優子が教室に帰った後、俺は優子によって外された関節を秀吉に戻してもらい、次に控えてる奴に声を掛ける。
「それじゃあ次はムッツリーニだな」
「ムッツリーニよ。お主はどんな召喚獣なのじゃ? まだ確認しておらんじゃろう」
そう言われたムッツリーニは止血を終えると、スクッと立ち上がり召喚獣を呼び出す為のキーワードを口にする。
「・・・・・・・・・・
ムッツリーニが呟くと、フィールドから顔色の悪いタキシード姿の少年が現れる。見た目からしておそらく
「なるほど。確かにいつも血を欲しているイメージだからな」
「若い女が好きという点も酷似しておるしの」
ムッツリーニの召喚獣はヴァンパイアか。確かにムッツリーニにはピッタリだ。
「じゃあ次は俺が出してみるよ。一体どうなるやら・・・・・・」
「斗真はきっと死神とかそんなんじゃないかな」
「うむ。斗真は点数が姫路に次いで高いからの。きっと強そうなヤツが出てくるんじゃなかろうか」
「おいおい。あまり過度な期待はしないでくれよ。じゃあ早速ー
俺が召喚獣を喚び出すと、フィールドには等身大の俺が出てきたのだがどういうわけかムッツリーニと同じ様にタキシードに身を包んでいる。違いがあるとすれば背中に12枚の羽が生えているくらいなんだが
「あれ?なんで斗真の召喚獣は片方が天使の羽でもう片方が悪魔の羽になっているの?」
「なんて言ったらいいでしょうか。東條君は天使か悪魔かわかりにくいですね」
「じゃあ東條の召喚獣は一体何になるのかしら?」
「・・・・・・・・・・おそらくこれはルシフェルかもしれん」
「ルシフェル?それって神に逆らって天使から悪魔に堕天したって言うあれだろ?」
「(こくり)・・・・・・・・・・大天使ルシフェル。またの名をサタンとも呼ばれている」
「つまり俺の召喚獣は堕天使ってことか。ん? そうなると俺は光と闇を持ってるってことになるが結局コイツは何が言いたいんだ?」
俺がどういう本質なのか考えていると、秀吉はわかったのかその答えを口に出す。
「おそらくじゃが、斗真の本質は『両性愛』じゃないかの?」
「両性愛?それって同性も異性も性的対象として見る人のことですよね?」
「うむ。斗真はその両性愛じゃから天使の部分が女好きで悪魔の方が男好きという意味合いじゃないかの」
「なるほどな。確かにそれなら辻褄も合うし、斗真にはピッタリだな」
「あ〜。なんというか、俺としては半分納得するけどもう半分は不満かな」
まさか俺の本質をそのまま召喚獣に反映されてしまうとは。ま、ここにいる皆は俺の性癖を受け入れてくれてるから別に問題ないか。
「ここまで来ると雄二も気になるよね。召喚してみてよ」
「ん? そうだな・・・・・・ここまで来たからには俺も出さないわけにもいかないしな」
「ワシらと違って雄二の性格は攻撃的じゃからな。戦闘向きの妖怪が出るやもしれんのう」
「確かにそうだね。おっきな金棒を持った鬼とか、ゴツいチェーンソーを持ったジェイソンとか、もしかしたら凄い鎌を持った死神が出てくるかも」
「或いは俺みたいに悪魔の可能性も考えられるな」
「そんじゃ行くぞっ・・・・・・
雄二の喚び声に応じて召喚獣が現れたが、どういうわけか鍛えられた肉体と、引き締まった肉体と、筋肉に覆われた肉体だった。
「また手ぶらじゃないかぁーっ!」
装備は何もしておらず、上半身裸でズボンだけを履いている雄二がそこに突っ立っていた。
「っていうか、雄二の召喚獣は今までのよりも退化してない!? 装備がズボンだけじゃないか!」
「しかも何の特徴もなく雄二そのものが出てきおったな。これでは服装以外雄二と区別がつかん」
「雄二にしては大胆だな。おそらくこれを霧島さんが見たら大喜びするのは間違いないぞ」
「ちょ、ちょっと目のやり場に困りますね・・・・・・」
上半身裸の雄二の召喚獣から目を背けるように姫路さんは窓の外を見ていた。
「雄二・・・・・・。とりあえずその見る人全てを不幸にする召喚獣を早くしまってよ・・・・・・」
「わかっている。こんなもん、俺だって見たくもない」
「じゃが、雄二の召喚獣は結局何の妖怪なのじゃ? これではさっぱりわからんぞ」
「・・・・・・・・・・ドッペルゲンガーとか?」
「或いはキングコングを擬人化したヤツかな?」
「おいっ!」
二人は雄二の召喚獣が何なのかわからないみたいだ。まぁ、そういう俺もこれが何の妖怪なのか全くわからんが
「三人とも何を言ってるのさ。これは最近日本で確認された新種の妖怪『坂本雄二』じゃないか。醜い容姿と汚い性格で美人の幼なじみを騙すって話の」
「明久。召喚獣を喚び出せ」
「ん? 別にいいけど。
「目指せワールドカップ!(ガコッ)」
「あがぁっ! 蹴ったね雄二!? 僕の召喚獣の首をサッカーボールに見立ててゴミ箱に蹴り込んだね!? なんてことをしてくれるのさ!」
「そう怒るな明久。よく言うだろうが。『友達はボールだ』って」
「それを言うなら『ボールは友達』じゃないの!? 前後の順番入れ替えたらただの苛めの現場だよ!」
まったく、余計な一言を言った明久もそうだが。雄二も仕返しとはいえやり過ぎだろ。
「そもそも俺はお前を友達だと認めてはいないがな」
「だったら蹴るな!」
明久が雄二に蹴られた召喚獣の首を回収しようとすると
「んむ? 雄二。お主の召喚獣の様子が変じゃぞ?」
「お? 本当だな。何が起きるんだ?」
雄二の召喚獣がブルブルと身震いをし始めると、その口は大きく裂けていき、全身から凄い勢いで毛が生えてきた。
「「きゃぁあああーっ!!」」
「・・・・・・・・・・狼男」
「なるほど。そういうことか」
雄二の召喚獣が狼男に変貌したところからして、コイツの特徴は野性ってことか。
「で、でも、満月でもないのに変身なんておかしくないですか?」
「さぁな。なんか丸い物でも見たんじゃないのか? 伝承なんて曖昧なものだからな。そこらへんは適当なんだろ」
さっきは召喚獣の頭に反応して変身したからな。おそらく調整が上手くいってないのは間違いなさそうだ。
「それはそうと、この召喚獣はきちんと次の試召戦争までには直るのか? こんなのクラス間の勝負なんてやったら妖怪大戦争になっちまうだろ」
「確かに、プライバシーを晒してるに等しいし余所に知られでもしたら色々と厄介になるな」
「そ、それは困ります・・・・・・。怖いのも困りますし、私の召喚獣は恥ずかしいですし・・・・・・」
俺や明久は問題ないが、姫路さんや島田さんからすれば自身のコンプレックスを晒してるようなものだから迷惑だろうな。
「召喚システムの調整については俺もよくわからん。学園長なら何か知っているかもしれない」
「確かにその辺は鉄人よりもババァに聞いた方が良さそうだな。なんたって召喚システムの開発者様だからな」
「そうだね。学園長に聞いてみようか」
俺が腕輪をOFFにすると、雄二と明久はその場から立ち上がり、ババァのいる学園長室へと歩き出すが
『キサマらっ! どさくさに紛れて脱走か!』
「しまった雄二! 気付かれたよ!」
「走れ明久! 学園長室に逃げ込めばこっちのもんだ!」
「了解!」
明久達はその場をすぐさま離れて行き、ババァがいる学園長室へと逃げていったのであった。
「まったく。目を離した隙にこれとは、後でたっぷり指導をしてやらないと・・・・・・」
「西村先生。あの二人は俺が呼び戻してきます。俺もババァーじゃなかった学園長には聞きたいことがありますから」
「東條!学園長に対してなんて呼び方をしてるんだ!」
「お言葉ですが。俺だけじゃなく明久と雄二もそう呼んでますけど何か問題がありますか?」
「大ありだ馬鹿者が!あの二人だけじゃなく貴様にも指導が必要だな。鉄拳をくらわせてやるから歯を食い縛れ!」
「ちょっ!? それはいくらなんでもあんまりじゃないですか! 一先ず俺も学園長のところへ向かうとするか(ダッ)」
「待て東條! 逃げるでない!」
俺は全力で教室から出ると、二人がいるであろう学園長室へ向かっていくことに
「んで、どうなんだ学えーーババァ」
「教えて下さい、学えーーババァ」
「どういうことか、詳しく聞かせてもらいますよババァ」
「・・・・・・どうしてアンタらはアタシを素直に学園長と呼べないのかねぇ・・・・・・」
俺達が問い詰めると、ババァは俺達がちゃんと呼ばないことに呆れていた。俺達は学園長をババァと呼んでいるがこれは普通に考えたらアウトだ。
「すいません。学園長」
「はンッ。今更言い直しても教えてやるもんかい。このクソガキどもが」
「そんな!? 酷いですよババァ長!」
「その呼び方は今までで一番酷いさね!?」
「おい明久。巷で若いと評判の学園長(笑)にあまり失礼な発言をするな」
「アンタも充分失礼だよクソジャリ」
「まぁ落ち着いて下さいよ老いぼれ。二人は冗談で言ってるたけですから」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろクソガキが!」
学園長は相変わらずノリが悪いな。真に受けなくてもいいだろうに。
「んで、ババァ。正直なところどうなんだ。きちんと復旧するのか?」
「はぁ? 復旧? 何を言ってるんだいボウズども。それだとまるで召喚システムに欠陥があるみたいじゃないか」
学園長はまるでバカを見るような目で俺達を見ていた。この二人はともかく俺までそんな目で見られるのはあんまりだ。
「だって、まるでも何も、見るからに調整失敗してるじゃないですか」
「さっき鉄人先生から聞いた話によれば生徒の本質によって出されるみたいですね。これは一種の個人情報の漏洩だと俺は思いますが」
「いいや、違うね」
学園長は首を振るが、どう誤魔化す気だ?
「アレはちょっとした遊び心さ」
「遊び心どういうことですか?」
「学園長。まさか・・・・・・」
「今は夏だからねぇ。肝試しにはもってこいの季節だろう?」
「は?」
「つまり、ババァは肝試しの季節に合わせて召喚獣も妖怪仕様にカスタマイズしたと言いたいのか?」
「そうさ。あれは夏休みでも登校する可愛い生徒たちへの、アタシからのささやかなプレゼントさ」
「プレゼントって、そんなバカな・・・・・・」
「学園長。それが本当だとしたら俺達はともかく、他の生徒達からすればありがた迷惑なんですけど・・・・・・」
「ん〜・・・・・・そうか。まぁ、学園長がそう言うのならそういうことにしておくか」
「え? 本当のことを聞かないの?」
「いや、雄二のことだから何か考えがあるんだろ」
「ああ。別にババァに『実は調整失敗だった』なんて言わせたところでメリットはないだろ。それより、学園長のありがたい心遣いに甘えさせてもらおうぜ」
「甘えさせてもらうって・・・・・・それってつまり、さっき言われたように召喚獣を使って肝試しをやるってこと?」
「ああ。学園長もそれを考えた上でのプレゼントって言ってるんだろ? 俺たちに召喚獣の異変が伝わった以上は、世間体を考えると学園側も何もしないわけにもいかないだろうしな」
雄二が視線を送ると、学園長ははぁっと小さく嘆息して頷いた。
「やれやれ・・・・・・。本当にアンタはこういうことにだけは頭が回るねぇ・・・・・・」
雄二は基本楽したい時だけ才能を発揮するからな。学園長からしたらそれをもっと他の面でも使って欲しいだろう。
「つまり、試験的なシステムとして運営してる以上、学園側は召喚システムの調整を失敗したとは言いたくないってことだ。隠し切るならそれで良かったんだが、生徒にばれた以上はそうもいかない」
「ああ、なるほど。だから肝試しをやることで『元から計画していた出来事』にしようってわけか」
「そうすれば、学園のPRにも繋がるし、一石二鳥ってところだな」
「じゃあ、そういうことで残り二日の補習期間は肝試しってことでいいんだよな?」
雄二は嬉しそうな顔をして学園長にそう問いかける。そうなればあの暑苦しい教室での補習も潰れるから俺としては悪くないが学園長はそれを許可してくれるのか?
「いいや、ただの肝試しなら却下さね。あくまでも召喚獣は学習意欲向上の為のツールだからね。見た目だけで楽しむのは授業の一環とは認めないよ」
そこだけは認めないと学園長は首を横に振るが
「それならチェックポイントでも作って、そこで勝負でもさせるか。それなら文句ないだろ?」
「そうさねぇ・・・・・・。ルール次第だけど、それなら認めてもいいかもしれないね」
「よし。決まりだな」
「じゃあ、早速皆に説明しないと」
こうして、学園と召喚システムを使った一風変わった肝試しが行われることとなるのであった。
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