「ただいま~」
「おかえり、とうくん」
秀吉と優子を家まで送り届けた後、ようやく自宅に戻った俺は姉ちゃんに出迎えられる。
「とうくん。二日目連続で帰りが遅いけど何してたの?」
「何って、友達の家で夜遅くまで勉強してたんだよ。同じクラスの明久と秀吉に勉強教えてたからちょっと遅くなっちゃってさ。それと晩飯は友達の家で食べてきたから大丈夫だよ」
「そうだったんだ。とうくん、勉強するのも大事だけど少しは時間を気にしてよね。とうくんにもしものことがあったら・・・・・・」
帰りが遅くなった俺に、姉ちゃんは俺を心配そうに見詰めてくる。
「大丈夫だよ姉ちゃん。俺は一人でもなんとかなるし、毎晩、遅くまで遊んだりはしないよ」
「そう、だったら良いけど・・・・・・。でも次から遅くなるときはちゃんとお姉ちゃんに連絡してよね」
「了解。次からは気を付けるからさ」
本当姉ちゃんは心配性だな。俺だってもう子供じゃないんだし、自分のことは自力でなんとかなるっていうのにさ。
「じゃあお風呂も沸かしてあるし、早く済ませなさい。後で私も入らないといけないから」
「わかってるって」
俺は鞄を自分の部屋に置き、睡眠時に着る服を持って風呂場へ向かっていった。この時俺は、自分の姉ちゃんが明久の姉とは違って常識があることに嬉しく思うことに。俺は明久や雄二と違って、常識がある姉と彼女に恵まれて幸せだなホント。
「姫路さん、昨日は大丈夫だった?」
翌日の昼休み。俺達は皆で卓袱台をくっつけて弁当を食べていた。明久はあの姉がいるため自分の弁当を用意していた。
「それが・・・・・・凄く怒られてしまいました・・・・・・」
姫路さんがしゅんと俯く。まぁ、二日連続で遅くまで帰ってこない娘を心配しない親がいるわけないから当然だな。
「おかげで週末までの間学校以外は外出禁止にされてしまいました・・・・・・」
「あらら。そりゃまた可哀想に」
「仕方ないよ。あれだけ親から連絡が来たのに無視してたしな」
一人暮らしの明久には縁のない悩みかもしれないが、親にちゃんと連絡をしなかった姫路さんにも非はある。
「自業自得だろ。まったく、電話くらい出てやれば親だって安心しただろうに」
「そうですよね・・・・・・。反省してます・・・・・・」
自分でも悪いことをしたと自覚してる辺り姫路さんはちゃんとしてるね。
「え?アキはともかく、坂本と瑞希はあの後すぐに帰ったんじゃなかったの?」
「僕が帰る時になっても雄二と姫路さん、それに斗真と秀吉と木下さんも美波の家の近くにいたよね?」
「ああ。帰るには帰ったんだが、姫路が色々と駄々をこねてくれてな」
「姫路は相変わらず明久のこととなると周りが見えなくなるのう」
「す、すいません・・・・・・」
「まあまあそう落ち込まないでよ。姫路さんだって明久のことが気になって仕方なかったんだろ?だったら、次から気を付ければいいんだしさ」
「はい。すみません。以後気を付けます・・・・・・」
肩身が狭そうに身を縮める姫路さんに俺はフォローをする。
「でも、雄二は大丈夫だったの?」
「ん? 俺の親は何も言わないから大丈夫だぞ」
「いや、明久が言いたいのはそういうことじゃないぞ」
「じゃあどういうことだよ?」
「うん。僕が言いたいのは、二日連続で女の子と夜遅くまで出掛けている上に、昨日は途中までだけど姫路さんと二人っきりでしょ? 霧島さんは怒らないの?」
「いくら姫路さんを一人っきりにさせるのは危ないから傍にいたとはいえ、今の話を霧島さんが聞いたら自分がどうなるかわかってるよな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺と明久の言ったことに雄二は『やってもうた』って顔をしている。
「ま、まぁ、大丈夫だろ。バレなければなんの問題も」
「・・・・・・雄二。今の話、向こうで詳しく聞かせて」
時すでに遅し、雄二の後ろには無表情で怒りを露にしている霧島さんが立っていた。
「まぁ待て翔子。お前は勘違いをしている。お前の考えているようなことはなにも起きていないし、そもそもお前に俺が責められる謂れは無いと」
「・・・・・・うん。言い訳は向こうでゆっくりと聞かせてもらう」
霧島さんは雄二を引き摺ってどこかへと行ってしまった。
PiPiPiPiPi‼
その直後、明久のスマホから着信音が鳴り響き、明久がスマホを見てみると明久は急に目に涙を浮かべはじめた。
「どうした明久?何かあったのか?」
「斗真。これを見て・・・・・・」
明久にスマホの画面を見せて貰い、内容を見てみると
【Message From 坂本 雄二】
たすてけ
おそらく雄二は『助けて』と打ちたかったんだろう。とりあえず雄二は後でフォローしてやるとしてだ。
「ふむ。こうなると放課後の勉強会は厳しそうじゃな」
「そうね。瑞希も坂本もいないとなると、教えてくれるのは東條しかいないもんね」
「・・・・・・・・・・(こくり)」
「流石に俺一人だけじゃ、皆に教えるのは難しいぞ」
雄二は今頃霧島さんにグロテスクな折檻をされているだろうから、教えるのは難しいだろうな。
「それじゃ、勉強会は中止か・・・・・・。弱ったな・・・・・・」
「ごめんなさい。私が昨日我が儘を言ったばっかりに・・・・・・」
「ああいや、姫路さんは全然悪くないよ。自分の勉強を置いといて僕らに教えてくれてるんだから、感謝してるくらいなのに」
「とりあえず、明久に勉強を教えてやらないといけないんだが、それをどうするかだな・・・・・・」
「・・・・・・吉井」
「ぅわ!」
明久は後ろにいた霧島さんに不意に声を掛けられ驚く。
「・・・・・・勉強に困ってる?」
「あ、うん。そうなんだよ」
「それはそうと霧島さん。雄二は一体どうなったんだ?シャツに付いている返り血からしてまさか・・・・・・」
「・・・・・・それなら協力する」
「え? 協力って?」
霧島さんは俺の言葉を無視して、明久に話を続ける。
雄二がどうなったか気になるが、無事じゃすまされなかったようだ。
「・・・・・・週末に、皆で私の家に泊まりに来るといい」
それは要するに、霧島さんの家で泊まり込みをして勉強会をするってことか。それなら思いっきり勉強に育めるだろうし、学年首席の霧島さんから教わることもできるからメリットは大きいな。
「いいの? 霧島さん?」
「(こくり)・・・・・・吉井にはいつかお礼をしたいと思っていた」
「皆で、ということはワシらも良いのかの?」
「・・・・・・勿論」
「週末ってことならウチも行けそうだし、お邪魔しちゃおうかな。瑞希はどう?」
「た、多分大丈夫です。ダメでも、なんとか説得しますっ!」
「・・・・・・・・・・参加する」
「だったら霧島さん。霧島さんと同じクラスのアランも誘ってもいいか?アイツは人に教えるのは得意だしさ」
アランは優子と同じオールマイティだから苦手な科目は聞けるし、勉強会には必要不可欠な存在だ。
「・・・・・・構わない」
「ありがとう。アランには俺から言っとくよ」
ここにいるメンバーと親友のアランの参加が決まったな。後は雄二が出てこれるかどうかだが
「雄二は参加できるのかな?」
「・・・・・・大丈夫」
「あ、そうなの?」
「・・・・・・その頃には、きっと退院してる」
「そっか。それは良かった」
「待て明久。退院って言葉が気にならないのか?」
俺以外の皆はにこやかに頷き合う。雄二も参加できるのはいいがさっきまでの間に何があったんだアイツは?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・退院?」
数分後、明久はようやく疑問に気づいたのだった。
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