バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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 ようやく完成したので更新しました。
前半は明久視点からですがよろしくお願いします。


第十一問 肝試し Part5

 

 〜〜明久SIDE〜〜

 

僕と美波が突入したAクラスは広さがDクラスの六倍もあり、あまり手の込んだ装飾はされていなかった。やるとすれば広さを活かした迷路かお化けと化した召喚獣を使い驚かせるくらいだ。

 とは言ったものの、向こうはこちらが随時投入する度に迷路を作り変えてるからか驚かすポイントをずらされてしまい、僕たちの前に投入した人らはそれに対応できず失格となってしまった。

 

 

 

 

 

 バンッ

 

 

 「っとと」

 

 「ーーっ!!」

 

 音を出しながら一反木綿が出てきた。古いカーテンを上手く使ってそれっぽさを出しているから薄暗い雰囲気とマッチしてて迫力がある。

 

 

 『うぼぁあ゙あ゙ー・・・・・・』

 

 「ーーっ!!」

 

 今度は血塗れで腕がおかしな方向に向いている人影が映っていた。おそらく三年が真正面から出ては召喚獣を後ろから迫らせるという演出をしてきたか。けど

 

 

 「あれなら霧島さんの折檻を受けている雄二の方がよっぽど気持ち悪い」

 

 

 僕はそういったものは見慣れているため大したことはなかった。

 

 

 「ちょっとグロいけど、これくらいなら平気だよね、美波?」

 

 「ーーっ!!(ブンブンブン)」

 

 

 美波は激しく首を振っていた。自分はあれ以上にグロい光景を生み出してるのに。

 

 

 「それはそうと美波。そんなにくっつかれると歩きにくいんだけど・・・・・・」

 

 「ーーっ!!(ブンブンブン)」

 

 「あ、美波。窓があるよ。外を見れば少しはーー」

 

 

 『きひひひひ・・・・・・っ。うらめしやぁ・・・・・・』

 

 

 「ーーっ!!ーーっ!!」

 

 

 美波の気を紛らわそうと窓の景色を薦めたつもりがろくろっ首の頭が窓の外を通過してしまい逆効果となってしまった。

 

 

 「・・・・・・ごめん。余計な気遣いだったね」

 

 「うぅ・・・・・・もうやだぁ・・・・・・。来るんじゃなかったぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 〜〜一方二人の様子をモニターで見ている斗真はと言うと〜〜

 

 

 「島田さん。大分怖がってるみたいだな」

 

 「行く前はあれほど平気じゃと言っておったのが嘘みたいじゃな」

 

 「ああなるんだったら見栄を貼らなければ良かったのに。そういったところは優子にそっくりだな」

 

 「じゃな。姉上も優等生として見られたいがあまり出来はしない頼みでも平然と聞き入れるからそういうところは似ておるのう」

 

 「まぁ、どっちもどっちでバカなところがあるってことだ。あはははは」

 

 「それは言えとるのう。あはははは」

 

 

 ガシッ

 

 

 「「ん(うむ)?」」

 

 

 俺と秀吉の肩に何か強烈な力が入れられたので振り向いて見ると

 

 「・・・・・・・・・・(ニコッ)」

 

 強い殺気を放った優子が満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 「ーーっ!!(ビクッ)」

 

 「? どうしたの美波?」

 

 「ねぇアキ・・・・・・。さっき向こうの方から悲鳴が聞こえなかった?」

 

 「? 気のせいじゃないかな。大体あそこには驚かせるようなものは置いてないんだしさ」

 

 「そ、そうかしら?」

 

 「そうだよきっと。ほら、もう少し先へ進もうか美波」

 

 「うん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 「「・・・・・・・・・・(ピクピクピク)」」

 

 「ふん!」

 

 Fクラスの教室には関節を外された斗真と秀吉が横たわっており、二人にお仕置きをした優子は返り血を浴びていたが当の本人は全く気にしていなかった。

 

 「はぁ、二人共余計なことを言わなきゃ良かったのに」

 

 「あはははっ。優子ったら、斗真君と弟君には容赦ないね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 「ねぇアキ。もうそろそろ帰ろうよ・・・・・・」

 

 「そうだね。雄二もある程度進んだら戻ってこいって言ってたんだし、今から戻るとーー」

 

 

 シュカッ

 

 

 「へ?」

 

 

 突然、僕の後ろの方からシャープペンが顔を掠めて壁に突き刺さった。

 

 

 (あ、あはは・・・・・・。なんだろうこの仕掛け。随分と直接的な仕掛けだなぁ・・・・・・)

 

 

 当然、三年が相手への直接的な攻撃をする筈もなく。シャープペンを放った相手は別にいた。

 

 

 『・・・・・・次は外しません。ブタ野郎・・・・・・!』

 

 

 僕は背後から強烈な殺気を発せられてるのを感じ、肝試しではない本当の恐怖が自身に迫っていることを理解したのだった。

 

 

 「み、美波。もうちょっと頑張ろう。そうしたら、一緒に教室に戻るから」

 

 「・・・・・・あ、アキがそう言うのなら、もうちょっとだけ頑張る・・・・・・」

 

 

 美波は口ではそう言ってはいるが実際はかなり弱気になっている。できればずっとこのままの状態でいて欲しいんだけど

 

 

 『落ち着くんだ清水さん。ここで仕掛けるのはまだ早い』

 

 『そ、そうでした。もっと暗いところでお姉さまとあのブタ野郎を引き離すんでした』

 

 

 と、とにかく雄二に言われた通り戻るとしようかな。ある程度進んだら引き返すように言われてるんだから、美波のご要望にも応えられるし。

 モニターで見た曖昧な記憶となんとか照合させながら歩いていく。仕掛けが動く度に美波がビクッとしがみついてきたけど、後ろの方からはあまり殺気を感じられなかった。何が背後にいたのかは知らないけど、距離が空いてこっちの様子がわからなくなっているみたいだ。

 

 

 「それにしても、美波がここまでお化け屋敷が苦手だとは思わなかったよ」

 

 「だ、だって、しょうがないじゃない。ドイツのお化けならまだしも、日本のお化けなんて全然知らないんだもの・・・・・・。提灯にいきなり口や手足が出てきたり、普通の女の人が急に首だけ伸びるとか、そんなの知らないんだから・・・・・・」

 

 

 そっか。僕らならある程度予想は付くけど、美波は日本のお化けについて何も知らないから意表を突かれちゃうのか。人は『その正体がわからないもの』に恐怖を抱くという話だから、帰国子女の美波が日本のお化けに詳しくないのも無理はないね。

 

 

 「でも、美波もそろそろ日本に慣れないとね」

 

 「・・・・・・いい。こんなものに慣れなきゃいけないなら、ウチはドイツで暮らすもの」

 

 

 美波がプイっとそっぽを向いてしまった。そこまで苦手なのか・・・・・・。

 

 

 「けど、そんなのは寂しいよ美波。ドイツで暮らすだなんて」

 

 「全っっっ然、寂しくなんてないわ。向こうにだって、ウチの友達はいるもの。別に一人になるわけじゃないんだから平気よ」

 

 「ああいや、そうじゃなくて」

 

 「じゃあ何よ」

 

 「寂しいのは僕たちの方なんだけど」

 

 「・・・・・・え・・・・・・?」

 

 

 美波は驚いたようにこちらを振り返った。僕が寂しく思うのは変なのか?

 

 

 「アキが寂しいって、どうして?」

 

 「? どうしてって言われても、寂しいのは寂しいからで」

 

 「だから、どうして寂しいって思うの?」

 

 

 美波が食い下がる。

 さっきまでの怯えた表情とは打って変わって、美波が凄く真剣な表情をしてるけど・・・・・・これってそんなに大事な質問なのだろうか?

 

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 

 美波がじっと僕の目を見ている。

 ここまで美波が真剣なら、僕も真剣に考えないとダメだろう。

 う〜ん・・・・・・。人がいなくなって寂しく思う理由、か・・・・・・。質問の答えになっているかはわからないけど、それってきっとーー

 

 

 「いつも一緒にいる仲間がいなくなるから、かな・・・・・・?」

 

 「・・・・・・いつも、一緒・・・・・・?」

 

 「うん」

 

 

 別に接点のない人がいなくなっても、多分僕は寂しくなったりはしない。人がいなくなって寂しくなるのは、その人が親しくて、いつも一緒にいる仲間だからだろう・・・・・・。

 

 

 「それなら・・・・・・アキはウチに傍にいて欲しいって、そういうこと?」

 

 「あ、うん。そうなるーーかな?」

 

 「じゃあ、じゃあ・・・・・・」

 

 「ん? なに?」

 

 「じゃあ・・・・・・ウチが、ずっとアンタの隣にいてあげるって言ったら・・・・・・アキは、受け入れてくれるの・・・・・・?」

 

 

 美波はそう聞いてくるけど、それってあの劣悪な設備の中でも、更に最下層に位置する僕の酷い隣の席に? いくら美波が体力に自身があるとは言え、おすすめできないかなぁ・・・・・・

 

 

 「僕の席だけじゃなくて、周りの席も全部暑いし、冬はきっと隙間風が寒いだろうから、やめておいた方がいいと」

 

 「アキ。そうやってバカなことを言って誤魔化さないで」

 

 「え? あ、はい。ごめんなさい」

 

 

 なんだ?なんで僕は怒られたんだ? いまいち会話がかみ合っていない気がする。

 

 

 

 

 

 その頃、二人の様子をモニターで見ている斗真達はというと

 

 

 「あのバカ。鈍感過ぎるにも程があるだろ」

 

 「そうじゃな。そこは普通に受け入れるよと言えば良いじゃろうに明久は相変わらずじゃな」

 

 「け、なんでこっちはアイツらのラブコメを見せつけられなきゃいけねぇんだよ」

 

 「・・・・・・・・・・殺したい程妬ましい・・・・・・」

 

 「まぁまぁ落ち着いて下さい。ここは温かく見守ってあげるべきではないですか」

 

 「美波ちゃんはズルいです・・・・・・。私だって明久君からそんな台詞を言われたことはないのにあんまりです」

 

 「瑞希。吉井君は無意識に言ってるだけかもしれないからそうムキにならないで」

 

 「・・・・・・私も雄二からああ言うふうに言われたい」

 

 「あはははっ。吉井君ったら本当に面白いね〜」

 

 

 明久と島田さんに対し、さまざまな意見が飛び交っていた。

 

 

 

 

 

 「・・・・・・ウチが聞きたいのは、そういうことじゃない。ウチが聞きたいのはーー」

 

 

 美波が何かを言おうとしていたが。

 

 

 『お姉さまをたぶらかす気配・・・・・・恨みます・・・・・・呪います・・・・・・殺します・・・・・・!』

 

 

 ペタペタペタペタと背後から凄い早さで呪詛の言葉を吐き続ける気配が近づいてきた。こ、これは怖い!

 

 

 「きーームぐぅっ」

 

 

 美波は思わず悲鳴を上げてしまいそうだったので口を押さえ未然に防いだ。今僕の隣が云々なんて言っている場合じゃない。このままだと僕と美波は失格になる・・・・・・!

 

 

 「美波。手荒なまねだけど、今はゴメン」

 

 「ーーぷはぁっ! な、何か来るわアキ・・・・・・。逃げないと・・・・・・!」

 

 美波が怯えつつ暗闇の向こうを見る。何も見えない分余計に怖いんだけど。

 

 

 「いや、美波。こういうのは逃げているところを追われるから怖いんだよ。大丈夫。別に危害を加えられるわけじゃないんだから、平然としていれば」

 

 

 シュカカカッ(ボールペン×3)

 

 

 「逃げよう。走れるね美波」

 

 「うん・・・・・・っ」

 

 

 襲い来る文房具に注意を払いながら美波と走り出す。

 あの追っかけてきている気配、絶対に召喚獣じゃない。いや、それどころか三年生ですらないような気がする・・・・・・!

 

 

 『逃しません・・・・・・! お姉さまを奪い返すまで、地の果てまでも追いかけます・・・・・・!』

 

 『清水さん。君は今、ここにいるどのお化けよりも凶悪だよ』

 

 

 迫りくる恐怖。それの正体は意外と僕らの身近にいるものなのかもしれない。

 

 

 「ーーっ!!」

 

 

 美波は目を瞑りながら僕の腕にしがみついてはいるけど、この体勢じゃ走れるスピードに限界がある。・・・・・・そうだ。

 

 

 「美波。今から向こうに隠れるから僕が合図を出すと同時に召喚獣を喚んで」

 

 「え? う、うん・・・・・・。いいけど・・・・・・」

 

 

 簡単な迷路の分岐点に差し掛かると僕は美波を連れてわざと行き止まりに向かうと、その奥で小さく声を掛けた。

 

 

 (美波。今だよ)

 

 (うぅぅ・・・・・・さ、試験召喚(サモン)っ)

 

 

 美波の喚び声に応じて召喚獣が現れる。うん。見事なまでに真っ平らだ。

 

 

 (アキ。今なんだか急にアンタを殴らなきゃいけない気がしたんだけど)

 

 (気のせいだよ美波。それより、もうちょっと召喚獣をまっすぐ立たせて・・・・・・そうそう。そんな感じ。後はじっとしててね)

 

 (それはいいけど・・・・・・)

 

 

 後はこのままやり過ごせば良いんだけどうまく行くだろうか。

 

 

 『お姉様、オネェサマ・・・・・・。逃しませんカラネ・・・・・・。ケタケタケタケタ』

 

 『清水さん。君はもう邪悪すぎて周囲の空間まで歪んで見えるよ』

 

 

 美波と息を潜めて邪神と化した清水さんをやり過ごす。

狂気に支配された彼女は周囲に気を配ることもできなかったようで、僕らの隠れている通路をノンストップで通過していった。

 一応周りを確認してと、うん。もう大丈夫だ。

 

 

 「美波。もう大丈夫だよ。現代の怪異は去ったみたいだ」

 

 「ほ、本当・・・・・・?」

 

 美波が怯えながらもうっすらと目を開ける。

今気づいたんだが、ぬりかべに塞がれた通路はちょっとした部屋になっていて。そこには僕と美波の他には誰もいない。怯える要素もないはずだ。ゴミ捨て場という設定だったのか色々と古い物がごちゃ混ぜになっていて汚かった。

 

 

 「ね? 何もいないでしょ?」

 

 「そ、そうね。良かった・・・・・・」

 

 

 美波がホッと胸をなで下ろす。安心してくれたようだ。

後は雄二の指示通り引き返さないと。美波にこれ以上怖い思いをさせるわけにはいかないしね。

 

 

 「じゃ、戻ろうか美波」

 

 僕はその場から踏み出そうとすると

 

 「待って、アキ」

 

 

 なぜか美波に腕を引かれて止められた。なんだろう。この場所に何か用があるんだろうか。

 

 

 「どうしたの美波? 何かあった?」

 

 「・・・・・・続き」

 

 「ん? 何? 聞こえないよ?」

 

 「・・・・・・続き。さっきの話の続き、ここではっきりさせたいの」

 

 

 え? さっきの話っていうと・・・・・・

 

 

 「アキが寂しいって思うのは、ウチがアキにとって友達だから? それとも・・・・・・」

 

 「え? み、美波。何をそんな興奮して・・・・・・。ちょっと落ち着いて」

 

 「アキは勘違いしてる。ウチはオランウータンもチンパンジーも好きじゃない。そんなのじゃなくて、ウチが好きなのはーー」

 

 「す、好き、なのは・・・・・・?」

 

 「ーーお、お化・・・・・・け・・・・・・っ! はふぅ」

 

 

 さっきから怖がりすぎたからか美波は安心したからか気を失ってしまった。

 

 

 「やれやれ・・・・・・。こんなに怯えてたくせに、強がるなんてね」

 

 

 気絶するほど怖かったのに『お化けが好き』だなんて、美波の強がりは筋金入りだ。そういう勝ち気なところが、美波らしいね。

 

 

 「さて。それじゃ、美波もこんなだし、一旦戻って後は斗真たちに任せるとするか」

 

 

 完全に脱力した美波を背負って後ろを向くと。

 

 

 『ばぁーっ!!』

 

 

 そっか。ゴミ捨て場と思ってたとこには付喪神の集まりだったのか。美波はそれを見てしまって気絶したわけだね。なんというか美波には申し訳ないことしたなぁ。

 

 

 

 〜〜斗真SIDE〜〜

 

 「明久の奴、上手くいっただろうか・・・・・・」

 

 「そうしてもらわな困る。何しろ相手はあの常夏コンビだからな」

 

 「そうだね。最終チェックポイントに自ら立ちはだかるくらいですから相当自信があるのは間違いありませんしね」

 

 「とにかく、明久が清水さん達を引きつけてくれたんだ。後はその二人がアイツらとやり合うのを見てから作戦を練らんとな」

 

 俺達三人がそう話していると

 

 

 「ただいまー」

 

 

 明久が気絶した島田さんを背負って教室に戻ってきた。

 

 「おう、戻ったか明久。よくやった。作戦は成功だ」

 

 「え? なんで? 美波は気を失っちゃってるし、僕らは何もできずに戻ってきたのに」

 

 「いや、それで良かったぞ明久。お陰で向こうの情報を得ることができるかもしれんからな」

 

 「うむ。お主らはそれで良かったのじゃ」

 

 「・・・・・・・・・・(コクコク)」

 

 「後は清水さんと久保君が常夏コンビと戦うのを見るだけですしね」

 

 「???」

 

 明久は未だに俺達の狙いに気付いてないみたいだが。作戦は成功した為明久を労うことに。

 

 「とりあえず。美波は寝かせておかないと」

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 「ん? どうした姫路さん? 明久の顔を真剣に見てるみたいだが」

 

 「え? なに姫路さん?」

 

 「あ、いえ。なんでもないです」

 

 姫路さんは慌てて手を振って誤魔化すが

 

 「私も・・・・・・勇気、出さないと・・・・・・」

 

 本音を呟いていたので何を考えてたのか即座にわかった。姫路さん。決心を高めるのはいいけどあんま無理はしない方が良いぞ。

 

 「おい明久。お前の行動の結果が出るぞ。見てみろ」

 

 「ん? なになに」

 

 さて、今頃あの二人はどうなってるか見てみるとするか。

 

 

 《いないな・・・・・・。あの二人はどこにいるのだろう・・・・・・。急がないと、こうしてる間にも二人の絆が・・・・・・く・・・・・・っ!》

 《ドコ・・・・・・? オネエサマ ドコ・・・・・・?》

 

 

 あ、最早完全に目標を見失ってしまったからか。二人は完全に混乱しているみたいだな。

 

 「やれやれ。清水はともかく、久保まで正常な判断ができなくなっているとはな・・・・・・。もうそろそろ自分たちの前には誰もいないと気づいてもいいだろうに」

 

 「よほど姿を見失ったことに焦っておるのじゃな」

 

 「・・・・・・・・・・恋は盲目」

 

 「あの様子じゃ元に戻るのに時間は掛かりそうだな」

 

 「仕方ありませんが清水さん達の出番はここでまでみたいですね」

 

 「え? 清水さんが美波を探しているのはわかるけど、久保君はどうしてあせってるの?」

 

 「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

 明久からの質問に対して俺達は押黙るしかなかった。

 

 「あ。それとも、実は久保君は清水さんのことが好きだとか」

 

 明久は的外れな答えを言うが

 

 「あ〜・・・・・・。まぁ、好きな人がらみで冷静じゃないってところは合ってるんだがな」

 

 「相変わらずお主は鈍いというかなんというか・・・・・・」

 

 「俺からすれば明久はこの答えを知る必要はないと思うけど・・・・・・」

 

 その答えに対し俺達には誤魔化すほかなかった。

 

 「え?知る必要はないって一体どういうこと斗真?」

 

 「そのままの意味ってことだ」

 

 「ふ〜ん。よくわかんないけど、機会があったら今度本人に聞いてみるよ。もし良かったら協力してあげたいし」

 

 「明久・・・・・・。お主は、なんと残酷な・・・・・・」

 

 「無慈悲にも程があるぞ」

 

 「やめとけ明久。久保が泣くぞ」

 

 「・・・・・・・・・・非道が過ぎる」

 

 「???」

 

 明久。お前はずっとそのままの状態でいてくれ。

 

 

 《どこに・・・・・・彼らはどこに・・・・・・ん? 明かりが・・・・・・?》

 《オ、オネエサマ・・・・・・ドコ・・・・・・?》

 

 

 「んむ? どうやら久保と清水がチェックポイントに到着したようじゃな」

 

 「あ、本当だ」

 

 迷路を抜けて広い場所に出る姿が映し出される。目の前には常夏コンビが立ちはだかってるからチェックポイントで間違いないようだ。

 

 

 《おう。来たみてぇだな。随分と待たされたぜ》

 《お前らが俺らのお相手一組目だな。三年の実力をじっくりと見せてやるから覚悟しやがれ》

 

 

 待ち構えていた二人の端には先生が立っているのが見える。あの人は木村先生だったな。つまり、常夏コンビは物理で勝負を挑むってことか。

 

 

 《失礼。先輩方、ここに吉井君と島田さんは来ませんでしたか?》

 《アぁ? ここに来たのはお前らが最初だぜ》

 《吉井たちなら確か、途中で引き返して行くのが映っていた気がするな》

 《そ、そんな・・・・・・! じゃあ、僕たちは、今までずっと無駄な時間を・・・・・・!》

 《? よくわからねぇけどよ、あいつらに会いたいのならさっさと俺たちに負けて教室に戻るんだなーー試獣召喚(サモン)

 《そういうことだ。さっさと始めようぜ。試獣召喚(サモン)

 《そうですか・・・・・・。試獣召喚(サモン)・・・・・・》

 《・・・・・・試獣召喚(サモン)・・・・・・》

 

 

 久保と清水さんは既にやる気を失っているからか、力なさそうに召喚獣を喚びだす。問題はここからだ。

 

 「久保君たちは勝てるかな?」

 

 「どうだろうな。清水も久保も、斗真と同じ文系だったはずだ。物理での勝負となると、正直分が悪い」

 

 「向こうは俺達二年生と違って一部の科目が選択制になってるから全ての科目を万遍なくやる必要がある俺達より勉強がしやすい筈だ」

 

 「三年は受験に照準を合わせて勉強しているからな。選択科目の物理で勝負をしに来たってことは、向こうはよっぽど自信があるんだろうな」

 

 「つまりは、物理を指定してきたということはあの常夏コンビは理系じゃと、そういうことじゃな?」

 

 「そういうこった。まぁ、向こうは向こうで自分らに有利な科目を選ぶのは当然だよな。俺たちが保健体育を指定したようにな」

 

 学園長の方針で全学年通じて保健体育は必須科目になってはいる。受験では使う科目ではない為あまり力を入れている人はそれほど多くはなく、受験を間近に控えた三年はする必要がないからエキスパートのいる俺達二年生が有利に立てた。

 その一方で、物理や地理などの選択科目は三年が有利になる。理由は先程も言ったが、二年生は全ての科目を万遍なくする必要があるのに対し、三年は選択した科目のみに集中して勉強ができるから同じ理系でも、他の科目をやらないといけない二年生と違って選択科目のみに集中できる三年の方が有利になるわけだ。当然、その分の差を埋める為教師は問題のレベルを調整してはいるが、差は出てくる。それぞれの学年で行う試召戦争とは異なるこういったイレギュラーな勝負では選択科目が勝負の鍵を握ることとなる。

 

 

 

物理

二年Aクラス 久保 利光 213 点

二年Dクラス 元・清水 美春 71 点

 

 

 二年生側の点数が表示される。

久保はAクラスなだけあって平均内の点数を取っている。清水さんは物理は苦手な為なのか明久の平均並の点数だ。

 

 

 「これで向こうが300点とかの点数を出してきたら危ないよね」

 

 「それはおそらく大丈夫じゃろう。相手は常夏コンビじゃからな」

 

 「そうだね。雄二が向こうを挑発しておいてくれて助かったよ」

 

 「・・・・・・・・・・先見の明がある」

 

 「さすがに三年のトップクラスは相手がキツいからな」

 

 「! 待て!アイツらの点数を見てみろ!」

 

 「え?」

 

 俺に言われた通り明久達は常夏コンビの点数を確認する。

 

 

 

物理

三年Aクラス 常村 勇作 412 点

三年Aクラス 夏川 俊平 408 点

 

 

 「「「なにぃっ!?」」」

 

 常夏コンビの点数を見て明久達は驚愕した。まさかアイツらが400点を取るほど頭が良かったとは。

 

 「ちょちょちょちょっと、あの点数どういうこと!? 常夏コンビってあんなに成績が良かったの!?」

 

 「あれではまるでAクラスの優等生じゃな」

 

 「・・・・・・・・・・信じられない」

 

 「どうやら向こうにはこっちの考えは読まれていたみたいですね」

 

 「しくじった・・・・・・! どおりで簡単に挑発に乗ってきたワケだ。アイツら、俺の意図を見透かしてやがったな・・・・・・!」

 

 雄二が驚くのも無理はないな。アイツらの今日に至るまでの行動や今までの点数を見た限りじゃ優等生とは程遠かったからあそこまでの点数を取るなんて想像できるわけがない。

 

 

 《んじゃ、せいぜい頑張ってみせろよ後輩ども》

 《散々待たされたんだ。ちょっとは粘ってくれよ?》

 

 

 常夏コンビの召喚獣は牛頭と馬頭、見た目からして悪役だがあの二人にはピッタリだ。なにせ、見た目だけじゃなく中身まで腐ってるからな。

 後は久保と清水さんがどこまで点数を減らせるかだが。

 

 

 《僕らの負けですね》

 

 

 あの二人は既に精神が抜け殻になっていたので敢え無く負けてしまった。

 

 「先ほどの会話のせいで久保も清水も心ここにあらずといった状態じゃな。あれでは一撃でやられるのも道理じゃ」

 

 「ま、そんなもんだよな。元々アイツらの目的は肝試しとは別のところにあったわけだし」

 

 「相手の点数を知れただけでも良しとしますか」

 

 「どう雄二? 勝ち目はありそう?」

 

 「ん〜・・・・・・。良くて4:6ってところだな」

 

 「そうだな。残りの戦力は限られているし」

 

 「そりゃまた、随分と厳しいね」

 

 「翔子はともかく、俺の物理はせいぜい150点程度だからな」

 

 「俺はギリギリ300点だから操作でどこまでカバーできるかだが」

 

 「僕も斗真と同じくらいだね。それに向こうは僕達よりも一年長くやっているから慣れているかもしれませんしね」

 

 「アタシも斗真と同じ点数だけど操作にはそんなに慣れていないから上手くいけるか不安ね」

 

 「それなら、他の人が少しでも消耗させておいてくれたら」

 

 「・・・・・・・・・・それは厳しい。残っている戦力は、突入組を入れても四組だけ」

 

 残りは四組八人か。雄二と霧島さんを除いて、三組の中で悲鳴を上げられずに行けるペアは俺と優子かアランと残っている女子ぐらいだ。

 

 「・・・・・・・・・・ちなみに、その四組のうちの一組は明久たち」

 

 「え? 僕? あ、そっか。そういえば僕と美波はまだ失格になってないんだっけ」

 

 明久と島田さんは突入はしたが、悲鳴を上げずに戻ってきたから失格にはなっていないのだが。

 

 「けど、美波はあんな状態だし、僕らはもう戦力にはならないよ」

 

 「・・・・・・・・・・(フルフル)」

 

 ムッツリーニは首を横に振って応える。こっちにはまだ投入していない戦力が残されているからだ。

 

 「明久よ。ムッツリーニが言っておるのは、お主と島田のペアではないぞい」

 

 「え? でもさっき、ムッツリーニは僕だって」

 

 「他にいるだろ。この場にいて失格にはなってなくて、霧島さんに次いで高得点を取っている人が」

 

 俺がそう明久に説明すると

 

 「わ、私のことでしょうか・・・・・・?」

 

 そう。俺が言ったのは姫路さんのことだ。彼女は突入していないから失格にはなっておらず、成績も霧島さんに次いで良いからここで投入するべきなのだが

 

 「あ、あの・・・・・・。私、ああいうのは本当に苦手で・・・・・・」

 

 姫路さんは今まで悲鳴を上げていたからお化けが苦手なのはここにいる誰もが知っていることだ。彼女はとても不安そうな顔をしているから行かせるべきかわからんな。

 

 「だから、その・・・・・・。明久君に、凄く迷惑をかけちゃうと思うんですけど・・・・・・」

 

 「いや。そんなに気にしなくても大丈夫だよ姫路さん。罰ゲームもたいしたことないんだしーー」

 

 「それでも良かったら・・・・・・明久君と一緒に、参加したいです・・・・・・」

 

 「別に無理に参加しなくてもーーって、えぇっ!? 姫路さん、行ってくれるの!?」

 

 「あ、はい。明久君の迷惑にならないのなら・・・・・・」

 

 「ううん! 全然迷惑なもんか! むしろ大歓迎だよ!」

 

 「よし、決まりだな。じゃあ今から明久と姫路さん、俺と優子、そして雄二と霧島さんのペアの順番で行くとするか」

 

 「そうね。斗真。アタシもできる限り頑張るからアイツらに目にものを見せつけてやりましょう」

 

 「ま、当然だよな。あの島田と明久の様子を見ておいて何もしないようなら、姫路に勝ち目はないもんな」

 

 「さ、坂本君!?それ以上言ったら怒りますからね!?」

 

 「へいへい、了解。黙りますよっと」

 

 どうやら姫路さんはさっき明久と島田さんが突入する姿を見て自分も負けてられないと勇気付けたみたいだな。

 

 「い、行きましょう明久君っ」

 

 「あ、うん。そうだね。急いで行こう!」

 

 「明久、ヤツらには敵わなくてもできる限りのことはしてこいよ!」

 

 「勿論だとも!じゃあ後は任せたよ!」

 

 「瑞希。怖くなったら吉井君にしがみつきなさいよ。彼が上手くリードしてくれるかもしれないからね」

 

 「は、はい・・・・・・。できるだけ・・・・・・明久君の足を引っ張らないよう・・・・・・頑張ります・・・・・・」

 

 

 こうして明久と姫路さんのペアが常夏コンビのいるAクラスへ向かって行ったのだった。




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