巫女と天パと超絶ラッキーガールが異世界から来るそうですよ? 作:ジャンヌ
薄暗い空間のなか、中央にポツンとマイクが置いてある。
幕の袖から黒ウサギがマイクに向かって歩き、拾い上げる。
パチン、とスイッチを入れると同時に、黒ウサギをすっぽり照らすくらいのスポットライトが点灯した。
「…なぜ私は、慢心してしまったのでしょう」
悲壮な響きを込め、黒ウサギが言葉を紡ぐ。
「例え優しい言葉をかけられたとしたって、彼らが問題児であることに、変わりはないのに」
そう呟き、目を閉じた。
***
「ジン坊っちゃん!こちらが新たな同志の皆様でございますよ!!」
見ているこちらがウキウキするほどの笑みで、後ろの異世界人たちを指し示す。
ジンと呼ばれた齢十歳程度の少年は、見るからに緊張していたが、特に不具合が無さそうなことに安堵していた。
「黒ウサギ、そちらの三人方が?」
「はいな、こちら三人方が…え?」
ジンの言葉に疑問を覚え振りかえれば、
桜市子。
貧保田紅葉。
博麗霊夢。
あと熊谷。
「あれ?あれれ?もう一人いらっしゃいましたよね死んだ魚のような目をしているのにいざというとき輝く天パのお侍さんが?」
「あーそうよねー(棒)」
「まあ居ましたけどねぇ…」
「なんと言いますか…」
『南無三』
三人ともどこか様子がおかしい。熊谷にいたってはなんか不吉だ。
「ど…どうしたので?」
段々不安になる黒ウサギ。着いてそうそう迷子とはなんの冗談か。いや、後ろについていくだけなのだから何も難しいことはないはずだが。
「そうそうあれよ、『トイレにいくぜ!』ていってた」
「いや長すぎでしょう!?」
「違いますよ霊夢さん、なも知らぬ美女にホイホイついていったんですよ」
「そんなわけは…って否定できないのが悲しいデス…」
食い違う証言。業を煮やした黒ウサギは大声をあげる。
「あーもうっ!正直に答えてください!!」
「「「というのは嘘で、ホントは霊夢に世界の果てまでぶっとばされた」」」
「予想の斜め上キタ!?しかもなんであなた方はそんなに呼吸が合うんですか!?」
ガックシと地に手をつく。
ちょっと見直したと思えば、これだ。つくづく不運だ、と自分を呪う。
「た、大変ですよ箱庭のそとには幻獣がっ」
「幻獣…ですか?」
半ば空気とかしていたジンが声を上げる。それに聞き返す紅葉。
「はい、ギフトを所持した獣たちのことです。世界のはてならば神格持ちもいるはず…人間なんかひとたまりも」
「大丈夫でしょ」
ジンの焦りとは対照的に、随分と冷静な霊夢。いっそ冷たすぎるまでにことの発端は気にしていなかった。
「そんなに弱い奴なら、私の一撃で死んでるはずよ」
「そうね、侍というくらいだし」
霊夢の言葉に同意を示す市子。
「はぁ…モウイイデス」
その言葉を皮切りに、黒ウサギの髪の色が変わった。
すなわち、黒から、緋色へと。
「この箱庭の貴族相手に散々バカにしたこと…骨の髄まで後悔させてやります!?紅葉さん、方向は!?」「あ、あっちだ「一刻ほどで戻ります、しばし観光のほどを!!」話聞けよ…」
そういってぐっと足に力を込める黒ウサギ。
「そうです、ジン坊っちゃん」
「な、なんですか?」
「あのこと…バレちゃいました♪」
今度こそ勢いよくはね、全速力で世界の果てへと向かう。
そのスピードは、その場にいたジン以外を驚かせた。
「へぇー、黒ウサギって随分足が早いのねぇ」
「はい、彼女は箱庭でも貴種、大抵の者はあいてになりませんよ」
「あと話を聞かないようですね」
「あ、はは…あとでいっておきます」
紅葉の嫌味に、顔がひきつるジン。まあ、本気で怒ってはいないのだろうが。本気になったら、かなり怖い。
霊夢は霊夢で、永遠亭のある者を思い出していた。
(あいつよりは真面目みたいだけど…レイセンにそっくりね)
そっくりもなにも、世界が違うというだけでルーツは実は同じだ。もっとも、身体能力だけなら黒ウサギの勝ちだろう。
(ま、あれよりもっと速い奴なんて、腐るほどいるけどね…)
清くない鴉天狗とか、白黒魔法使いとか。
所以、話だけなら箱庭と幻想郷は似ている気がしなくもない。
それはともかく、門に入らなければ。
みれば、すでに彼らは門を潜ろうとしていた。
「霊夢ちゃん、ぼさっとしてると置いていくわよ?」
なんかこれから面倒だなあ、と勘が告げている。
「…待ちなさいよ、今行くわ」
***
「ええ、本当にあのときは驚きました…」
思い出したのか、ハンカチで目元を拭う。
「ほんと、浮かれてないで後ろを確認するべきだったのデスよ…」
後悔先にたたず。
「では次に、どうして銀時さんがぶっとばされたのか…」
そういって取り出したのは、一本のディスク。
傍らのデッキに挿入。
「それでは、どうぞ…」
ピピ・・・ブゥン・・・
***
きっかけは、銀時の一言だった。
「えっと、名前なんつったっけ?」
先頭をルンルンと歩く黒ウサギ以外の全員が呆れたように嘆息し、しかしそういやお互いによく知らないままだったと、簡単ながら自己紹介TAKE2を開始したのだった。
「そうねぇ・・・実際に説明しようと思っても、案外難しいものねぇ」
「あなたは簡単じゃありませんか、胸で大抵印象付けられますから」
「あぁ?どういう意味よこの貧乳神!!」
「だれが貧乳じゃ!!」
飽きずに胸のことで喧嘩し始めた二人。一触即発であったが。
「そういや紅葉、だったっけ?あんた貧乏神とかとかいってたわよね?」
霊夢が介入したことより、なんとか危機は回避された。まだお互いに睨み合っていたが、さすがに不毛だと感じたのだろう。頭をかきながら答える。
「ええ、まあ・・・ただ人を貧乏にするっていうより、この世の幸福エナジーと不幸エナジーのバランスを調節するのが役割ですが」
「そう・・・で、そっちで急に神様が消えることってあった?」
「いえ・・・消えるということは、神が死ぬという意味ですよね?」
「・・・そう。どうやら違う世界のようね」
随分と変な事を聞くものだ、と思う紅葉だったが、巫女ゆえに気になることでもあったのかな、程度にしか思わなかった。
はぁ、とため息をつき、霊夢が話し出す。
「ま、協力すると言ったからには、少しは話さなきゃね・・・。私はね、”幻想郷”というところから来たの」
「「「幻想郷?」」」
聞きなれぬ単語である。もちろん他の者の世界には存在しない言葉だ。反応をみて、霊夢はそのことを確信する。
「幻想郷っていうのは、人間たちに忘れられた者たちが集う、地上の楽園。人間と妖怪との共存を目指していて、中には神様もいるわ。紅葉、あんたみたいにね」
そういって紅葉を指差す。差された本人は、理解に苦しんでいるのか苦い顔をしたままだ。
「それって・・・あなたたちの世界には、一切の神がいない、ということですか?」
「違うわよ、信仰を多く得ている神はまだ幻想郷の外で存命しているわ。ま、だんだん増えているみたいだけどね」
「おいおい、外外言ってるけどよ・・・それって幻想郷ってところが隔離されてるみたいじゃねぇか」
「そうよ?」
一切会話に入ってこれなかった銀時がようやく疑問を口にしたが、霊夢はあっさり首肯した。
信じられないのか、唖然とした顔をする銀時。
「幻想郷の周りには結界が貼られていて、出入りはほんの一部を除いて不可能よ。そとの世界のことだって全部紫の受け売りだもの」
「・・・まじかよ」
「なるほど・・・」
にわかには信じがたいが、そういうものだろう、と無理やり納得する。そもそも妖怪など見たこともないのだ、信じろと言うほうが無理というもの。
「で、私は結界の管理者でもあり、妖怪退治の仕事も受け持ってるってわけ。他に何か質問は?」
一同、押し黙る。理解が追いつかないのもあるが、何より霊夢の顔が”これ以上はめんどくさい”とかいてあったからだ。よほど話したくないらしい。
「で、市子だっけ?貴女は?」
霊夢が、市子に投げやりに会話のバトンを渡す。
「そうね・・・多分、霊夢ちゃんのいってる外の世界に似ているとは思うわ」
「そう。・・・ちょっとまって、なによ”ちゃん”って」
気に障ったらしく、突っかかる霊夢。
「え?だって、あなた、私より年下でしょ?いいじゃない、別に」
「なれなれしい女ね・・・まあ、いいわ」
あきらめたように引き下がる。勘で改めそうにもない、とかんじたのだろうか。
市子が、説明を続ける。
「それで、さっき紅葉が言ったけど、世の中には幸福エナジーと不幸エナジーっていうのがあってね。ま、意味はまんまよ」
「幸福になるか、不幸になるか、ということか?」
「間違ってはいませんね。その量如何によって、不幸かどうか決まる、というわけです。市子はその中でも馬鹿みたいに幸福エナジーを持っているんですけどね」
「そうよ!!」
市子が胸を張るのを、舌打ちする紅葉と霊夢。
ここで不意に、紅葉が熊谷の腹に手を突っ込む。
飛び散る、綿。
「ってオイ!!いきなり何してんの!?ここR-15指定してねーよ、セロZ張られちゃうよ!?」
「大丈夫ですよ、こういう仕様なんですから」
「殺人まがいの仕様があってたまるか!?」
ここで補足!
使い魔である熊谷は、その豊満な綿が詰まっている腹に、紅葉が仕事で使う”貧乏神アイテム”を収納できるのだ☆
たとえば、そう、紅葉が取り出した鼻メガネのように。
「じゃっじゃじゃ~ん!スカウタ~☆」
「・・・いや、それ思いっきり鼻メガネだよね。そんなんで戦闘力はかったら100くらいでふっとぶからね」
「あんたはさっきから何の話をしているのよ・・・」
某格闘漫画の道具名を持ち出され突っ込む銀時。
しかしこの鼻メガネ、なりはふざけているが、れっきとした貧乏神アイテムなのだ。
「これで皆さんの幸福エナジーと不幸エナジーを測ってみましょう」
「理由は?」
「任務の範疇に入る可能性があるから」
「本音は?」
「面白そうだから☆」
テヘっと効果音が出そうな笑みを浮かべる紅葉。
この貧乏神、自分の興味あることには異常なまでにテンションを上げるのである。
そのまま鼻にかけ、全員をじっくり観察する紅葉。
ピピピ。
「ふむふむ、市子はまあ変わらず・・・霊夢さんは平均よりも随分と多いですね~。黒ウサギさんは・・・おや、少し不幸エナジーが多いか?で、天パは・・・」
誰が天パだ、と吠えるのを無視し、測定する。
ピピピ。
「・・・」
「・・・どうだった?」
「さ、道を急ぎましょう!」
「オイ待て、なんで黙んだよ?」
「いやあ、今日も絶好の箱庭日和ですね!」
「話をきけぇぇぇぇ!!」
やれやれ、と頭をかき、もう一度のぞく紅葉。
その顔は、何というか、憐れみに満ちていた。
「・・・あのですね。多いです」
「なにが?」
「不幸エナジーです」
ピシッと空気が割れる。
銀時の口の端が、ピクピク痙攣しだす。
「・・・え?なんで?いや、銀さん超ツイテルから。俺ぁ今日、パチンコで大勝ちする予定だったんだから」
「とくに、股間関連でとんでもない数値が出てます」
「嘘だああぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭を抱えて絶叫する銀時。
確かに、いままでなんどもナニがモザイクだのポックスドライバーだのに変化し、挙句タマをもぎ取られれば、凶相といっても過言ではない。
「だってよ、この脇だし巫女のほうが不幸そうだろうが、胸だってぺったん」
「夢想封印っっっ(物理)!!」
「アベシっ!!」
夢想封印(物理)により、クの字になりながら、遥か彼方へ飛んでいく、銀時。
ーーーさよなら、箱庭・・・。
ふぅ~っと右拳に息を吐きかけ、やり遂げたとばかりに満足そうな表情を浮かべる霊夢。
「・・・あのさ、今殴ったよね?夢想封印っていうか、ただのハラパン・・・」
「なにかいった?」
「・・・いえ、ナニモ」
霊夢の気迫は、数多くの猛者を退けた市子をも黙らすほどのものだった。
その後、誰も口を開くものはいなかった。
***
プツッ・・・
「・・・こうして飛ばされた銀時さん、そして探しに出かけたわけなのですが・・・」
不意にスポットライトが消え、太陽の光があたりを照らす。
「・・・ほんとに・・・どこへいったのですかぁぁ~!!!」
生い茂る森の中、どこへいるかも、生きているかも分らぬ銀時を探し。
盛大に、黒ウサギの絶叫が響き渡った。
あまり進みませんでしたね・・・。
ほんとに、銀さん生きているんだろうか・・・?
次からは不定期更新になりそうです。むしろ今まで毎日更新できたのが奇跡・・・。
それでも頑張ってかくので、応援よろしくお願いします!