「あの、明久君。何があったんですか?皆さんとても苦しそうなんですけど・・・・・・」
姫路さんが卓袱台に突っ伏しているクラスメイト達を心配する。
「えーっと、なんていうか、言葉の体罰というか、精神攻撃を受けたというか・・・・・・」
「鉄人先生が昔ブラジル人とレスリングをした話をしただけだよ。こんな暑い中でむさ苦しい話しても余計にキツいだけだしな」
「まったく、どうせまたくだらないことでしょ。脱走なんて考えたんだから、先生だって怒って当然じゃない」
姫路さんの隣にいる島田さんが呆れたような表情で明久に言葉をかける。
「そうは言うがな、島田。俺と明久の席は脱走を考えても仕方ないくらい酷いもんだぞ。全身から水分が全てなくなっちまいそうなくらいだ」
雄二の言う通り、俺達が座っている席は日当たりが良すぎて火傷してしまいそうなくらい暑い。せめてカーテンの一つか二つは欲しいくらいだ。
「そうなの? ウチの席はそこまで暑くないから良くわからないけど」
「私も風が入ってきてくれるので結構大丈夫です」
「女子達は最高のポジションに座らせて貰ってたから問題はないけど」
「俺たちの席は日当たりが最高で風通し最低のワーストポジションだからな。本当に酷いもんだ」
「酷いって、どのくらい酷いんですか?」
「明久の成績くらいだ」
「例えはアレだが間違ってはいないな」
「人間の耐えられるレベルじゃないわね」
明久は不機嫌な顔をしているがそれは置いておくとして
「でも確かにこの席は雄二の性格くらい酷いもんだよ。さっきペンのアルミ部分に触ったら軽く火傷しちゃったしね」
明久もさっき罵倒された仕返しに雄二へ悪口で返す。
「火傷したの? どれどれ」
「あ、いや。そこまで酷いものじゃないんだけど」
島田さんは明久を気遣い手を取る。そういう優しいところを普段から見せていたら明久も島田さんに対する印象が変わるんだけどな。
「なんじゃ島田。お主、随分と明久に優しいではないか」
「そうです。美波ちゃんは明久君に近すぎますっ」
「べ、別に優しいってワケじゃ・・・・・・! ただ怪我をしていたらウチが殴る時に手加減をしなくちゃいけないからってだけで・・・・・・!」
一応明久が怪我をしていても殴る前提なんだ。
「でも僕も美波は優しいと思うよ」
「え・・・・・・? あ、アキまで何を言ってるのよ」
「面倒見がいいし、細かいところに気がつくし、妹想いだし。それに、動物に愛情を注ぐができるしーー異性として」
「アンタまだそれ誤解していたの!?」
明久は最後になにか小声で言っていたが、どういうことだ?
「聞きなさいアキ! アンタは誤解してるけど、ウチはオランウータンになんか興味なくて、本当にウチが好きなのはーー」
「「「好きなのは?」」」
「・・・・・・・・・・チンパンジーなのよっ!」
好きな人という話題に、皆が注目して見ている中島田さんは大胆にチンパンジーが好きだと言ってしまい、それを聞いた皆は目が点になっており呆然としていた。
「そ、そうだったんだ・・・・・・。それは、その・・・・・・誤解しててごめんね・・・・・・」
「う・・・・・・。そ、そうよ・・・・・・。ウチは別にオランウータンが好きってわけじゃないんだから・・・・・・」
島田さんは更に誤解を招くようなことを発したからか小声で「ウチ、もうお嫁にいけない・・・・・・」と呟く。二人の間に何があったか知らないけどそこは素直に明久が好きだと言えばいいのに。
「島田。お前も苦労しているな」
「坂本・・・・・・。ウチのことを可哀想と思うなら、アキの誤解を解いておいて・・・・・・」
誤解というのはおそらくチンパンジーじゃなくて明久のことが好きだってことだろうがもう手遅れだよ。
「じゃがまぁ、確かにこの席は暑いのう。ワシも近くに座っていたからお主らが脱走を企てるのも無理はないかもしれん」
「そういえば、秀吉はおとなしくしていたよね。脱走の話は聞かんかったの?」
「それについては聞こえておったのじゃが、どうせ脱走したところで鉄人に捕まるのがオチじゃと思って参加せんかったぞい」
「そうだったんだ。なんというか意外にも真面目なとこもあるんだね秀吉って」
「なんじゃ。ワシが脱走に乗らんのはまずかったかの?」
「いや、別にそういうわけで言ったわけじゃないぞ秀吉。寧ろ結果としては参加しなかった方が正解だったからな」
「そうだよ。そんなまずくはないよ。ただ、いっつも一緒につるんでるバカ仲間としては、いないと寂しいなと思っただけで」
「そうじゃったか・・・・・・」
「? 秀吉、嬉しそうだね?」
秀吉は明久からバカ仲間だと言われ笑顔を浮かべている。
「うむ。正直なことを言えば、バカ仲間と言ってもらえるのは嬉しいぞい。最近のお主はワシを女と見ておるように思えたからの。外見が姉上に似ておるという部分以外はどうでも良いのかと、少々気にしておったところじゃ」
秀吉は優子と似ているのを気にしてるみたいだが俺からすれば二人は中身が全く異なるんだが。
「秀吉もおかしなことを気にしているね」
「いや、最近のワシの扱いを鑑みれば決しておかしくはないと思うのじゃが・・・・・・」
「そうでもないぞ秀吉。確かに秀吉と優子は双子だから顔は似ていて当然だけど、違うところはあるからそう気にすることはないよ」
「斗真。それは一体どういうことじゃ?」
「秀吉には秀吉の良い所があるってことさ。秀吉は誰にでも優しく接するし、なんていうかこう話しかけやすいからな」
「うん、斗真の言う通りだよ。秀吉は可愛いと思うけど、それだけで一緒にいるわけじゃないからね。一緒に遊んだり、勉強したりして、秀吉の中身の良いところを一杯知っているから、こうして一緒にいるんだよ」
「・・・・・・・・・・っ!!」
「ん? どうしたの秀吉?」
「まさか、明久に惚れたんじゃー」
「ち、違うのじゃ!・・・・・・と、とにかくこっちを見るでないっ」
秀吉は隠れるように俺の後ろに行く。おいおい明久は秀吉を褒めただけなのにそんな照れなくてもいいんじゃないか。
「瑞希・・・・・・。木下ってズルいわよね・・・・・・。女の子みたいに扱われているクセに、こういう時だけ異性を意識させないであんなことを言って貰えるんだもの・・・・・・」
「ですよね・・・・・・。私、頑張っているのが虚しくなってきちゃいます・・・・・・」
「瑞希はまだいいわよ。ウチなんて、頑張った結果がチンパンジー好きの女子高生なんだから・・・・・・」
姫路さんはともかく、島田さんに至っては自業自得なんだけど
「んむ?・・・・・・ところで明久。ワシを女として見ておるという部分は否定されなかったような気がするのじゃが」
「あはは。秀吉もおかしなことを気にしてるね。別にそんなことは口にしなくても」
「いや、そんな発言したら余計に気になると思うが・・・・・・」
「何故明言を避けるのじゃ!? ええい! お主はワシを異性と思っておるのか、きっちり『はい』か『いいえ』で答えるのじゃ!」
「はエス」
「はいとイエスが混ざってるぞ明久」
「やはりお主はワシを女として思っとるじゃろ!?」
「ところで雄二。ムッツリーニがかなり危険な状態に見えるんだけど」
「答えるまでもないと言わんばかりにスルーされておる!?」
「落ち着けよ秀吉。明久が秀吉を女として見てるのはいつものことだろ」
「むぅ。一応聞くが斗真もワシを女として見ておるのか?」
「そんなわけないだろ。俺はちゃんと秀吉を『男の娘』として見てるから安心しろ」
「そうか。それはなによりじゃ・・・・・・って!?ワシはそんな新種の性別じゃないからな!?」
「ナイス斗真!(グッ!)」
「明久!お主もグーサインを出すでないぞい!」
「はいはい。その話はまた今度にしよっか。で、ムッツリーニは今どうなってるんだ」
いつもはカメラをいじっているムッツリーニはというと、鉄人先生の話が効いたからかピクリとも動かず気絶していたままだった。
「アイツの想像力は尋常の非じゃないからな。さっきの恐ろしい話を聞いただけで鉄人とブラジル人の暑苦しいレスリングが脳内で鮮明な画像になって浮かび上がったんだろ」
「・・・・・・それはひとたまりもないね」
「ムッツリーニにとっちゃさっきの話は酷だったに違いないし、しばらくそのままにしておくか」
「それにしても暑いな・・・・・・。さっきから全然汗が引かないぞ・・・・・・」
「そうだよね。こんな環境だと勉強する気なんて全然出てこないよね・・・・・・」
「環境もそうだけど明久はあれ以降勉強に力を入れてないだろうが」
「なによアキ。アンタ、この間の期末試験は随分とやる気があったみたいなのに、今はいつも通りに戻っちゃったの」
「この前のは姉さんを撃退する為だったから例外だよ。元々勉強はあまり好きじゃないからね」
「そういう悪い癖が原因だからあの非常識な姉がお前の家に住み着くようになったんだろ?少しは反省くらいしたらどうだ」
「うっ! 斗真の言う通りだね・・・・・・」
「それに、この前の試験はもう一つ理由があったからな」
明久と同じように勉強に対する気迫が薄い雄二が言う。
「もう一つの理由って、試験召喚獣のリセットというお話ですか?」
「うん。僕や雄二の装備は斗真と違ってめちゃくちゃ弱いからね。新しい装備になればもっと強くなると思ったんだけど・・・・・・」
「明久はよりによって期末試験で名前の記入ミスをしてしまったからな。多分学ランに逆戻りになるんじゃないか」
「うぅ・・・・・・。せめて、金属の武器が欲しいよ・・・・・・」
「まぁ、あの結果では明久の装備は大して変わらんじゃろうが、雄二はどうなのじゃ? お主は去年の振り分け試験からかなり点数が向上しておらんかったかの?」
「ん? そういやそうだな。周りの連中の点数ばかり気にしてあまり自分の点数や装備を気にしてはいなかったな」
「雄二は代表だからあまり戦線には加わる必要はないけど装備は確認した方が良さそうだな」
「そうだね。雄二は指揮を取る立場だからあまり自分が戦う場面を想定しないよね」
「ああ。俺の装備が向上するよりも周りの連中が強くなる方がよっぽど勝負がやりやすいからな」
雄二は根っからの指揮官タイプだから当然か。
「ワシも期末試験は結構出来が良かったからの。もしかしたや結構いい装備になっておるかもしれん」
「ウチも振り分け試験よりは問題が読めたから、ちょっと強くなってるかも」
「すいません・・・・・・。私はあまり変わってなかったみたいです・・・・・・」
「いやいや。姫路さんはあれ以上の成績になったら凄すぎるってば」
「それに、期末前は俺達に色々と教えてくれたんだからそう気にしなくていいよ」
いくら姫路さんといえど、あれ以上の点数を取るのは難しいだろうな。
「あ。それなら一度召喚獣を呼び出してみようよ。皆がどんな装備になっているか気になるし」
島田さんが言うように、期末試験の結果でどう変わったか気になるからひとまず見てみるのもありだな。
「そうだな。戦力の把握は試召戦争に必要不可欠だ。幸いにも鉄人がいることだし、召喚許可を貰って確認しようぜ」
「だったら俺から頼んでみるよ。西村先生ちょっと宜しいでしょうか」
俺は黒板の近くにあるパイプ椅子に座っている鉄人先生に声を掛ける。
「どうした東條。俺に何の用だ?」
「いえ、召喚許可を貰いたくて声を掛けたんですけど」
俺がそう言うと、鉄人先生は『厄介なことになった』といった表情をした。ひょっとして何か問題でもあったのか
「あー・・・・・・。いいか東條。お前は観察処分者じゃないから大丈夫だが、召喚獣は人よりもずっと力があり、もし物に触れたりでもしたらとんでもない力を発揮するからな。そんな危険なものをみだりに呼び出すことは感心できんぞ。そんな余計なことを考えずにだなーー」
ん? 鉄人先生にしてはいつもより歯切れが悪いな。そういえば前にババァが調整にどうのこうのって言ってたから多分それに関係してるな。
「西村教諭。ワシらは別にそんな悪巧みをしておるわけではないぞい。ただ、純粋に召喚獣の装備がどうなっておるのか気になるだけなのじゃ」
秀吉が助け舟に入るが、それでも鉄人先生は
「いや、しかしだな、木下。試験召喚戦争でもないのに召喚獣を呼び出すというのはあまり良いことではないぞ」
まるで奥に物が挟まったかのような物言いをして誤魔化そうとしている。こうなったら
「鉄人先生。許可は入りませんが説明だけはして頂きますよ」
俺はポケットからあるものを取り出し、それを見た鉄人先生はまるで目をハッとした感じで驚いた。
「!? 東條、何故貴様がその腕輪を持っているんだ!? それは前に学園長がー」
「期末試験の前に学園長から頂いたものですよ鉄人先生。これを使えば召喚許可が無くてもフィールドは展開できますし、俺もそのフィールドで召喚ができますから後で説明して下さいね」
そして俺は学園長から貰った『黒金の腕輪』を左腕に付けて腕輪を起動する為の言葉を言う。
「それじゃあ早速行くとしますか。
俺の言葉に反応し、腕輪が起動するとフィールドが展開された。黒金の腕輪は雄二が持ってる白金の腕輪と違い自身の召喚獣を出せるが教科はランダムである。
「明久、試しに召喚してみろ」
「OK それじゃ、早速ーー
明久がお馴染みのキーワードを口にすると、明久の足元に魔法陣のような幾何学模様が出現し、その中から明久の召喚獣が姿を現す。さて、明久の装備は一体どんな感じにーー
「あれ? なんだか僕の召喚獣が・・・・・・?」
「おいおい・・・・・・。明久のクセになんだか妙に贅沢な装備になったな。これは甲冑か?」
「剣まで持ってるわね。今までとは全然違うじゃない」
「それに、随分と背が高くないですか?」
皆が言うように、現れたのは白銀の甲冑に身を包んだ明久をデフォルメした召喚獣なんだが。明久にしてはなんというか贅沢な装備だな。
「す、凄いっ! なんだかかなり強そうに見えるよっ!」
「いやはや・・・・・・。こいつは凄いな。試召戦争が本物の戦争みたいになりそうじゃないか」
「そうじゃな。これならば本物の人間とさして変わらんの」
「でもなんで召喚獣が3頭身から通常サイズになったんだ。いくら何でも変わり過ぎな気がするが」
俺がそう呟くと皆が「確かに」と首を促す。それでも明久は前の学ランより装備がまともになったからかテンションが高い。
「顔も明久君そっくりですね。今までの可愛い感じと違って、今度のは凛々しいです」
「え? そ、そう?」
明久は姫路さんに凛々しいと言われ照れている。
「姫路も酔狂なヤツだな。こんなブサイクのどこがいいんだか」
「あ痛っ」
雄二が明久の召喚獣の頭を小突く、その瞬間、叩かれた頭は外れてしまい、ゆっくりと重力に従って畳の下に落下した。
「「「・・・・・・・・・・」」」
突然の出来事に絶句する俺達の前を、胴体から離れた召喚獣の首が静かに横切る。生首は何度も畳の上で回転すると、近くの卓袱台の足にぶつかってこちらを見た状態で足を止めた。
「「きゃぁぁあああーっ!?」」
「えぇぇっ!? な、何コレ!? 僕の召喚獣がいきなりお茶の間にはお見せできない姿になっているんだけど!?」
召喚獣は仁王立ちしたまま、頭だけ転がるという恐ろしいことになっている。おいおい、一体どうなってるんだよ。
「ん? ああ、すまん。そんなに強く叩いたつもりはなかったんだが、まさか外れちまうとはな・・・・・・。待ってろ。今ホチキスを持ってくる」
「雄二、何的外れなことを言ってるのさ!? くっつけるなら接着剤でしょ!? ホチキスだと穴が開いて痛いんだから!」
「そういう問題ではないのじゃが」
「明久、お前も的外れなことを言ってるぞ」
「それはそうと、いくら明久の点数が無いに等しいくらいだからと言って、登場と同時に戦闘不能にならなくてもいいだろ」
「え? コレってそういうことなの?」
「よく見ろ。頭は取れてはいるけど戦死はしてないぞ」
明久の召喚獣の頭上に点数が表示されており。前より点数は上がってる為Eクラス並になっているな。
「明久よ。どうやらお主の召喚獣は首は外れるものの、戦闘不能というわけではなさそうじゃぞ」
「うん。そうみたいだね」
「こんなもん、知らない人が目の当たりにしたら驚くのは間違いないぞ」
「姫路さん、美波。目を開けても大丈夫だよ。別にこれは死体じゃないみたいだから」
明久は固く目を閉じた女子二人に声を掛ける。姫路さんは兎も角、島田さんも驚くなんて意外な一面があったとは。
「はぅ・・・・・・。そうじゃなくても、やっぱり怖いです・・・・・・」
「べ、別にウチは驚いただけで、こんなもの怖いわけじゃ・・・・・・」
島田さんはそう言いながらも目を逸らしてはいる。やっぱり島田さんも明久の召喚獣を怖がってるみたいだ。
「さて鉄人。これはどういうことだ。知っているんだろ?」
「鉄人先生。俺達が知ってしまった以上ご説明願います」
俺と雄二がわざとらしく目を背けている鉄人先生に問い詰めると諦めたのか、大きく溜息をつき説明をする。
「・・・・・・俺には良くわからんが、今呼び出される召喚獣は化け物の類か何かになっているという話だ」
「お化け、ですか?」
ってことは明久の召喚獣は頭が外れるところからしてデュラハンか。でも何で明久の召喚獣がデュラハンなんだ?
「お前らも知っての通り、試験召喚システムは科学技術だけで成り立っているわけではない。幾ばくかの偶然やオカルト的な要素も含まれているんだ」
「??? つまり、どういうことですか」
「あー・・・・・・要するに、だな・・・・・・」
「調整に失敗したと」
「・・・・・・身も蓋もない言い方をするな」
やっぱりあのババァがやらかしたんか。この前調整が悪いと言っていたがまさか妖怪化するとはな。
「明久の召喚獣を見る限り、どうやら調整はオカルトの部分が色濃く出たようだな。これはこれで面白いが」
「なるほど。オカルトといえば妖怪だもんね」
「それはそうと、どうして明久の召喚獣がデュラハンなんだ? 妖怪なら日本の妖怪もいる筈なんだが」
俺の疑問に鉄人先生がこう説明する。
「学園長の話を聞く限りでは、どうも召喚者の特徴や本質から呼び出される妖怪が決定されるらしい」
成程。となると明久の特徴は・・・・・・うん。そうなるな。
「特徴や本質ですか? そうなるとデュラハンが選ばれたっていうのは、僕の騎士道精神が召喚獣に影響を与えたからってことですね」
「明久、現実から目を背けるな」
「え? 違うの? そうなると他に考えられるのは、甲冑の似合う男らしさとか、大剣を振う力強さとか」
「恐らく『頭がない=バカ』だからじゃな」
「言ったぁー! 僕が必死に目を逸らしていた事実を秀吉が包み隠さず言ったぁー!」
「だったら最初から誤魔化さなければいいだろうに」
まさか明久が試験召喚システムからもバカ扱いされてたとはな。
「じゃが、こうして見る限りは以前の召喚獣よりも強そうではないか。武器も金属のようじゃし、鎧もつけておる」
「そ、そうだよね。前よりは強そうだよね」
「そうでもないぞ明久。俺からすれば弱点が追加されただけにしか見えんぞ」
「どういうこと斗真?」
「その取り外しができる頭が問題だってことだろ。戦っている最中に頭が取れたらどうなる?」
雄二は俺の言った弱点に気付いたのか、地面に転がっている召喚獣の頭を指差した。
「・・・・・・狙われるね、確実に」
「そうじゃな」
「それを抱えたまま戦うとなると不利にしかならんぞ」
「そういうことだ。つまり明久の召喚獣は常にどちらかの手で自分の頭を抱えないとならない。片腕しか使えないなんてハンデもいいところだな」
「う・・・・・・。そういうことか・・・・・・」
いくら装備が向上されたところで弱点が増える上に両手が使えないとなれば強くなったとは言えないしな。
俺達がそう騒いでいると、鉄人先生の悪夢から目覚めたクラスメイトが数人こちらにやってきた。
「吉井、さっきからなんか面白そうなことやってるな」
「これ召喚獣か? 本質や特徴がどうとか言ってなかったか」
「なるほど。だから吉井の召喚獣は頭がないのか」
明久からすればコイツらにだけは言われたくないだろう。
「そう言うのならそっちも呼び出してみなよ。きっと僕のより酷い召喚獣が出てくるからさ」
明久がそう返すと、三人は揃って口の端を歪めて嫌な笑みを浮かべた。
「おいおい吉井。そんなことを言ってもいいのか?」
「俺たちの召喚獣がバカ日本一のお前に負けるわけないだろ?」
「俺の本質はなんと言ってもジェントルマンだからな。酷い召喚獣が出てくるわけがない。いいか、見てろよーー」
「「「
・・・・・・ズズズズズ ←ゾンビ登場
・・・・・・ズズズズズ ←ゾンビ登場
・・・・・・ズズズズズ ←ゾンビ登場
成程。コイツらの本質は腐ってるからゾンビか。
「それのどこがジェントルマンなんだ?明らかに真逆のもんになってるだろうが」
「こ、怖いです明久君・・・・・・っ!」
「あ、アンタたち! その汚いものを早くしまいなさいよっ!」
自分の本質を汚いと言われ、三人は肩を抱き合って泣いていた。
「しかしまぁ、これはこれで面白いもんだな。秀吉はどんな召喚獣なんだ?」
「んむ? ワシか? そうじゃな・・・・・・。ワシの特徴と言えばやはり演劇じゃからな。妖怪ではないが、舞台で有名なオペラ座の怪人あたりが妥当じゃろうか」
「いや、秀吉は可愛らしいから多分そっちの方だと俺は思うけどな」
「むぅ。斗真よ、それはあんまりではないかの。まぁよい、早速召喚してみようぞ。
・・・・・・ポン ← 猫又登場
「へぇ〜。猫のお化けか。可愛いね。秀吉に良く似合ってるよ」
「どうやら秀吉の特徴は『可愛らしい』ということらしいな」
「つ、ついにワシは召喚システムにまでそんな扱いを・・・・・・」
「秀吉、そう落ち込むなよ。これはこれで秀吉に合っているから元気だせって」
俺は自身の召喚獣にショックを受けている秀吉の肩に手を置きフォローした。
「また木下はそうやってアキを誘惑して・・・・・・!」
「わ、私だって負けませんっ」
秀吉の召喚獣を見て対抗心を燃やす女子二人。別に秀吉は明久を誘惑させる為に呼んだんじゃないんだが
「明久君、見ていて下さいっ。私も可愛い召喚獣を出して見せますっ」
「あ、うん。楽しみにしてるよ」
「はいっ。頑張ります」
姫路さんのことだから、おそらく天使か女神が出てきそうかな。
「それじゃいきます。・・・・・・
・・・・・・ボンッ ← サキュバス登場
「きゃぁあああーっ!? あ、明久君っ! 見ないで下さいっ!」
「くぺっ!?」
召喚獣を出した瞬間、姫路さんは明久の首を180度回転させた。普段は大人しい姫路さんにそれほどの力があったとは
「す、凄い召喚獣ね・・・・・・。・・・・・・特に胸が」
「そこまで露出が多いわけでもないのに、随分と大きさが強調されているもんだな」
「とにかく上着を・・・・・・あぅっ!通り抜けちゃいます・・・・・・っ!」
「しかし姫路さんの召喚獣は凄いな。俺としてはこのままずっと見ていたー痛だだだだ!」
「斗真。何故お主は姫路の召喚獣に見惚れておるのじゃ」
姫路さんの召喚獣を見てデレデレしている俺を見てヤキモチを妬いたからか秀吉が顔をムッとしながら俺の耳を強く引っ張ってきた。
「・・・・・・・・・・明久・・・・・・っ!、倒れている場合か・・・・・・っ!」
明久の隣にいたムッツリーニが鼻血で顔を真っ赤に染めながらも必死にカメラを渡そうとするが、いくらシャッターを切ってもレンズが血で覆われてるから無駄なんだけどな。
「姫路さん。隠したいならフィールドから離れた方がいいよ。俺が展開した有効範囲から出れば自然と消えるから」
「あ・・・・・・。は、はいっ。そうしますっ」
姫路さんは俺の言葉に頷くと大急ぎでフィールドから離れて、召喚獣が消えるのを確認してすぐさま戻ってきた。
「災難じゃったな、姫路」
「うぅ・・・・・・。酷いです・・・・・・。あんな格好だなんて恥ずかし過ぎです・・・・・・」
顔を真っ赤にした姫路さんは恥ずかしさのあまり泣きそうな顔になっていた。
「だが、そうは言ってもアレが姫路の本質のようだからな。仕方がないだろ」
「わ、私の本質って・・・・・・?」
「え、えっとね・・・・・・。その、なんというか・・・・・・」
「そ、そうじゃな・・・・・・。言いにくいことじゃが・・・・・・」
「胸がデカいってことだろ」
「うわぁああんっ!」
雄二。そこは姫路さんに気を使えよ。
「そ、そんなことはないですっ! 確かに私は全体的にちょっと太ってますけど、特徴になるほど大きくなんて全然ないですっ!」
「そう怒らないでよ姫路さん。俺から見たら姫路さんはそんな太ってないしさ。寧ろ胸が大きくて羨ましー痛だだだだ!」
「よすんだ姫路さん! それ以上言えば特定の誰かを傷つけることにあれ? 急に暗くなったような?」
「ちょっと斗真!何スケベなことを言おうとしてるのよ!」
「アキ。言いたいことがあるのなら聞くわよ?」
俺はいつの間にかFクラスに来ていた優子にほっぺをつねられ、明久は島田さんに頸動脈を押さえられていた。
「痛ってぇ〜な。ってか優子。なんでお前がここにいるんだ?Aクラスは夏期講習を受けてるんじゃなかったのか?」
「今は休憩時間だから抜け出してここに来たのよ。全く何でか知らないけど面白そうなことをしてるみたいね」
「あ、ああ実はなー」
俺が優子に召喚獣がオカルト仕様になっているのを話すと
「ふーん。だから秀吉の召喚獣は猫又になっていたのね。もう秀吉ったら、アタシがいない間に斗真を誑かさないでよ」
「姉上。ワシは斗真を誑かしてはおらぬぞ」
「どうだか。ねぇさっき瑞希の召喚獣がどうだか話してたみたいだけど瑞希の特徴はなんなのかわかるの?」
「ああそれなんだが。外見の特徴はおいておくとして、あと他に考えられる特徴としては『大胆』ってところか? なにせサキュバスだからな」
「大胆、ですか?」
「ああ。思えば姫路にはそういうフシが見られたからな。この前明久と帰った時にも『襲いかからないように我慢します』とか言っていたし」
「そう言えば以前、学園祭の打ち上げでも明久を押し倒しておったな」
「そういったところは確かに大胆だね瑞希って」
「ち、違いますっ。あ、あれはその、思いあまってというか、勢いというか、とにかく、その・・・・・・」
姫路さんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯く。まあ俺からすればそんな恥ずかしいことじゃないと思うけどな。
「ふふっ。瑞希ってば、可哀想に。そんなに大きな胸をしているからあんな格好の出てきちゃうのよ」
「うぅ・・・・・・。あんまりです・・・・・・」
「ちょっと美波。瑞希を苛めるのは感心しないわよ」
「でもその点、ウチなら何の心配もないから大丈夫よ。きっとそういうエッチなのじゃなくて、妖精とか女神とか戦乙女とか、そういった可愛いのが出てくるはずよ」
「折角だし、優子も試しに召喚してみるか?」
「そうね。アタシの召喚獣がどういう風になってるか気になるから召喚してみようかしら」
「じゃあ早速出して見たらどうだ。今俺が腕輪の力でフィールドを展開してるからいつでも出せるぞ」
「じゃあ見てみようかしらー
「ウチだって負けられないわ見てなさいー
・・・・・・ポン ← 化け猫登場
ゴゴゴゴゴ ← ぬりかべ登場
優子はともかく、島田さんの召喚獣はアレだから思わず笑ってしまいたい。
「・・・・・・ちょっ、なんで秀吉が猫耳でアタシが猫そのものなのよ!」
「多分、理由はアレだな・・・・・・」
「なによ、アレって?」
「優子の本質は『猫を被る』だから猫そのものなんじゃないか」
「なんですって?」
「だって、優子は学校じゃ優等生として振る舞っているけど、自宅じゃ下着姿で乙女小説を━━ま、待て!その関節はそっちには曲がらなー」
俺は優子のトップシークレットを口に出してしまい、優子に関節技を掛けられてしまった。
一方明久はというと
「・・・・・・ねぇ、アキ」
「な、なにかな美波」
「この召喚獣、ウチに何を言いたいのかしらね?」
「な、なんだろうね?」
明久は必死に誤魔化そうと頭を振り絞るが
「そ、そうだっ! きっと、美波とぬりかべは硬いってところが似て・・・・・・いて・・・・・・」
明久は咄嗟に墓穴を掘ったことに気付くが
「へぇ〜。ウチが硬いって、どこがかしら?」
「うん・・・・・・。きっとね・・・・・・。胸が硬いとあがぁっ! そ、そうだっ! 拳だよ! 美波も拳が硬かったんぎゃぁああっ!」
「拳もって何よ! 触ったこともないクセに! アキのバカぁーっ!」
結局明久はいつものように島田さんに殴られる羽目になってしまったのだった。
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