もう一度見てみると、Bクラスの男子はDクラスに向かって歩き始める。

周囲には大勢というわけじゃないが人影が少し見える。ここからどうやって暗殺をするつもりなんだ。

 

(雄二、本当に大丈夫なの?)

 

明久は不安を感じたのか雄二に尋ねる

 

(大丈夫だ。ムッツリーニを信じろ)

 

(けど、もう距離が・・・・・・)

 

(しっ、静かにしろ明久)

 

Bクラスの使者がDクラスまで後二メートルに対しムッツリーニは一向に動かないと思いきやムッツリーニは懐からカッターを取りだす。

 

カッ

 

(えっ?)

 

(何でカッターを真っ直ぐに投擲できるんだよ?)

ムッツリーニが投擲したカッターの音が使者から少し離れた場所の廊下の壁から響く。カッターの刺さった先には写真が貫かれており、ちょっとした矢文になっていた。

 

『何だ、アレ・・・・・・?』

 

『先に何か貼ってあるな』

 

『何かの写真、か・・・・・・?』

 

周りにいた人達がそのカッターと写真に注目し、刺さった壁の近くにいた人達からカッターの下に集まり出した。その中の最後尾にはBクラスの使者がやってきた。

 

『・・・・・・・・・・(ススッ)』

 

音を立てず使者の背後に迫るムッツリーニ。周りにいる人達は先程ムッツリーニが投擲したカッターと写真に集まっている為誰も気付かない。

 

『・・・・・・・・・・(ガッ)』

 

『ーーっ!?!?』

 

写真を見ようとしていた使者をムッツリーニが羽交い絞めにして口を押さえる。使者は目を白黒させて突然のことに驚いていた。

そしてムッツリーニは手に持っていた凶器(姫路さんお手製のゼリー)を使者の口に即座に入れる。

 

『・・・・・・・・・・(グッ)』

 

『ーーっ!ーーっ!』

 

ゴクリ

 

格好良い効果音と共に使者の喉を劇物が通過し

 

『か・・・・・・は・・・・・・っ‼き・・・・・・さま・・・・・・ムッツリー・・・・・・』

 

『・・・・・・・・・・(ググッ)』

 

末期の寸前に憎しみの籠った視線を向けてくる使者に対し、ムッツリーニは情け容赦なく更にパックの中を押し込んだ。

 

バタッ

 

使者はビクンと手を跳ね上がらせたが、その直後に動かなくなってしまった。

 

(・・・・・・・・・・任務完了)

 

動かない男子生徒を抱えてムッツリーニが戻ってきた。

 

(流石だ、ムッツリーニ。惚れ惚れするような手際だった)

 

(・・・・・・・・・・この程度、何の自慢にもならない)

 

(堂々と誇れるものじゃないと俺は思うが)

 

雄二の賞賛に対しても眉一つ動かさない。その後手際良く気絶した男子生徒をBクラスから見えてDクラスからは見えない場所に押し込んだ。

 

(・・・・・・・・・・これでBクラスが最初にこの死体を見つけるはず)

 

(ムッツリーニ。一応ソイツは気絶してるだけだからな)

 

(よし。ならもうここに用はない。教室に戻るぞ)

 

(そうだね。次の手を考えないとね)

 

(気付かれないうちにさっさとズラかるか)

 

俺達は何事もなかったかのようにFクラスへ続く渡り廊下を歩き出す。

 

『この写真に写ってるセーラー服の子、可愛いな』

 

『ああ。でもなんかFクラスにいるバカに似ている気がないか』

 

『まぁ、私はそれならそれでいいと思うわ。可愛いし』

 

どうやらムッツリーニは女装した明久の写真を使ったみたいだが、時間がない為後にした。




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