バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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五日振りの更新です。


第六問 料理

「おい明久。何か丁度いいサイズの鍋はないか?」

 

「へっへ~。実はそっちの棚の奥に、パエジェーラが入っているんだよね」

 

「それって確か、パエリア専用の鍋だったよな?」

 

「随分と珍しいものを持っているな。うちにはないぞ」

 

「・・・・・・・・・・うちにもない」

 

「俺の家も持ってはいないな」

 

「かなり昔に、母さんが貰ってきたんだよ。それで折角だからってパエリアを作ってみたら結構美味しくてさ。それ以来、僕の好物の一つだよ」

 

「なるほどな」

 

早速明久の家のシステムキッチンで料理をする俺達四人。

明久の家は前に一度遊びにきたことがあるが、部屋は家族で過ごせれるくらいの広さはある。明久一人だと広すぎるし掃除の手間は掛かりそうだが、こうして大人数でいると楽しくなりそうだ。

 

「しかしまぁ、スペイン料理とはな。お前の姉貴はてっきり日本食を御所望かと思ったが」

 

「一応、姉さんはなんでもいいって言ってたけど」

 

「・・・・・・・・・・この材料は明らかにパエリア」

 

「エビやアサリだけならペスカトーレとか考えられるけど、サフランもあるからパエリアで間違いないな」

 

「そうだね。サフランを使う料理なんて、他には知らないし・・・・・・あれ? ホールトマトなんか何に使うんだろう」

 

「多分それもパエリアに使う為に買ってきたんじゃないのか」

 

「・・・・・・・・・・セロリとタマネギとニンニクを使ったトマトソースで作るパエリアもある」

 

「え? トマトソース?」

 

「(こくり)・・・・・・・・・・イタリアで言うソフリットを使ったトマトソース」

 

「へぇ~。そうなんだ。今まで僕が作った時は、一度もトマトソースなんて使ったことなんてなかったよ」

 

「スペイン料理のどの辺にムッツリーニの性的好奇心を掻き立てるところがあるのか気になるが」

 

「なんだ明久。お前、パエリアなんて面倒なもんを何度も作ってたのか?」

 

「うん。好物だからね。よく作ったよ」

 

「何度も作っているのに、買ってきた材料が違った? それはおかしくないか」

 

「おそらく玲さんが買ってくる材料を間違えたんだよ」

 

「そう? たぶん姉さんがうっかりしただけじゃないかな。いつもは買い出しも調理も僕の仕事だったし」

 

「そうか。まぁ、そうかもしれないな」

 

雄二は今一納得しておらず。形だけの同意をする。

 

「ところで明久。さっきふと思ったんだが」

 

「ん?」

 

「お前、姉貴に本当の生活態度を隠してるだろ」

 

「・・・・・・良くわかったね」

 

「丸わかりだバカ」

 

エビを手に取って背わたを取る作業をしながら雄二が言う。

 

「それってやっぱり玲さんに色々言われるからだろ?」

 

「・・・・・・・・・・バレると、説教?」

 

ムール貝をタワシで洗っているムッツリーニとアサリの砂だしをしている俺が言うと

 

「まぁ、怒られるのはいいんだけど、」

 

「怒られる以外に何かあるのか?」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「うん。あまりにも生活態度が悪かったり、今度の期末試験である程度の点数を取れなかったりすると、姉さんがこっちに居座ることになっちゃうんだよ・・・・・・」

 

明久は俺達と話ながら野菜を切り分けボウルに移す。

 

「ある程度の点数?」

 

「さっき姉さんが言ってたアレだよ。 減点150とか200とかって」

 

「そう言えば言っていたな。 さっきはスルーしたが、あれは何のことなんだ?」

 

「あの点数分、振り分け試験の時よりも今度の期末試験の成績が上がっていないとダメなんだよね・・・・・・」

 

「そうか。だからあんなに勉強をやる気になっていたのか。ようやく合点がいった」

 

「・・・・・・・・・・納得」

 

「まっ、あのお姉さんがここに居座ると明久は色々と苦労するのが目に浮かぶよ」

 

さっきは俺達の前で非常識なことを言うし、明久をとことん追い詰めていたからな。あんな非常識な姉と一緒に生活するとなると誰だって嫌になるだろう。

 

「だから、余計なことは言わないで欲しいんだ。学校の成績とか、僕の本当の生活とか、 ・・・・・・こ、この前の美波のアレとか・・・・・・」

 

「アレって、島田とのキスのこーーむぐっ」

 

明久は咄嗟に雄二の口を手で塞ぐ。

 

(だから、そういうのもマズいんだよっ!)

 

(明久。それって不純異性交遊がどうのこうのって言うヤツか?)

 

(うん。姉さんは不純異性交遊は完全アウトっていうお固い人なんだから!)

 

明久は小声で俺達に言って聞かせ、ゆっくりと手を離した。

 

「なるほどな。まぁ、お前の一人暮らしは俺にも都合がいいし、黙っててやるか」

 

「そうだな。あんな姉がいたんじゃ、安心して暮らせられるわけないだろうし」

 

「・・・・・・・・・・協力する」

 

「ありがとう、三人とも」

 

明久は俺達が協力してくれると聞いて安堵した。

 

「雄二。コンソメを取ってくれる?」

 

「ん? ソフリットとか言うヤツを作らないのか?」

 

「う~ん・・・・・・。 一人の時ならやってみてもいいけど、今回は皆がいるからね。慣れている方でいくよ」

 

「そうか。お前がそう言うならそれでもいいが」

 

「だったら俺がホールトマトを使ってガスパチョを作ってやろうか?」

 

「いいね。斗真、お願いするよ」

 

「了解」

 

俺はホールトマトと余っていた野菜を使ってガスパチョを作り始める。この時期は暑いだろうから冷たいスープはピッタリだ。

 

明久の方は雄二とムッツリーニの手伝いもあってテキパキと作業が進んでおり、出来上がるのも時間の問題かな。

 

「あのさ、雄二は家で毎日夕飯を作ってるの?」

 

「ああ、いや、毎日ってわけじゃない。一応、うちの母親も作るには作るんだが・・・・・・」

 

「いいなぁ。そういう母親」

 

「・・・・・・放っておくと、ヤツは何を作るかわからんからな・・・・・・」

 

「雄二。遠い目になってるぞ」

 

まるで過去にザリガニとロブスターを間違えて作られた料理を出されたかのように、哀愁を漂わせていた。

 

「それじゃ、そろそろお米を炊くよ」

 

「ああ、そうしてくれ。俺とムッツリーニはサラダとデザートを用意する」

 

「・・・・・・・・・・任せた」

 

「こっちはミキサーでかけたスープを冷蔵庫で冷やしたから、それができるまでの間は明久を手伝うよ」

 

「じゃあ、鍋を見といてくれるかな」

 

「OK」

 

明久は鉄鍋に野菜と生米を入れて火にかける。これをある程度炒めたらスープを入れる。

 

「明久、スープを入れたら鍋から目を離すなよ。炊きムラができるからな」

 

「大丈夫。わかってるって」

 

「まぁ俺と一緒に見てるから心配する必要はないよ」

 

しばらく時間が立つと、ほどよく色が変わってきたところでスープを入れる。後はたまに鍋を揺らしながら炊き上がるのを待つだけだ。

そうして待っている中リビングにいる女子達はというと

 

『成程。優子さんと秀吉君は双子なんですか。どおりで似ているわけですね』

 

『う、うむ。ワシは何故か学校じゃ姉上に似ておるからか女子と間違われることが多くての・・・・・・』

 

『普段女装をしているから間違われて当然でしょ。アタシだって変な目で見られるからやめてほしいのに・・・・・・』

 

『姉上、仕方なかろう。ワシは演技じゃと思って着ているだけじゃ』

 

『秀吉ったら。少しはアタシの気持ちも理解してよね』

 

『優子ちゃん。そう怒らないで下さい。木下君だって一生懸命やっているんですから』

 

『そうよ。東條だって演劇をするときの木下は輝いているし、自分には勿体ないくらいだって言ってたわ』

 

『むぅ。斗真ったら、秀吉にデレデレしちゃって』

 

『あら?ひょっとして優子さんは、東條君のことが・・・・・・?』

 

『はい。優子さんは東條君のことが好きなんですよ。それに、木下君と一緒に東條君と付き合っていまして私から見ても三人は幸せそうに見えて羨ましいです』

 

『ちょっと!?瑞希ったらここで言わないでよ(////)』

 

向こうはどうやら恋バナをしているようだな。聞いてる俺自身、少し恥ずかしいんだが。

 

『そうですか。ですが学生の本分は勉強ですのでそういうことはあんまよろしくないとは思いますが』

 

『そんなことはありませんよ。優子ちゃんと斗真君は勉強ができますし、互いに教え合うくらいラブラブですものね』

 

『そ、そうね・・・・・・(////)』

 

『わ、ワシも斗真を一人の男として愛しておる。互いに裸の付き合いをするほどじゃからの』

 

おい秀吉!ここでそんなことを言ったら

 

「ねぇ斗真?さっきの話詳しく聞かせてくれないかな?」

 

「明久。何故包丁を俺に構えるんだ?それは人を刺す為に使うものじゃないんだが」

 

「それについては俺もちょっと気になるし、聞かせてくれてもいいんじゃないか」

 

「雄二。その嫌らしい目付きはなんだ?」

 

「・・・・・・・・・・殺したい程妬ましい・・・・・・!」

 

「ムッツリーニ。そのカッターはどこから出したんだ?」

 

何故か俺は男三人から料理される立場になってしまった。

 

『ちょっと秀吉!余計なことを言わないでよ!』

 

『すまぬ姉上。思わず口を滑らせてしまったのじゃ』

 

『それでお聞きしますが、貴女方はどれほど進展されておられますか?まさか軽いお付き合いをしてるわけじゃありませんよね?』

 

『そんなことはありません!だってアタシは・・・・・・と、斗真と・・・・・・』

 

『東條君と?』

 

『い、一緒に・・・・・・お風呂に入る程の仲ですから(////)』

 

『ええっ!?優子ちゃん。東條君と一緒にお風呂に入ったのですか!?』

 

『アンタ。中々やるわね・・・・・・』

 

『あ、姉上。今の話を明久とムッツリーニが聞いたら・・・・・・・』

 

 

「シャァァァアアッ!」

 

 

明久が怒りを露にして俺に包丁を突き刺そうとしてきたが俺は即座に躱した。

 

「危な!明久、お前は本気で俺を殺す気か!」

 

「黙れ男の敵!ただでさえ秀吉というFクラスの花と付き合っているだけでも許せないのに、その姉である木下さんと一緒に風呂に入るなど、万死に値する!」

 

「そうだな。これは異端審問会に報告すべき案件かな(ニヤニヤ)」

 

「・・・・・・・・・・斗真。覚悟はできてるか?」

 

「ちょっと待てお前ら!今俺達は料理をしてる最中だろうが!何バカなことをしようとしているんだ!」

 

「今はそれどころじゃない!」

 

明久は怒りのあまり聞く耳持たずになっていた。仕方ない・・・・・・

 

「あ~もう、めんどくせぇな。明久、これ以上やるって言うのなら、島田さんとキスしたことをー」

 

「・・・・・・一先ず話し合おうか」

 

俺がこの間のキスについてバラすと軽く脅したら、明久はあっさり引き下がってくれた。

 

「チッ!流石は斗真だな。咄嗟に明久を沈めやがって」

 

「雄二。霧島さんに明久とできてるって言ってやろうか?」

 

「やめろ!もしそれを翔子が聞いたら俺はトランクスを取られるだけじゃ済まされんぞ!」

 

雄二が霧島さんに何されるかは想像に容易い。

 

「・・・・・・・・・・裏切り者には死を」

 

「ムッツリーニ。愛子にどうすればお前がもっと興奮するか教えてやってもいいんだが」

 

「・・・・・・・・・・俺を殺す気か!?」

 

ようやく鎮まったか。ったく、秀吉と優子が余計なことを暴露しなければこんなことにはならなかったのに。

まあ二人はそれだけ俺のことを愛してるって知ることができたから悪くはない。

その後、明久達から睨まれた状態で料理を再開するのであった。

 

 

ーそんなこんなで時間が過ぎてー

 

 

「皆、待たせたな。夕飯が出来たぞ」

 

「ありがとうございます。お客様なのにアキくんのお手伝いまでして頂いて」

 

「いや、気にしないでくれ。料理は嫌いじゃないからな」

 

「俺達が腕によりをかけて作ったんだ。味は期待できるぞ」

 

完成した夕食を、予備のテーブルを使って拡張されたテーブルに並べる。

 

「あ、ありがとうございます・・・・・・・・・・(ポッ)」

 

「お、美味しそうね・・・・・・・・・・(ポッ)」

 

「姫路さん、美波。どうして僕の顔を見て顔を赤らめるの?」

 

「なぁ優子。俺達が料理を作ってる間二人に何かあったのか?」

 

「それがね。玲さんに吉井君の幼少期のアルバムを見せて貰っていたのよ」

 

「ああ。成程ね。ん?でもアルバムを見ただけでどうして顔を赤らめるんだ?」

 

「そのアルバムには明久のお風呂の写真が載っていたのじゃ」

 

秀吉のカミングアウトに俺と明久は驚くと

 

「姉さん!どうしてお風呂の写真ばっかりなの!?そのアルバムは何の写真を集めてるのさ!」

 

「どうしてって、アキくんの成長の過程を収める為に決まってるじゃないですか」

 

「だったら明久の入浴姿じゃなくてもいいと思いますが」

 

この人はなんで明久のお風呂の写真を撮ってきたんだ。そんなもん普通は他人に見せていいものじゃないんだが

 

「そういえば皆さんにまだ見せていない写真が一枚ありましたね」

 

「? なんですか?」

 

「はい。 昨晩のアキくんのお風呂の写真です(ピラッ)」

 

玲さんは昨日撮った明久の入浴姿を皆に見せびらかす。

 

「このバカ姉がぁーっ‼ いつの間にそんな写真を!? さては着替えか! 脱衣所に着替えを持ってきた時か!?」

 

「明久。それについては後にしろ。早く食わねぇと折角の料理が冷めちまうぞ」

 

「離して雄二!それよりもこのバカ姉の頭をフライパンでかち割ってやることの方が大切なんだ!」

 

「はいはい。いいから大人しくしてさっさと食べるぞ」

 

「離せーっ‼二人のバカーっ‼」

 

一人だけ騒ぐ明久を俺と雄二が押さえつける。

 

「それにしても、アキくん。あなたはどうしてそんなに落ち着きがないのですか?」

 

「「それは姉さん(アナタ)の行動が原因なんだからね(ですけどね)!?」」

 

自分の行動を棚に上げて注意をする玲さんに俺と明久はツッコミを入れた。

 

「ほら。またそうやって大きな声を出して・・・・・・。カルシウムが足りないのではありませんか?」

 

「いや、今のは明らかにアナタが悪いと思いますが」

 

そんな俺の台詞を無視して玲さんは明久の前に置いてあるパエリアをよけて、代わりに深皿を一つ置くと。

 

「皆さん、貝の殻はこのお皿に入れてください」

 

「何それ!? 僕の夕食は貝の殻だけなの!? カルシウム不足とか言ってるけど、これってただの苛めだよね!?」

 

玲さんがしていることは最早虐待と言っても過言じゃない。

 

「姉さん・・・・・・。もしかして、姉さんは僕のことが嫌いなの・・・・・・?」

 

明久が悲しそうに疑問を投げ掛けると、玲さんは「心外です」と前置きをしてから答えた。

 

「何を言っているのですかアキくん。姉さんがアキくんを嫌うわけがないでしょう」

 

そう言っている割には明久を酷く扱っているように思えるが

 

「寧ろ、その逆です」

 

「え? 嫌いの逆ってことは」

 

「無論、大好きです」

 

「そ、そうなんだ・・・・・・」

 

「はい。姉さんはアキくんのことを愛しています」

 

玲さんは明久を弟として愛してるってことか。まあ、そりゃそうだよな。実の弟を愛さない姉がいるわけ

 

「ーー異性として」

 

前言撤回。玲さんの口から洒落にならない発言が出てしまった。

 

「最後の一言は冗談だよね!? それなら寧ろ嫌いでいてくれた方が嬉しいんだけど!?」

 

なんで玲さんはそこまでして明久を追い詰めたいんだ。言っていることとやっていることが真逆にも程があるぞ。

 

「日本の諺にはこういうものがありますね」

 

「何!? また余計なことを言うの!?」

 

「バカな子ほど、可愛いと」

 

アナタが一番バカなことをしていると思いますが

 

「諦めろ明久。世界でこの人ほどお前を愛している人はいないぞ」

 

「待って! それは僕が世界で一番バカだって思われてるってことなの!?」

 

「う、ウチだってアキのことを世界で一番バカだと思っているわ」

 

「わ、私だって! 世界で明久君以上にバカな子はいないと信じています!」

 

「やめて! それ以上皆で僕を傷つけないで!」

 

「二人とも。明久をフォローしているつもりが逆に明久を傷つけているぞ」

 

俺が今言ったように明久は皆からバカ呼ばわりされて、目に涙を浮かべていた。

 

「まぁ、そんなことはどうでもいいことは置いおくとして」

 

「ど、どうでもいいんだ・・・・・・。 結構人の人生を左右しそうな内容の会話だったんだけど・・・・・・」

 

雄二は明久の人生をどうでもいいと言うが、俺からすれば雄二が霧島さんに何されようがどうでもいいことだ。

 

「とにかく、冷めないうちに頂きましょう」

 

明久の人生も気になるが、玲さんの言う通り、今は夕食を食べるとするか

 

「「「頂きまーす!」」」

 

手を合わせて目の前の料理に取り掛かる俺達。

 

「む。 これはまた、美味いもんやな」

 

「そうか。 口に合ったようで何よりだ」

 

「そう言って貰えると作ったかいがあるよ」

 

「・・・・・・・・・・(こくり)」

 

「俺達が作ったんだから美味しくて当然だ」

 

秀吉がニコニコとパエリアを頬張っており、とても可愛らしーイダダダダ!

 

「ちょっと!何秀吉に見とれてるのよ!」

 

「ゆ、優子、食事中に耳を引っ張るなよ!」

 

「ふん!」

 

俺と優子が痴話喧嘩をしている一方姫路さんと島田さんは砂を噛んだような表情をしていた。

 

「あれ? 二人ともパエリアは苦手だった?」

 

「う・・・・・・。いや、嫌いじゃないし、凄く美味しいんだけど・・・・・・」

 

「だからこそ、落ち込むと言いますか・・・・・・」

 

どうやら二人は明久が本当に料理ができたことに驚いているようだ。

 

「・・・・・・やっぱり、もっとたくさん料理を作って練習しないと・・・・・・! これに勝つ為にも、もっとオリジナルの味を出して・・・・・・!」

 

あの~姫路さん。君は更に強力な殺人兵器を生み出そうとしているのですか?

 

「上手に出来ていますね。アキくんの知っているレシピと違う材料を用意したのに、いつもの通りなのは残念ですが」

 

「でも玲さん。吉井君の作ったパエリアはとても美味しいですし、斗真が作った付け合わせのガスパチョもパエリアと相性抜群ですよ」

 

優子が明久の作ったパエリアと俺が作ったガスパチョを美味しいと評価してくれるのに、玲さんは明久の皿にエビや貝の殻を入れるという地味な嫌がらせをしていた。

 

「偉そうに言うなぁ。姉さんは料理が全然ダメなくさに」

 

さっき明久が言っていたが、玲さんは料理をしたことがないみたいだ。実の弟が料理を作ってくれことに対して感謝どころか嫌がらせをするんだからなんというか質が悪いな。

 

「何を言うのですかアキくん。姉さんだって、アキくんの知らないところで成長しているのですよ?」

 

「ふ~ん。成長ねぇ・・・・・・。どう成長したのさ?」

 

「胸がEカップになりました」

 

 

ブゥー‼(思わず飲んでいた水を吹き出す俺)

 

 

「アンタに恥じらいという概念はないのか! 料理全く関係ないし!」

 

「ちょっと斗真!なに水を吹き出してるの!」

 

「げほっ、げほっ。食事中に急にあんな台詞聞いたら吐くのは当然だろ!」

 

いくら人前とはいえ、なんてことを言うんだこの人は!?

 

「勿論料理だって勉強しましたよ」

 

「あ、そうなの?」

 

「はい。ついに、海栗とタワシの区別がつくようになりました」

 

「僕としては今まで区別できていなかったってことのほうが驚きだよ」

 

「普通は誰でも見分けがつくと思いますが」

 

「羨ましい・・・・・・」

 

明久の隣に座っていた雄二が呟いていた。

 

「というか、よくそれでパプリカとかの食材を買ってこれたね」

 

「抜かりはありません。レシピを店員さんに渡して用意してもらいましたから」

 

「結局人頼みかいっ」

 

「大して成長はしてないみたいですね」

 

そこは自分で見分けられるように努力すべきなんですけど

 

「ところで、皆さん」

 

玲さんは本題、と言わんばかりに話を切り出した。

 

「うちの愚弟の学校生活はどんな感じでしょうか? 例えば成績や異性関係(、、、、)など」

 

やけに後者が強調されているな。そんなに明久が女子と仲良くするのはいけないことなのか?

さっき料理をしている時に明久は俺達に言わないよう頼んできたし、ここは明久の為にも黙っておくとしよう

 

「えっと、明久君はすごく頑張っていると思います。最近は成績も伸びてきたみたいですし」

 

「そ、そうね。 たまにドキッとする時があるわ」

 

女子二人は明久を気遣い悪いことは言っていない。その優しさを普段から明久に見せていたらいいのに。

 

「そうですか。それで、異性関係は?」

 

「え、えっと、それは、その、よくわかりません・・・・・・。異性関係(、、、、)は」

 

「そ、そうね。ウチもあまり知らないわね・・・・・・。異性関係(、、、、)は」

 

本当なら明久と仲良くしているって言いたいだろうが、ここで言ってしまえば明久に悪いと思い二人は誤魔化す。

 

「異性関係、のう・・・・・・」

 

「そうね。吉井君は・・・・・・」

 

マズい、二人はさっきみたいに口を滑らせてしまいそうだからここは俺がフォローしてやらないと

 

「秀吉君と優子さんは何かご存知でしょうか」

 

「そうじゃな・・・・・・。何か、となると」

 

「秀吉、あーん」

 

「んむ? あーん、じゃ」

 

俺は秀吉が余計なことを言わないよう口にキノコを刺したフォークを差し出す。秀吉は何も疑うことなく食いついてくれた。

 

「ちょっと斗真!お話中に何してるの!」

 

「あー悪い優子。ほら、あーん」

 

「え? あ、あーん」

 

優子も秀吉と同じように俺がパプリカを刺したフォークを差し出すと嬉しそうに食いついてくれた。

 

「あの、東條君。どうして会話の邪魔をするのですか?」

 

「あ、いえ。そのようなつもりはありませんよ。それに明久は学校じゃ女子から遠ざけられてますので、アナタが思ってるようなことはしていませんから」

 

俺は玲さんに問い詰められたが、咄嗟に誤魔化し、秀吉と優子に目線を配ると二人は気付いてくれたのか

 

「そうじゃな。本人が何も言わんのならば、ワシが何かを言うわけにはいくまいて」

 

「アタシの口からは何とも言えませんね」

 

玲さんからの質問に対し、二人はにこやかにギリギリの答えを返した。これで一段落したか、と思ったら

 

「あら、秘密ですか。それでは・・・・・・今度はアキくん自信に、ぼっきりと聞かせて貰いましょうか」

 

「それが良いじゃろ」

 

「ちょっと待て秀吉。今玲さんはとんでもない事をしたぞ」

 

「姉さん『ぼっきり』って何!? 普通そこは『じっくり』とか『ゆっくり』だよね!?」

 

明確な悪意と殺意を感じさせる玲さん。何故そこは無理矢理聞き出そうとするんだ?明久にだって触れられたくない秘密の一つや二つはあるのに

 

「明日のおかずは魚にしようかな・・・・・・」

 

「まだ今日の夕食を食べているのにもう明日の献立を考えているのですか。アキくんは食いしん坊ですね」

 

「いや、そういうわけじゃないよ」

 

おそらく明久は玲さんから痛い目に合わないように言っただろうな。

 

「そう言えば、言い忘れていました。明日から姉さんの食事は用意しなくても結構ですよ」

 

「え? そうなの」

 

「はい。こちらで済ませておかないといけない仕事があって、明日から土曜日か日曜日くらいまでは帰りが遅くなりそうです」

 

どうやら玲さんは仕事の都合で帰りが遅くなるみたいだな。これは明久にとっては都合がいい話なのか明久は若干嬉しそうな顔をしていたが

 

「アキくん、嬉しそうですね?」

 

「ぅえ!? い、いや、そんなことはないよっ。折角帰ってきた姉さんがいないのは凄く残念だよ!」

 

「英語で言ってみてください」

 

「Happy」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あっ! 痛っ! 姉さっ・・・・・・! 食事中にビンタは・・・・・・っ!」

 

明久は余計な一言を言ってしまい、玲さんにビンタされ口の中が切れてしまい、デザートを血が混ざった状態で食べる羽目になってしまったのだった。

 




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