それではどうぞ・・・。
鹿角家長女の鹿角聖良は日記をつけるのが日課だった。
彼女曰くその日の出来事を何か形に残すことは、日々を振り返るのに大切な要素であるらしい。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
○月✕日
今日は妹の理亞の高校入試の合格発表の日でした。
結果から言ってしまうとあの子は合格していました!
私と母も一緒に見に行ったのですが、私が先に理亞の番号を掲示板で見つけた時には思わず声をあげて喜んでしまいました。
想像以上に声が大きかったのか周りからの視線を受けて少し恥ずかしかったのですが、そんなのすぐ気にしなくなるくらい嬉しかったのです。
当の理亞は特に表情には出していませんでしたが、あの子もきっと嬉しくて心では喜んでるんだと思います。これでやっと二人でスクールアイドル活動ができますね!あの日誓った夢を一緒に追いかけましょう!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
〇月*日
今日は久しぶりに雪が積もりました。どうりでいつもより寒いと感じました。
あと母さんから大切な話がありました。
私たちに新しい家族が増えるみたいです。
母さんが言うにはその子は男の子で母さんの昔からの友人の息子さんとのことでした。
その男の子の名前は白銀雪くんといって、写真で少し見たんですが名前の通り雪のように白い肌で何だか不思議な感じがしました。
彼は事故でご両親を亡くしていて、親戚の家庭を転々としていたところを母さんが見かねて引き取ることにしたようです。
私たちも父さんを亡くしているので彼を他人のようには思えませんでした。
ですが・・・彼には両親も兄弟もいないので寂しさは私たちの比ではありません。
母さんも言っていましたが白銀雪くんには家族からの愛情というものが一般的な子供に比べて圧倒的に足りないのだと、彼を愛してあげる存在が必要なんだと私も思いました。
だから私は母さんからの問いに即座に答えを出すことができました。
私たちが彼と一緒にいてあげること・・・それが私たちにできる精一杯なんだと。
それに弟ができるというのも悪い気はしませんでした。
私は母さんの意見に賛成でしたが理亞は何だか迷っているように見えました。
少し考えれば当たり前のことです。急に知らない人が家族になるなんて言われたら多くの人は戸惑うに決まってます。
だから私は理亞の意見を尊重するつもりでした。いくら私や母さんが良くても理亞が嫌というなら優先されるべきは理亞の意見です。彼女も紛れもなく私の妹で鹿角家の一員ですから。
ですが意外なことに理亜は私たちの意見に賛成してくれました。
どうしてでしょうか?
てっきり私は人見知りの理亜はきっぱりと断るか答えを渋るのかと思っていましたが・・・
あの子も彼に何か思うことがあって親近感を感じたのでしょうか?
姉としてはそうであってほしいなと思うばかりです。
とにかく白銀雪くんと会うのが楽しみです!
どこに行こうか、どんな話をしようかなと想像して笑みがこぼれるばかりです。
さて明日は理亞と練習する予定なので今日はここまでにしておきます。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
〇月+日
今日は待ちに待った日が来ました!
私たちの家に白銀雪くんがやって来たのです!
私と理亜は突然のことでびっくりしましたが、どうやら母さんが今日来ることを伝え忘れていたみたいでした。
目の前で見る雪くんは写真で見たときよりも成長していましたが、雪のような白さはやはり健在でした。
それと特徴的だったのは彼の目で一般的には目つきが悪いと言われるような感じでしたが私自身そんなことは全く感じませんでした。それどころか優しそうな雰囲気から彼は良い人なんじゃないかって直感で感じました。
私は簡単に自己紹介しましたが理亞は緊張していたようだったので代わりに私が理亞の自己紹介をしました。
・・・もしかしたら余計なお世話だったかもしれませんね。
そして彼が来た後はお店を臨時休業にして歓迎会を開きました。
準備のために四人でスーパーへ買い物に行って雪くんの好きな物を作ることにしました。
道中では雪くんが自分から口を開くことはあまりありませんでしたが、私や母さんが質問すると快く答えてくれました。
彼に聞いた話では両親とは静岡の方に住んでたみたいでそれからは日本各地を転々としていたみたいです。
昔のことを話している時の彼はどこか懐かしそうで、それでいて寂しそうでした・・・
私自身昔のことを聞いてしまったのは悪手だったかもと少し反省しています。
でもいいこともありました!今日の歓迎会の献立を決めるときに彼の好きな食べ物がオムライスだということが分かりました!
これを聞いた時なんだか子供っぽくて少し可愛いなんて思ってしまいました。
ということで白銀雪くん歓迎会のメニューは彼が好きなオムライスと私たちの店自慢のくじら汁、そしてデザートに近くのケーキ屋さんで母さんが予約していたホールケーキになりました!
ご飯を食べている時の彼は顔にはハッキリと表情は出ていませんでしたが、時折口角が上がったり、『おいしい』と呟いていたので喜んでくれたみたいで私も嬉しかったです。
多分雪くんは理亞と少し性格が似てるのでしょうか?
二人が早く仲良くなると私も安心なのですが・・・まぁこれは時間が解決してくれると信じましょう。
明日は雪くんにこの町のことを紹介したり、色んなところに出かけてみるのも良いかもしれません。
弟ができたことに感謝して今日はここまでにしようと思います。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
聖良は日記帳を閉じて、スマホを起動する。
待ち受け画面には今日家の前で聖良と理亞と雪の三人で撮った写真が写っている。
聖良と理亞は笑顔だが、雪は緊張しているのか俯き加減である。
そんな画面の中の彼を見て聖良は微笑む。
(私たち家族でたくさんの思い出を作っていきましょうね。いつかあなたが笑顔になれるように・・・)
翌日、聖良は雪を外に出かけようと誘った。
雪は「いいですよ。」と快諾してくれたので聖良は嬉しかった。
母の美紀は店番があるので一緒には行けず、理亞も誘ったが「恥ずかしい。」と断られてしまった。
ということで聖良と雪の二人で出かけることになった。
聖良はまず雪を連れて自らが通う函館聖泉女子高等学院に向かった。
「雪くん、ここが私と理亞が通う学校です。どうですか?大きいでしょう?」
雪は目の前にそびえたつ校舎を興味深そうに見つめていた。
「・・・確かに大きいですね。それより女子高なのに僕は入っても大丈夫なんですか?」
彼の疑問は最もだ。なんせここは女子高であり許可なく教師や関係者以外の男性が入校するのはご法度である。
しかし聖良は「入校許可証があるから問題ない」と雪の首にぶら下げたカードを指した。
それから彼女は学校中を移動しながら彼に紹介していった。
二人は話をする中で話題はスクールアイドルのことになった。
「雪くんはスクールアイドルって知ってますか?」
「スクールアイドルですか・・・聞いたことがないですね。部活動ですか?」
「まぁそんな感じですね。各学校結成されたスクールアイドルがラブライブという大会で優勝を目指します。私と理亞は今年からそのスクールアイドルになってラブライブに出場するつもりです。」
「そうなんですね。理亞さんとね・・・。ところでアイドルだからグループ名とかあるんですか?」
「はい、決めてありますよ。私と理亞はSaint Snowという名前で活動していきます。」
「Saint Snow、聖なる雪・・・いい名前ですね。」
「ありがとうございます。昔理亞と二人でスクールアイドルになろうって誓った時に決めたんです。空から降る雪の結晶を見て。」
「頑張ってください。僕なんかが力になれるか分かりませんが応援してます。」
「雪さん・・・。」
聖良は雪が少しだけ心を開いてくれたのではないかと感じ、なんだか嬉しくなった。
何事もなく順調に終わると思っていた学校紹介。
しかし問題というものはこういう時にこそ起こりうるものだ。
新学期が始まる前だが学校の敷地内には部活動などで多くの生徒がいて、許可証を提げているとはいえ女子高に男子がいるのはかなり目立つ事態である。
しかも聖良は二年生の時に生徒会長を務めていたというのもあり、学校内でもその知名度と人気はかなり高い。
故に聖良と雪が歩いているのを他の生徒が見れば、悪意はなくとも好奇の視線が刺さるのも致し方ないものである。
そして・・・二人とすれ違ったある生徒たちが二人に聞こえる声でこう言った。
「聖良さんってあんな人が好みなんだね~。ちょっとがっかり。」
「確かに。なんか意外。しかもあの男子ちょっと怖いし。聖良さんと釣り合わないよ。」
ある程度は聖良も見過ごすことはできた。
だが、明らかに悪意のある今の言葉だけは見過ごすことはできなかった。
聖良は振り返り先程の生徒のところに駆け寄った。
そして・・・
「今の言葉取り消してもらえますか?」
「「!」」
二人組の生徒は今まで見たことのないくらい怒りに満ちた彼女を見てうろたえた。
いつもは誰に対しても敬語で接して優しい生徒会長として信頼のおける聖良が誰かに怒っているところなど校内では誰も見たことが無かった。
そんな彼女が恐ろしく低い声で告げた言葉は二人に恐怖を与えるのに十分だった。
「え・・・あの・・・。」
「私の大切な家族を侮辱するのはやめていたただけませんか?」
(大切な家族・・・)
雪は不思議な感覚に包まれた。かつて両親や祖母以外に自分のことをこれ程想ってくれる人がいただろうかと。
「もう一度言います。先程の言葉取り消してもらえますか?」
「すいませんでした・・・。まさか家族の人だったなんて・・・」
「聖良さん、僕はもういいですからこれ以上は・・・」
聖良はいつの間にか周りに人が集まっているの気づかなった。
これ以上騒ぎを大きくしたくないという彼の考えをくみ取って二人はこの場を後にした。
学校を出て聖良は雪に先程のことを謝罪した。
「雪くん、さっきはごめんなさい。あんなことが起こるとは思わなくて・・・」
聖良が謝ると雪は特に気にしていない感じで答えた。
「大丈夫ですよ。ああいうのは慣れてますから。それに悪いのは僕で、あの子たちの言う通り僕なんかが聖良さんと一緒にいるのはおかしいですから・・・」
「そんなことはありません。私にとって雪くんは大切な家族だから・・・」
(そうか・・・この人は本気で僕のことを家族って思ってくれたんだ。)
「ありがとうございます。そんなこと言われたの聖良さんの所に来たのが初めてです。」
彼の言葉を聞いて聖良は自らの行いが彼を傷つけていただけだったことを理解し、後悔した。
(私は一体何ということをしてしまったのでしょう・・・彼の気持ちも考えずに・・・)
聖良は歩みを止め雪に聞いた。
「家に帰りましょうか・・・」
その声は弱々しく雪にも聖良が自分の為に言っているのだと感じることができた。
しかし雪はその提案を否定した。
「もし聖良さんが嫌じゃなければ・・・もう少しこの街を案内してくれませんか?なんだか
彼の言葉の意味を理解して聖良は喜んだ。
「はい!では次は一緒にお昼ご飯を食べに行きましょう!近くに美味しいところがありますから楽しみにしててください!それから最近素敵な雑貨屋さんができたので新しいリボンを買いに・・・」
それから二人は日が暮れるまで服屋や雑貨店を始めとした色んなスポットへ足を運び、雪は聖良を、聖良は雪のことをもっと深く知ることができた。
聖良は今日のことを日記に書き終えると、満足した表情で眠りについた。
そして彼女の机には今日雪に選んでもらったであろう新しいリボンが大切そうに飾られていたのだった。
次回はいつだろうな・・・うーん・・・分からん。
出来るだけ早くかけるように努力します。
見切り発車で書き始めたからすぐネタ切れになってしまう。
とにかく頑張ります。