『我々Dクラスは、Fクラスに対して宣戦布告を行う』
翌日。朝のHRの終了直後にDクラスが来て宣戦布告をしてきた。どうやら清水さんは昨日平賀に話をつけてくれたようだ。
「まさか斗真がやってくれるとはな。大してヤツだぜお前は」
トラブルが生じて抜けてしまった雄二が作戦を成功させた俺に労いの言葉をかける。
「だが雄二。宣戦布告されたのはいいが。問題はここをどう切り抜けるかだぞ」
「そうだった。まずは状況を把握をしないとな。ムッツリーニ。状況はわかるか?」
「・・・・・・・・・・昨日、何があったのかはわからない。ただ、今日は朝から興奮していた」
「清水が?おかしいな。斗真から聞いた話とは全然辻褄が合わないんだが」
「昨日明久が清水さんと何か話をしてたみたいだからその時に何かあっただろうな」
「明久。お主、清水と何を話しておったのじゃ?」
「い、いや。別に。それよりも試召戦争だよ!Bクラスじゃないとは言え、今の僕らには厳しい相手なんだから早く戦争の準備を始めないと!」
明久は秀吉の探るような目から視線を逸らす。昨日清水さんに何らかの発言をして焚き付けたのは間違いないな。
「・・・・・・それもそうだな。真実はどうであれ、まずは目先の試召戦争だ。ここまでやってDクラスに負けたら何の意味もない」
俺達はDクラスから宣戦布告を勝ち取ったものの、ここからが本番だ。まずはこの状況から点数の少ない状態でDクラスと戦うという難しい作戦をしなければならない。雄二も今すべきことは真実の追及ではなく、この状況をどう乗り切るかだということを理解している。
「確かにその通りじゃな。今ワシらの中でまともに戦える者は少ない。この戦力で凌ぎ切るのは至難の技じゃ。余計なことを考えている暇はない」
「・・・・・・・・・・防衛が優先」
「まずはここからどう動くかだが」
「それで雄二、作戦は?」
「考えてある。だが、その前に戦力の確認だ。今姫路と島田以外に戦えるヤツがどの程度いるのかを調べる」
雄二はその場から立ち上がると教壇に上がり、教室にいる皆に告げる。
「野郎ども、よく聞け!さっき言われた通り、これより俺たちFクラスはDクラスとの試召戦争に突入する!まずは戦力の確認だ!各自、自分の持ち点を書いて紙に書いて持ってくるように!」
Dクラスの宣戦布告でザワついていた教室が静まり返り、Fクラスの皆が紙とペンを取り出す。
先日の覗き騒ぎである程度使ったとはいえ、完全に点数を失っているわけではないので雄二は各自の点数の残り具合から補充するメンバーを選定するつもりだろう。
「そう言えば、ワシは1点も消費しておらんな」
「あれ?そうだったっけ」
「うむ」
そういえば秀吉は最後の夜に戦闘に参加したのは俺とアランが高橋先生と戦った時だけで。あの時は不意討ちで高橋先生を倒したから点数を消費してはいなかったな。
「そっか。それならフルで戦えるのは姫路さんと美波と秀吉の三人に増えたってことだよね」
「そうじゃな。総合科目勝負を挑まれたらワシらが率先して参加しよう」
「俺も消費したのは現国だけだったしそれ以外の科目ならマトモに戦えるよ」
そう言いながら俺と秀吉は紙を取りだし点数を書き込んでいく。
「はい雄二」
「これで良いよな」
「あいよ」
雄二にメモを渡した後定位置に戻り。全員分のメモを受け取った雄二はそれを捲りながら皆に呼び掛けた。
「最初に下位十名に点数の補充をしてもらう。補充組は教室に残ってくれ。尚、科目は数学を受けるのが七人、世界史と化学と保健体育を受けるのが一人ずつとする。各自の配置は点数確認を終えてから発表する」
雄二はメモを小脇に抱えて戻ってくると、卓袱台にメモを広げて人員配置を考える。
「ねぇ雄二」
雄二の脇から明久が話し掛ける。
「なんだ」
「どうして点数補充をあんなに細かく分けるの?僕らは早く点数を補充しなくちゃいけないないんだから、まずは採点の早い数学だけに揃えるべきなんじゃないの?」
どうやら明久は化学と保健体育はともかく、世界史は点数の採点が甘い代わりに遅いから、数学を先にするべきだと思っているようだが
「今回は極力時間を稼ぐのが目的だからな。戦術云々というよりは心理戦による睨み合いが必要になる」
「うん。それはなんとなくわかるけど」
「つまりだ明久。睨み合いが必要な状況で数学教師だけを中に入れて点数補充なんてしたら相手にこちらの備えがないと教えてしまうことになるんだよ」
「でも、僕らが点数補充をしていないのは皆にバレているんだよ?そんなことしても向こうは警戒なんてしないんじゃない?」
「そこを警戒させるのが作戦ってもんだろうが。まぁいいから見ていろ」
雄二が書かれたメモを見ながらノートに布陣を書いていく。流石は雄二だな。既に作戦を考えているなんてどういう頭をしてるんだコイツは。
「最初に明久と斗真は防衛に当たってくれ」
「あれ?僕は点数補充じゃないの?」
「お前と斗真はまだ点数が残っていたからな。まずは戦死して0点になっている奴から補充していく」
「明久は鉄人先生と戦った時しか召喚獣を出してなかったからな。結果的に点数は残っているから、今0点になってる奴よりは戦力になるってとこか」
「それに、お前は特別な人材だしな」
「特別って、いやぁ、そんな・・・・・・」
・・・・・・そういうことか。雄二の狙いが分かった気がするよ。それに、明久は点数はない分操作に慣れているから、明久の点数を補充するより時間稼ぎのメンバーに加えた方が無難ってところか。
「今回の作戦でもお前は重要な役どころになる。キツいだろうが耐えてくれ。斗真、お前は明久の援護を頼む」
「了解。そこまで言われたからには頑張るしかないね」
「そうだな。明久、昨日も言ったがヘマはするなよ」
「わ、わかってるよ」
現在の時刻は○八五○。開戦予定は○九○○だから、後十分ってところだ。
明久が緊張感に高まっている一方で、俺はこの戦いをどう終わらせようか頭を張り巡らせていた。
「いいかお前ら!前回勝ったからと言って相手を舐めるなよ!この状況の上に相手は俺たちよりも二つもクラスが上だ!下手に欲をかくと逆に手痛い目を見るハメになるからな!」
出撃前のブリーフィングで雄二が皆に説明を始める。
「どんなに有利な状況でも決して深追いはするな!決められた場所でひたすら防衛に徹しろ!」
下手に深追いをすれば一瞬でやられてしまうからな。何しろ、事前に調べた点数調査によれば、姫路さんと島田さんと秀吉。得意科目の現国以外の点数はかなり残っている俺を除いたFクラス全員の総合点数は1000点にも満たないからだ。点数を補充したDクラスの女子が一人当たり1500点代だとすると、Dクラスは女子だけでも40000点近い。そこに男子も加わるから、戦力差は歴然だ。この状況でまともに戦うのは無理だから極力避けるべきだろう。
「向こうは圧倒的に有利な女子の総合科目をメインに攻めてくる!島田と秀吉を主軸にうまく立ち回れ!限界まで粘ったら状況によっては教室前まで退いてもいい!以上だ!健闘を祈る!」
『いよっしゃあぁぁーっ‼』
雄二の説明が終わると同時に開戦時刻になり、教室にいる皆は高らかな声を上げていくのであった。
(・・・・・・雄二。悪いけど作戦の締めは少し変えさせてもらうよ)
「明久。島田さんの様子はどうだった?」
俺は教室を出る前に島田さんに声を掛けていた明久にどんな様子だったか聞いてみると
「うん。昨日のこと、まだ根に持ってたみたいだったよ」
「そうか。とりあえず、今はこの試召戦争を終わらせるのが先だ。謝るのはその後からにした方が良さそうだな」
「そうだね。じゃあ斗真、援護よろしく」
「ああ」
俺と明久は廊下を走りながら旧校舎と新校舎をつなぐ渡り廊下を目指して進んでいくと。
「Fクラス、覚悟しなさい!」
「高橋先生。Dクラス玉野美紀が召喚を行います!」
渡り廊下に差し掛かると、Dクラスの女子の声が聞こえてきた。向こうは高橋先生を連れていて、予想通り総合科目で勝負するつもりだ。
相手から勝負を挑まれたら受けないといけない上もしここで召喚をしなければ戦闘放棄とみなされ戦死扱いとなる。だからどんな状況でも挑まれた以上勝負をしなければならない。
「上等だ!Fクラスの力を見せてやる!」
「行けるのか、福村!」
「任せておけ、目にもの見せてやる!」
「「
Dクラスの女子とFクラスの男子の呼び声が重なり、場に召喚獣が出る。
その差は比べるまでもなかった。
「くそ・・・・・・っ!もう保たねえ・・・・・・!」
「福村!?まだ呼び出したばかりだろ!?」
もう既に結果は見えているから無駄に戦力を減らしただけかと思いきや
「くらいなさいっ!」
「く・・・・・・っ!こうなったら!」
玉野さんの召喚獣が武器を振りかぶると福村は武器を捨てて、構えを取る。
おそらく福村は白刃取りをするつもりみたいだ。
ザシュ
「へ、へへへ・・・・・・。白刃取り、成功だぜ・・・・・・」
福村はそう告げるが、武器は召喚獣の頭に当たっており見事に両断されていた。
「失敗してんじゃねぇかよ!」
「ば・・・・・・っ!ち、違ぇよっ!これは俺の狙い通りなんだよ!」
後に福村は『アレは右脳と左脳を使った白刃取りだったんだ』と言ったが
「福村幸平、戦死」
そんな弁明が通用するわけもなく、福村は戦死扱いされ即座に駆けつけた鉄人先生に補習室へ連れていかれるのであった。
「・・・・・・お前は何がしたかったんだよ」
俺は戦死した福村に呆れるしかなかった。
「よくも福村を!今度は俺が行くぜ!
補習室へと連れていかれた福村を余所に戦いは続いていく。
すると明久はあることに気づき、俺に尋ねる。
「ねぇ斗真?なんだか、向こうの人数が少ないようだけど・・・・・・」
「どうやら雄二の作戦通りに言ってるみたいだな」
「えっ?作戦って?」
「それについては後だ。今は防衛に専念しろ」
「り、了解」
今のDクラスは主戦力である女子が九人しかいない。Fクラスを突破しよう思うならもっと戦力を増やさないといけないのにこれだけしか配置されていないとするとおそらく指示を出してるであろう清水さんが警戒しているとみて間違いない。
『・・・・・・やっぱり姫路さんがいないわ』
『階段の方にもいなかったみたい』
『時間稼ぎが目的みたいな戦い方だし、間違いないよね・・・・・・』
『でも向こうには東條がいるぞ。どういうことだ』
Dクラスの方から会話が聞こえてきたので見てみると、九人の内二人が戦線を離脱している。どうやら現状を報告するために抜けたようだ。
「向こうは人数が少ない!取り囲んでうまく出入りしながら凌ぐのじゃ!」
秀吉が指示を出す。
Fクラスの人数は二十人。向こうの三倍だ。個々人の点数差は大きいが、これだけの人数差があれば隙を補いあって上手く戦える筈。こちらは正面に島田さんと秀吉を立てて、周囲から皆が援護するように陣形をとる。
『清水からの伝言だ。「怪しい情報を掴んだので防備を固めます。その場所は相手の狙いがわかるまで六人で維持するように」とのことだ』
『了解』
Dクラスの男子が伝言を告げると、更に一人が戦線を離脱した。戦況は有力になっていくが、向こうはどう動くか想像がつかんな。
「明久。俺達も召喚して戦闘に参加するぞ」
「うん。とりあえず雄二の指示通りに僕たちも動こうか」
「「
俺と明久はその場で召喚獣を呼び出す。雄二から『召喚獣を出して、一瞬だけ戦いに参加してから余裕たっぷりに離脱しろ。お前たちが点数を残しているというアピールができたら戻って来い』と指示を受けている為その作戦通りに動くか。
『な、なんだよあの点数は!?』
『吉井はともかく、東條が3000点を上回ってるだと!?』
『だ、ダメだ!か、勝ち目がねぇぞ!』
「斗真。こんなに点数が高いのはひょっとして・・・・・・?」
「ああ。強化合宿で優子に教わったおかげで少し点数が上がったんだよ」
「だとしても僕の十倍もあるなんて・・・・・・」
「明久。落ち込んでる隙があるならさっさと行ってこい。わかってると思うが雄二の作戦通りに行けよ」
「了解」
明久が玉野さんに狙いを定め攻撃を仕掛ける。
「あ、アキちゃーじゃなくて吉井君!?こ、このぉっ!」
一瞬玉野さんは明久をアキちゃんと呼ぼうとしていたみたいだが、まあそこは置いとくとして
「よしよしと」
明久は召喚獣を上手く使いこなして相手の攻撃を避けた後攻撃すると見せかけ召喚獣の頭を撫でて余裕があるように見せつけた。
「え・・・・・・?」
玉野さんも明久のやったことに呆気にとられる。
「それじゃあ秀吉。後は任せた」
「うむ。了解じゃ」
俺と明久は秀吉に後を託して召喚フィールドから離脱する。ルール上バトンタッチした俺と明久は戦闘離脱にはならない。
「ねぇ斗真?僕には雄二の考えてることがわからないんだけど」
「雄二の目的はおそらく時間稼ぎをして拮抗状態を作ることだ。もしここを制圧したいんだったら姫路さんを出せば済むしな」
「あ、言われてみるとそうだね。ん?でもどうして雄二は姫路さんを出さないのかな?」
「詳しい説明は後だ。今は秀吉に防衛を任せて俺達は教室に戻るぞ」
「そうだね。雄二に聞いてみるよ」
そして喧騒から離れた俺と明久は教室に戻ることにした。
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