「うぅ・・・・・・。今日も酷い目に遭った・・・・・・」
「そう落ち込むなって。お陰で俺達は無事に補充期間を得ることができたんだしさ。それに、清水さんにもそれなりのダメージを与えておいたから、しばらくの間、清水さんは勝手なことはしたりしないよ」
鉄人先生による補習を終えた明久は放課後になって漸く解放され、今俺と一緒に教室に戻っている最中だ。
「でもさぁ、いくら戦争を終わらせる為とは言え、あそこまでやるなんて・・・・・・」
「あのな明久。雄二も俺と同じ様にお前を痛め付けて決着をつけようとしたんだぞ。それにアイツは清水さんがもっと痛め付けてやりたいと言っていたら躊躇なく了承していたかもしれないから流石にマズいと思ってああしたんだ。少しくらいは感謝してほしいよ」
「なるほどね。雄二はそうしようとしてたんだ。アイツには一度痛い目にあってもらわないと」
「それはまた今度にしておけ。もう放課後なんだし、教室に戻って帰る準備をするぞ」
「了解」
明久が溜め息混じりにFクラスの教室の扉を開けると。
「あれ?三人とも、まだ帰ってなかったの?」
教室の中にはいつもの三人、雄二と秀吉とムッツリーニが残っており、雄二が俺に気付くとこっちに近づいてきた。
「斗真。さっきはよくもやってくれたな。一応Dクラス戦を休戦に持ち込めたから良かったものの。あれは流石に痛かったぞ」
雄二が憎たらしげに俺を睨み付け、今にも殴ってきそうな顔をしている。
「まぁ落ち着けよ雄二。結果オーライになったんだし、お前にそこまで言われる筋合いはー」
「あるに決まってんだろうが!最後は俺が明久を徹底的にボコボコにしてコイツが苦しむ様を楽しもうと思ってたのによ!」
「雄二!今のは一体どういうこと!?さっき斗真も言っていたけど本当に僕を痛め付ける気だったのか!?」
「当たり前だ!元はと言えば、テメェが島田に誤解を招くようなメールを送ったことから始まっただろうが。それを何とか終わらせようとしたこっちの気にもなれ!」
「おのれ雄二!もう頭にきた!今日という今日はー」
「はいはい二人とも。もう終わったことなんだし、この話はおしまいにしようか」
「「お前(君)にだけは言われたくねぇよ(ないよ)!」」
「なんだと!折角、人が穏便に済ませてやったのになんだその態度は!」
「斗真。お主も大概じゃぞ。斗真が雄二に腹パンして気絶させたと聞いたとき何を考えておったのかびっくりしたぞい」
「・・・・・・・・・・アレは流石に予想外だった」
秀吉とムッツリーニはその場にいなかったので、詳細は知らないみたいだな。実を言うと、俺は玉野さんに連絡をして空き教室に来るよう頼んだ後、補充試験を受けたFクラスを引き連れて明久のところへ向かおうとした雄二をその場で気絶させたのだ。それを見た姫路さんは驚いていたが、雄二がどうやって決着を付けるか教えた時は『いくらなんでもそれは明久君が可哀想すぎます!』って言ってたしな。
「ったく、ところで、なんで三人は教室に残ってたんだ?もう放課後だし、早く帰らないと鉄人先生に何言われるかわからんぞ」
「ちょっと気になることがあったからな」
「気になること?」
先程とは打って変わり雄二が妙に楽しそうな笑みを浮かべている。
「うむ。何でも、ムッツリーニが面白いものを聞かせてくれるらしいのじゃ」
隣にいる秀吉も凄く楽しそうに満面の笑みを浮かべているが何を聞いたんだ?
「・・・・・・・・・・明久も聞いていくといい」
ムッツリーニが卓袱台の上にお馴染みの小型レコーダーを置く。
「面白いものねぇ・・・・・・。なんだろ?皆がそんなに楽しそうなんだから、よっぽどいいものなのかな?」
「まだムッツリーニも詳しく中身を聞いてはいないようだが、面白いことな間違いないらしい」
「・・・・・・・・・・保証する」
「そこまで言うからには相当面白い物が入ってるのか」
ムッツリーニが自信満々に頷く点からして余程面白いものが入っているとみて間違いなさそうだ。
「ねぇ、中身は何かな?」
「ああ。とある男女の会話らしいぞ」
「男女の会話・・・・・・?」
「そうじゃな。ワシらが気になっていた一件の顛末がよくわかる会話じゃ」
「ああ。そういうことか」
「え?斗真はもう分かったの」
「まぁ、聞いてみればわかるよ」
雄二達は嫌な笑みを浮かべていて、明久はそれを気にしているが、俺は中身は何が入ってるか想像がついたのであまり気にしていない。
「・・・・・・・・・・スタート」
ムッツリーニがレコーダーのスイッチを入れると、レコーダーからは聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『・・・・・・なんです?美春に何か言いたいことでもあるんですか』
「あれ?この声って・・・・・・」
「Dクラスの清水の声じゃな」
「やっぱりな」
レコーダーからは清水さんの声が流れる。そうなると内容は間違いなくアレだな。
「って、ちょ、ちょっと待って!この会話ってまさか!」
「ご名答。これは斗真が教室を出た後、お前と清水が昨日の放課後に何を話していたか、その一部始終を録音した物だ」
「オイオイ、ムッツリーニ。いつの間にこんなもん録ってたんだ?」
「・・・・・・・・・・俺を甘く見るな」
レコーダーから清水さんの声が流れてると。明久は昨日のことを思い出したのか、今にも顔から火が出そうなほど赤くしており、雄二はそれを邪悪な笑みで見つめている。
『うん。一つだけ。清水さんの誤解を解いておきたいんだ』
『誤解?何がです?お姉さまと付き合っているのが演技だという話なら既に知っていますけど』
そのまま明久と清水さんの会話が続くと
「ちょちょちょちょっと!なんてものを再生してくれるのさ!?冗談じゃない!早く止めー」
「秀吉、斗真」
「了解じゃ」
「オーケー」
雄二に指示を出された俺と秀吉は明久をその場で押さえつけるが、明久は未だにジタバタと抗っている。
『いや、そうじゃなくて・・・・・・その・・・・・・美波の魅力を知っているのはキミだけじゃないってコト』
明久。お前、俺が教室を出た後に大胆なことを言ってくれたな。最初からそうすれば島田さんを悲しませることはなかったのに
「くっ!は、放してよ二人ともっ!これだけは本当にダメなんだ!」
「ふっふっふっ。そうはいかんのじゃ」
「無駄な抵抗はやめておけ。ここまで来たからには最後まで聞かせて貰うぞ」
明久は俺と秀吉によって両腕をホールドされ身動きが取れなくなる。
『何を言ってるんですかっ!いつもお姉さまに悪口ばかり言って、女の子として扱おうともしないで!』
『うん。それは清水さんの言う通りかもしれない』
『だったら、お姉さまの魅力の何を知っていると言うんです!』
『確かにお姫様みたいに扱っているわけじゃない。男友達に接するみたいに雑な態度になっているかもしれない。けどねー』
レコーダーは会話を進めていくが
「わーっ!わーっ!聞くなーっ‼流すなーっ‼」
「明久。少し黙ってろ」
「むぐっ!?んむーーっ‼」
俺は即座に明久の口を塞ぐ。
『けど、なんですか?』
『ーけど、僕にとって美波は、ありのままの自分で話ができて、一緒に遊んでいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い、とてもー魅力的な女の子だよ』
「ぎゃあーっ‼」
明久は余程聞かれたくなかったのか、絶叫を上げる。
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
俺達は驚いた表情をして明久を見る。
「・・・・・・いや、意外だったな・・・・・・」
「う、うむ・・・・・・。もう少し婉曲に言ったものじゃとばかり思っていたが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・直球勝負だった」
「明久の口からそんな大胆な台詞が出てくるとはな」
明久は誰にも聞かれたくなかった会話を知られたばかりに、真っ白になっている。
「明久。お前、意外と言うときは言うんだな」
「な、なぜかワシも鼓動が速くなって凄いのじゃが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・男らしい」
「ったく、最初からそう言っとけば良かったのに」
明久は俺達を憎たらしげに見詰めており、今にも殴りかかってきそうな雰囲気を出しているが
「・・・・・・・・・・っ‼(ダッ)」
ムッツリーニが急に険しい顔になって教室を飛び出す。
「なんだ!?どうしたムッツリーニ」
「・・・・・・・・・・油断した」
ムッツリーニは苦々しく呟きながら戻ってきた。
「油断したとはどういうことじゃ?まさか、廊下に誰かおったのか?」
「・・・・・・・・・・今のを立ち聞きされたかもしれない」
「え?まさか、さっきの会話を全部聞かれたってこと?」
「ムッツリーニ!相手は誰!?」
「・・・・・・・・・・多分、張本人」
あ~あ。彼女にさっきの会話を知られてしまったか。まっ、その方が後からフォローをする必要もなくなったし、良しとするか
「そ、そうか。聞かれちまったか。すまん明久。まさかこれほどの物だとは思わなかった」
「すまぬ明久」
「・・・・・・・・・・ごめん」
「あー。悪かったな明久」
俺達四人は明久に頭を下げるが
「まぁ、別にいいよ。張本人が相手なら。それより、悪いと思うんなら美波との仲直りに協力してよ。アレ以来ずっと険悪なままなんだから」
明久はさっき聞いた相手が誰なのか全く気づいていないみたいだな。そもそもさっきの会話を聞かれたんだからもう仲直りは済んでると思うが
「いや、それは多分大丈夫じゃろうな」
「そうだな。仲直りどころか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・うん」
「益々距離が縮んだってところだな」
「へ?何で大丈夫なの?」
明久。さっき立ち聞きをした相手はー
ガチャ
「あ!お姉ちゃん、お帰りなさいですっ!」
「た、ただいま・・・・・・・・・・」
「? お姉ちゃん?どうかしたですか? お顔が真っ赤ですよ?」
「葉月、どうしよう・・・・・・」
「??? 何がですか? 学校で何かあったですか?」
「あのね、葉月・・・・・・」
「はい」
「お姉ちゃんね・・・・・・もう、どうしようもないくらい人を好きになっちゃったかも・・・・・・」
同時刻 とある場所にて
「ところで斗真よ。一つ聞きたいことがあるのじゃが」
「ん?どうした秀吉」
俺が秀吉と一緒に帰宅していると、何か気になることを思い出したのか、俺に尋ねてきた。
「Dクラスとの試召戦争後、お主は何をしておったのじゃ?」
「ああ。実を言うとは。ちょっとあのクソ野郎に仕返しをしてやろうと職員室に寄ったんだ」
「クソ野郎?職員室?一体どういうことなのじゃ?」
「それはなー」
すると
『ぎゃあぁぁぁぁっ‼』
俺達の後ろから絶叫が聞こえたので振り向くと
『待ってぇぇぇ根本くぅぅぅん!アナタが私に告白したいって聞いたから、来てあげたのにどうして逃げるのよー!』
Bクラス代表の根本が船越先生に追い回されていた。何故なら
『俺はアンタに告白したいと思ってねぇし、そんなことは一言も言ってないぞ!そもそも、その話は誰から聞いたんだー!』
『誰って、Fクラスの東條君が『根本君がアナタに告白したいそうですから、もし宜しければ行ってあげてください』って聞いた時とても嬉しかったわー!』
『東條だと!?くっ!あの野郎!まさか坂本を嵌めたことに対する仕返しか!?だとしても、これはいくらなんでもやり過ぎだろうがーー‼』
先程船越先生が言った通り、俺は試召戦争が終わった後。後処理を雄二に任せて、すぐ職員室に行き、さっき船越先生が言った台詞を伝えたのだ。これは俺達を嵌める為とはいえ、霧島さんに冗談では済まされない嘘を吹き込んだヤツに対するちょっとした仕返しなんだが
「斗真。お主は雄二と同じくらい外道じゃな」
「別にいいじゃないか秀吉。ああして置けばヤツは二度と俺達に対する仕返しをしてこなくなるんだからさ」
船越先生に追われている根本を放置して、俺達二人はそのまま帰宅するのであった。
尚、後日聞いた話に寄れば根本は船越先生との愛の逃避行がかなり効いたのか、一週間学校を休んだとさ。
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