バカと双子と二刀流   作:ペンギン太郎

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第十四問 肝試し終了後

 『いやー、結構面白かったな。装飾もかなり大がかりだったし』

 『流石は学園あげての騒ぎってところだよな。盆休みの間の一般開放も来てみるかな』

 『先生たちがお化け役やってたりするんだろ? 高橋先生の召喚獣とか気になるよな』

 『鉄人が出てきたらどうする?』

 『・・・・・・そ、それは大丈夫だろ・・・・・・。一般開放なんだから、人様に見せられる召喚獣を出すはずだから・・・・・・』

 『そうあって欲しいもんだな・・・・・・』

 『ねぇねぇ、着させてもらった浴衣可愛かったね』

 『そうだね。一生の思い出になったんだし、東條先輩には感謝しないと』

 

 

 肝試しが終了し、補習と夏期講習の最終日という解放感や片付けは必要ないという学園長のお達しもあって、下校していく皆は晴れ晴れとした顔をしていた。一方、勝負に負けた三年生達は

 

 

 『チッ、何が一生の思い出だよクソがっ!』

 『負けた俺たちに対するあてつけかよ・・・・・・』

 『卑怯な手を使って勝った癖に図に乗りやがって・・・・・・』

 『おまけに常村と夏川がFクラスに土下座して謝ったせいで俺たちの面目が丸潰れじゃねぇか!』

 『東條・・・・・・この屈辱はいつか晴らしてやる・・・・・・っ!』

 

 

 各々が悔しさを露わに汚い戯言をほざいていたのだった。

 

 

 「・・・・・・斗真」

 

 「ん?どうした優子?」

 

 「・・・・・・ありがとう。仇を取ってくれて」

 

 「ああ、あれはただ俺と明久が常夏コンビをぶちのめしてやりたかっただけだから。そんな、仇を取るつもりはなかったんだし・・・・・・」

 

 「でも、とうくんと吉井君があの二人を倒してくれたおかげで三年の皆は二年生に対する態度を改めてくれたよ。まぁ、顔に泥を塗られてとうくん達を憎んでる人達もいたけどね」

 

 「姉ちゃん・・・・・・。ごめんな、姉ちゃんに迷惑をかけてしまって・・・・・・」

 

 「ううん。とうくん達は何も悪いことはしてないわ。寧ろ謝らないといけないのはこっちだから」

 

 姉ちゃんは俺と優子に深々と頭を下げた。

 

 「止してくれよ姉ちゃん。俺と明久はただ・・・・・・」

 

 「いいのよ。こうでもしないとあなた達に対して申し訳が立たないから」

 

 「真理さん。もう止しましょう。これ以上やっても後がしんどいだけですので」

 

 「そう、優子ちゃんが言うのならそうさせてもらおうかしらね。私としても常村と夏川の無様な姿を見れたんだし良しとしますか」

 

 姉ちゃんは頭を上げ晴れやかな顔をしていた。姉ちゃんとしては俺達二年生に負けたことより、常夏コンビをはじめとする三年生が散々バカだクズだと罵倒しておきながら俺達に敗北し、土下座をしたことに清々してるだろうな。

 

 「あ、そうだ。姫路さんに謝罪したことについて明久に話しておかないとーー」

 

 「とうくん。吉井君には霧島さんから話してくれてたみたいよ」

 

 「え? 霧島さんが?」

 

 「うん。さっき、姫路さんが屋上で吉井君を待ってるって言ってたからきっと二人っきりで話をしてるんじゃないかしらね」

 

 そうか、あの霧島さんがな・・・・・・。多分、姫路さんが頑張っている姿を見て自分も負けてられないと思っただろう。あ、そうだ。

 

 「折角だし、二人がどうなってるか見に行こうかな」

 

 「ちょっと斗真。そういうのはあまり関心できないわよ」

 

 「そうよ。後は二人だけの問題だから外野の私達があまりでしゃばるのは良くないよ」

 

 「いや、そうは言うけどな・・・・・・。姫路さんが明久にどう迫ったか気になるじゃんか」

 

 「ふ〜ん。それ以上余計な口を挟むのならこの場でお仕置きをしてあげようかしら?」

 

 「ま、待て優子。明久と姫路さんのことは諦めるから俺の関節は外そうとしないでくれ」

 

 「宜しい。じゃあ斗真。一緒に帰りましょう。校門で秀吉も待ってくれているから早く行ってあげないと」

 

 「あ、ああそうだな。じゃあ姉ちゃん。俺と優子は秀吉を含めた三人で先に帰るからまた後でな」

 

 「はーい。秀吉君には「浴衣可愛かったよ」ってよろしく伝えといてね」

 

 「オーケー。ちゃんと秀吉には言っておくから」

 

 そうして俺は優子と一緒に校門前まで行き、そこで待っている秀吉と合流して二人に腕を組まれたまま下校したのだった。

 

 

 

 

 

 「・・・・・・ふふっ。とうくんには悪いけど、ちょっと屋上を覗いてみようかしらね〜」

 

 斗真と優子ちゃんが下校したのを確認した私は一人だけ吉井君と姫路さんがいるであろう屋上に行ってみることに。

 屋上に着くと扉が少し開いていたのでそこから覗いてみると、そこではなんと

 

 

 

 

 姫路さんが吉井君のほっぺにキスをしていた。

 

 

 

 

 

 『ひひひ姫路さん!? 今何を━━!?』

 『さ、行きましょうか明久君。折角の夏休みです。色々と遊びの計画を練らないといけませんからね』

 『いや姫路さん! それどころじゃないよ! 僕の話を聞いてよ!』

 『夏休み、楽しみですねっ』

 『ちょっと姫路さんってば!』

 

 

 どうやら二人は良い雰囲気になってるみたいだし、ここは二人に免じて秘密にしてあげようかしらね。

 

 「なにしてるの姉ちゃん?」

 

 「なにって、吉井君と姫路さんがどうなってるか見に来ただけだけ━━え?」

 

 声のした方を振り向くと、そこには先に帰っていた筈の斗真と優子ちゃん。それに、秀吉君が呆れた様な顔をして立っていたのだった。

 

 

 

 

 

 「ったく、姉ちゃんのことだから自分一人だけ明久と姫路さんの様子を見に行くと思っていたけど、まさか本当にそうしてたとはな」

 

 「え!? とうくん? 優子ちゃん達と一緒に帰ったんじゃなかったの?」

 

 「秀吉が教科書を教室に置き忘れていることに気付いて一旦教室に戻ったんだよ。で、帰ろうとしたら姉ちゃんが屋上に向かったってアランが教えてくれたからわざわざここに来たんだよ」

 

 「あ、あははは。アラン君、まだ学校に残ってたのね・・・・・・」

 

 「当たり前だろ。アランは姉ちゃんに頼まれて用意した女子の浴衣をクリーニングに出す為に愛子やムッツリーニと一緒に整理をしてたんだぞ」

 

 「ムッツリーニは途中で鼻血を出して気絶しておったがのう」

 

 「もう、お義姉さん一人だけ覗きに行くなんてあんまりじゃないですか。それでなんですけど、瑞希達はどうしてました?」

 

 「どうって・・・・・・姫路さんが吉井君にキスをしてたんだけどーーあ、しまった!?」

 

 「「キスだと(だって)!?」」

 

 「そうじゃったか。まさかあの二人がそこまで進展するとはのう」

 

 「ちょっととうくん!ここで大声を出さないでよ!もし二人に気付かれでもしたら━━」

 

 あの〜姉ちゃん。そう言ってる姉ちゃんが一番大声をだしているんだけど。

 

 『え!? 誰か見ているのですか!?』

 『え!? ひょっとして雄二!? アイツ、まさかこのことを須川君たちに報告して僕を嵌めようとしてるんじゃ━━』

 

 明久は自分がキスされたところを見られたと思い、扉の前に駆け寄り、思いっきり扉を開けてしまった。その結果

 

 「へ? なんで斗真たちがここにいるの?」

 

 「あー明久。すまなかったな」

 

 「明久、お主は本当罪深いヤツよのう〜」

 

 「吉井君。良かったね」

 

 「ごめんね吉井君。皆には内緒にしておくから」

 

 「え?・・・・・・ふぇぇぇぇっ! まさか、さっきの一連の出来事、斗真たちに見られてたの━━っ!?」

 

 「え!?わ、私、なんて言ったら良いかわかりませんが、は、恥ずかしいです・・・・・・」

 

 こうして明久と姫路さんは俺達にキスしたことを知られてしまい、気まずい時間が流れていくのであった。

 

 

 

 

 

 「おい明久。海に行くと言っても、どこの海に行くんだ?」

 

 「確か、僕が小さな頃に行ったことのある場所だと思うけど・・・・・・」

 

 「この前玲さんに小さい頃の明久が海に行った時の写真を見せてもらったが、俺も昔行ったところと似てたから多分あそこだろうな」

 

 「海、ねぇ・・・・・・。ウチはできれば山の方が嬉しかったんだけどね・・・・・・」

 

 「わ、私もです・・・・・・」

 

 「アタシは遊びに行けるのならどっちでも構わないわ」

 

 「ボクは海とかプール大好きだけどなー」

 

 「・・・・・・私も嫌いじゃない」

 

 この日、俺達は海に遊びに行く計画を立てる為に明久の家に集まっていた。

 聞いた話だと玲さんが車を出してくれるみたいだが、参加するのはFクラスのメンバー(俺・明久・雄二・ムッツリーニ・秀吉・島田さん・姫路さん)とAクラス(優子・愛子・霧島さん)の十人だ。アランも誘いはしたが、その日は用事がある為来れないと言っていたので不参加となった。

 

 「近くで祭りがあると良いのじゃが」

 

 「あ。それいいね。どこかにないかなぁ・・・・・・?」

 

 「あるにはあるぞ。前に家族と一緒に遊びに行った時、近くでお祭りをしていたから祭りの予定日を調べてその日に行けば問題ないだろ」

 

 「・・・・・・・・・・水着に浴衣・・・・・・生きて帰って来られるか・・・・・・」

 

 ムッツリーニ。お前はいつ倒れるか心配だぞ。

 

 

 Prrrrr!

 

 

 「あ、ごめん。電話だ。ちょっと外すね」

 

 「おう。行ってこい」

 

 明久はスマホを持って、リビングを出た。おそらく、電話の相手は玲さんだろうな。

 

 「ねぇ斗真。それまでに水着を新調したいから今度の日曜日アタシと一緒に水着を買いに行きましょう」

 

 「あ、姉上狡いのじゃ。ワシも今度はちゃんと男物の水着を斗真と買いに行くのじゃから一緒に行くぞい」

 

 「なによ。アンタはそうやって斗真とイチャイチャしたいだけでしょ。学校じゃアタシよりも斗真といる時間が多いんだから少しくらいはお姉ちゃんに譲ってくれてもいいじゃない」

 

 「嫌じゃ。肝試しの時は二人で回れなかったからその日はワシも斗真と一緒に行きたいのじゃ。姉上は邪魔をしないでくれ」

 

 「アタシだって斗真と二人っきりで行きたいのよ。アンタこそ邪魔をしないで頂戴」

 

 秀吉と優子が互いに俺の腕を組んで言い争いを始める。

 

 「落ち着けよ二人共。俺は別にどっちと一緒に行ってもいいからここで喧嘩はするなってば」

 

 「海ですか〜。準備は大変ですけど、楽しみでもありますね」

 

 「ウチも今度こそきちんと水着を用意していかないとね」

 

 「ボクも新しいの買ってきちゃおうかな〜」

 

 「・・・・・・楽しみ」

 

 姫路さんを始めとする女子達が楽しみにしながらその日が来るのを待ち望んでいた。

 そして、電話を終えた明久がやけに深刻な顔をしているがどうしたんだ。

 

 「ん?明久。話はどうなったんだ?」

 

 「それなんだけど、姉さんが昔泊まったことがあるペンションを借りることになったからそこで一泊しようって話になったんだけど」

 

 「お、それは良い話だな。折角の海なんだし、思いっきり楽しめるんじゃんか」

 

 「そうだね・・・・・・。ところで、もう一回電話するけどいい?」

 

 「別に構わないけど、どこに電話するんだ?」

 

 「うん、ちょっとね・・・・・・」

 

 明久はスマホを耳にかざし再び電話を始める。一体どこに掛けたんだろうな。

 

 「あの、もしもし? 救急病院ですか?」

 

 「・・・・・・さっきの間に何があったんだ明久?」

 

 何故病院に電話を掛けたかはわからんが、命に関わるのは確かなようだった。




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