巫女と天パと超絶ラッキーガールが異世界から来るそうですよ?   作:ジャンヌ

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そう思いませんか?




第二訓 濡れたブラウスってエロスだけど、直視できない

 

 箱庭郊外、小さな湖が爽快感を感じさせる、そんな場所。

 茂みからピョコン、と飛び出しているウサ耳。もし動物好きの女の子がここにいたら、問答無用でギュッと掴まれていただろう。

 もちろん作り物ではなく、正真正銘、本物のウサ耳。

(そろそろ来るはずデスよ・・・!)

 耳の所有者ーーー”箱庭の貴族”黒ウサギは、上空を見つめながら、拳を握る。

 実際に召喚してくれた主催者(ホスト)によれば、

 彼らは、彼女らは、人類最強。

 そんな夢みたいな人材が、コミュニティに加わってくれれば・・・!

(っと、来ました来ました!)

 ブゥン、と禍々しく空間に三つの歪みが生まれ、四人の人間たちが吐き出された。

 黒ウサギは箱庭でも屈指の実力者、はるか何千メートル上空の者でも正確に視認できる。

(えぇと・・・女性三人に、男性が一人・・・?あれは、人形でしょうか?ちょっと変わった熊さんデスが・・・)

 服装などてんでバラバラ、全く違う世界から召喚されてきたことが分かる。つまり、大成功。

(や・・・やったのですよーっ!!)

 キャッキャ♪と兎らしく飛び跳ねる。嬉しさで満ち満ちていることが、否応なしにでも理解できるであろう。まあ、実際に仲間にできるかは二の次になってしまっていることは否めないが。

 はっと気づいて、再び茂みに隠れ、様子をうかがう。ちょうど、湖に二つ《・・》、水柱が上がったところだった。

(緩衝材を何個か設置しましたから大丈夫だとは思うのですが・・・トホホ、謝らないといけませんね・・・)

 とここで、水柱の異様な少なさに疑問を浮かべる。

 空から落ちてきたのは、二人ではなかったか?

 もしや、地面にでも激突したのか?

 焦って周りに視線をめぐらすと・・・

「いったぁ・・・誰よ、こんなふざけたことしたやつ・・・ホント、風が吹いてラッキーだったわ・・・」

 グレーの髪の少女が、お尻をさすりながらぼやいているのが確認できた。無論、四人のうちの一人である。ホ、と黒ウサギは胸をなでおろした。

 に、しても。ラッキーといってはいなかったか。

 木々がザワザワと揺れていることから、突発的に強風でも吹いたのだろうか。それにしても、少しお尻を打っただけで済むとは、大した運である。

(もちろん、ギフトゲームでは幸運も立派な武器・・・いえ、むしろ非常に心強いです)

 運勢で勝敗が左右されるゲームなど、ほぼ無敵といっても過言ではない。

 かさねがさね言うが、これはとらぬ狸の皮算用に過ぎない。

(ん?もうお一方は・・・?)

 まさか、今度こそ大事故?あたりにはいそうにもないし・・・。

 不安と罪悪感が、除々に胸の内に広がっていく。探しに行こうと、森のほうへ向こうとして、

 

「動かないで」

 

 首筋に、ぶっとい針が突きつけられていた。

 まだ顔は湖に向いているので、後ろの下手人がだれか、確認できない。しかし、視界に映る針から、何より背後から、冷や汗が滝のように出るほどの怒気、殺気が叩きつけられていた。

「そのまま手をあげなさい。変なことをしたら、退治するわよ?」

「・・・慈悲は」

「ありません」

「あっは、取り付く島もないですネ♪」

 バンザーイ、とやけくそ気味に手を挙げる。

 ・・・間違いなく後ろの者は声からして少女、召喚した者だろう。

 しかし、黒ウサギが目を離していたのはほんの一瞬のこと。地上に降りて黒ウサギの気配を察知して彼女の背後をとるなど、神業にもほどがある。

「あんたを見つけたのは、勘よ」

 思考を読んだように、後ろの彼女が答える。どこからか取り出したロープでグルグル縛られながら。

 ・・・黒ウサギは、腐っても箱庭の貴族である。気配を一瞬で感じ取るなど、並大抵の者にできるとは思えない。

 なにより。地上に落ちていないと考えれば、答えは自ずと導ける。

 

 

(空を・・・飛んだ?)

 

 

 人間どころか、人外の中でも飛べるものなど、どれくらい存在することか。見た中では翼を所持しているもの、幻獣ーーーギフトをもった動物のことーーーは見当たらなかった。

 もしこの仮説が正しければ、よそうを遥かに超えるほどの実力者。

 ギュッと締め付けられ、ズルズル湖のほうへ引きずられながら、黒ウサギはゾワリ、と背中に悪寒が走るのを感じた。

 

 もしかしたら、自分たちは・・・とんでもない人達を召喚してしまったのかもしれない。

 

「ん?誰よそのウサ耳?」

「なんかそこの茂みにいたから、連れてきたわ。きっと、私たちを召喚した本人ね」

「根拠は?」

「勘よ」

「へぇ~、そう・・・こいつが、この桜市子さまを空から叩きつけた犯人ね・・・どう調理してやろうかしら・・・!!」

 それ以前に、問題児だ。

 この幸運少女は指をバキボキならしてもう修羅にしかみえないし、縛った本人はもうわれ関せずみたいな感じで座ってるし!?

 ホロリ、と涙がこぼれた。

 

 

***

 

 

『全く・・・ひどい目にあった』

 湖から上がりながら、器用にスケッチブックを掲げる熊の人形。まず人形が動く、という事態も異常だが、いつ書いたんだと。なんでスケッチブックが濡れていないんだと。声を大にしていいたい。

 彼は、熊谷。貧乏神の使い魔にして、さっきまで道路でタマという招き猫の福神とボール遊びをしている最中に急に上空に放り出された、哀れな熊の人形なのである。

『さて、まずは紅葉を助けなければな・・・』

 妙にダンディな台詞をスケッチブックにたたえ、それを持って湖にまた飛びこもうとする。じゃあなんで陸に上がったんだ。

 そんな心配も無用とばかりに、また新たに一つ、水柱が上がる。

「プハーっ!!」

 出てきたのは、栗色の髪にもうグッショリと濡れた”貧”の三角巾。貧乏神の紅葉である。

「全く何なんですかねぇ、ようやくワン○ピースの最新刊を読み終えたところだっちゅーに・・・」

 そうぼやきながら、ザバザバと陸に上がる。ツインテールからポタポタと水滴が垂れ、地面にシミを作っていく。

『紅葉、お互いに災難だったな』

「おや、熊谷まで・・・、いったい、どういうことなんでしょうねぇ」

 そうなんでもないような、もうなんかメンドイと顔に書かれていそうな表情を浮かべ、渋々あたりを見回す。

 視界にこれでもか、というくらいに飛び込んでくる、自然の数々。確実に文明の利器とか、コンクリートの箱とか、そんなもうすっかり見慣れた景色は塵ほども見当たらなかった。

(雑とはいえ、何かしらの道具、儀式で召喚されたようですね・・・市子がいることと言い、ほかにも二人くらい知らない人もいるようですから、碌でもないものでしょうが・・・ずいぶんと力はあるよう)

 不意に、裾がくいくいと引っ張られる。思考を中断させられ、渋々、自身の使い魔の法を向く。

「なんですか、熊谷」

『湖に死体が浮かんでいるが、どうする?』

「死体?ばかなことを・・・」

 そこまでいって、カチンと固まった。

 いや、途中水の塊みたいな緩衝材もあったことだし、死にはしないと思うのだが・・・。

 たしかに、プカプカと死体が浮かんでいた。

『どうする?』

 問いかける熊谷。

 いやいや流石に貧弱すぎでしょ、あれで死ぬとかどんなマイナス!?あ、顔がこっちに・・・てぇぇ!!白目!?白目向いちゃってますよぉぉ!?・・・仕方ない。

「熊谷。私は何もみてはいな」

「スルーすんなぁぁぁ!!」

 スパコーン、とハリセンがさく裂し、紅葉の体が揺れる。

「なにすんですか、市子・・・」

「あのね、少しは助けようとかないの!?外道にもほどがあんでしょ!?」

「だって、もう考えんのがメンドクサイ」

「少しは自重しろっ!!もういい、私が行くわよ!」

 そういって少女とは思えぬスピードで湖に飛び込む市子。水をかきわけて白髪の死体に向かう様子を見ながら、紅葉は少し、驚いていた。

 彼女の知る桜市子なら、少し前なら絶対に放っておくはずだからだ。

 天上天下唯我独尊を地で行く超絶ラッキーガール。そんな破綻した性格がここまで丸くなるとは、さしもの彼女でも予想できなかった。

 だからこそ、自分は、人間に興味が湧いた。

「市子、大人になりましたね・・・」

「下手な三文芝居打つ余裕があるなら手伝えやぁぁぁぁ!!!」

 怒りの叫び声をあげながら、しっかり死体を回収し、救命措置(?)に入っている市子。まあ、少女漫画風にイイハナシにされても、苛立ちしか起きない。

 どうやら死体は白髪の天パの男だったらしく、今市子の心臓マッサージでピューピュー水を噴水のように出している。

 ずいぶんと変わった格好だ。白が基調の青い渦巻があしらわれた着物を半分着流し、中から黒いインナーが露わになっている。意外と体つきもよく、木刀をさげているところから、余り堅気の人間ではないのかな?という印象をうける。ならばこれくらいで気絶すんな、とも思うが。

「そういえば市子、今まで何してたんですか?」

「あ?あそこのウサギにお仕置きしてたわよ」

 右手でマッサージを続けながら左手さししめした方向を見れば、確かに。腕も足も縛られてシクシクと泣いているウサ耳ミニスカ少女と、岩に腰かけ何か考えているらしい、脇を露出した紅白の少女がいた。

(・・・やりすぎでは・・・ていうかなんであの子、脇丸だしなんでしょうか?)

 まあ、見るに忍びないので、熊谷とともにウサ耳の少女に近寄る。

「・・・大丈夫ですかー?」

「うう・・・ウサ耳もげるかとおもいましたヨ・・・」

 大体理解した。それに、作り物ではなく本物らしい。

(ほんとに、異世界のようですね・・・)

 なんともメンドクサイ事情に巻き込まれたものだと嘆息する。

「で、貴女。私たちを召喚した張本人ですね?」

「ハイ・・・確かにこの“箱庭”に召喚したのはこの黒ウサギめデス・・・ですから、ウサ耳ひっぱらないでください・・・」

 何をしたんだアイツは。トラウマになってんじゃないか。

 すこしでも丸くなったと感慨にふけっていたあの時間を返してもらいたくなってきた。

 

「で、縄をほどいてくれませんか?」

「あ、面白いので続行で」

『外道か・・・』

 

 

***

 

 

 うっすらと、視界に光が戻る。

 ああ、ようやく天国にきたんだなと・・・。自身の業を鑑みれば、天国にいけたのは奇跡に近い。

 このときだけは、神に感謝しよう。いるか知らねーけど。

「・・・と。ちょっと!?」

 ・・・オイオイ、今時天国もサービス旺盛なのか?天使がJKのコスプレたぁ、気前いい。

 ・・・死んだら、なんでもしていいんだよな?

「あ、二時間延長なしで」

「・・・は?」

 あ、まだ会員じゃないからダメとかそういう話?

「わぁーった、で、入会料はいくらですか?」

「・・・冥土に送ってやりましょうか?」

 なんかピキピキ青筋立ってんですけど。え、なんかフラグ立てんの、間違った?つーか初対面だし。

「え、いや俺、死んだんじゃねーの?で、なんかコスプレでサービスしてくれんじゃねーの?」

「何を勘違いしているのか知らないけど、あんたは生きているわよ」

 頭をかきながら、目の前の天使が言う。

 試しに起き上がれば、体もちゃんと動くし、周りもてんで天国っぽくなかった。

 そもそもなんで、気絶してたんだっけ。

 パチンコ行こうとして・・・それから・・・

「うあああぁぁぁぁぁ!!!」

「ちょ、急になによ!?」

「なんでエリザベスの股間なんだよ!?それだったらまだゴリラのほうがよかったわ!!そっちの趣味はないの!!銀さんは生粋の女好きなの!!」

「大声で何口走ってんのよ・・・」

 まあ、トラウマ級の黒歴史が増えたのだから、仕方ない。ホントにモニュッってしたし。

 いくらか叫んで、落ち着く。そこでようやく、目の前の少女に目が向いた。

 おそらく自分を助けてくれたのだろうが・・・なかなか見かけない、女子高生の制服、ブレザー。水に飛び込んだからだろうか、ブラウスが肌にまとわりつくように透けている。おまけに髪から滴る水滴がピチョンと肩を舐めるさまは、さらに煽情的。さらにさらにさらに、巨乳。ボイン。グラマー。年の割にぶっちぎりの発育は、そりゃあもう。

「悪いがお嬢さん、俺の左手のデータを書き換えてもよろしいですか?」

「・・・どういうこと?」

「だから。俺の手をその巨乳に」

 問答無用に一本背負いされました。

「ふざけてんの!?初対面でよくそんなことがいえるわね!?」

「・・・いやほんと。そんなつもりなかったんだって・・・」

「どの口が言うの!?」

「そうそう、そのベストをぬいでもらっても」

「ぶち殺すわよっ!?」

 流石にコイツが変態だと気付いたのか、意図を察する市子。

 しかし、市子は疑問に感じていた。

 よく平気でいられるな、と。

 市子は自分の身を守るために、武術は人並み以上に嗜んでいる。それこそ、成人男性の意識を一瞬で刈り取れるほどに。

 だが、この男はあまつさえ上手く受け身をとったのか、投げられてもさして痛がらず、すぐに立ち上がったのだ。

 タダ者じゃない、とも思う。

 それ以前に、変態みたいだが。

「で・・・ここはどこなんだ?」

「知らないわよ、あのウサギに聞いても”箱庭”っていうこと以外はあんたが来てから話すって」

「ウサギだぁ?・・・やべ、鼻血が」

「ほら行くわよマダオ!!」

「え、ちょ、なんでそんな略称知ってんの!?あと首元引っ張らないで息が・・・ぐぅ」

 

 前途多難の、ようである。




霊夢が使った針は封魔針といって、極太の針にお札を貼って退魔の属性を持たせたものです。最近は余りみない。

数多の問題児SSで、ここまでカオス展開はあったか。
いや、ない。
ほんと、一巻が終わるのはいつになるのやら・・・。

わかりにくい所あったら、ご指摘お願いします。
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