《肝試し。楽しみましょうか木下君》
《そうじゃな。ワシとしては斗真と行きたかったのじゃが》
《仕方ないじゃないですか。東條君は優子さんと組むことが決まった以上諦めるしかありませんよ》
《それはわかっておるのじゃが・・・・・・》
《まぁまぁ気にせず先に進みましょう》
どうやらこの組み合わせは合ってたみたいだな。秀吉はこういったことには慣れているし、玉野さんはお化けに対してはそんな怖がってはいないから心配する必要はないみたいだ。秀吉は本心では俺と組みたかったみたいだがすまなかったな。
「これで問題なく先に進めるね」
「だな。あの二人なら色仕掛けに掛かることはないだろうからな」
「後は向こうがどう出るかどうかだが」
《あら?あなた方はーーそうですか。女の子同士の組み合わせできましたか。それでしたら、わたくしにできることはありませんね。どうぞお通り下さい》
《ちょっと葵。もう一人はともかく、秀吉君は『男の娘』だから間違えないであげてよ》
《真理さん。ワシは普通に男なのじゃが》
《まあいいじゃないですか木下君。ここはお言葉に甘えて先に進ませて貰いましょう》
《うむ。納得いかぬがそうさせてもらうかの》
《じゃあね秀吉君。また後で会いましょう》
そのまま二人はあっさり通されては先へと進んでいく。
「なんだか随分あっさりと通過させてくれたね」
「そうだな。いくらなんでも無抵抗すぎる」
「でもまぁおかげで先に進めたんだし良しとするか」
俺達があっさり通してくれたことに唖然としながら画面に視線を戻すと、姉ちゃん達がいた場所を通過してすぐのところに、常夏コンビの片割れーーモヒカン(常村)がいた。
「なんだろう? 秀吉対策かな? でも、別にさっきの坊主先輩みたいに変な格好もしてないし、特に悲鳴を上げる要素なんて見あたらないけど」
「だがあのモヒカンのことだからきっと碌でもないことをしでかすのは目に見えてるよ」
何度見ても特に仕掛けもなく、普通に立っているみたいだが一体どうやって秀吉を驚かせるつもりなんだ。
《来たか、木下。待っていたぞ》
《なんじゃ? ワシを待っていた? どういうことじゃ?》
《よくわかりませんが、早く済ませてもらいましょうか木下君。私たちは先に進まないといけませんしね》
《そうじゃな。何の用か知らんが、手短に頼むぞい》
《ああ。大丈夫だ。時間は取らせねぇ。・・・・・・いいか、木下秀吉》
《なんじゃ》
画面の中、常村が真剣な顔をしては秀吉に近づいていく。
そして、はっきりと、聞き間違えようのない口調で、秀吉に告げた。
《俺はーーお前のことが好きなんだ》
俺は人生で初めて秀吉の本気の悲鳴を聞いた。
「す、すまぬ斗真・・・・・・。このワシが、あれほどまでにみっともない悲鳴を・・・・・・」
「いや、今のはお前の責任じゃないから安心しろ」
「あれは僕でも悲鳴を上げてしまいそうでしたからね」
「気に病むな秀吉。同性にーーしかもあんなムサい野郎に真剣な顔で告白されたら悲鳴を上げるのも無理はない」
「そうだよ秀吉。悲鳴で済ませただけでも凄いことだよ」
「そうなのじゃが・・・・・・『お前に彼氏がいるのはわかっているけどそれを知った上で書いたんだ』と言って自作のポエムを朗読されたのが一番苦しかったのじゃ・・・・・・」
確かにあれはきつかったな。『お前は俺を照らす太陽だ』なんて気色悪いフレーズが聞こえた時は意識が途切れてしまいそうだった。その場で直接聞かされた秀吉の恐怖は計り知れないものだろうな。
「できれば突破は無理でもせめて相手を消耗させるぐらいはしておきたかったのじゃが」
「確かに状況は難しい所だな。秀吉達を除いて姉ちゃんと小暮先輩を突破できそうなやつはいないし」
「ここで坂本君と代表を出せば行けるかもしれませんが、二人にはAクラスのチェックポイントをクリアしてもらう必要がありますので仕掛けが把握できるまで控えた方がいいですしね」
「そうだな。となると次は俺と優子が行くしかねぇだろうな?」
「待て斗真。あんな色仕掛けがあるにも関わらず行くつもりなのか?」
「心配ねぇよ。さっき優子に手荒なショック療法されたから引っ掛からないし、モヒカンの告白だって秀吉だけを狙ったやつだろうから問題ないよ」
ビクン(秀吉が震える音)
どうやら秀吉はさっきの告白がトラウマになったようだ。
「そうか。ならお前に任せるが引き受けたからには突破してこいよ」
「斗真。期待してるから絶対クリアしてきてよね」
「わかってるよ。じゃあ優子、早速行くとしようか」
「うん・・・・・・。行きましょう斗真」
俺と優子が突入して数分が立とうとしていた。優子は怯えてはいるが悲鳴を上げないよう堪えているのか痩せ我慢しているのか俺の左腕を離さないよう必死に掴んでいる。
「大丈夫か優子。無理なら戻ってもいいんだが」
「へ、平気よ。このくらいは・・・・・・」
「本当か?」
「本当よ。だって斗真が傍にいてくれたら何も怖くないから・・・・・・」
「そうか。でも無理はするなよ。チェックポイントは現国だし最悪俺一人で何とかするからさ」
「うん」
そう話しながら先へと進んでいくと例の場所に辿り着く。そこには露出満点な格好をした姉ちゃんと小暮先輩が立っていた。
「あら?真理の弟君ではありませんか」
「やっほー斗真。優子ちゃんも久しぶりね」
「ああ姉ちゃん。待たせて悪いけど俺達は先に進まないといけないから道を開けてくれないかな?」
「そうですか。折角レオタードを着て待っていましたのに残念ですわ」
「むぅ斗真ったら。でも隣にいる優子ちゃんが結構怯えているみたいだから彼女に免じて通してあげるわ」
「ごめんな姉ちゃん」
「別に構わないわよ。でも行くからにはちゃんと優子ちゃんを見といてあげなさいよ」
「わかってるよ。じゃあ行こうか優子」
「・・・・・・・・・・(こくり)」
俺達は何も問題なく通してもらい、チェックポイントへ進んでいくこととなった。
「あれ? 斗真と木下さん。意外とすんなり通してもらえたね」
「ああ。どうやら斗真の姉は常夏コンビと違って敵対心は持ってはいないようだな」
「そっか。真理さんはどっちかって言うと僕たちと一緒に肝試しを楽しみたいって言ってたからね。でないと肝試しに参加する二年生の女子全員分の浴衣を用意してくれるわけないし」
「何しろ真理さんは常夏コンビとは馬が合いませんからね。後は斗真達がチェックポイントを通過してくれるといいんですが」
「その心配は必要ねぇみたいだ。俺たちが話してる間に斗真と木下姉はチェックポイントに着いたみたいだからな」
「あ、本当だ。じゃあ後はチェックポイントを通過できるかどうかだね」
Cクラス チェックポイント
「それにしても意外ね。葵と真理のところを男子が突破できるなんて」
「生憎、さっきは引っ掛かりそうになりましたが隣にいる彼女のお陰で無事に済みましたので問題ありませんでしたよ」
「なるほどね。葵と真理の魅力に絆されないなんて・・・・・・君、もしかしてブス専」
「な、何ですって!?」
自分はブスじゃないかと言われ優子はカチンときたようだ。
「そうヤケになるな優子。先輩達は俺一人で倒すからここで見ていてくれ」
「え? いいの斗真?」
「俺を誰だと思ってるんだよ。最底辺のFクラスとはいえ優子の彼氏なんだからここで格好いいところを見せないといけないからな」
「随分と言ってくれるわね。バカの分際で三年生を舐めるのも大概にしなさいよ」
「その言葉そのままお返ししますよ先輩」
「なっ!?だったら尚更ここで三年生の力を思い知らせてあげるわ!
「先輩に舐めた口を言ったことを後悔しておきなさい
学年のトップクラスは不在だったのか先輩二人の点数は300点未満みたいだ。先輩には悪いけどここは決めさせて貰うとするか。
「じゃあこっちも行きますとしますか
俺が召喚獣を喚ぶ為のキーワードを言うとフィールドには等身大の俺に天使と悪魔の羽がついた自身をデフォルメした召喚獣が現れる。
「ウソっ!? Fクラスにこれだけの点数を取れる人がいたの!?」
「あ!思い出した!彼は真理の弟君よ。前の召喚大会でウチのクラスの常村と夏川を瞬殺した」
「え!?だとしたら彼があれだけの点数を取れるのもひょっとして・・・・・・」
「ご察しの通り。姉ちゃんに教わってここまでの点数を取ったんですよ先輩方。じゃ、とっととくたばれ」
俺の点数は400点を超えていたので特殊能力を使用した。すると
「え? アタシたちの上空にブラックホールが現れたわ!?」
「ま、まさか!?」
先輩達の上にブラックホールが現れ召喚獣を丸ごと吸い込んでしまい、それと同時に先輩達の点数はなくなってしまった。
「う、嘘でしょ!? 私たちが二年生に瞬殺されちゃったの!?」
「さ、流石に真理の弟なだけはあるわね・・・・・・」
先輩二人は即座に俺にやられてしまい呆気に取られていた。
「じゃあ優子。一旦教室に戻るぞ」
「うん。斗真、さっきの戦いあっという間だったけどカッコ良かったわ」
「そ、そうか・・・・・・。まぁ一応戦果を挙げれたし良しとしますか」
俺と優子がCクラスを通過した後様子を見るために一旦待機所であるFクラスに戻ると
「凄いよ斗真! 先輩たちを圧倒するなんてやるじゃないか!」
「良くやってくれたな。お陰でCクラスを通過できたし後は常夏コンビだけだからその時は頼むぞ」
「ああ。任せておけ」
「ごめん代表。アタシ、ただ見てただけだったけど・・・・・・」
「・・・・・・ううん。優子も東條の側にいたとはいえ良くやった」
「そうですよ。東條君があそこまで頑張れたのも優子ちゃんが側で彼を見守ってくれたからじゃないですか」
「あ、ありがとう二人とも」
優子も霧島さんと姫路さんから称賛され嬉しそうにしていた。
「じゃあ後は常夏コンビがいるAクラスだけだがどうする雄二?」
「ああそれなんだが。明久と島田ペアを導入しようと考えてたことろだ」
「え? 僕と美波が?」
「ちょっと坂本。一体どういうことか説明しなさいよ」
明久は急に言われた為ポカンとした顔をし、島田さんも散々仕掛けを見てきたからか行きたくないような顔をしながら雄二に説明を求める。
「雄二。それはさすがに無理はあるよ。残り一つとはいえ美波はこんなだし、それに万が一チェックポイントに辿り着いたとしても僕と美波の点数じゃ常夏コンビと戦うのは厳しいだろうし」
「いいからお前は余計なことを考えずに島田と肝試しを楽しんでこい。島田は・・・・・・そうだな。目をつぶって明久に摑まってたらいい」
「う・・・・・・。べ、別にウチは怖がってなんか」
「あー、わかってるわかってる。俺が言いたいのは、明久が怖がるだろうから、島田はそれを支えてやって欲しいってことだ。明久にも男のプライドがあるだろうから、目をつぶって摑まってやるくらいの気遣いも必要だろ?」
「そ、そうね。坂本がそこまで言うのなら、ウチも言うとおりにしてあげてもいいわ。別に怖がってるわけでもないし、アキに摑まっていたいってわけでもないんだからね!」
「やれやれ・・・・・・島田も難儀な性格じゃのう・・・・・・」
「そうだな。そこは素直になればいいのに・・・・・・」
「何か言った二人とも!?」
「いいや、なんでもないぞい」
「別に大したことは言ってないよ」
島田さん。そこは意地を張らんと怖いものは怖いって言えば明久はギャップに惹かれるのに。
「まぁいいや。よくわからないけど、そこまで言うのなら行ってくるよ。行こうか、美波」
「う・・・・・・そ、そうね」
「あ、あのっ、美波ちゃん! 気が進まないのなら私が・・・・・・」
「ううん! 全然そんなことないわ! 楽しみでしょうがないもの! それに、アキと一緒に行くって約束もしてるし! ほら、行くわよアキ!」
「あがぁっ! み、美波!? 腕を摑むっていうのは関節を決めろってことじゃ」
島田さんはさっきまで乗り気じゃなかったのに姫路さんが代わりに行こうかと提案すると即座に自分が行くと断言した。
島田さんにとってはお化けより明久と姫路さんの距離が縮まることの方が嫌みたいだ。
「ああ、待った明久」
「な、なに雄二?」
島田さんに引き摺られて教室を出ようとした明久を雄二が呼び止める。
そして、島田さんに聞こえないよう小声で話した後、明久の背中を叩いて、まるで追い出すかのように明久達を教室から出したのだった。
「なぁ雄二。明久に何を話したんだ?」
「ああ。アイツらにはある程度進んだら物陰に隠れてひそかに教室に戻るよう言っただけだ」
「それは一体どういうことだ?戻ることが前提なら明久達を行かせる必要はなかったんじゃー」
「それはな斗真。あの二人を向かわせる為だ」
「あの二人?・・・・・・ああそういうことね」
俺は雄二が何を言いたいのかわかったのでその二人の方に視線を向けると
『・・・・・・行こうか。清水さん。僕らの戦いに』
『・・・・・・そうですね』
明久と島田さんを付け狙う同性愛コンビが出撃しようとしていたのだった。明久、無事に戻ってこいよ。
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