バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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今回からオカルト召喚獣編です。


オカルト召喚獣編
第一問 夏期補習


期末試験も終わり、解放感に包まれたこの時期。七月もあと数日が過ぎると終わりを迎え、八月になるかもしれん夏。俺達Fクラスはというと・・・・・・

 

 

 

 

 

『補習を始めるぞーっ!』

 

 

クソ暑い時期にも関わらず鉄人先生の補習を受けていた。

Fクラスは試召戦争をしたり、覗き騒動を起こしたので平常授業の時間を沢山潰しまった為夏休みの初日から出ないといけない羽目になったからだ。

Fクラスの教室はAクラスと違って冷房設備がなく、暑い日差しが照り注ぐだけという最悪な環境の中俺達は額に汗を流しながら補習を受けている。

 

(なぁ秀吉。なんで俺達はこんな目にあわないといけないんだ。こうなったのも全て明久と雄二に原因がある筈なんだが)

 

(仕方なかろう。ワシもこんな暑苦しい教室で補習を受けるのは遠慮したいがこれを休めば更に補習が増やされるだけじゃから受け入れるしかないのじゃ)

 

(そうだな。はぁっ、今更ながら振り分け試験をちゃんと受けておくべきだったな)

 

(斗真、後悔後先に立たぬぞ)

 

俺は隣に座っている秀吉に小声で文句を溢すが秀吉は嫌々ながらも仕方ないと言葉を返す。

秀吉も汗をかいてはいるがなんというか色っぽく見えてしまうのは俺の気のせいかな。こんな姿を見続けられるのなら我慢して補習を受けていた方が

 

ヴー、ヴー、ヴー、ヴー

 

「誰だ? スマホのバイブ音が鳴っているぞ」

 

「あっ、すいません先生。俺のスマホからですね」

 

「全く、補習を受けている間はスマホを切るかマナーモードにしておくんだぞ」

 

「すいません以後気を付けますので。っと一体誰からだ」

 

俺がポケットからスマホを取り出して通知を見てみると

 

斗真、後で覚えておきなさい from優子』

 

優子からの理不尽なお仕置きメールだった。

そういや優子がいるAクラスは俺達と違って授業をちゃんと受けていたから夏休みに学校に来る必要はないのだが夏期講習を受ける為にわざわざ学校に来てたな。向こうは冷房が付いているから良いけど、俺達はこの暑い中真面目に勉強に取り組めるかというとできるわけがない。

鉄人先生が黒板に板書をしている間に俺は小声で秀吉に話しかける。

 

 

(どうする秀吉。隙をついてここから逃げ出すか?)

 

(そうは言うが補習を担当しているのはあの鉄人じゃぞ。鉄人から逃げ切れる可能性はないに等しいとワシは思うのじゃが)

 

(それについては心配ない。後ろを見てみろ(親指を後ろに向ける俺))

 

(うむ? どういうことじゃ?)

 

俺に言われた通り秀吉は後ろを見てみると

 

(逃げよう雄二。この魂の牢獄から)

 

(いいことを言うじゃねぇか明久。俺もこの鉄拳補習フルコースには飽き飽きしていたところだ)

 

明久と雄二も俺と同じことを考えていたのだった。

 

(だいたい、夏休みに入っているのに授業があるってのが間違いなんだよな。しかもこの教室は男が殆ど。勉強どころか息をするのもキツいじゃねぇか)

 

(オマケに授業をやっているのが鉄人だもんね・・・・・・。冬でも暑苦しいくらいなのに、この環境で鉄人のビジュアルは拷問に等しいよ・・・・・・)

 

(というわけだ。明久達もここから逃げようとしているから鉄人先生をアイツらに引き付けてその間に俺達は逃げればいいんだよ)

 

(全く、お主は相変わらず外道なことを思いつけるのう・・・・・・)

 

秀吉は呆れながら俺を見詰める。

 

(仕方ないだろ。身体が弱い姫路さんは風通しが良くて、陰になっているベストポジションに座らせて貰っているのに俺達はどうだ。日当たりが最高で風通しが悪いところに座らされてるんだぞ。しかも鉄人直々に指定されてな)

 

(それは斗真達が問題を起こしてるからそこに座らされたんじゃとワシは思うのじゃが)

 

(まぁ、確かに。俺と同じ日当たりが良くても風通しが一番悪い最後尾に座らされている明久達と比べたらまだマシな方だな)

 

そんな最悪なポジションに座らされている明久達を見てみると

 

(それで雄二、どうやって抜け出す? 相手はあの鉄人なんだから見つかったら最悪の事態になるよ)

 

(なんだ明久。お前は人に脱走を誘っておいて何も作戦を考えてないのか)

 

(考えてあったらすぐに一人で実行してるよ)

 

(まぁ、それもそうだな。どうしたもんか・・・・・・)

 

明久は雄二と小声で話ながら脱走を企ているが

 

『ーーここで元の高さをhとした時、位置エネルギーが全て運動エネルギーに変換されたとすると、この時の速度vは重力加速度gと高さhに依存する式となりー』

 

鉄人先生は明久達へ目線を向けながら教科書を広げ黒板に文字を書いていく。鉄人先生は明久達が脱走をしないよう目を光らせている以上下手な動きはできん。

 

(おい吉井、坂本。逃げるのか?)

(逃げるなら俺達も一枚噛ませろ。こんな地獄には付き合いきれねぇ)

(俺もだ。このままだったら確実に干涸からびて死んじまう)

 

明久達の近くに座っていたクラスメイト達が明久に話しかける。ここにいるクラスメイトは腹話術のように口の動きを最小限に抑えながら話しているがそんな芸当ができるのはこのクラスで鉄人に目を付けられている男子だけだ。尚女子三人(ワシは男じゃぞ)は日頃真面目に授業を受けているので鉄人から警戒はされていない。

 

(じゃあ雄二、この人数なら全員で一斉に逃げるって作戦でどうかな)

 

(人海戦術か。単純だが、確実な作戦だな・・・・・・よし、乗った)

 

(どうする秀吉。一緒にここから逃げ出すか?)

 

(ワシは脱走を企てはせん。それに鉄人も明久らが逃げ出すのは気づいておるはずじゃからの)

 

(そうか。なら俺達だけでもここから逃げ出すとするか)

 

(みんなもそれでいいよね? 誰が捕まっても恨みっこなしってことで。問題がなければ小さく頷いてもらえる?)

 

明久が小声でそう言うと、女子二人と秀吉を除いた全員が一斉に小さく頷いた。ここにいる男子全員が脱走を企てるって、普通はおかしいんだけどな。

とりあえず後は隙を見つけてはここから逃げ出すのみだ。

 

『ーーつまり、物体の落下速度というものはその物体の質量に依存しないということになる。だが、理論とは違って現実には空気抵抗というものがある。綿毛と鉄球が同様の速度で落下しないのはこの空気抵抗によるものが大きく、式に表すとーー』

 

説明が佳境に至り、鉄人先生が黒板に向き直って板書を始め背を向けると同時に俺達男子は腰を浮かせるが

 

「全員、動くなっ!」

 

「「「ーーっ‼」」」

 

鉄人先生に機先を制される。秀吉の予想通り、俺達が脱走するのは読まれていたようだ。

 

「貴様ら・・・・・・。脱走とは良い度胸だな。そんなに俺の授業は退屈か」

 

鉄人先生がゆっくりとこちらを振り向き、脱走しようとした俺達を睨み付ける。

 

「いえ、そんなわけないじゃないですか。俺達はただ熱中症にならないよう水分補給の為に水飲み場へ行こうかと」

 

「それを脱走というんだ馬鹿者が。それに授業を受けながら水分を取っても構わないと俺はさっき言った筈だがな」

 

「あっ、そうでしたね・・・・・・あははは」

 

それ以前になんでこの人は気配だけで俺達が脱走しようとするのが読めるのか気になるが今はそれどころではない。

ここにいる皆が誰が鉄人先生の餌食になるかビクビクと怯えているなか鉄人先生はというと。

 

「お前らがそこまで退屈しているとは気がつかなかった。これはつまらない授業をしてしまった俺の落ち度だな」

 

あれ? あの堅物で有名な鉄人先生がそんな台詞を言うなんて意外だな。ひょっとして俺達が脱走しようとしたことを許してくれるわけ

 

「詫びと言ってはなんだが、代わりに一つに面白い話をしてやろう。・・・・・・姫路、島田、木下は耳を塞げ」

 

がなかった。鉄人先生が話す面白い話となるとおそらく俺達が思ってるようなものじゃないのは間違いないからな。

そして鉄人先生は口を開いて話をし始める。

 

「そう。あれは十年前の夏ー」

 

俺達の疑問を余所に鉄人先生が口を紡ぐが冒頭の台詞からしておそらく

 

「ーー俺がブラジルの留学生とレスリングをやっていたときのことだ」

 

『『『ギャぁあアあーーっ‼!』』』

 

鉄人先生な俺達にレスリング談義をし始め、耐性のないFクラスの男子は悲鳴を上げる。ただでさえ炎天下の中の教室でしかも鉄人からレスリングの話をするとなれば更に暑苦しくなるのは当然だ。俺は趣味でプロレスを観てるからこういった話には慣れているので問題ない。

 

「相手は身長195cm、体重120kgの巨漢、ジョルジーニョ・グラシェーロ。腕の太さが女性のウエストくらいはありそうな男だった。だが、俺とて負けはしない。188cm、97kgの鍛えに鍛えた体でヤツと正面からぶつかり合いーー」

 

『やめろっ! やめてくれぇーっ!』

『脳が! 脳が痛ぇよっ‼』

『ママァーッ‼』

 

Fクラスの男子達は精神が崩壊する音が聞こえてくるようだが、そこまで大袈裟にしなくていいと俺は思う。

 

「ーーしかし、ヤツはレスリングと柔道を勘違いしていた。腕ひしぎを仕掛けてきたんだ。だがこの俺の自慢の上腕二頭筋には勝てるわけもない。汗に塗れ、血管を浮き上がらせながらも俺は腕を伸ばしきることもなく抵抗し続けた。すると向こうはすかさず俺の頭上にまわり、その分厚い大胸筋で俺の顔を圧迫しつつ上四方固めをーー」

 

『ぐぁあああっ! い、嫌だ! 目を閉じたくない! 最悪のビジュアルが瞼の裏に張り付いて離れない!』

『起きねぇ! 福村が起きねぇよ! おい、しっかりしろよ!』

『空気を! 新鮮で涼しい空気をくれ‼』

 

現在教室は阿鼻叫喚の地獄絵図となっており、明久は女子三人を見て耐えようとしていた。雄二とムッツリーニは既に精神がやられているのか

 

「ぐぁあああっ! やめろーっ!頭が壊れるーっ!」

 

「・・・・・・・・・・(ぴくぴくぴく)」

 

雄二は絶叫し、ムッツリーニは気絶していた。耳を塞いでいる秀吉は全てを察したのか俺達に同情しているが、これはFクラスの中ではまともな秀吉が聞いてもかなりのダメージを負うだろうな。

 

「ーーそして、制限時間いっぱいまで使った俺達の寝技の攻防は続きーーん? なんだお前ら。もうダウンか?」

 

「俺以外は全員卓袱台に突っ伏して気絶してますよ」

 

「やれやれ、仕方がない。十分間だけ休憩を入れるとしよう。脱走なんてくだらないことを考えた自分を反省するように」

 

鉄人先生はそう言った後耳を塞いでいる三人にジェスチャーで手を離すよう伝えると、休憩の旨を伝えて、教員用の椅子に座った。あれはおそらく明久達が脱走しないよう警戒しているな。

 




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