「ただいまー。葉月、いる?」
玄関の扉を開けて島田さんが呼び掛ける。
「わわっ、お姉ちゃんですかっ。お、おかえりなさいですっ」
廊下に面した部屋から、島田さんの妹である葉月ちゃんが飛び出してきた。
「? 葉月、今お姉ちゃんの部屋から出てこなかった?」
葉月ちゃんは島田さんの部屋から飛び出してきたらしいが
「あ、あぅ・・・・・・。実はその・・・・・・独りで寂しかったから、お姉ちゃんの部屋に行って・・・・・・」
葉月ちゃんは言い難そうしながら言葉を返す。ん?パーカーのポケットに何かを隠してるみたいだけどなんだろうな。
「ぬいぐるみでも取ってこようと思ったの? そのくらい、お姉ちゃんは別に怒らないのに」
「そ、そうですか? お姉ちゃん、ありがとですっ」
島田さんは葉月ちゃんの頭をよしよし、と撫でている。
二人の会話が落ち着くのを見計らってから、明久は一歩前に出て葉月ちゃんに挨拶をし始める。
「葉月ちゃん、こんにちは」
「あっ! バカなお兄ちゃんっ!」
明久が姿を見せると、葉月ちゃんは勢いよく明久の腰にしがみつき。そのまま額を明久のお腹にぐりぐりと当てていく。
「こんにちは、葉月ちゃん。お邪魔しますね」
「わぁっ。綺麗なお姉ちゃんたちまで。今日はお客さんがいっぱいです」
一人で留守番するのが寂しかったのか、俺達を見ると、葉月ちゃんは満面の笑みどころか全身で喜びを表現していた。この子には天真爛漫という言葉がお似合いかな。
「ほらほら、葉月。アキから離れなさい。皆が中に入れないでしょ?」
「あ、はいです。それじゃ、バカなお兄ちゃんたち、こっちにどうぞっ」
「っとと、そんなに引っ張らなくても大丈ーーん?」
「どうした明久?」
「いやちょっと美波の部屋にある写真立てに何が写ってたか気になって」
「ちょ、ちょっとアキっっ!?」
「ほぇ?」
明久が島田さんの声に気づき振り返ると、その瞬間に明久は脳天・鼻先・下顎に衝撃をくらわされ、バランスを崩すと同時に両手首の関節を外された。いくら見られるのが恥ずかしいからってそこまでやる必要はないと思うが。
「何見てるのよ!?」
おそらく明久からすれば地獄への入り口にしか見えないだろう。
「いい? この部屋は絶っっっ対に、入ったらダメだからねっ!」
島田さんは大急ぎで扉を閉めると、外された両手首をムッツリーニにはめてもらっている明久に指を突きつけた。流石にあそこまでやられたら明久はあれを地獄への入り口だと思い二度と見たりはしないが。
「やれやれ。お前らは何をやっているんだか・・・・・・。チビッ子、元気だったか?」
「久し振りだね。葉月ちゃん」
「はいですっ。大きいお兄ちゃんと双子のお兄ちゃん」
「そうかそうか。それは良かった」
「ん?なんで葉月ちゃんは俺を双子のお兄ちゃんって呼ぶんだ?」
俺が理由を聞くと葉月ちゃんは満面の笑みで答える。
「だって双子のお兄ちゃん。そこにいる双子のお姉さんたちとラブラブですからそう呼んでいるんですっ」
葉月ちゃんがラブラブですからと言った瞬間、秀吉と優子は急に顔を赤らめ始める。
「へ? なんで葉月ちゃんが俺が秀吉と優子と付き合ってるのを知ってるんだ?」
「葉月のお姉ちゃんが教えてくれたんですっ。お姉ちゃんもウチから見ても羨ましいって言ってたです」
「ちょっと葉月!?余計なこと言わないでよ!」
「ああそういうことね。まさか島田さんが俺達をそう見ていたとは・・・・・・」
「東條!今の話は聞かなかったことにしてよね!」
「悪い。俺はさっき葉月ちゃんが言ったことを絶対に忘れないからな」
「ま、まさか島田の妹からラブラブと言われるとはの(////)」
「そ、そうね。アタシ達からしたら誉め言葉として受け取ったらいいんだけど、あんな可愛らしい笑みで言われたら尚更恥ずかしいわね(////)」
まさか葉月ちゃんにまで知れ渡ってるとはな。でも葉月ちゃんは悪気があって言ったわけじゃないし、俺自身満更でもない。
「それはそうと、リビングはこっちでいいのか?」
「はいですっ こちらですっ」
雄二が話を切り替えて、葉月ちゃんに質問する。さっきまでとは違っていつもの調子に戻ってるみたいだ。
「とりあえず適当に座ってもらえる? 今テーブルを持ってくるから」
俺達を通すと、島田さんが勉強道具を広げる為のテーブルを取りに行こうとする。
「? お姉ちゃん、テーブルなんて何するです? トランプですか?」
葉月ちゃんがテーブルを取りに行こうとする島田さんを見て首を傾けていた。そういえば葉月ちゃんにはまだ言ってなかったな。
「葉月。今日はお姉ちゃんたちね、うちでテストのお勉強をするの」
島田さんがそう言うと、葉月ちゃんは少し寂しげに目を伏せた。
「あぅ・・・・・・。テストのお勉強ですかっ・・・・・・。それじゃあ、葉月は自分の部屋でおとなしくしてるです・・・・・・」
勉強をすると聞いたからか、葉月ちゃんは俺達が何かを言う前に、勉強の邪魔にならないよう離れようとした。
「待って葉月ちゃん。良かったら、僕らと一緒にお勉強しよっか? 学校の宿題とか、予習とかはないかな?」
寂しげに出ようとした葉月ちゃんに明久がに一緒に勉強しようと提案をする。そういう気遣いができるなんて流石としかいいようがないな明久は。
「えっ? 葉月も一緒にお勉強していいですかっ?」
「勿論だよね?」
「そうだな。葉月ちゃんも俺達と一緒に勉強したほうが良いだろうし」
「ああ。どうせ、一人に教えるのも二人に教えるのも変わりはないからな」
「雄二。それは僕が小学生五年生レベルだと言ってるのかな?」
「葉月ちゃん。 一緒にお勉強しましょう」
「ワシはあまり教えてやれることはないかもしれんが、一緒に勉強するのは歓迎じゃ」
「葉月ちゃん。わからないところがあったらアタシが教えてあげるわね」
「・・・・・・・・・・保健体育なら教えてあげられる」
「ムッツリーニ。お前は葉月ちゃんに近づくなよ」
ムッツリーニを葉月ちゃんに近づけないよう警戒していると、島田さんは明久に何か耳打ちしていたが特にこれといったことはなさそうだった。
「葉月、一緒にお勉強したいですっ」
「おう。それなら勉強道具を持ってくるといい」
「はいですっ」
トトトっと軽い足音を立ててリビングを出ていく葉月ちゃん。一緒にするだけのことだが、葉月ちゃんからすればよっぽど嬉しかったんだろう。
「さてと。そんじゃ、テーブルを持ってくるんだろ? 手伝うぞ島田」
「あ、大丈夫よ。ウチ一人で」
「そうか。まぁ、
「ななな何言ってんのよ坂本!? あんたまさか、さっき部屋の中が見えてたの!?」
「いや、ジョークのつもりだったんだが・・・・・・」
「そういうところはやっぱ女の子だね島田さんは」
「島田は案外乙女じゃな」
「・・・・・・・・・・毎度御贔屓にどうも」
どうやら島田さんはムッツリーニと写真の取引をしていたみたいだ。
「ところで、テーブルはいいとして夕食はどうする?」
「・・・・・・・・・・何か作る?」
「僕は別にそれでもいいけど」
「いや、明久は勉強に集中させないといけないから、ここはデリバリーを頼んだほうがいいな」
「そうね。東條の言う通り、今日はピザでも取りましょ。作る時間が勿体ないし」
「そうですね。特に明久君は頑張らないといけませんから、ご飯を作っていちゃダメです」
「今はできるだけ勉強に時間を費やさないといけないし、早速出前を取りましょう」
三人の優しい気遣いには感謝しておかないと
「なんじゃ。ワシはてっきり島田が手料理を振舞うのかと思っておったのじゃが」
「昨夜、プライドを打ち砕かれたからちょっと、ね・・・・・・」
「なるほどのぅ」
島田さんはそう言っているがもう片方は更にヤバイものを作ろうと躍起になっている。
「ほら、いいから皆適当に座ってて。今テーブル持ってくるから」
島田さんが一旦リビングを退室し、入れ替わりに葉月ちゃんが両手に勉強道具を抱えて戻ってくる。
「お待たせしましたですっ」
「葉月ちゃん、やる気いっぱいだね」
「それだけ明久と一緒に勉強できるのが嬉しいってことだろ」
「はいですっ。あ、バカなお兄ちゃん、ここへどうぞです」
葉月ちゃんは勉強道具をリビングテーブルに置くと、カーペットの上にクッションを置いた。明久はここに座ってほしいって言ってるみたいだ。
「ありがとう、葉月ちゃん」
「いえいえですっ」
明久は言われた通りクッションの上に座ると
「葉月の席はここですっ」
葉月ちゃんは明久の膝の上に乗っかかった。
「お待たせ。このテーブルをそっちにーーって、コラ葉月っ。何してるのっ」
「えへへー。葉月はここで勉強するです」
「ダメ。アキのお勉強の邪魔になっちゃうでしょ」
意外にも島田さんがお姉さんらしく注意する。普段から明久に接する時も手じゃなく口頭だったら明久と上手くいく筈なんだけど。
「美波。僕なら大丈夫だよ。葉月ちゃんなら小柄だし」
「バカなお兄ちゃん、優しいですっ」
「それならいいけど・・・・・・アキ。変な気は持ってないわよね?」
「明久君。万が一変なことをしたら、大変なことになりますからね」
「イエス、マム。毛ほども下心はございません」
「明久は二人に任せるとして、俺達も勉強を始めるとしますか」
「そうね。秀吉、アタシと斗真が徹底的に教えるから覚悟しておきなさい」
「あ、姉上、少しは島田みたく優しくしてくれてもよいではないかの・・・・・・」
「アンタは甘やかすと何しでかすかわからないからそんなつもりはないわ」
「うぅぅぅ。今の姉上はいつも以上に理不尽じゃ」
「秀吉。それはどういう意味かしら?」
「ま、待つのじゃ姉上!その関節はそっちには曲がらなー」
「よ、止せ優子!葉月ちゃんの目の前で血の惨劇をするのはやめておけ!」
二時間程勉強をした後、デリバリーで注文したピザを食べてからまた勉強をした。そして、俺達にしては珍しく何もトラブルがおきず時間だけが進んでいきー
「ん?もうこんな時間か。そろそろ今日は終わりにするか」
気がつくと、時計は九時半を指していた。
「なんじゃ。あっと言う間じゃったな」
「・・・・・・・・・・集中してた」
「すっかり暗くなってますね」
「それじゃあ、今日はここまでにするか?」
「そうね。あんまり遅くまですると家族が心配するかもしれないしね」
雄二の一言に皆がペンを置く、明久の方は姫路さんや雄二の教え方が上手く、サクサクと進んでいた。秀吉も俺と優子が分かりやすく教えた為明久と同じように進んでいたから期末の点数はマシになるだろうな。
「あとはまた今度にするとして、今日は帰ろうぜ」
「そうですね。美波ちゃん、今日はありがとうございました」
「あ、ううん。こっちこそ色々とありがと。ほら、葉月、お礼を言いなさーー葉月?」
「Zzzz・・・・・・」
「あはは。疲れちゃったみたいだね」
「葉月ちゃんは俺達のペースに合わせようと必死になっていたからな」
俺達が勉強に集中している間に葉月ちゃんは明久の膝の上で眠ってしまったようだ。
「もう、葉月ってば・・・・・・。アキ、悪いけどこっちに寝かしてもらえる?」
「あ、うん。そうしたいんだけど・・・・・・」
「今の様子じゃ、難しいんじゃないか」
ソファーの上に寝かせようにも、葉月ちゃんは明久のシャツを握りしめて寝ていた。明久からすれば無理矢理動かすことはできないな。
「こら葉月、起きなさい。アキが帰れないでしょ?」
島田さんが葉月ちゃんの肩を叩く。
「んぅ・・・・・・」
すると葉月ちゃんは少しだけ目を開けると
「帰っちゃ、嫌です・・・・・・」
そう言って更に強く明久のシャツを握りしめた。
「葉月。あんまり我儘言うと、お姉ちゃん怒るからね」
島田さんの口調が少しだけ強くなる。これだけ見ていると、優しいだけじゃなくちゃんと怒るときは怒る良いお姉さんをしているのが伝わってくる。
「・・・・・・お姉ちゃんには、わからないです・・・・・・」
「え? 何が?」
「・・・・・・お姉ちゃんは、いつも一緒にいられるからいいです・・・・・・。でも、葉月はこういう時しか、バカなお兄ちゃんと一緒に入られないです・・・・・・」
「「「・・・・・・・・・・」」」
寝ぼけているからこそ聞けた。葉月ちゃんの本音に思わず俺達は顔を見合わせてしまった。そうだったか、葉月ちゃんはそこまで明久を慕っていたとはな。
「あのさ、美波。良かったら、僕はもう少しここで勉強していってもいいかな?」
「え?」
「だな。今のチビッ子の台詞を聞いたら、明久は残るべきだよな」
「そうじゃな。明久よ、モテる男は辛いのう」
「・・・・・・・・・・人気者」
「ここまで慕われるなんて羨ましな明久は」
俺達は口々に明久をからかうが、明久は悪い気はしてないみたいだ。
「そ、それじゃあ、悪いけどもう少し葉月に付き合って貰える?」
「うん」
島田さんから許可も下りた為、明久はここでもう少し勉強を続けることとなった。
「あ、あのっ、それなら私も・・・・・・っ!」
「え? 姫路さんはダメだよ。女の子があまり遅い時間に出歩いちゃ危ないからね。雄二にでも送ってもらって早く帰らないと」
「でも、心配なんです。その、イロイロと・・・・・・」
「心配なのはわかるけど」
「いいえっ。明久君は何を心配しているのか全然わかっていませんっ」
「???」
姫路さんはおそらく明久が島田さんと二人きりになるとどうなるか心配しているみたいだ。
「俺が姫路を送るなら、斗真が秀吉と木下姉を送るってことでいいか」
「そうだな。こんな時間帯に二人だけ帰らせるのは危ないだろうし、俺が二人を家まで送るとしますか」
「それじゃあ斗真。今日もお願いするね」
「斗真。よろしく頼むぞい」
ぼやぼやしていると時間が遅くなるし。姫路さんや優子、あるいは秀吉みたいな可愛い子を外に歩かせるのは危ないからな。
「あの、やっぱり私も・・・・・・っ!」
それでも姫路さんは必死に食い下がる。気持ちはわからなくもないが
「いくら言っても、ダメなものはダメだからね姫路さん」
「でもでもっ」
「でもも何もないよ。最近は危ない人も多いんだからね? こういったことはきちんとしないと」
「明久の言う通りだ。これ以上遅くなると姫路さんの親も心配するだろうからここは引き下がろうか」
「瑞希、ここは一先ず帰りましょう」
「諦めろ姫路。こうなると明久は考えを曲げないぞ」
「・・・・・・うぅ・・・・・・。そんなぁ・・・・・・」
姫路さんとしては明久が島田さんと二人きりになるから放っておけないだろうが、これ以上遅い時間までいさせたらマズいので、ここは明久に任せるとするか。
「それじゃ、島田。今日はありがとな」
「大勢で押しかけてすまなかったの」
「・・・・・・・・・・ありがとう」
「じゃあ島田さん、明久を頼むよ」
「美波。今日はありがとね」
「美波ちゃん、今日はありがとうございました・・・・・・」
未だ納得してない姫路さんも含め、明久を除く俺達はお礼をして玄関に向かう。
「じゃ、また明日。皆」
明久は座ったまま俺達に挨拶をした。
「待って、外まで送るわ」
島田さんは立ち上がって俺達を玄関までついていき、見送ってくれた。
「あ、あの、やっぱり私、戻らないと・・・・・・」
「諦めろ姫路。しつこい女は嫌われるぞ」
「で、でも・・・・・・」
「大丈夫だよ姫路さん。明久は姫路さんが思うようなことにはならないから心配ないって」
「瑞希。あんまり遅くなるとマズイんじゃないの?」
「そうじゃな。ワシと姉上も遅くまではおれんが斗真が一緒じゃから大丈夫じゃ」
島田さんの家から出た俺達はというと、先に帰ったムッツリーニを除いた俺と優子と秀吉、そして雄二と姫路さんは島田さんの家の近くに残っていた。理由は姫路さんが明久が島田さんと二人きりになってどうなるか心配していた為ここに残ると駄々をこねていたからだ。
「あ、あのっ。 そういえば私、美波ちゃんのお家に忘れ物を・・・・・・っ!」
「してないから大丈夫だ。きちんと島田の家を出るときに俺が確認してきた」
「あぅ・・・・・・。そうじゃなくて、えっと・・・・・・。じ、実は私、寄って帰るところが」
「もう遅いし、明日にした方がいいだろ」
「寄って帰ると見せかけて、島田さんの家に戻ろうとするのは見え見えだよ姫路さん」
「はぅ・・・・・・。そ、そのっ、美波ちゃんにお話しなくちゃいけないことが」
「・・・・・・いい加減にしろ、姫路。このままだと時間ばかりがかかるだろうが」
「だ、だって・・・・・・」
「だって、じゃない。さっきから聞こえている振動音、お前のスマホだろ? 両親が二日連続で帰りが遅い娘を心配してるんじゃないのか?」
「多分娘に何かあったんじゃないかと心配してるだろうし。ここは大人しく家に戻ろうよ」
「め、メールはしておきましたからっ。だからお願いです坂本君っ、東條君っ。行かせて下さいっ」
「気持ちはわからんでもないし、行かせてやりたいとも思うんだが・・・・・・」
「瑞希ったら、意外としぶといね」
「ここは明久に連絡でもしようかの」
「・・・・・・その必要はなくなったみたいだな。姫路さん、あっちを見てごらん」
「え?」
姫路さんが俺が指差した方向に振り返ると
「皆、何の話をしてるの!?」
「きゃっ!? あ、明久君!?」
「おう、明久か。早かったな」
明久がこちらに気づいたのか近づいてきたのだ。
「うん。あの後少ししたら葉月ちゃんが起きてくれたからね」
「そうだったか。思ったより早く済んだか」
「それで、何の話をしてたの?」
「さぁな。なんだろうな、姫路」
「え、えっと・・・・・・」
姫路さんの目は泳いでいる。そりゃあさっきまで明久を心配して残っていたから話辛いだろう。
「それより、明久君は美波ちゃんと二人きりっで、どんなお話をしてたんですか?」
「えっ!?」
突然の質問に明久は驚く。
「な、何かあったんですか?」
「え、えっと、それは・・・・・・」
姫路さんがじっと明久の目を見ており、まるで小さな嘘も見逃すまいといった感じになっている。
「もしかして・・・・・・、好きな人の話とか・・・・・・ですか?」
「ぅぐっ」
(図星だな)
(今日の瑞希。やたらと勘が鋭いね)
(うむ。明久のこととなると真価を発揮するのう)
俺達が小声で話していると、姫路さんは更に明久を追い詰めていた。
「お話しして、もらえませんか・・・・・・?」
「うぅぅ・・・・・・」
明久はどう答えたらいいか戸惑っているようだが、一体どんな返事をするのやら
「明久君・・・・・・」
「ごめん・・・・・・。言えないんだ、姫路さん・・・・・・」
「そう、ですか・・・・・・」
明久からの返答に姫路さんは俯く。
明久がどう答えようか考えていると、姫路さんは何かを考え込み、思いきったように顔を上げた。
「明久君っ!」
「は、はいっ」
「美波ちゃんの気持ち、私にもよくわかりますっ!」
「なんだって!?」
そこはわかっちゃいけないと思うんだが
「でも、私の気持ちも聞いてもらいたいんです!」
「そ、そんな! 急にそんなことを言われても困るよっ!」
「困るとは思います! でも、真剣に考えて欲しいんですっ!」
「し、真剣に・・・・・・」
「おい姫路。お前の考えすぎだ。明らかにコイツはバカなことを考えている顔をしているぞ」
「え?」
「ニホンザルならまだ紹介できるよ・・・・・・いや、違うな。チンパンジーはタレント業だから一緒になると大変かも、と言うべきか・・・・・・」
「何で今の流れで猿を紹介しなきゃならないんだよ」
「吉井君の考えには全くついていけないわ」
「全くお主は・・・・・・」
「・・・・・・明久君・・・・・・。私は必死に勇気を出したのに、どうして動物のお話を・・・・・・」
「考えるだけ無駄だろ。ほら、起きろ明久っ(ボゴッ)」
「はっ!? 僕は一体何を!?」
「それはこっちが聞きたいぐらいだ」
「ごめん、皆。何の話をしてたっけ?」
「なんでもないから気にするな。それで姫路、そこの交差点をどっちに行くんだ?」
「あ、はい。右です」
「右か。そうなると明久と同じ方向だな」
「そっか。雄二は駅前の方だもんね」
「ああ。そういうわけだから、姫路を送る役目はお前に任せる。暗い夜道で二人っきりだからって襲いかかるなよ」
「雄二。いくら明久でもそこまでするわけはー」
「了解。なんとか我慢するよ」
「その返事はどうかと思うのじゃが・・・・・・」
「わ、私も我慢しますっ」
「ちょっと瑞希!?何言ってるかわかってるの!?」
「姫路も襲いかかる気があったのか!?」
姫路さんからの爆弾発言に、俺達は思わず信じられないものを見るような目をしてしまう。
「まぁいいか・・・・・・。お前らの天然っぷりにツッコミを入れていたら時間がいくつあっても足りないしな」
「そうだな。ここはもう解散するとしますか」
「「???」」
「それじゃあ、また明日な」
「うん。また明日」
「坂本君。ありがとうございました」
「俺達は左方向だったな。じゃあ二人とも、また明日会おうぜ」
「うん。じゃあね三人とも」
「瑞希。気を付けて帰りなさいよ」
「また明日じゃ明久」
「東條君、木下君、優子ちゃん。また明日お会いしましょう」
「やれやれ。明久達と話したお陰で大分時間が遅くなったな」
「うん。でも、ここまで楽しくお話できたんだし。悪くはなかったわ」
「明久と姫路の天然っぷりにはついていけんかったがのう」
「そう言うな秀吉。あの二人は俺から見たらお似合いなんだしさ」
そう俺達三人は話をしながら夜道を歩いていき、二人の家に着くまでどれだけ話をしたのか気付かないくらい楽しいひとときを過ごした。
「じゃあ二人ともまた明日な」
「うん。じゃあね斗真」
「斗真。また明日ぞい」
こうして俺達は勉強会二日目を終えるのであった。
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