陽だまりシリーズ:小日向未来<異聞> -帰ってきた立花麻由-   作:ヨザリイコイ

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小日向未来はもういない。


同族狩り

 腹部のタイフーンが唸りを上げて、風を体に送り込む。

「世界は変われど、姿は変われど……」

 風の力で更に強化された右腕を目の前にいる戦闘員の顔に叩きつけ、これを粉砕する。

 更に向かってきた3人に駆け寄り、1人を右の手刀で首をへし折り、2人をダブルラリアットで岸壁に叩きつけて沈黙させる。

 返す刀で背中にドロップキックを叩き込もうとした2人に、こちらは岸壁を蹴り上げて一回転し、それぞれの胴体に蹴りをお見舞いする。

 そして体を空中で一回転させ、機関銃班の4人組のうち、護衛役の1人の首に足を絡みつかせて投げ飛ばし、給弾手とMG3諸共破壊する。残り2人がそれぞれMP5やシュタイヤーAUGで私を撃とうとするが、機関銃の残骸を投げつけてどちらも弾き飛ばし、近くにいた射手の懐に飛び込んでボディーブローを叩き込み、それを持ち上げて最後の1人に投げつけて転倒させて、起き上がる前に頭を踏み潰して絶命させる。

「やる事は変わらず……」

 指揮官の蜘蛛男が発射した毒針を首を動かして躱し、飛び道具を避ける為にジグザグに飛びながら近づいて背負い投げをする。

 地面に叩き付けたところで、更に顔の複眼を左腕で打ち抜き、脳味噌諸共殴り潰す。

()()を殺すことしかできない……」

 蜘蛛男と戦闘員の遺体が溶けてゆく様を見て、自らの行いを慨嘆する。ただそんな事をしたところで、何か変わるわけでもない。

「改造人間がいる限り、何処にいてもこんな境涯から抜け出せない。別世界ならまだマシだと思ったのに、ここも仮面ノ世界と大して変わらなかった……」

 大首領こと、「彼」の力で飛ばされたこの世界には、「彼」の組織の改造人間が暗躍しているだけでなく、錬金術師だか魔術師だかよく分からない連中が、魔物擬きの改造人間を作るという大迷惑な行為をしていた。しかもどちらもテロを起こしていて、下手をすると私も連中と同類と見做されかねない。

 だからこうして改造人間の死刑執行人を続けている。

「しかし人間を守り続けても、今度はそっちに殺されかねない……」

 改造人間がいなくなるか、或いは大人しくなれば、今度はこちらが人間に狩られてしまう。理由は簡単。いつ牙を剥かれるか不安で仕方ないからだ。共通の敵がもういない以上、その敵と同じ改造人間を生かしておくほど、世間は能天気では無い。

 だが裏を返せば、共通の敵である改造人間のテロリストがいる限り、その心配はしなくても良くなる。生身の人間に改造人間を倒す事など出来ないのだから。

「同族殺しが、私の生き延びる為の唯一の手段だなんて、これを皮肉と言わずしてなんと言えば良いか……」

 何処に行こうと改造人間がいる限り、普通に生きる事なんか到底望めない。改造人間を倒す以外に、人間が沢山いる世界で生きていく術なんかない。

 頼りになる仲間はもういない。「彼」の扇動で集団ヒステリーを起こした人間に襲われて首と心臓だけになった私に、部品やマフラーを譲って皆んな溶鉱炉へと飛び込んでいった。人間にしても親父さんや滝さんを始めとした私達の支援者や唯一の同年代の友達の小日向瑞季までもが、嬲り殺しの憂き目に遭った。

 そんな目に遭ったにも関わらず、人間の味方をし続けなければ生きていけないなんて、何て損な境遇なのだろうか。ショッカーの怪人と今の私とどちらが幸せなのか、全く分からない。自分の頭で考えられる方が幸せかどうか、皆目見当がつかない。

 

 

 

 

 此処に来てから2ヶ月近くになるが、ずっと改造人間と戦っている。状況は、仮面ノ世界にいる時と何ら変わっていない。いや、仲間が居なくなった分、悪くなっている。

「もうこれ以上、仲間が殺しをしなくて済むという意味では、良い事なのかもしれないが……」

 1人で11人分の仕事をしないといけないのは、かなりしんどい。敵が何処に現れるかも分からないから寝る余裕も無い。だからといって泣き言も言ってられない。とっとと手を下さないと、恐怖でパニックを起こした人間に殺されかねないからだ。

「人でなしの国は人の国よりも住み難かろう……」

 夏目漱石の草枕の一節だが、今の私には人でなしの国の方が住み易いだろう。なまじ人間の中で生きようとするからこんな事をしなくちゃならない。かといって、この世界を自分のような怪物だらけにしたいなどと、そんな大それた事は考えていない。ショッカーと同レベルの畜生に成り果てたつもりはないから。

「とはいえ人間の為に、改造人間の死刑執行人をやっている私も、人の事は言えないのかもしれない……」

 向こうからすれば、ただの裏切り者で自らに災いを齎す存在でしかないのだから。

 

 

 

 

「何で缶コーヒーに130円も掛かるんだ」

 自動販売機の缶コーヒーの値段が高いことに愚痴をこぼしつつも、豆や器材を買うお金もない事からそれを買う。

「親父さんの淹れたコーヒーが飲みたい……」

 望んだところでもう飲めやしない物を想いつつも、何処の馬の骨かも分からないメーカーの不味いコーヒーを一気に飲み干し、空き缶を据え付けのゴミ箱に放り込み、ホンダ・ゴールドウィングに擬態させたネオサイクロン号で立ち去る。本来は本郷さん向けに作られたオートバイだが、本来の乗り手じゃない私にもよく馴染んでくれている。

「良い相棒だよ、お前は……」

 性能をフルに活かして走らせた事はまだ無いが、前の愛車であるポラリス号のように長く乗り続けられそうだ。

「それはさておき、そろそろ今日の宿を探さないと……」

 人が来ないようなタダのキャンプ場があれば有難い。首から下は色素が抜け落ちた人工皮膚で覆われているから、なるべく人に見られたくないんだ。

「何処かにないかな。横浜辺りには無いと思うが……」

 マシンを路肩に止めて、地図を広げて良さそうな場所を探すが、今いる辺りでは見つかりそうに無い。公園のベンチでゴロ寝でも構わないが、変質者に出会しても困る。キャンプ場にそういう輩が現れない訳ではないが、公園よりかは幾分マシである。

「もう日が沈みかかっている。早いところ決めないとな……」

 シティホテルに泊まって、お金を使うような事はしたくない。保守部品を購入できるように、節約できる所は節約したいから。

 

 

 

 横浜を抜けようとすると渋滞に遭った。何でも近くのコンサートホールで、人気歌手2人がコンサートをやるらしく、観客が大勢押し寄せたことでこうなっているようだ。

 30分経ってもマシンを動かせない事に辟易して、近くのファミリーレストランに入って、ソーセージの盛り合わせとドリンクバーを頼み、時間を潰す。

「またミュンヒェンに行きたいな……。奢ってもらったソーセージ美味しかったし……」

 ソーセージをフォークで突き刺しながら、在りし日の思い出に耽る。

「ネオショッカー発祥の地だったから激戦区ではあったけど、それ以外は外国暮らしに慣れたこともあって楽しかった……」

 今のように戦い続きという訳ではなく、そこを愉しめるだけのゆとりがあったものなぁ。それこそ普通の観光客のように、観光も出来た。

「11人分の仕事をしているからそれも出来ないのだろうけど……」

 

 

 

 

 ソーセージを食べ終えた時に、頭のOシグナルが改造人間の接近を探知した。正体は不明。未確認のタイプらしい。

 お勘定を済ませて、ネオサイクロン号を起動させて、シグナルを頼りに走らせる。幸いな事に、渋滞は解消されていたからかなり走り易い。

「コンサート会場に向かっているな……。お、すぐ横で止まった……。一体何を」

 コンサートホール近くの立体駐車場の屋上から様子を見ていると、空の上から液晶パネルを付けた怪物が多数現れた。確かノイズとかいう対人兵器だ。改造人間が呼び出したのか。

「なるほど、賢い……」

 考えてみれば、大人気歌手のコンサートというのは、会場の規模にもよるが、得てして人が数千から数万の単位で集まるものだ。そういう所を襲うのが、果たして利益になるのかどうかは、テロリストの抱えている最終目標にもよるが、単なる示威目的なら十分に効果はある。

 屋上から飛び降りて強化服を装着しつつ、腰の左側から打ち上げたV3ホッパーで会場の状況を確認すると、阿鼻叫喚の地獄絵図。殆どの人間が、何時ぞやの集団ヒステリーを起こした群衆と同じ表情で、我先にと非常口へと殺到する。スタッフがどうにか落ち着かせようとしているが、あれでは到底無理だ。恐怖で理性を失った人間を止める有効な手立てなんて有りはしないのだから。しかしそんな団子状態になった集団なぞ、狙い易い事この上ない的でしかない。

 私が中に飛び込んだ時には、人間はもう観客数名と私の物に似た強化服を装着した歌姫2名だけしかいなかった。

 

 

 

 

 歌手2人は、乱入した私を見て何故か顔色が変えたが、直ぐにノイズ狩りを再開した。私も負けじとノイズを倒しつつ、瓦礫を粉砕して道を作り、残骸の陰に隠れている人を逃がす。幾らパニックを起こした連中が消しとんだとはいえ、瓦礫まみれの場所では逃げ難い筈だし、それにスタッフもチラホラとしか生き残ってない上に、ノイズに対抗できるとは思えないからこのくらいした方が良い。それに改造人間の反応は、この辺りから動いていない事やノイズのやられ具合を考えると、自ら乗り込んでくる可能性が高いから放置していても問題はない。

「来た」

 ノイズが粗方消えたタイミングで、今回の黒幕らしき蝙蝠、いや吸血鬼のような見た目の改造人間が飛来した。首領の配下とは見るからに毛色が違う個体だ。恐らく開発元は別だろう。

 吸血鬼は、私を一瞥したが特に何かする訳でもなく、得物が太刀の青い歌手を襲っていた。しかし白兵戦向きの外見の割には、あっさりと押されていることから、実力は大したことないか、或いは経験不足でそこまで体が上手く使い熟せずにいるかのどちらかだ。

「放っておいたとしても、あの歌手が手を下しそうだから引き揚げるか……?」

 ただ見たところ、完全に逆上しているから迂闊に離れられそうにない。自分のコンサートを台無しにされたのだから無理もないが、そのうち観客を巻き込むんじゃないかと心配になる。残りは5人くらいだし、1人ずつでも逃すのにそれほど時間が掛からないのがせめてもの救いか。

 

 

 

 

 

「さてと、お嬢ちゃんで最後だね」

 最後に残った10歳ぐらいの女の子を抱えて、脱出路を走ろうとする。

 するとタイミング悪く、目の前に吸血鬼が吹き飛ばされてきた。これじゃ逃げられない。

「お嬢ちゃん。私がこいつを引きつけておくから、その隙に入り口まで逃げられる?」

 抱えていた女の子が頷いたのを確認してから下ろして、一旦物陰に隠れるように指示する。

 その直後、私を見た吸血鬼が飛びかかってきたので、後ろ回し蹴りを胸に喰らわせて床に叩きつける。

 更に顎を蹴り上げて、浮き上がった所を左足で腹に膝蹴りを叩き込んで観客席へと吹き飛ばした後、胴体を掴み上げてバックブリーカーを掛けてからきりもみ回転をして飛び上がり、ステージ目掛けて放り投げる。

 一息ついて非常口の方を見ると、あの女の子が通路に駆け込みドアを閉めていったのが見えた。どうやら巻き込まれずに済んだようだ。

「良し、これで一先ずは……」

 しかし安心している暇は無かった。敵さんは、歌手の事なんかまるで忘れたかの様に、足に何か巻きつけて此方に向かってくるし、青いのは青いので、吸血鬼を追って攻撃しようとしている。

「早いところケリを着けないと厄介な事になりそう……」

 地面を蹴り上げて、スラスターの推力を生かして吸血鬼よりも少し高い位置まで一気に飛び上がり、そのまま身体を捻って宙返りさせて両足を揃えた飛び蹴りを叩き込む。

「ギャッ!」

 背中の羽の付け根を踏み付ける形で地面へと蹴落とし、よろよろと起き上がってきたところに飛び掛かって、得意のヘッドシザーズ・ホイップで投げ飛ばし、叩きつけられて血反吐を吐いたところにのし掛かり、首に手を掛けて渾身の力で絞めあげる。

「お前のような奴がいるといい迷惑だ……! とっとと壊れろ……!」

 ギリギリと絞めていくうちに、鈍い音を立てて奴の首の骨が折れた。

「死んだか……」

 生気の失せた吸血鬼から離れて、肩にかけていたカセットアームを火炎放射器に付け替えて、その遺体を焼く。再利用されない為には、灰にするのが一番良い。何せ改造人間は、損傷箇所を修復さえすれば、永遠に死ぬことはないのだから。死ねるタイミングで、完全にあの世から帰れなくするに越した事はない。

「仲間を探すか……」

 どうせ此奴、1人で戦ってはいなかったのだろうから。こんな大規模なテロを1人でやらかすような奴はいない。早いところ狩っておかないと、「彼」と手を組まれるやもしれない。

「折角の仕事場を汚してしまい、申し訳ありません」

 舞台を血で汚してしまった事を2人に頭を下げて詫び、マシンを呼び寄せてから彼女らの呼び止める声を無視して、その場を後にした。仲間を早く片付けて、本業に戻ろう。

 

 

 

「何だ、この程度か」

 鎌倉市の制圧を完了した「彼」は、コンサート開始直後に占拠した数寄屋造りの屋敷から麻由とミラアルクの戦闘を見ていた。

「魔物の再現に失敗したとはいえ、それなりの強さは持っていると思ったが、蓋を開けてみると怪人と大差無いとは思わなんだ……。あれではショッカーの改造人間を使った方が安上がりだ。支援はしない事にするか……」

 溜息を吐きつつ、席に深く腰掛けて、かつての自分を忘れたまま戦う麻由に「彼」は思いを巡らせる。

「それにしても……、この世界が自分の故郷だとまだ気づかないとは……。あの集団ヒステリーで、過去の記憶が完全に消しとんだのかも知れんな……。何せ……」

 襲われた時の麻由の顔を思い出し、ニヤリと笑う「彼」。

「あの群衆は、中学生の頃の立花響を迫害した無節操な人間と同じ形相をしていたのだものな。あれでは、過去の事を無意識により強く封じ込めてしまうのも無理はない。そして自らを追い込む原因を作った改造人間を狩る事に、恐ろしいまでに力を入れるのも無理はない……」

 

 

 

 S.O.N.G.本部の司令室で、風鳴弦十郎は風鳴翼とマリア・カデンツァヴァ・イヴから報告を受けていた。内容は、先刻のライブ襲撃事件とそこに現れた正体不明の怪人物についてである。

「外見上は、神獣鏡のシンフォギアに似たところがあるな。しかし口にこんな物は付いていなかったし、後頭部以外が装甲で覆われているのが気になるな。何より」

 彼は、報告書に記載された写真の中の麻由のスケルトン化した部位を2人に指し示し、こう付け加えた。

「俺が指し示している部位のように、この人物にはあちこちに内部のメカが浮かんでいる箇所があちこちにある。この外見だと、パワードスーツが透明なパーツから構成されているというよりも、彼女の身体自体が透けていると見た方が自然だ。つまりは、ロボットか……」

「パヴァリア残党と同じサイボーグかと?」

「そうだ」

「そういえば司令。彼女は残党に手を掛けた時、お前のような奴がいるといい迷惑と奴に向かって吐き捨てていました。その事から考えて、恐らく正体は、マリアや司令の考えた通り、サイボーグと見ていいでしょう。ただ問題は、彼女が一体何処からやって来たのか、さっぱり分からない事です」

「パヴァリア光明結社所縁の人物では無い可能性もあると?」

 その問いに翼は頷き、あくまでも推論と断りを入れた上で理由を話し出した。

「パヴァリア光明結社のサイボーグの製造は、結社の崩壊の2年前から始まった新しいプロジェクトだったと聞いています。しかし彼女は、身体の動かし方が撃破した残党に比べると、ずっと滑らかで実戦慣れしている印象がありました。なので先程、話題に上げた言葉も併せて考えると、サイボーグ相手の戦闘経験は豊富なのでは無いかと考えられます。しかしパヴァリアでは、サイボーグの製造数は、接収した資料によれば、3人しかいないとされています。ともなれば……」

「他にサイボーグがいない環境では、どうやって経験を積んだのか、説明がつかないということだな?」

「はい。なのでサイボーグが出回っているような場所から来たと考えた方が、自然では無いかと」

「でもこの地球上にそんな場所はない。となると並行世界からやって来たのかしら? 確かにお互いがお互いの事を全く知らない様子だった事を考えると、そう考えた方が自然ね」

「並行世界の住人か……。ともなると急いで見つけて保護しないとまずい事になりそうだ。鎌倉が目をつけないとも限らないからな」

 麻由の保護を当面の方針に定める弦十郎。その鎌倉の動きに、懸念を抱く必要はもう無いのだが、今の彼にはそんな事など知る由もない。

「当面は、彼女の捜索に当たってくれ。ただ彼女を刺激するような行動は、くれぐれも慎むように。2人の証言からして、人間に敵対的とは考え難いが、何かの拍子にそうなりでもしたら元も子もない」

「はい」

「了解」

 今後の活動に関する司令を受け、司令室を退出しようとする2人を、思い出したかのように弦十郎が呼び止めた。

「どうかしたのですか?」

「一つ伝えておかねばならない事があった。これを見てくれるか」

 そう言って2人に彼が出した写真には、無人ドライブインで一服している麻由の姿があった。

「これは……、小日向ですか?」

「ああ。群馬県に帰省していた職員が偶然目撃し、写真を撮って先刻こちらに送ってくれたんだ。髪の長さが若干違う事やリボンで髪を結えていない事などを考慮しても、顔立ちや背格好は未来君のそれと全く同じだ。声も未来君の物だったらしい。ただ……、少し気になる事があってな」

「並行世界からいつ戻って来たのかということですか?」

「それもそうだが、俺が気になったのはこれだ」

 その言葉とともに差し出された2枚目の写真は、ゴールドウィングに擬態させたネオサイクロン号に跨る麻由を写していた。

「バイクに詳しい職員から聞いたのだが、これは1980年代初頭に出回ったタイプで、日本には一般販売されていなかった物なんだ。当然、製造も終わっているのに、何故そんな物に乗っているのか、そもそもいつ運転免許を取ったのかも分からないんだ。何よりも2枚めの写真を撮った時に、接触してきた職員が誰だか分からないような素振りを見せていたそうだ。全く知らない仲でも無いのに、初対面の人間と接するような態度だったのが、妙に気になったらしい」

「人違いでは無くて?」

「人違いにしてもここまで似ていると、かえって妙だろう。一応、この未来君らしき人物のことも頭に入れておいてくれ」

 

 

 

 

「あっ、流れ星……」

 山梨県の桂川沿いの空き地にネオサイクロン号を止めて、草原に寝転がり夜空を見上げる。雲もなく、空気も澄んでいるから、星がよく見える。

「星の屋根ってのも、豪華な物だよね……」

 明日も晴れるようだから雨漏りの心配はない。少しばかり風が吹いてくれれば、力もつくから有難いのだが、流石に贅沢か。

「それにしても逃げられた人は、ちゃんと帰れたかな……」

 皆んな、身一つで逃げ出していたから帰りの足が確保できるか心配になる。車で来たならともかく、公共交通機関で来た人は無一文だと帰るのも、迎えに来てもらうのも能わない状態になる。

「テロリストに入り込まれるような手ぬるい警備をしていたのだから、帰りの電車賃ぐらいは主催者が出してくれそうだが……、どうなるかも分からんな……」

 ノイズが入り込むだなんて予想出来なかったと言うかもしれないし。

「それはさておき……、あの吸血鬼の仲間を早いところ見つけ出して、叩き潰しておかないと……。またなんかやらかすぞ……」

 早く探し出さないと、尻に火がつきかねない。そうなればまた……、首と胸だけにされてしまうかもしれない。そんなのは御免だ。しかし自分の行動が、人間の利益になっていると考えると、どうもやりきれない。

「あーあ、来る日もくる日も同族を殺さないといけないのは、とおっても辛い……」




如何でしたか。
本編や外伝に載せている作品が、行き詰まりを見せ出したので、リフレッシュに新しく作品を作りました。楽しんでいただけたのなら幸いです。
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