巫女と天パと超絶ラッキーガールが異世界から来るそうですよ? 作:ジャンヌ
坂田銀時は、意外と女性にモテる。
うぬぼれとかではなく、実際に。ほんとに。
うるさいくらいに付きまとう女の忍、ダークマターを製造するゴリラ女、吉原の死を運ぶ花魁、などなど。
恋愛に発展した例などこれっぽちもないが、不思議と好意は持たれるのだ。
むろんイロモノぞろいのため、告白されたって付き合いたくない連中だとは思っている。
むしろ結野アナがコクってきたら泣いて喜ぶ。
だが、銀時も今の状態は満更でもなかった。
お互いに信頼できる。
そんな単純な絆が、なぜだか心地よかったのだ。
ともかく大事なのは。
・・・これって告白ですか?
~~~
「そんなわけないだろ・・・」
ありがたいことに、本人から呆れたように、答えを頂いた。
まあ、確かに、これ告白じゃないよね?、と聞いたのは他ならぬ自分だ。
だが・・・あれじゃ、勘違いしちゃうよ?某ボッチ高校生なら、五体投地しちゃうよ?
それに、なんでそんなはっきり否定するんですか。
もう少し恥じらいとかないんですか。
そういったら、ますます呆れられた。黒ウサギにも呆れられた。何故だ。
「へえへえそうですか・・・じゃあなんでそんなこといったんだよ?」
「そうでございますよ、仮にも神であられる貴女様が、なぜ?」
そう問いかけたら、ニヤリと笑い、こういった。
「面白そうだからだ」
「「『・・・』」」
「むろん、根拠はある。第一に、人間の身の上で、あれほどの威力。今だ信じられん」
「確かに・・・本当に、アレには驚かされましたヨ」
「こ奴のそばにいれば、何か分かるかと思ってな・・・それに」
むにゅ、と肩に柔らかい、感触が。
「え、ちょ、水神様!?何をやっておられるのですか!?」
「なんだ?ただ抱きついただけであろうに」
「そうだぜ、これはただのスキンシップだ黒ウサギ」
「鼻血垂れ流しているヒトの台詞じゃありません!!」
スパコン、とハリセン炸裂。白雪姫に当たらなかったのは、さすがの腕前である。
「ただの神の直感だが・・・面白そうだからだ」
「答えになってませんっ!!」
もう一線を越えたのか、神の頭にも容赦なく叩く。
気にした様子もなく、離れる白雪姫。
「ま、というわけでこれからも頼むよ、箱庭の貴族、そして坂田銀時」
「は、はいな!!こちらからよろしくお願いします!!」
「まあ、いいけどよ・・・こちとら名無しのノーネームだぜ?それでもいいのか?」
「かまわんよ、私が興味があるのはそなただけだからな」
聞き様によっては恋人のような台詞であったが、白雪姫のニヤリとした笑みが、まったくそれを感じさせなかった。
面倒なと表情に出したまま、ガリガリと頭をかく銀時。
「そこまでいうなら俺も何もいわねぇよ。それと、フルネームじゃなくていい」
「そうか、よろしく頼む。銀時」
すっと銀時が手を差し出す。その手を戸惑い気味に見つめていたが、意図を理解し、強くつかむ。
その様子を見ながら、黒ウサギの胸中は歓喜でいっぱいだった。
(お、思わぬ収穫なのですよ・・・!神様が来るだけでも物凄く幸運なことなのに・・・おまけにコミュニティの水回り事情までも解決!!一挙両得デス!!)
図らずとも多大な恩恵をもたらした銀時に、心から感謝が湧き上がる。
(本当にこの方々なら・・・コミュニティ復活も、夢じゃないのかもしれない・・・!)
闇に閉ざされた未来に、光明が差し込む。
それだけで、後悔は消えた。
精一杯、この方々と共に歩もう。そう決意した黒ウサギであった。
「なるほど・・・」
ポツリ、と呟く、浅黒の男。
しめ縄が腰回りについた着物を着こみ、存在だけで神々しさが見受けられた。
「かんなの器も随分となじんでいたようだが・・・加えて、あの男」
彼の男の脳内に、様々な感情と打算、そして野望が渦巻く。
「こちらから下手に干渉できない以上、計画を修正するか・・・」
これも予想のうち、とでもいいたげな台詞を残し、鳥居のようなゲートを取り出す。
何やら、お帰りなさいませ!!!、と耳が痛くなるほどの大声が聞こえてくるが、顔をしかめもせず、くぐり、消える。
彼の男の名は、碇。
神を恨み、世界に復讐せんとする、たったひとつの愛に生きている禍津神。
***
さて、その後。ユニコーンに白雪姫が”水樹の苗”のギフトを与え、貧血で倒れた銀時を黒ウサギが抱え、噴水広場にやってきた三人。
ジン達と合流したのだが・・・
「な、なんであの短時間で”フォレス・ガロ”に喧嘩を売ったのですか!?」
「しかも明日!?」
「一体どういう心算があって・・・言い訳は聞きましょう」
「「「大丈夫、きっといける。反省なんかしない」」」
「うん、聞いた黒ウサギが馬鹿でした♪」
半ばやけ気味に、三人の頭にハリセンをくらわす。ついでにそこにいたおっさんも叩く。
「ってあれ・・・この方は?」
「ああ、熊谷です」
「あ、そうでしたか、随分とご立派に・・・・ってええぇぇぇぇぇ!!!」
思わず二度見する。だが、あのどこか趣味の悪い熊の人形とは似ても似つかない。叫ぶのも無理ないことといえよう。
「まったく、紅葉がやれというからやったものの・・・扱いが酷過ぎないか?」
「し、渋い声・・・やはり熊谷さんですね」
「喜ぶべきか判断に困るんだが・・・」
「熊谷。もう戻っていいですよ」
「ほんっとうに雑だなっ!!」
・・・熊谷がもどるまで、少々お待ちください・・・
『はあ、何のためにヒトガタに入ったんだか・・・」
「まあまあ、それはそうと。そちらの着物の方は?見ない顔ですが?」
紅葉の言葉に首肯する、市子と霊夢。飛んでいった奴が生きて帰ったと思ったら、見知らぬ女性を連れ帰ってきたのだ。興味の一つも出るもの。
「あー、もしかしてナンパ?」
「・・・オイ・・・今、銀さん調子悪いの。突っ込みさせないでくれる?」
「大丈夫、分かってるわ銀時・・・愛人でしょ?」
「おいぃぃ脇巫女!!てめぇの勘はどうしたよ!?」
「で、だれなのそいつ?」
にやにやしながら銀時を弄る紅葉と霊夢。目が若干ゴミを見る目になっているが、空気を読んで市子が再度問いかけた。
ピョコン、とウサ耳を揺らし、元気に黒ウサギが紹介する。
「はいな、こちらはですね、トリトニスの滝の土着神であられる、白雪姫さまです!!この度、わがコミュニティに参加していただけることとなりました!!」
「白雪姫だ、よろしく頼む」
華麗に頭を下げる白雪。その姿は、やはり神としての風格にあふれていた。
やはり、と霊夢は心の中で頷く。
(神気を感じたから、まさかと思っていていたけど・・・神が人間に従うなんて、ね)
幻想郷といえど、人間のもとにつく神はそうそういない。守矢の神々はもちろん、厄神や秋神たちも、人間と友好的とはいえ下になどはつかない。
目を見る限り、神としての尊厳を未だ読み取ることができ、決して隷属したわけではないのだろう。
それでも、何らかの方法で神に力を認めさせたのは、事実。
(幽香や地底の鬼どもに紹介したら・・・目に見えるようだわ)
そんな物騒な考えが向けられているとは露知らず、銀時は声をかける。
「おい、黒ウサギ・・・そーいやなんか忘れてねぇ?」
「はっ・・・そうですそうです御三方!!理由を説明してください!!」
いままで忘れていたのは随分と呑気なことだが、腕をブンブンと振ってご立腹の黒ウサギ。忙しいことである。
「考えなしでゲームをしかけたわけではないですよ・・・戦力としては、話によればこちらの方が勝っている可能性が高い。みすみす逃すよりかは、この機会にわがノーネームの利益にしてしまおうと、そういうことですよ。あー説明かったるい・・・」
「・・・本当なのですか、ジン坊っちゃん?」
「うん。彼らの悪行は、無視なんてできない」
力強く頷くジンを銀時はどこか冷静に見つめる。それが市子にうつり、はぁ、とため息をつく。
「ま、いいんじゃねーの・・・こいつらが勝手に言い出したことなんだからよ、てめぇのケツはてめぇでふけっつうこった」
「え、それでは銀時さんは・・・」
「誰が出るかよ、んなもん。俺が命削って参加する道理はねーはずだぜ」
「こっちだってそのつもりよ。ケリは、私がつける」
「だ、だめですよ!!仲間どおし、協力を・・」
「「あぁ``!?」」
「・・・ナンデモナイデス」
超ハイランカーのメンチを切られ、萎縮する黒ウサギ。そして残念そうに肩をすくめる白雪姫。
やや険悪な空気が流れる。
「・・・それで?これからどうするの?」
見かねた霊夢が、頭を掻きながら黒ウサギに問いかけた。
「は、はい・・・それでは、みなさん。”サウザンドアイズ”に参りましょう!!」
「「「「サウザンドアイズ?」」」」
黒ウサギの話によれば、サウザンドアイズは箱庭でも屈指の商業コミュニティらしい。そこへ明日の突発的なギフトゲームの件もあり、ギフトを鑑定してもらいに行くのだ。自分のギフトの出所を知ることで、実力を正確に把握できるのだとか。
まあ、ほとんど全員が把握しているといっても過言ではないが、やや黒ウサギに強引に押し切られる形になったのだった。ちなみにジンは用意があるとかで先にコミュニティへ帰った。
「そういや、銀時」
不意に、白雪姫が銀時に問いかけた。
「んあ?なんだよ」
「いやいや、少しばかりそなたの元の世界のことが気になってな・・・」
「そういえば、聞く前に中断してしまったものね」
「誰のせいだ、誰の」
「たしかに、気にはなりますねぇ」
「・・・仕方ねーなぁ」
すっかり全員の注意がこちらに向いているのを感じ取り、渋々ながら話し出した。
自分が江戸に住んでいること。
すっかり天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人に支配され、侍そのものが廃れていること。
そんな中、自分は万事屋という職に就いていること。
「ま、依頼なんてさっぱりはいんねーからよぉ、閑古鳥のせいで鼓膜が破けそーだわ」
「それはまた、随分と・・・」
「私たちの歴史とは違うわね・・・」
「その天人というのは、妖怪とはちがうの?」
「全然べつもんだな。や、もうそれにしか見えない奴もいるけど。大魔王みたいなやつもいるけど」
「・・・それは恐ろしいでございますね・・・」
これでいいだろ、とばかりに鼻をほじくりだす銀時。
だが、白雪姫の口はまだ閉じない。
「それだけか?」
「・・・」
「たしかにそれも聞きたいことであったが・・・まだ話していないこともたくさんあろう?」
「・・・ねーよ」
「いや、わかる。それだけじゃあそなたはただのチャランポランだからな」
「まあ、あながち間違ってもいないけどね」
「ちょっとぉ、それどういう意味!?目か、目のことを言っているのか!?」
「ほんと、希望を感じさせない目よね」
「それ酷くない!?生まれてからそんな罵倒初めてなんだけど!?グサリって刺さったよぉぉ!!」
やいのやいの、と騒ぎだす一同。尚も問い詰めようとするが・・・
霊夢が、口に人差し指をつける。
『深追いするな』、と。
(ぜひとも聞いておきたかったんだがな・・・)
霊夢も自分と同じく、何かしら感じているのだろう。変わっているが、仮にも巫女の服を着ている身、敏感なのかもしれない。
内に秘める、凶暴な気を。
(ふふ・・・ますますもって気になる・・・)
今はまだ時期尚早かと思いなおす。
さて、桜がどうのといっている間に、黒ウサギは一軒の豪勢な和式建築の建物の前で足を止めた。
「さて、ここが件の”サウザンドアイズ”でございます!!それでは入店許可を取ってきて参りますので、少々お待ちください!」
旅行ガイドのような口上を述べ、駆け足で玄関へと向かう。見れば、箒を手にした女性店員がまさに暖簾を下ろしかけたところだった。
「待っ」
「待ちません。当店は時間外営業は断固おことわりです」
ギロリ、と黒ウサギを睨む女性店員。
「随分と商売っ気の無い店ねぇ」
「ま、全くです!!まだ閉店時間の五分前でございますよ!?」
「文句があるならどうぞ余所へ。貴方方は今後一切の出入りを禁じます」
「出禁!?これだけで出禁とかお客様舐めすぎですよ!?」
「そうだ、お客様は神様なんだよコノヤロー」
「いえ、それは意味が違うでしょう」
呆れたように突っ込む女性店員。
「オイオイそんなこといっちゃっていいのかねぇ?こちとらモノホンの神様がいるんだけど?」
「は?なにをいって・・・!」
思わず固まる。銀時の言葉につられ、一歩目に踏み出した、白雪。
「久方ぶりだな」
「し、白雪様・・・!なぜここに!?」
ひどく狼狽し始める店員。けしかけた当人の銀時でも、すこし違和感を感じた。
「ん?驚きすぎじゃね?」
「おそらく白雪様がサウザンドアイズの関係者だったのでしょう・・・幸運なことですが」
「そうだ、ここのオーナーが私に神格を与えてくださったのだからな」
「オーナー・・・?それってもしや」
「いやっっほおおおぉぉぉぉぉううう!!!よく来た黒ウサギィィィィィ!!そして白雪ィィィィィ!!」
そらから、弾丸のごとく。
幼女が、突進してきた。
「え・・・ちょ」
「白夜叉様!?なぜここに・・・ひゃあぁぁぁ!?」
予想外の人物に会い、一瞬思考を停止してしまった黒ウサギも、ドヤ顏の白雪姫も仲良く、幼女のラリアットの餌食となった。
一同、思わずポカンと口を開け・・・否、銀時はビクリ、と肩を震わせた。
トラウマでも、蘇ったように・・・
「ど、どうしてあなたがこんな下層に!?」
「黒ウサギの気配を感じ取ったからに決まっておろう!!フフ、フホホホ!!どれここか?ここかのう?白雪もますます魅力的になってからに・・・ムホホホ!!」
「・・・白夜叉様、つもり話もありますが」
「ええ、まずは・・・」
「「ちょっと離れてください!!」」
白夜叉、と呼ばれた少女を二人がかりでひっぺはがし、ヒルでもくっつかれた時のようにブン、と投げ出した。
クルクル、と遠心力がかかり、あわや地面に激突しそうになる。
「っ!!チッ、何してんだよ!!」
唯一冷静だったせいか、いち早く駆け出し、ポスンと受け止める。衝撃を受け身で受け流すつもりだった白夜叉は、思いのほか柔らかい感触に、驚いて目を見開いた。
「ったく、あって早々パフパフとか・・・うらやまゲフン餓鬼が粋がってんじゃねーよ」
「ほう・・・わしをうけとめたその紳士の所作は誉めてやってもよいが・・・餓鬼とはなんじゃ!!お主の何倍も生きとるんじゃぞ!!」
「・・・はあ、これが白夜叉、ねぇ・・・」
見た目相応に腕を振り回して騒ぐ少女を見下ろし、はあ、とため息をついた。
「へいへい分かったよ・・・んじゃ、オメーのことは”ババア”って呼ぶから」
「あれじゃな、おんし目上への尊厳とかないのな!!」
「なんだよ不服か?じゃあちょっと軽めに”BBA”のほうがいい?」
「なにもかわっとらんわ!!!むしろ馬鹿にしとるわ!!」
「・・・なんなの、あいつ」
「さあ・・・しかしエナジーは相当なもの・・・いや、やや異質ですね。神にしてはどこか変な気も」
「そう?ただの変態和装ロりなんじゃないの?」
「うえぇ・・・まさか黒ウサギもびしょ濡れになるとは・・・」
「白夜叉様・・・あんな方だったか・・・」
その後、不服そうな女性店員をなだめ、白夜叉は自室へ通すのだが・・・霊夢と市子と紅葉に一発ずつ、鉄拳を食らったという。