バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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 久しぶりに本編更新です。


第十二問 肝試し Part6

 明久と姫路さんが突入してから数分立ち。俺と優子は二人に続くように教室を後にした。

 

 「優子。今から突入するけど大丈夫か?」

 

 「だ、大丈夫よ・・・・・・。だって、斗真が傍にいてくれれば何も怖くないわ」

 

 「そうか。じゃあ早速Aクラスに行くが俺から離れるなよ」

 

 「うん・・・・・・」

 

 俺と優子は常夏コンビが待ち構えているAクラスへと進んでいく。この教室は最上位クラスなだけあって広さを活かした迷路が作られており突入する度に迷路の仕組みは変えられていくから攻略するのに苦労するしな。

 何より一番の問題はここを抜けた後に控えてる常夏コンビをどう倒すかだが。

 

 「・・・・・・斗真」

 

 「ん? どうした優子?」

 

 ヤツらをどうやって倒そうか考えている俺に優子が話しかけてきた。

 

 「アタシ。・・・・・・斗真の役に立ってるかな・・・・・・?」

 

 「? どうしたんだ。急にそんなことを言い出して」

 

 「だって、さっきのCクラスじゃ斗真に引っ付いていただけでチェックポイントで戦う時も斗真一人に任せてしまったでしょ。そんなアタシが斗真と一緒にいていいのかなって・・・・・・。それに・・・・・・」

 

 「それに?」

 

 「秀吉にも無理言って斗真とペアを組ませてもらったのに。役に立ってないのは姉として恥ずかしいというか・・・・・・」

 

 「そういうことか。だったらそんな気にする必要はないぞ。あの時は優子が傍にいてくれたから俺は全力を出すことができたんだしな。優子だって本当は怖がってるのはわかっているけど無理してまで俺について来てくれたんだから迷惑だなんて微塵も思ってはいないよ」

 

 「本当・・・・・・」

 

 「ああ本当だ。それに秀吉だって俺と行きたかったけど自分よりも姉を優先してくれたんだから無理に責任を負う必要はないよ」

 

 「うん。そうね・・・・・・。ありがとう斗真」

 

 さっきまで不安そうな顔をしていた優子の顔が少しだけど晴れやかになった。これなら多分大丈夫そうだな。

 

 「さて、話を切り替えるとして今解決すべき問題はこの迷路をどうクリアするかだな。ここは突入する度に進路を変えられていくからどうチェックポイントに辿り着けるかだが・・・・・・」

 

 

 フッ

 

 

 「? 何だ?急に暗くなったぞ。優子、大丈夫か・・・・・・って、優子!? どこにいるんだ優子!?」

 

 俺が考え事をしていると辺りが突然暗くなり。側にいた筈の優子が突然いなくなってしまった。

さっきまでそこにいた優子がいなくなるなんておかしすぎる。それに通った時は何もなかったところに壁が張ってある。これは一体どういう・・・・・・まさか!

 

 「クソっ!やられた!俺と優子を分断させてくるとは・・・・・・!」

 

 俺は三年の狙い気付いたものの、既に俺は孤立してしまった。

 

 

 パッ

 

 

 「あれ、斗真? どういうこと?」

 

 明かりが照らされると同時にそこに立っていたのは

先に姫路さんと一緒に突入していた明久だった。。

 

 「・・・・・・明久。まさか、お前も・・・・・・」

 

 「うん。僕もさっきまで姫路さんと一緒にいたんだけど急に暗くなって気がついたらこうなってしまったんだ・・・・・・」

 

 「どうやら俺達は三年が仕掛けた罠に引っ掛かってしまったみたいだな」

 

 「わ、罠? 一体どういう事?」

 

 明久はわかってないみたいなので説明をする。

 

 「俺達はこの迷路を使った罠でペアを変えさせられたんだよ」

 

 「ああそういうことね。でも、どうして三年はそんなことを・・・・・・?」

 

 「おそらく向こうの狙いは霧島さんと雄二のペアを悲鳴を上げそうな人と入れ替えるつもりだっただろうがどういうわけか失敗してしまったみたいだな。或いは俺と明久のペアに変えるのが目的だったのかもしれんが」

 

 「え? 僕と斗真のペアに?」

 

 「考えても見ろ。アイツらは昨日俺と明久に戦死寸前まで追い詰められたんだぞ。あれだけヤラれてしまったにも関わらず黙っているわけがないし、勝負科目で物理を選んできたのも自分達がバカに思われるのも癪だからに決まってるだろ」

 

 「言われてみるとそうだね」

 

 「だからこそ。自分達が有利になる為にこんなセコい手を使ったんだよ」

 

 「あれ? でも、それって不確定な要素が多くない? だって、組み合わせを替えさせる為にはまず相手を分断しないといけないでしょ? そんなタイミングが都合良く来るかな?」

 

 「その為にこの迷路が役立つんだ。突然壁を作って道を作り替えたり、通路を壊してはいけないっていうルールがあったりと、向こうからすれば有利になる状況が成立するまではゴールに至る道が隠されているからな」

 

 「うわ、卑怯・・・・・・」

 

 つまり、ヤツらは自分達に都合が良い状況になるまではずっと俺達を迷わせるつもりだったってことだ。そうなると、明久と姫路さん。俺と優子のペアが少し離れている時に照明が消えたのも分断させるタイミングを狙っていたってことになる。

 

 「じゃあさっき久保君たちが普通に通り抜けたのは」

 

 「このトリックが見破られないようにする為のカムフラージュだろうな。久保はともかく、清水さんはDクラスだから点数と召喚獣操作で勝てるとふんでああしたんだろ」

 

 俺と優子を相手にするよりはあの二人の方が向こうにとって楽だったのかもしれんが。

 

 「というわけで俺達はヤツらの策中に嵌ってしまったわけだが・・・・・・」

 

 「どうする斗真? このまま行ったところで返り討ちにされるだけだよ」

 

 「それは言われなくてもわかってるよ。まぁ、打開策を考えてはいるが」

 

 「え? それって一体どういう策なの?」

 

 「その作戦は重要な部分を明久に任せないといけない上、俺が常夏コンビにいいように言われるかもしれないから俺としてはやりたくないけどな」

 

 「なるほど。僕一人が活躍することが妬ましいわけだね」

 

 「それもあるけど、一番の問題点は明久がその仕事をこなせるかが不安なんだよ」

 

 「なるほど。条件を聞くかぎりじゃ斗真にとって面白くはなさそうだね。特に常夏コンビにいいように言われる点が」

 

 「とりあえず、作戦の説明はしておくぞ。いいか明久ーー(ヒソヒソ)」

 

 三年が聞いてるかもしれない為、小声で明久に作戦の説明をし、明久はそれを聞いては相づちを打つ。

 

 「オーケー。じゃあ常夏コンビの相手は僕に任せてよ」

 

 作戦を聞いた明久はそれを了承し、やる気全開の顔を見せた。

 

 「とにかく、今は静観するだけしかできないし。姫路さんは優子に任せて、俺達は先に進むぞ」

 

 幸いなことに、カメラはそれぞれ明久と優子が一台ずつ持っていたみたいなので教室に取りに行く必要はない。

 

 「どうしたんだお前ら? 何でペアが変わってるんだよ」

 

 不意に声が聞こえたので振り向くと、そこには雄二と霧島さんがおり、こっちに近づいてきた。

 

 「ん?雄二か。ちょっとトラブルがあってな」

 

 「はぁ? 一体どういうことだ斗真」

 

 「実はなーー」

 

 

 雄二に三年がしたことを説明すると即座に理解した。

 

 

 「そういうことか。チッ、そうなるんだったら俺と翔子が先に行っとけば良かったな」

 

 「・・・・・・雄二、酷い」

 

 「おいおい。何言ってんだよお前は。それじゃあ二人っきりの時間が過ごせない上霧島さんが可哀想だろ」

 

 「そうだよ。僕だってさっきまでは姫路さんと一緒だったはずが急に斗真と変えられてしまったんだよ」

 

 「じゃあ聞くけどよ二人とも。俺が翔子と一緒に如月ハイランドのお化け屋敷に行った時、どうなったか覚えてるか?」

 

 どうって、・・・・・・ああ。あの時は確か・・・・・・。

 

 「翔子に釘バットで襲われた恐怖が蘇るんだよ。お前のせいでな」

 

 雄二が明久を憎たらしげに見つめる。一方明久はというと責任を感じたのか視線を逸らしている。

 

 「雄二。あれだけ偉そうに言ってたのに、ビビってるな」

 

 「バカを言うな。俺は幽霊や妖怪なんざ、ちっとも怖くねぇ」

 

 「ほぅ、言ったな。なら、霧島さんをエスコートしてチェックポイントに辿り着くことだな。行くぞ、明久」

 

 「了解。雄二、また後でね」

 

 俺と明久は雄二達を後にして、先に進むことにした。

 精々二人っきりで命懸けの肝試しを楽しむことだな雄二。

 

 『あ、おい待て!俺を翔子と二人っきりにさせるな!せめてどちらかとこの場で入れ替わりをーー』

 

 『・・・・・・雄二。怖かったら私に抱きついてもいいから』

 

 『断る。そしてお前は怖くても一人でなんとかしろ』

 

 『・・・・・・無理。私は怖い物がすごく苦手だから、ずっと雄二にくっついている』

 

 『今度、俺を攻撃しているときのお前の顔を見せてやる。本物の鬼が見られるぞ』

 

 『・・・・・・きゃあ、こわい』

 

 『うぐぉおっ!? か、関節が!?』

 

 『・・・・・・コホン、コホン。きゃあ、キャア・・・・・・? いやぁ・・・・・・?』

 

 『お前今悲鳴の練習してるだろ!? くそっ! 俺は絶対に騙されなぎゃぁああ!』

 

 『・・・・・・そっか。ぎゃぁああ、と・・・・・・』

 

 後ろからラブラブ夫婦『これのどこがラブラブだーっ!』のやりとりが聞こえてきたが、敢えて無視するとしますか。

 

 

 

 

 

 「もうそろそろじゃないかな」

 

 「ん?そろそろって?」

 

 「姫路さんだよ。あれだけ怖がってた姫路さんのことだからもう悲鳴を上げてもおかしくないのにそれがまったく聞こえないのはあまりにもおかしいだろ」

 

 「あ。そう言えば」

 

 俺と明久は随分と話し込んではいるが。三年の作戦が上手くいっているんだったら姫路さんはそろそろ悲鳴を上げてもいい頃合いの筈だ。そう考えていると壁の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 

 『瑞希、大丈夫?』

 

 『は、はい・・・・・・っ! 大丈夫です・・・・・・! 怖くないです・・・・・・!』

 

 『これは所詮見かけが変わっただけの召喚獣だから怖くないから安心して』

 

 『はい。そうです。召喚獣だから怖くないんです・・・・・・!』

 

 

 「ねぇ斗真。この声って・・・・・・」

 

 「優子と姫路さんだな。おそらく二人はこの壁の向こうにいるに違いない」

 

 「呼びかけたら聞こえるかな?」

 

 「いや、姫路さんの怖がってる様子からして声を掛けたら逆効果になるかもしれんし、止めたほうが良さそうだな」

 

 「そうだね」

 

 姫路さんは悲鳴を上げないよう必死に我慢してはいるが、果たしてどこまで持つのだろうか。

 

 「姫路さん・・・・・・。苦手だけど、懸命に耐えているな」

 

 「そうだね。召喚獣を使った脅かしに慣れたのかな?」

 

 「そうでもないかもしれんぞ。同じくらい驚いてた島田さんは気絶までしているのに、慣れ(、、)程度でここまでやるのは無理があるからな」

 

 「そっか。そうだよね」

 

 恐怖感は人間なら誰しも持っている本能の一つだ。克服するにしてもそう簡単にできるものではない。

 あの姫路さんがあそこまで耐えていられる理由があるとすればおそらく。

 

 「なぁ明久。さっきまで姫路さんと行ったときに何かあったか?」

 

 「え? う〜〜ん・・・・・・。 あったと言えば、あったような・・・・・・」

 

 間違いない。姫路さんが必死に耐えていられる理由は明久にあった。とりあえず、カメラに音が漏れないよう小声で聞くとするか。

 

 (明久。姫路さんと一緒に行動してる時に何か言ってなかったか?)

 

 (何って、姫路さんはなんか心配がどうとか、距離がどうとかで悩んでたみたいだけど)

 

 (それだけじゃ判断するのは難しいが、そういった話は俺も姫路さんから相談されたことがあるぞ)

 

 (え?)

 

 (勘違いするなよ明久。あくまで友人としてだ。俺には秀吉と優子がいるからな)

 

 (ねぇ斗真。ここで君を殴ってもいいかな?)

 

 (なにをどう聞いたらそんな答えに行き着くんだよ。言っておくがあれは姫路さんなりの努力ってことだ)

 

 (努力?)

 

 (距離の近い、助け合える仲間になる為に頑張っているってことだ。姫路さんは自分が助けられてばかりだと思われているのを随分前から気にしていたからな)

 

 (そう言えば、前にそんなこと言ってたかも)

 

 明久は心当たりがあるのか、思い出し始める。

 

 (そんなこと、気にすることないと思うけどなぁ)

 

 (明久はそう思ってるかもしれんけど姫路さんは違うだろうな。こういうのは本人の気持ちの問題である以上俺からはなんとも言えんが)

 

 (そっか・・・・・・確かにそうだね)

 

 姫路さんは俺達に迷惑を掛けてばかりいると思ってるかもしれんが実際はそうじゃない。勉強もそうだし、試召戦争では俺と同じ様に色々と頑張ってくれているけど、彼女が負い目を感じるとするならば俺達からはなんとも言えないし、結局は彼女自身が納得しないとこの問題はどうにもならない。

 ここは姫路さん自身に頑張ってもらい、目標を達成することに意味が見いだせるなら、俺達はそれを見守るほかあるまい。

 

 (それに、姫路さんが頑張ってくれたら勝負に勝てるかもしれないからここは彼女に任せるべきだな)

 

 (そうだね。それは助かるよね。でもさぁ、斗真)

 

 (うん? なんだ?)

 

 (それを言うんだったら、木下さんにも同じことが言えるんじゃないかな)

 

 (優子にもだと。どうしてなんだ?)

 

 (だって、さっき姫路さんと木下さんの会話を聞いた時、木下さんも本当は怖がってたけど、姫路さんを怖がらせないよう強がってたかもしれないじゃないか)

 

 (・・・・・・確かにな)

 

 (それに、行った直前に斗真と木下さんの会話が聞こえたんだけど、木下さんは斗真に引け目を感じてたよね。きっと、今は斗真に良い所を見せようと必死になってるんじゃないかな)

 

 (・・・・・・・・・・)

 

 (・・・・・・斗真?)

 

 (・・・・・・・・・・)

 

 「斗真ってば!(バンッ)」

 

 明久はボウっと突っ立っていた俺の背中をバンと叩く。

 

 「え? あ、すまん明久。ちょっと考え事をしててな」

 

 「うん。それは見ての通り、わかるけど」

 

 「とりあえず、今は優子達と同じ方向に進むとするか。二人より先にチェックポイントに着かないよう気をつけながらだけどな」

 

 「うん」

 

 俺達は優子と姫路さんが進んで行った方向と同じ方へ歩いて行く。教室の間取りからして、おそらく二人は俺達よりもチェックポイントに近いかもしれんな。

 

 

 

 

 

 『・・・・・・瑞希』

 

 『ーあ、はい。なんでしょうか・・・・・・?』

 

 『チェックポイントに着いたわ』

 

 『え・・・・・・?』

 

 『げっ! 常村! こいつら失格しなかったじゃねぇかよ! どうするよ!』

 

 『どうするもこうするも・・・・・・、勝負するしかないだろ』

 

 

 三年は姫路さんと優子を脅かそうと様々な手を駆使してきたが二人はそれを乗り切り、常夏コンビがいるチェックポイントに辿り着いたのだった。

 俺と明久は出口直前に壁をスライドされ、道を塞がれている。おそらく姫路さんと優子の後に俺達を潰そうと考えてるな。

 

 

 「どうやら優子達はチェックポイントに着いたようだな。姫路さんも頑張ってくれてたし」

 

 「良かった・・・・・・。本当に良かった・・・・・・」

 

 「さっきまでは俺達に集中するあまり、優子達の方に道ができてしまったから、三年からすれば最悪に違いないだろうな」

 

 「姫路さんと木下さんの頑張りの勝ちだね」

 

 後は二人に常夏コンビの相手をしてもらい。次に控えてる俺と明久が止めを刺すという算段だ。姫路さんと優子なら物理もかなりの点数を取っているからどこまで減らせられるかが心配だが。

 

 

 『まったく・・・・・・。吉井と東條をボコる前にとんだ邪魔が入ったな。誰だよミスったヤツは』

 

 『あのクズ二人よりこっちの方がよっぽどしんどそうだな』

 

 『あーあ、二年なんざバカだらけだから楽勝だって言ったのは誰だよ』

 

 『悪かったよ。訂正する。吉井と坂本と東條はクズだが、中にはちょっとはマシなやつもいるから注意が必要だ。これでいいか?』

 

 『今更遅ぇよ。やれやれ・・・・・・。この二人、掃きだめに鶴ってやつか? あんなカスどもとつるんでいるなんて勿体無いな』

 

 

 壁越しに常夏コンビが俺と明久。ここにはまだ来てない雄二を罵倒する。

 

 「明久。言われてるぞ」

 

 「ちょっと!?僕はあの二人に言われるほどじゃないからね!?」

 

 「まぁ、実際はそうかもしれんが。アイツらからすればその程度のヤツにしか見えてないだろうな」

 

 「どうする斗真? あそこまで言われっ放しのままは斗真だって嫌だよね?」

 

 「ああ。優子達には悪いが。後で俺達がヤツらをぶちのめしてやればいいんだよ」

 

 俺と明久が話をしながら様子を見ると、姫路さんは目に涙を浮かべ始めていた。まさか姫路さん・・・・・・。

 

 

 『そもそも、あんなクズどもがいるから俺たちはーー』

 

 『・・・・・・ふざけないでよ』

 

 『ーーあ?』

 

 『アンタに斗真の何がわかるのよ。斗真はアンタたちが思ってるようなクズじゃないわよ』

 

 優子は姫路さんほどではないが、今にも涙を零しそうな顔をして常夏コンビに怒りを露わにしている。

 

 『そうは言っても、事実は事実だろ。すぐに問題を起こすし、教師には目ぇつけられてるし、部活で何か功績をあげているわけでもなければ成績だって底辺だ。あれをクズと呼ばずになんて呼べってんだ』

 

 お前らにだけは言われたくねぇよ。自分が楽をしたいが為に散々迷惑をかけてきたくせに何様のつもりだ。

 

 「明久。俺は今にもこの壁をぶち壊してヤツらを殴り飛ばしたいんだが」

 

 「ダメだよ斗真。気持ちはわかるけど今は堪えてーー」

 

 

 俺は優子を泣かせたアイツらを殴りに行こうと前に出るが明久に羽交い締めで押さえられる。そんなことをすれば俺は失格になるどころか問題を起こしたと見なされ学校から厳しい処分をくだされる。だが、今はそれどころではない。アイツらに一発ぶん殴ってやりたい気分だ。

 

 

 『まったく、アイツらは本当に学校のツラ汚しだ。人に迷惑をかけることしかできないなら、おとなしくゴミ溜めにでも埋まってろっての』

 

 

 アイツら、俺達が全部悪いみたいな言い方をしているが元はと言えばお前らがーー

 

 

 『どうしてそんな酷いことを言うんですかっ!!!!』

 

 

 姫路さん。俺達の為に怒ってくれてるのか・・・・・・。自分が失格になるとも知らずに。

 

 

 『んだテメェ・・・・・・! 文句でもあんのか・・・・・・!?』

 

 『確かにあなた方の言うように、明久君と坂本君の成績はあまり良くなかったかもしれませんし、色々と問題も起こしちゃったかもしれません・・・・・・! でも、だからってどうしてそれだけでそんな酷いことを言うんですか! 何も知らないくせに・・・・・・! 明久君たちが、本当はどれだけ優しくて、どうして問題になるようなことをやっていたのかも知らないくせに!』

 

 『っせぇな! お前こそアイツらがどこまで頭が悪いのか知らねぇんじゃねぇのか!? ちょっとアイツらの点数を調べてみりゃわかるだろうが!』

 

 『どうして成績とか、そんな数字の上でしか人を見られないんですか! 点数に出てこない部分にだって、大事なことはいっぱいあるのに・・・・・・!』

 

 

 姫路さんは涙混じりに、強い感情を込めて声を叫んでいた。あの姫路さんがそこまで俺達のことを思っていたとは知らなかったじゃ済まされんな。

 

 『ぎゃんぎゃんわめくな! あんなカス共の事情なんて知ったことかよ!』

 

 『明久君たちはカスなんかじゃありません!』

 

 

 『いいから出て行け! なぁ常村、コイツら今の大声で失格だよな!』

 

 『あ、ああ。そういやそうだな。こりゃラッキーかもな』

 

 『ってことだ! さっさと失せろ!』

 

 『ええ、そうさせてもらうわ。アンタたちなんか斗真たちに無様にやれてしまいなさい。行くわよ瑞希』

 

 『・・・・・・・・・・はい』

 

 

 

 

 

 アイツら、優子だけじゃなく、姫路さんになんてことを

 

 「明久。さっきの作戦だが、予定を変更してもいいか」

 

 「え?」

 

 「そろそろ雄二と霧島さんが来るだろうからアイツに俺がやる予定だった役割を任せたいんだ。理由はわかるよな?」

 

 「うん。別に構わないよ。斗真だって自分の手で常夏コンビを倒したいのは見てわかるからね」

 

 「すまない」  

 

 「でもその代わり。・・・・・・絶対にアイツらには勝たないと姫路さんに合わせる顔がないよ」

 

 「ああ。言われなくてもわかってるよ」

 

 俺は明久と拳を突き合せ、常夏コンビがいるチェックポイントを目指して歩き出す。

 

 

 「「ここからは本気だクソ野郎」」




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