「あのババァ。一体何の用で俺を呼び出したんだ?俺は明久や雄二ほど問題を起こしてはいないんだけどな」
俺は愚痴りながら進んでいき、学園長室の前に着くやノックをして確認をとる。
コンコン
「入りな」
中からババアじゃなかった学園長の声が聞こえたので扉を開けると
「(ガチャ)失礼しま・・・・・・何で雄二がここにいるんだ?」
何故か学園長室には、裸Yシャツの格好をした雄二がカーテンに隠れていた。
「ん?ああ斗真か。翔子から逃げ切るにはここしかなくてな」
「だからって、そんな格好で学園長室に入るなんておかしすぎるぞ」
「別にいいだろ。ここにはババァしかいねぇしよ」
「お前なぁ・・・・・・」
「アンタ、ここをどこだかわかってるのかい?」
俺と学園長は雄二に呆れていると
「ふぅ・・・・・・。ここまでくれば見つからないかな?」
今度は明久が開けてあった窓から入ってきた。あの様子から見て、姫路さんと島田さんから逃げ延びてここにきたみたいだな
「何の用だいクソガキが」
「更には、奇怪で醜悪なオブジェと斗真がいるし」
「出会い頭に罵倒かい!本当に礼儀知らずなガキだね」
「失礼すぎるぞ明久。ババァだって好きでこんな顔をしてるわけじゃないからな」
「アンタも充分失礼さね!」
失言をした俺に学園長は怒鳴る。
「まったく、クソガキどもが・・・・・・。そこにいる東條はアタシが呼んだから問題ないが、二人揃って無断入室に加えて悪口とはね。また停学にでもなりたいのかい?」
「す、すいません・・・・・・って、あれ?二人?」
「明久。そっちを見てみろ(クイッ)」
明久は俺が指差した方向を見て、雄二がいたことにようやく気付いた。
「なんだ明久。お前もここに逃げ込んだか」
「あ、雄二。こんなところにいたんだね」
「ここならそう簡単に見つからないからな」
「確かに学園長室に逃げ込むとは考えないだろうね」
「そんなことするのはお前らしかいないだろうが」
俺は学園長に呼ばれて来たから良いものの、この二人に関しては普通に考えたら大問題だぞ。
「何をしているのか知らないがね。ここはそうそう気安く来てもいい場所じゃないよ、クソガキどもが。アンタらみたいな不細工がいるだけで空気が汚れて不快だよ」
相変わらず学園長は教育者とは思えない発言をする。今日はいつにも増して不機嫌そうだがどうしてだ?
「雄二、何か怒らせるようなことでも言った?」
「阿呆が。現れるなり学園長を奇怪で醜悪で見るに耐えない汚物呼ばわりしたお前と一緒にするな。俺はなんで学園長室に妖怪がいるのかと驚いただけだ」
「それは失礼だよ雄二。さっき斗真も言っていたけど学園長だって好きで妖怪みたいな姿をしているわけじゃないんだから」
「二人とも。それ以上言ったらババァも流石に黙ってはいないぞ」
「・・・・・・アンタらには一度、学園の最高権力者が誰だってことを教えてやった方が良さそうだね」
あっ、学園長はますます不機嫌になってしまった。
「フン。だいたい、そこにいる東條はともかく、アンタらにだけは容姿についてとやかく言われたくないね。常夏コンビの二年生バージョン風情が」
「「なんてことを言いやがるこのババァ!」」
学園長はお返しとばかりに、明久達に侮辱をこめた修辞を言う、ってか学園長が常夏コンビという呼び方を知っているのも驚くが
「まぁ落ち着いて下さい学園長。二人の見た目に関してはアイツらといい勝負してますよ」
「全然、フォローになってないぞ!」
「斗真!雄二はともかく、僕をあの人達と一緒にしないで!」
「俺をあのクズ野郎どもと一緒にするな明久!」
おそらく、常夏コンビも聞いたら同じ反応をするだろうな。
「それでジャリども、アタシに何か話でもあるのかい?見ての通り、アタシは忙しいんだけどね」
手元の書類に目を落としながら学園長は言う。
「ああ。丁度聞きたいことがあったんだ」
どうやら雄二は学園長に話があってここに来たみたいだ。隠れるなら前みたいに女子更衣室に行くって手もあったしな。
「さっき、喚び出した召喚獣が何もしていないのに消えたんだが、何かあったのか?」
「それについては、さっき鉄人先生が言っていたぞ。本来は試召戦争か雑用しか使ってはいけない召喚獣を明久達は悪用したんだろ」
「仕方ないじゃないか。鉄人に対抗するにはそれしかなかったんだしさ」
「口の利き方を知らないガキだねぇ。まぁ、バカどもに敬語は高度過ぎて理解できないだろうから仕方ないねぇ」
学園長は悪口を交えた前置きをして
「そいつは今起きている不具合の一部さね」
と淡々と答えた。
「不具合ってのは、俺の白金の腕輪か?」
そういえば、二人が持っている白金の腕輪は高得点者が使うと暴走するっていう欠陥があったな。雄二はここ最近点数を上げているから、それで不具合が発生したのか?
「いいや、試験召喚システムの方さ」
「そう言えば、最近メンテナンスとか色々やってますよね。大丈夫なんですか?」
「調子は悪いけど心配には及ばないよクソジャリ。まだ少し調整が必要だけど、夏休みに入る頃にはまだ使えるさ」
「つまり、もうすぐ解禁される試召戦争は夏休みが終わるまで待っていろってことですね」
「そんな!?困ります!」
試召戦争で負けたクラスに課せられる『三ヶ月間の開戦禁止』が終わるころなのに、それを更に待たされるとはな。明久は焦るあまり、学園長に文句を言うが。
「そこをなんとかする方法はないのか?」
「一応使えないこともないんだがね・・・・・・使わせる気はさらさらないよ。教職員にも試召戦争の申し込みがあったら止めるように、と伝えてあるしね」
学園長は明久達に冷たく言い放つ。
「使えないわけじゃないのに禁止って、まるで意地悪みたいじゃないですか」
「『みたい』じゃなくて意地悪そのものさね」
またもや教育者とは思えない発言をする学園長。
「どうしてそんなことを?使わせてくれたっていいじゃないですか!」
「落ち着け明久。ババァにだってそれなりの理由があるんだよ。そうですよねババァじゃなかった学園長?」
「アンタは一応わかっているみたいね。さっきの罵倒は聞き捨てならないが」
「どういうこと斗真?」
「そこにいる東條は気付いてるのに、アンタは説明されなきゃわからないかい?」
「わからないですよそんなのっ」
「そいつは大した洞察力さね。首の上に乗っているものは飾りかい?その割りには見てくれも悪いようだかね」
「こ、このババァ・・・・・・!」
明久は学園長に言われ、今にもキレそうだ。
「それなら教えてやるよ。理由は簡単。アンタらの日頃の行いが悪いからさ。顔や成績だけじゃなく、ね」
「学園長。何もそこまで言わなくてもいいと思いますけど」
「フン。そこのクソジャリどもにはそれくらい言っても別に問題ないさね」
まぁ明久達もそうだが、俺も当たり前のように学園長をババァ呼ばわりしているから何とも言えんな。
それに対し、明久は学園長に文句を言おうとすると
(明久。落ち着け)
雄二が小さな声を出し、明久を止める。
(なんでさ。あんなことを言われて雄二は腹が立たないの?)
(立たないわけじゃないが、ここで言い返して憂さを晴らして何になる、試召戦争ができないという事実は変わらないんだぞ)
(う・・・・・・)
(雄二の言う通りだ。今下手にあのババァを怒らせたところで何にもならないしな)
俺も二人の間に割って入り、小声で話し掛ける。
(そんなことよりもむしろババァの機嫌をとって、試召戦争を解禁させた方がいいだろう。ここは我慢だ)
(雄二の口からそんな言葉が出るなんて意外だな。そこまでして、試召戦争をしたいのか?)
(ああ、当然だ)
(・・・・・・わかったよ二人とも。ここは何を言われてもグッと堪えるよ)
と明久は言ったが
「まったく。いくらアタシに惚れているからと言って、学年全体を巻き込んでまで覗きにくるなんて」
「「黙れこの自意識過剰ババァがぁーーっ‼」」
二人は堪えきれずに言ってしまった。
「じ、自意識過剰とはなんだい!アンタらがアタシに興奮して覗く為に暴動を起こしたのは事実だろうに!」
「明久がバカだのブサイクだのホモ野郎だのと言われるのは事実だから気にならねぇが、俺がババァなんぞに興奮していると誤解されるのだけは我慢ならねぇ!訂正しろババァ!」
「そうです!訂正してください!バカでブサイクでババァに興奮しているのは雄二だけです!」
「落ち着け二人とも。理由はともあれ、お前らは学園長の裸を見たってことに変わりはないだろ。まぁ、俺は腕輪を貰った時に学園長があの時間帯に風呂入るのを知ったけど」
「知っていたなら教えろよコラ!!」
「そうだよ。どうして教えてくれなかったのさ!そうすればババァの裸を見ずに済んだのに!」
「あ~教えなかったのは、初日の弁当に対する仕返しだからだ」
「「それに対する仕返しがババァの裸って(なんて)割りに合わねぇよ(ないよ)!!」」
「ああもう五月蝿いねぇ!なんと言われようともアタシは生徒と恋仲にならないからねぇ!」
「「願い下げじゃあーーっ‼」」
「・・・・・・いつまでこのやりとりは続くんだ」
閑話休題
「んで、なんで試召戦争が禁止に?不具合はすぐに直せるんじゃないのか?」
落ち着きを取り戻した雄二は勝手にソファーに腰掛けて学園長に話し掛ける。
「決まってるさね。アンタらが試験召喚システムの本質を見失ってるからだよ」
「試験召喚システムの本質?」
「明久。試験召喚システムの本来の目的は『学生の勉学に対するモチベーションの向上』だ。それを俺達Fクラスが本来の趣旨とはかけ離れた事に使っては問題を起こしまくったから、それを止めるために禁止したんだよ」
「東條の言う通り、アンタらがやってきたことはどうだい。校舎の壁の破壊に始まって、教頭室の爆破、学年全体での覗き、そしてまた試召戦争騒ぎー学生の本分を逸脱するばかりか悪い方向へとばかり進んでいるじゃないか。まともに勉強をしているのかい?」
「う・・・・・・」
「だが、騒ぎを繰り返すうちに俺たちの成績は向上しているはずだ。潰れた授業の為の補習だって受けているしな」
「そ、そうですよっ。きちんとやることはやっています!」
「事実がどうあるか、じゃないんだよ。世間からどう見られているのかが問題なのさ」
「確かにな。この学園は試験召喚システムという独自の技術を用いてるから世間の注目を集めているし、スポンサーを集めやすい為に学費が安く済むっていうメリットはある。そのかわり、世論に弱いというデメリットもあるから、いくら内部の人間に効果があっても、世の中で認められなければ学園は存在が危ぶまれる危険性がある。それは学園長にとって悩ましい問題なんだろ」
「そうさね。だからこその禁止令さ。別にずっとってわけじゃない。あと一週間程度で期末試験で、そのあとは夏休みだろう?二学期なんてあっと言う間さ」
二学期と言われると随分先に思えるけど、学校があるのは精々三週間程度だから。ババァの言う通り、そんな長い期間じゃない。
「つまり学園長はこう言いたいのか。試験召喚システムの不調もあるにはあるが、メンテナンスでの休みは世論に対する隠れ蓑で、実際は期末試験に集中させる為に禁止する、と」
「アンタは東條と同じくらい察しがいいね。その通りさ」
「えっと、それって・・・・・・?」
「要するに、だ。『試召戦争を禁止にするから、その間は期末テストに集中して良い結果を出せ』ってところだな」
雄二の説明を聞き、明久は理解する。
「とは言っても、アンタらみたいなのはどうせそれだけじゃまともに勉強なんてしそうにないしねぇ・・・・・・」
学園長はあごに手を当てて何かを思案する。
「成績の向上が見られないようであれば、特別夏期講習でもやろうかね」
「そ、それは酷いですよ学園長!試召戦争を禁止する上に夏休みが減るなんてあんまりです!」
明久の言うことはごもっともだ。試召戦争は行えず、俺達は暑苦しい教室で勉強なんざ嫌がらせにも程があるしな。
「贅沢なことを抜かすクソジャリだね。なんなら夏期講習に加えて、試召戦争を三学期までに禁止にして勉強漬けにしてやってもいいんだよ?」
「うげ・・・・・・」
「ですが学園長。それはいくらなんでもやり過ぎではありませんか?そんな話を俺達Fクラスは勿論、他のクラスも反発してしまいそうな気がしますが」
「まぁアンタらの言いたいことはわからないでもないよ。この話は明日あたりに公表する予定だったけど、東條が言ったように他の生徒たちからの反発も想像に固くないからね」
やはり学園長はそれに関しても気付いていたようだ。
「だから、今回は特別にシステムのリセットをオマケにしてやるよ」
「システムのリセット?」
「メンテナンスの件もあるし、一旦システムに蓄積されているデータを白紙に戻してやるって言ってるのさ。そうすると、少しはやる気が出てくるんじゃないかい?」
「ほぅ・・・・・・。それは悪くない話だな」
「確かに、それなら納得いきますね」
「えっ?どういうこと?」
「吉井は理解できないって、顔をしているね。システムのリセットってことは、召喚獣の装備も白紙に戻るってことさ」
「つまり、期末試験の結果が良ければ、前より良い装備になるってことだよ」
「え!?そうなんですか!?」
俺の説明を聞いて理解した明久は、自身の装備がまともになると知り、テンションが上がる。
「本当なら学年末試験でしか変更できないところを、今回は特別にってことだよな」
学園長からしたら、苦肉の策ってところかな。
「本来勉強っていうのは誰の為でもなく自分の為にやるもんだから、こういうのは間違っているとは思うんだけどね・・・・・・。今回は事情が事情なだけに特別さ」
漸く教育者らしい発言をする学園長。
学園長の言っていることは正論だが、俺達からしたらご褒美があった方が益々やる気が出る。
「わかりましたっ!期末試験がんばりますっ!」
「どうしたんだ明久。急にそこまでやる気を出して」
あの様子からしておそらく今朝の一件と何か関係があるだろう。でもなんで明久は急に真面目になったり、私生活をちゃんとし始めたんだ?俺の中で考えられるとしたら明久はおそらく・・・・・・
「よしっ!やろう雄二、斗真!期末試験で良い点数を取って二学期の試召戦争で確実にAクラスを奪取するんだ!」
「お、おう。そうだな」
「明久にしては、妙に張り切ってるのは気になるが」
「バカどもの頭でも理解できたようでなによりさね。それじゃ、東條以外は用が済んだらさっさと出ていきなクソジャリども」
「はいっ。それじゃ、失礼します!」
「あ、おいっ!明久!?今廊下に出て行ったらアイツらが!」
明久は雄二の手を掴んで学園長室を出ようとしたが
ガチャ
「「「ウェルカム」」」
目の前には女子三人と鉄人先生が待ち構えていたのだった。
「それで学園長。何で俺を呼んだのですか?まさか、雄二達を回収するだけの理由で呼んだんじゃないでしょうね?」
「ああアンタは呼んだのは他でもない。以前渡した腕輪をちょっと回収しようと思って呼んだんだよ」
「腕輪?ひょっとしてこれのことですか?」
俺はズボンのポケットからプロトタイプの腕輪を取りだし、学園長に見せる。
「そうさね。その腕輪はあくまでデータ収集が目的で生徒に使わせる為に作ったんじゃないんだがね。あの時はアンタらが騒動を起こしてたからその時にデータが取れるかもしれんと思って渡したんだよ」
「そういうことでしたか。それじゃあ、これは返却したらいいってことですか?」
「すまないね。その代わりと言ってはなんだが、これをアンタにあげるさね」
学園長は机から俺が持ってる白金の腕輪とは別に黒い腕輪を出して俺に渡す。
「何ですかこれは?」
「それは『黒金の腕輪』と言ってね、坂本が持ってるフィールドを形成する方のバージョンアップしたヤツさね」
「それってつまり・・・・・・」
「フィールドを形成した上に自身の召喚獣もその場に出すことが可能ってことだよ。アンタならあのクソジャリどもとは違い悪用したりはしないだろうから、大丈夫だと思ってここに呼んだのさ」
「そういうことでしたか。それじゃあ学園長。『黒金の腕輪』はありがたく使わせて頂きます」
「ああ。間違っても録なことに使うんじゃないよ」
「わかってますよ」
その後、俺は学園長室を出て、優子達がいるAクラスへ戻っていくのであった。
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