巫女と天パと超絶ラッキーガールが異世界から来るそうですよ? 作:ジャンヌ
いま、静かに壊れゆく。
第一訓 準備なんてそうそうさせてくれない
「・・・銀さん」
「・・・銀ちゃん」
「何だ二人とも、んな陰気くさいツラして。あれか、女の子の日か」
「僕は男です・・・それより」
背景は“万事屋銀ちゃん”の正面。BGMが流れ、ただ三人の声が流れてくる。
「・・・ここって二次創作投稿用のサイトですよね?」
「若干メタイが・・・どうした?」
少しの間があき。
「なんでアニメのグダグダ演出になってんですかぁぁ!!」
天を震わしかねないほどの、大きな突っ込みが響き渡る。
「しょうがないネ、作者のジャンヌが無理くりアニメの感じを出したかった故アル」
「にしても!?せめて挿絵ぐらいは入れませんフツー!?アニメ知らない人は何が何だか分かんないでしょ!?」
「ぱっつぁん、そりゃあ無理に決まってんだろ。アイツ、機械音痴だから」
誰からということもなく、三人分のため息が立ち込める。
「つーかよぉ、なんでまた新しいシリーズ始まってるわけ?俺、まだあっちのクロス物で暴れてる途中なんですけど。白夜叉っぽくさせられていきなり日常に戻されてもメンドインだよこんちくしょー。どこの女ったらしだよ」
「・・・あの、一番銀さんがメタ発言ですよね?さり気に宣伝までしてますし」
「タイトルは『はたr』」
「黙れこの天パぁぁぁ!!」
「あぁなんだやンのかこのメガネぇぇ!!」
「かんけいないだろぉぉぉ!!」
「・・・喧嘩は外でやれアル。お腹へったネ」
・・・ただいまお見せできない状況になりましたので、別の世界のVTRをどうぞ~
***
幻想郷。それは、人間たちに忘れ去られた者たちが集う、地上の楽園。妖怪、人間、妖精、果ては神まで。全ての超常現象が、そこにある。
特に、スペルカードなるものが流布されてから、人と妖怪との共存関係はかなり改善されてきた。今まで血を持って勢力を拮抗させてきたのが、ほとんど傷つくことなく、また襲い襲われ、退治し退治される関係を無理に取らずとも、力の維持が可能。時たま“異変”が起きる意外には、平和になったといえる。まだまだ改善点は数多くあるが。
さて・・・退治といったが、強大な力を保持する妖怪、はたして人間ごときの矮小な存在が勝てるものなのか?
「喰らえ、闇符『ナイトバード』!!」
小さいながらも、かなり密度の高い弾幕を展開する、金髪の妖怪。たとえ遊びでも、力が制限されるわけもない。
だが。
「少しはマシになったけど・・・甘いわね」
「うぉっ!!そうなのかー!?」
突然妖怪の背後に現れた・・・紅白の巫女装束を着た人間。右手を前に出し・・・
「夢符『夢想封印』!!」
あっさりと、勝負は決した。
硝煙とともに地面に激突する闇妖怪こと、ルーミア。
「いたた・・・もっと手加減してよ~」
「え?なんで?」
「罪悪感のかけらもないのね・・・霊夢」
そう、スペルカードルールにおいて人間最強といっても間違いじゃない、楽園の素敵な巫女こと『博麗霊夢』。
彼女は妖怪退治を生業としており、幻想郷を維持する『博麗大結界』の管理者、そして異変の解決者として確固たる地位を築いているのである。
もっとも、本人は少々面倒くさい、程度にしか、自身の立場を思っていないみたいだが。なにしろ、妖怪との勝負はほぼ負けなし。さすがに実戦では勝てない相手もここにはわんさかいるが、大抵のものがスペルカードのルールを順守する。よって、博麗霊夢は異変を解決できる。
「次は勝ってやる~」
「ふふ、いったい何年かかることかしらね?」
「馬鹿にするなー!!」
腕を振り上げてプンスカ怒るルーミアを軽くいなす霊夢。基本彼女は、妖怪にも人間にも容赦がない、いや、差別しない。それは彼女の強大な力故なのか、他人をなんとも思っていないのか。
ルーミアは、ふと疑問に思う。
「そういや、なんで霊夢は弾幕ごっこを考えたの?」
「なに、文句あるの?」
「いや、じゃなくて・・・別に今まで通りでも霊夢自身は構わなかったんじゃないかな~って」
実際に霊夢自身も、妖怪が襲い、人が退治する構造を否定しない。むしろそれがあるべき姿なのだという。
霊夢は少し考えるそぶりを見せてから、丁寧に言葉を紡ぐ。
「そうねぇ・・・一言でいえば」
「退治が・・・面倒だったかしらね」
ずこっ、とこけるルーミア。
「そ、そんだけ?」
「そ、そう紫にいったら面白がってルールつくって、広めて。ま、こっちは楽になったからいいんだけどね」
紫とは、幻想郷のもう一つの結界、『現と幻の結界』を管理し、“妖怪の賢者”と称されるほどの最古参の妖怪である。
に、しても・・・そんな適当な理由なのか。
違う、とルーミアは思う。
きっと、霊夢は。
人も妖怪も、楽しく触れ合える。そんな世界にしたかっただけなんだ。
ただの推測でも、実際に頭をぼりぼり掻いている彼女を見ていると、そう思う。
じゃなきゃ・・・
こうやって霊夢と、話していないから。
「ハハ、そうなのかー♪」
「・・・なによ、気持ち悪いわね」
突然手を広げてくるくる回り始めたルーミアを、若干引いた目で見る霊夢。
「じゃ、かえるのだー♪」
「じゃあね、勝手に人を食べんじゃないわよ」
「ふふ、善処します♪」
はたから見てもルンルン、と文字が浮かびそうなほど楽しそうな笑みで、ルーミアは森へとふよふよ、消えていった。
「さて、境内でも掃除しますか・・・ん?」
その時、上から手紙が降ってくるのを勘で《・・》察し、空を見上げた。
ひらひらと風に乗って舞い降りてきた手紙を、無造作に手に取る。
「嫌な予感しかしないわね・・・宛先、私だし」
そこには、『博麗霊夢へ』と簡素に書かれていた。
一目で見ただけでもわかる、これは相当に高度な転移術式が組まれていると。
「紫を呼ぶのもめんどくさいし・・・開けてみますか」
なのに、特に考えず封を切る。そこに書かれていた文を目で追う。
「なに・・・世界の全てを捨てて“箱庭”に来い?」
そう呟いた途端、霊夢は幻想郷から姿を消した。
「おーい霊夢!遊びに来たぜ・・・って、紫?」
いつものごとく、盛大に境内につっこんだ魔法使い、霧雨魔理沙。しかし、よく見知った親友の姿を見つけることはできず、代わりに茫然とたたずむ金髪の女性を認知した。
「何してんだこんなところで・・・」
「・・・霊夢?」
よく見れば、なにやら便箋を両手で引き裂かんばかりに握っているではないか。かたもわなわな震え、ここまで感情を露わにしているのは、天人が地上に侵略してきたとき以来である。
「ちょ、それ」
「まて、白黒。今の紫さまを刺激するな」
駆け寄ろうとした魔理沙を制したのは、金毛九尾の式神、八雲籃。言われなくても、八雲紫の様子が異常なことくらいわかる。
「・・・どうしたんだよ?」
「霊夢が、幻想郷から消えた」
「っ!!」
まさか、であった。昨日もお茶と饅頭を御馳走しに来て、変わらず彼女はうっとうしそうに手を振っていたではないか。何が、あった?
少しは落ち着いたのか、紫が口を開く。
「・・・この便箋、高度な術式が組まれているわ。異世界へ、境界を超えるほど。あの子もこれくらい、察知していたはずなのに・・・」
「ちょ、ちょっとまて。境界?・・・そうだよ、お前の能力なら一発じゃんか!」
八雲紫の能力・・・『境界を操る程度の能力』。
危険度は幻想郷でもトップクラス。何ができて何ができないのかさっぱり分からず、しかし空間移動程度ならスキマをひらき難なくやってのける。神に、ひとしき能力。
しかし、紫はかぶりをふる。
「・・・移動だけなら、確かに簡単ですわ。だけど、特定ができない・・・この術式、転移先の指定がおかしい・・・」
「・・・どういうことなんだぜ?」
「つまり、どこにいるのか分からない、ただそれだけだ」
籃が紫の説明を要約する。
そういった知識はとんと疎いがーーーキノコと魔法の知識は人一倍あるがーーーとにかく、問題なのは、霊夢が帰ってこない、ということだ。
このままでは結界の管理もままならず、幻想郷の崩壊の危険性がある。
それになにより・・・親友が消えるのは、誰だってさびしいものだ。
「私はこれから術式の解読に全力を注ぐわ・・・籃、いくわよ」
「はい、紫さま」
そうして一瞬でスキマ・・・目玉がギョロギョロとうごめく空間・・・に足を踏み入れる。
「ま、待てよ!!私に・・・何か、できることはないのか!?」
親友を探し出したい、純真な気持ち。
霊夢のことで頭がいっぱいだった彼女にも、それは理解できた。
「・・・そうね。異世界へのスキマが開いたら、真っ先に貴方を呼ぶわ」
「っ!・・・サンキュ、紫」
「いえ、お構いなく」
そう言い残して、スキマを閉じる。
「紫さま・・・それは、霧雨魔理沙を斥候にするということで?」
「ま、そう受け取っても構わないわ・・・でも」
本拠地へのスキマを開きながら、妖艶に微笑む。
「霊夢が笑顔になるのは、いつだってあの子の隣ですもの」
***
「死ねやこの貧乏神がぁぁ!!」
「・・・ホジホジ」
「話をきけぇぇぇ!!」
はたまた違う世界、ここは日本どっかの県にある、仏女津市某高級マンション最上階一角。
いま、ある一つの秘宝をめぐり、人と神との壮絶なバトルが・・・
「冷蔵庫に大事に保管していたプリン、あんた食ったわねぇぇ!!しかもご丁寧に二つも!!」
「え~、何のことか、紅葉わかんな~い、きゃ☆」
「口にカラメルソースつけたやつのいうことかぁぁぁ!!」
・・・失礼、ただの痴話喧嘩だった。
青筋を立ててお札の付いた木刀を振り回すグレーの髪の絶世の美少女、桜市子。
鼻をほじりながら、器用にヒトダマになったりしている、栗色の髪の死んだ目の少女、貧乏神の紅葉。
「ちょ、なんで私に“美”の文字がないんですかぁぁ!?」
「ごちゃごちゃうるせえ、さっさと罪を償えぇぇぇ!!」
ただいま二人とも、部屋の中で絶賛ファイト中です。
桜市子は、人間にしてはありえないほどの幸福エナジーーーー人を幸せにする力のことーーーを保持しており、紅葉はそれを刈り取りに取り憑いた、貧乏神。
数奇なことに、彼らは度重なる攻防、友まで巻き込む大異変を経て、ジャンプにありがちな奇妙な友情が芽生え。同じ部屋を共有しているわけである。
ただ、喧嘩の頻度が減ることないが、質が前よりさらに下がっていることは否めない。大抵は紅葉がちょっかいを掛け、市子が追撃する構図がメインだ。
「はぁ・・ちょっと、いい加減つかまりなさいよ・・・」
「やですよ、メンドクサイ・・・てゆ~か~、こんなんで息が上がってるいっちーって~、もしかしてお・と・し?」
「・・・壁が傷つかないようにとか、こちとら考えてんのよ・・・」
紅葉は人型からヒトダマフォームになれるため、物体をすり抜けられるが、人間の市子はそうもいかない。
否応なしに、動きが制限されるのである。
「じゃ、ばあ~い☆」
恐ろしく人を苛立たせる表情を浮かべ、どこかへ消えさる紅葉。
これ以上窓を割りたくないのよ、と愚痴を言いながらリビングへ戻る。
「・・・え?なに、これ?」
リビングテーブルの上には、見覚えのない手紙があった。宛先は確かに自分、桜市子とあるが・・・いかんせん、
「ぜぇぇったい、アイツの仕業ね」
紅葉のいたずらに、他ならない。これまでも、何遍ともなく罠を仕掛けられたことか。あんなダウナーな雰囲気のくせに、妙に頭は回るし手際がいいのである。
(・・・ま、そうだとしても)
市子の幸福エナジー量を、なめてはいけない。封印されているとはいえ、貧乏神の不幸エナジーを軽く凌駕するほどなのである。並大抵の罠は、不発に終わると言ってよい。
だから、特に留意せず開けた。
何か封をされた物があると開封したくなるのは、人間の性である。
「・・・悩み多し・・・才能・・・“箱庭”?」
最後の文字を読み終えた瞬間、光とともに、市子の姿はかき消えた。
***
「やっと出番だよコンチクショー。いいじゃねーか、ちょっとくらいハメ外したってよぉ・・・」
そうぼやきながら歌舞伎町の往来を通るのは、坂田銀時。万事屋の社長・・・つーかマダオである。
宇宙より天人(アマント)が襲来し、事実上大部分を侵略された、江戸。特に植民地とかまではいっていないものの、立場は宇宙の中では低い。
そんな廃れた世界でも、侍の志は消えたわけではない。
そのうちの一人、昔も今も、人を惹き付ける魅力を持つ、でもマダオ。坂田銀時。
「はぁ・・・とりあえず店番任せたけど・・・ま、大丈夫だろ」
社長としては最低な発言。しかも向かっているのは、パチンコ店。もう、クズである。
「ちょっとぉぉ!!さすがにこきおろしすぎじゃない!?あれだかんね、パチンコは大人の健全な働き口だかんね、あてれば一攫千金だからね!?」
だからマダオなのである。
それはさておき、どこか虚空にツッコンだ銀時は、懐から一通の便箋を取り出す。
「机の上にあったけどよぉ・・・いまどき便箋とか、古くない?」
大抵の連絡は電話で済ませている銀時にとっては、受け取った覚えのない便箋など、不可解の何物でもなかった。
開けようとはしたが、やべ、ペーパーナイフどっかやった。手でいっか、でも破いたらあれだかんなぁ・・・もういいや、あとで。メンドイ。
どこぞの貧乏神もびっくりの、怠惰っぷりである。
自身の宛先に視線を滑らせながら、手はガラガラとエアパチンコを回している。
ジャンヌは健全な高校生なので、パチンコのパーツなど知りません。マル。
「いや~今日は出る気がするぜぇ~っと・・・」
突如、回していた手がモニュ、とやわらかき何かにぶつかる。
便箋を凝視したまま、ピクリともせず固まる、銀時。
(あっれ~・・・なんでスポンジもってんだろ~な~コイツ・・・)
でもやっぱ前を見るのが怖い。銀時は以前にも二回程、同じことをやらかした覚えがある。
あの時は月詠という、銀魂でもまだ常識人ではあるヒロインだったから投げ飛ばされてクナイをめった刺しにされるだけで済んだが・・・もし、ゴリラとか、ゴリラとか、ゴリラとかだったら。
世界が、終わる。
(やべぇよ、言い訳が思いつかねーよ!?もういいあれだ、責任とるっていえば・・・いやだめだ、何か知らんが脳内から警告が。ちくしょうどうすれば・・・)
「どうしたのだ銀時、エリザベスの股など掴んで」
・・・へ?
予想だにもしなかった声に、恐る恐る前を見る。
確かに。
白いよくわからんマスコットの、股間に、手が。
それから、銀時は小一時間、何していたか覚えていない。
気づけば、海がきれいに見える断崖の上、夕日を浴びながら、一人体育座りをしていた。
「・・・エリザベスって・・・中身、おっさんじゃねーかよぉ・・・」
ただそれだけを呟き、よろよろ立ち上がる。
飛び降りる気はないが、ただ己の不遇さを、噛みしめずにはいられなかったのだ。
「・・・帰ろう」
糖分が、メガネと神楽がきっと、自分の帰りを待っている。
それだけを自らの行動する意思に変え、引き返そうとし、
「銀さん貞操を穢されたってホント!?大丈夫よこのさっちゃんの胸をいくらでも触っていいからって、あ」
前方に屈指のイロモノを視認し、反射的に後ずらそうとして、
空を思いっきり、踏み抜いた。
走馬灯って・・・ほんとはねーんだな。
必死に崖を駆け降りてこちらに手を伸ばすあやめを見、
そっと、意識を手放した。
帰りがおそい、と崖まで探しに来た新八が聞いたのは、たった一つの水音のみだったという。
***
こうして紆余曲折ありながらも、四人《・・》は、箱庭へと足を踏みいれた。
問題児しかいないこのメンツ、はたして黒ウサギに安寧は訪れるのか。
否・・・ないだろう。
次回投稿?お楽しみに!