バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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第四問 準備

 『おーい! 誰かそこの釘をとってくれー!』

 『暗幕足りないぞ! 体育館からひっぺがしてこい!』

 『ねぇ、ここの装飾って枯れ井戸だけでいいの?』

 

学園長から許可を貰い、残り二日間の補習が肝試しとなった今、準備を進めている。

 

 

 「これはまた、凄い騒ぎじゃな」

 

 「うん。雄二が鉄人の補習をサボる為に本気で手を回していたからね」

 

 「アイツは自分が楽をするためならば頭をフル回転させるからな。才能の無駄使いって言葉がお似合いだよまったく」

 

 「それにしても、Aクラスまで協力してくれるとは思わなかったよ」

 

 今回の肝試しに使う教室はA〜Dクラスで、折角やるなら広さがあって涼しさを演出できる教室を、という理由で提案したのだが、意外なことにやるならばと各クラスは喜んで使用させてくれたのだ。

 

 「Aクラスとてワシらと同じ歳の高校生じゃ。勉強ばかりでは息が詰まるじゃろうからな。期末試験も終わったばかりじゃし、渡りに船と言ったところじゃろ」

 

 「そりゃそっか。遊びより勉強が好きな人はいないからね」

 

 「そうだね。坂本君から聞いた時は疑問に思ったけど召喚獣がオカルト仕様になったと知ったからには面白そうだし乗らないわけにはいかないからね」

 

 「ん?アランか。お前いつの間にここにいたんだ?」

 

 「さっきからここにいたよ。斗真達が楽しそうに話してたからあまり割り込まないほうがいいかなって」

 

 「ああそうだったか」

 

 「そんなことはないよ。如月君も僕たちの友達なんだから別に問題はないのに」

 

 「うむ。如月はワシらの仲間じゃからな。気兼ねなく一緒に楽しもうぞ」

 

 「ありがとう。二人共」

 

 俺達がそう話してる一方女子達はというと

 

 「わ、私はできれば、肝試しよりはお勉強の方が・・・・・・」

 

 「だ、大丈夫よ瑞希。どうせ周りは作り物なんだし、お化けはウチらの召喚獣なんだから、怖いことなんて一つもないわ」

 

 「それはそうですけど、それでもやっぱり苦手です・・・・・・」

 

 姫路さんは肝試しをすることに苦手意識がありそうだな。島田さんも諭すように大丈夫だと言ってはいるが内心はビビっているに違いない。

 

 「あれ? 美波ってこういうの苦手だっけ?」

 

 「そ、そんなことはないわよ! こんなもの、怖くともなんともないから目を瞑っていても平気なんだから!」

 

 「いや目を瞑る時点で怖がってると思うんだが・・・・・・」

 

 「よ、余計なことを言わないで!と、とにかくウチは怖いわけじゃ無いからね!」

 

 島田さんは俺や明久から見てもわかるくらい動揺している。これはちょっと揺さぶっただけでどんな反応するか想像に容易い。

 

 「そう言えば、噂で聞いたんだけど」

 

 「な、何よ」

 

 「この学校の建っている場所って・・・・・・実はワケありらしいよ」

 

 「わ、ワケありってなんですか・・・・・・?」

 

 明久は島田さんをからかおうと話をし始めると女子二人はわかりやすいくらいビクビクと体を震わせる。

 

 「あははっ。それはねーー本当にお化けが出るんだってさぁああああっ!」

 

 「きゃぁあああっ!」

 

 「いやぁあああっ!」

 

 「みぎゃぁああっ!」

 

 明久が話のオチを言うと、姫路さんは悲鳴を上げ、島田さんは声を出しながら明久の頸椎にダメージを与え明久も悲鳴を上げる。これに関しては明久が怖がってる二人をからかったからその報いとしておくか。

 

 「島田さん。吉井君が危険な状態になってますから離れてやってくれませんか」

 

 「ご、ごめん美波・・・・・・。冗談だから、離れて・・・・・・くれないかな・・・・・・?」

 

 

 「う、うそ・・・・・・っ! だって、ウチには聞こえてくるもの・・・・・・!『呪います、殺します』って・・・・・・」

 

 「あはは。美波ってば怖がるあまり幻聴まで聞こえちゃったみたいだね」

 

 「そうでもないぞ明久。向こうを見てみろ(スッ)」

 

 「え?」

 

 明久が俺に言われた通り指差した方向を見てみると

 

 

 『吉井明久・・・・・・! お姉様と抱き合うなんて、どこまでも憎たらしい男です・・・・・・!美春に傷を負わせた東條諸共呪います・・・・・・!殺します・・・・・・!』

 

 

 教室の入口にはDクラスの清水さんが俺と明久を妬ましく見ていた。どうやら明久は島田さんと仲が良いことに、俺には前回の試召戦争で自身に痛みを与えたことを怨んでるみたいだな。

 

 

 「斗真よ。どうやらお主は清水から憎まれてるみたいじゃが」

 

 「どうせただの逆恨みに決まってるよ。覗き騒動の原因を作ったのは彼女だし、試召戦争の時も島田さんのプライバシーを侵害したからその痛みを体でわからせただけなんだしさ」

 

 「島田さんを愛することは悪くないけどだからって側にいる吉井君を怨むのはおかしいよね。島田さんが勉強会の時に教えてくれたんだけど、吉井君は去年島田さんを助けたからそれで彼を信頼してるのにどうして彼女はそれをわかってくれないのかな」

 

 「清水さんは男を一方的に有害扱いしてるからな。俺達がどう言ったって彼女の耳には届かないよ」

 

 「そうだね。その偏見を見直してくれたら手助けしてあげてもいいのに・・・・・・」

 

 「まあまあ二人とも。清水さんに関しては僕にも非があるんだしさ。今は肝試しを楽しもうよ」

 

 「明久がそう言うのなら仕方ないな」

 

 「・・・・・・・・・・明久」

 

 「「きゃぁあああーっ!」」

 

 ムッツリーニが突然現れ声を掛けると姫路さんと島田さんは悲鳴を上げて明久の腰に抱きつくが、力が強すぎたのか明久の腰から聞こえてはならない音が響いた。

 

 「おいムッツリーニ。お前が急に声を掛けたから姫路さん達は驚いてるぞ」

 

 「だ、誰かと思ったら土屋君ですか・・・・・・。驚かさないで下さい・・・・・・」

 

 「ま、まったくよ・・・・・・。おかげでアキの腰が変な方向に向いちゃったじゃない」

 

 「・・・・・・・・・・ごめん」

 

 「吉井君の腰が曲がったのは貴女達が原因なんですけどね」

 

 申し訳なさそうに謝るムッツリーニ。

 アランも注意はしたが、とばっちりを受ける明久も気の毒過ぎるな。

 

 「それで、ムッツリーニ。僕に何か用?」

 

 「・・・・・・・・・・向こうのロッカーを動かしてほしい」

 

 ムッツリーニがAクラスの隅にあるロッカーを指差す。一番設備の良いAクラスの教室に置いてあるから収納スペースは大きく、鍵まで付いている。

 

 「わかったよ。それじゃ、召喚許可を」

 

 「・・・・・・・・・・もう頼んである」

 

 ムッツリーニの後ろには、世界史の田中先生がいる。雑用をする際は先生の許可はスムーズに取れるから明久からすれば助かるだろうな。

 

 「オッケー。んじゃ、試獣召喚(サモン)っ」

 

 明久が喚び出すとフィールドには等身大の召喚獣が現す。その為手足が長く、作業をするには便利に違いない。

 

 「このロッカーをどけたらいいんだね?」

 

 「・・・・・・・・・・(コクリ)」

 

 指示を受けた召喚獣がロッカーに手を掛けるとその拍子に召喚獣の頭が外れてしまった。

 

 「「・・・・・・・・・・っ!?」」

 

 「成程。吉井君の召喚獣はデュラハンか。でもこれはいざ戦うとなると不便だね。一応聞いておくけど吉井君の召喚獣がデュラハンなのはひょっとして・・・・・・」

 

 「お前の予想通り、明久がバカだからだ」

 

 女子二人が息を飲む様子で見ている一方、アランは冷静に分析する。明久は昨日も同じことを言われたからか気にしてるようだ。

 

 「頭が外れちゃうのは不便だなぁ・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・ガムテープで固定するとか」

 

 「そうしたところでまた貼り直す必要があるから面倒だ。明久、頭は俺が持っておくから安心して作業しろ」

 

 「うん。ありがとう斗真」

 

 俺が明久の召喚獣の外れた頭を持ってるのを確認すると、明久は指示通り手前のロッカーを動かし始めるのであった。

 

 「本当に吉井君の召喚獣はこういう時になると頼りになるね。僕らも物理干渉ができたらありがたいのに」

 

 「そうは言うがなアラン。召喚獣は人の数百倍もの力を持ってるし、明久はそれを使って鉄人先生を打ちのめしてるんだから使い方を誤ると禄なことにならんぞ」

 

 「わかってるよ。ただそれくらい力を持ってるなら欲しいなと思っただけさ」

 

 「それはそうとアラン。お前の召喚獣はどうなんだ?アランのことだから予め把握している筈だからな」

 

 「流石に気づいていたか。僕も昨日高橋先生から許可を貰って確認したんだけど、これが思いの外中々なものが出てきてね」

 

 「如月よ、もしお主が良いのならここで見せてくれても構わんかのう?」

 

 「明久が向こうのロッカーを運ぶ為にフィールドが展開されてるし、出してみたらどうだ?」

 

 「そうだね。肝試しに参加する以上出さないといけないから見せてあげるよーー試獣召喚(サモン)

 

 アランが召喚獣を喚び出すとフィールドに等身大のアランの召喚獣が現れた。その召喚獣はスーツを着こなしては賢そうな眼鏡をかけており、背中には天使の羽が付いていた。アランは知略家タイプだからおそらくこいつはー

 

 「斗真よ。如月の召喚獣はお主のヤツと似ておるようじゃが、これは一体なんなのじゃ?」

 

 「アランのはおそらく大天使ウリエルだよ。神話じゃ知略に長けていて、困っている人には知恵を授けるって話があるからな」

 

 「つまり如月の本質は知識人ってことか。如月にはお似合いじゃな」

 

 「あはは。自分で言うのもなんだけど、僕にはピッタリの召喚獣だね」

 

 「さり気なく自慢するな」

 

 「ところで斗真の召喚獣はどうなんだ?まさか、自分だけ見せないなんてことを言うんじゃないだろうね?」

 

 アランは楽しそうな目をしながら俺に尋ねる。まあ自分達だけ見せてもらいながら何も出さないわけにはいかんからな。

 

 「わかってるよ。ここまで来たからには俺も出すよ。ーー試獣召喚(サモン)っ」

 

 フィールドには等身大の俺に天使と悪魔の羽が付いている召喚獣が出現した。

 

 「ん?斗真の召喚獣はひょっとしてルシフェルかな。秀吉君、どうして斗真の召喚獣が堕天使かわかるかい?」

 

 「うむ。斗真はパイじゃからの。そんなわけで斗真はルシフェルなのじゃ」

 

 「成程ね。斗真にはお似合いの召喚獣かな」

 

 「俺だって天使なのは嬉しいけど中身がアレじゃあ台無しだろ」

 

 「そう怒らないでよ斗真。本質がどうであれ強い召喚獣なのは確かだからそれだけでもいいじゃないか」

 

 「如月の言うとおり、斗真にはお似合いじゃ」

 

 秀吉は昨日俺に似合ってると言われた趣旨返しにニコニコしながら褒める。ったく、そんなに根を持たなくてもいいだろうが。そう俺達が話し合っていると

 

 「痛ぁつ! 何!? 突然頭に激痛が!?」

 

 「ん? どうした明久。一体何があっーって、いつの間に明久の首がなくなってるし!?」

 

 明久が突如悲鳴を上げたので振り向くと直接危害を加えられてるわけでもないのに痛そうにしていた。もしかしてと思い預かっていた頭を確認すると、手元には頭がなくなっており。辺りを見渡すと

 

  「ブタ野郎のクセにお姉様の擁護を受けた罪・・・・・・死して償うのです・・・・・・!」

 

 明久の召喚獣の頭は清水さんが俺から引ったくっていて、地面に置き思いっきり踏みつけていた。

 

 「おい清水さん!何をやってるだよ!そんなことしたら明久が危ないだろうが!」

 

 「お黙りなさい!このブタ野郎は死して償うべきなのです!邪魔をしないで下さい!」

 

 どうやら明久を本当に殺してしまいそうだな。こうなった以上止めないわけにもいかない。

 

 「チッ!仕方ない。秀吉、俺が清水さんを取り押さえるから明久の頭を取り返してくれないか」

 

 「わかったのじゃ」

 

 俺と秀吉が明久の頭を取り戻そうと近づくと

 

 「美春に近づかないでくださいーー試獣召喚(サモン)っ!」

 

 「! しまった!彼女は明久と同じ仕様になってたんだ!」

 

 清水さんは召喚獣を喚び出すと俺に攻撃をしてきたので咄嗟に躱す。清水さんは明久と同じ観察処分者だから物理干渉ができたのだ。こうなったら

 

 「清水さんには悪いけど力ずくで黙らせるしかないな」

 

 俺は先程出していた自身の召喚獣を前に出し、戦闘態勢をとると清水さんもそれに負けじと自分の召喚獣を前に立たせる。

 

 「ムッツリーニよ。清水の召喚獣は何の物の怪かわかるかの?」

 

 「・・・・・・・・・・迷ひ神」

 

 「確か人を惑わせる妖怪だったね。一説には道に迷って果てた人の魂を道連れにしてるって話もあるからね」

 

 「如月よ。どうしてそんなに詳しいのじゃ。妖怪のことに関しては勉学とは繋がりがないはずじゃが」

 

 「昨日、召喚獣を確認する際久保君も同席しててね。久保君が出した召喚獣が清水さんと同じだったからその時に調べたのさ」

 

 「なるほど。・・・・・・人の道に迷って、仲間に引きずり込もうというわけじゃな・・・・・・」

 

 どうやら久保と清水さんは同じ同性愛者だから迷い神なのか。明久は何故久保が清水さんと同じなのか気になっているみたいだがそれは後回しにするか。

 

 「待つんだ。東條君、僕も吉井君を助ける為に力を貸すよ」

 

 いざ戦おうとしたその時、久保が俺に味方してくれることに。それに関してはありがたいけどこいつのことだからおそらく

 

 「久保。まさかお前、ここで明久への好感度を上げようなんて考えてるんじゃ」

 

 「それについては後にしてくれたまえーー試獣召喚(サモン)っ!」

 

 久保が喚び出すと清水さんと同じ迷ひ神の格好の久保の召喚獣が現れた。

 

 「ええいこうなったら!お姉様に抱きつかれた自分だけいい思いをしているブタ野郎をここで始末しますわ!」

 

 清水さんは何故かいつも以上に大声を出して宣戦布告してくるが理由は何なんだ。

 

 「聞いたか諸君!異端者吉井明久を処刑する為清水に加担するのだ!」

 

 『おぉーっ!』

 

 しまった!異端審問会を自身の味方につけるために叫んだのか。Fクラスのヤツらは清水さんの叫びに反応し、異端審問会、通称『FFF団』になるとその場に召喚獣を喚び出した。と言ってもコイツらは本質が腐ってるから全員ゾンビになっているが。

 

 「あぁーめんどくせぇな畜生!久保、俺はFクラスのバカ共を片付けるから清水さんを任せたぞ」

 

 「了解した。ここで吉井君を救って恩義を果たしてみせる」

 

 「・・・・・・!?(ブルッ)」

 

 「どうしたのじゃ明久?」

 

 「いや、何故かわからないけど久保君の言葉を聞いたら突然身震いしてしまって・・・・・・」

 

 「吉井君。君は何も知らなくていいから気にしないでね」

 

 「? どういうこと如月君」

 

 明久が一人だけ?マークを頭に浮かべている中ゾンビVSルシフェルと迷ひ神同士の戦いが目の前で繰り広げられ。ゾンビの群れが迫ってくると俺の召喚獣は光を集束させ剣にしてそっからゾンビの群れを斬っていくのだが、その際飛び散った肉片やゾンビの首が散らばってしまったのか

 

 「「「きゃぁああああーっ!!」」」

 

 そのあまりにも凄惨な光景に、その場にいた女子達が悲鳴を上げていた。等身大になっているため戦闘もリアル過ぎるあまり悲惨なことになってしまった。

 

 

 『こっちに来ないで! 試獣召喚(サモン)!』

 『大丈夫かミホ!? 畜生、俺の彼女をよくもビビらせてくれたな・・・・・・! 試獣召喚(サモン)っ!』

 『彼女だと・・・・・・? 今コイツ彼女って言ったぞ! 裏切り者だ!』

 『『『殺せぇぇっ!!』』』

 

 

 あっという間に混乱は広がっていき、先生を中心としたフィールドは阿鼻叫喚の妖怪大戦現場になってしまった。

 

 「・・・・・・秀吉、すまないけどコレを使ってフィールドを消してくれ(スッ)」

 

 「うむ。ーー起動(アウェイクン)

 

 俺は秀吉に黒金の腕輪を渡すと秀吉は腕輪を左腕に付け、腕輪を起動する為のキーワードを唱えると腕輪のフィールドが展開され、それと同時に干渉が生じてフィールドを打ち消したのだ。

 それによってその場に静寂が戻り、ようやく収集が付いたと思いきや

 

 

 「「「お前らうるせぇんだよ!!」」」

 

 

 教室の入り口から怒鳴り声が聞こえたので振り向くとそこにいたのは

 

 「なんだ。変態コンビか」

 

 

 「「誰が変態コンビだごらぁっ!!」」

 

何故かわからんが変態じゃなかった常夏コンビがいたのでそいつらに怒鳴られることとなってしまったのであった。




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