魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》   作:三咲ディア

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プロローグ

「何よ…この出来損ない。」

 

 

生み出された瞬間、目の前の人物にそんな言葉を浴びせられた。当時の僕には、それが何を意味するのか理解できずに居たが、ただ一つだけ。僕が此処にいたら間違いなく殺される。そう本能が理解していた。

目の前の人物…僕を作り出したであろう人物が、侮蔑と落胆、嘲りの視線をぶつけてくる。

 

 

「リニス、コレをさっさと廃棄場へ持っていきなさい。」

「…はい、わかりました、プレシア。」

 

 

リニスと呼ばれた女の人が、苦い顔をしながらも命令を受け僕を運ぶ。

運ばれている最中、リニスは何度も何度も僕に謝る。

 

 

「…プレシアを止められなくてごめんなさい…。貴方を生み出してしまってごめんなさい…。もし貴方が此処から逃げれたなら…どうか幸せに暮らしてください…」

 

 

彼女は僕に一つの宝石をくくりつけると、廃棄場への扉を開く。其処に僕を優しく降ろすと、廃棄場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

僕が生み出されてどれくらいたったのだろう。段々と空腹が僕を支配し始める。

目の前には腐敗の進む、同じ顔の人間が居て…体が腐敗している臭いが立ち込めているのに体は正直なものだ。最初こそ発狂しそうになったが、慣れると鏡みたいに思えてきた。僕の精神は壊れてしまったのだろうか?

空腹から意識を反らそうとするが、どうにも抗えない。必死に体操座りで踞って空腹から耐える僕に、呻き声が聞こえてきた。

 

 

「カアサン…イヤダ…イキタイ…」

「ワタシダヨ…アリシアダヨ…」

「ココカラ…ダシテ…」

 

 

同じ様な声で、必死に生きたい、生きたいと主張を続ける。うるさい…僕だって生きたいんだ…。

呻き声を鬱陶しく思っていると、急に喉が乾き始める。床に滴り落ちた培養液を飲み、喉の乾きを癒すとリニスから渡された宝石を握り締めた。

絶対に…絶対に生き延びてやる…。

 

 

「…おなか…すいたな…」

 

 

か細い呟きが僕の喉から溢れる。凡そではあるが一日何も口にしていないのだ。そろそろ胃が痛くなって来た。

目の前の肉塊に目を移す。顔が同じと言うことは、何かの実験で作られたクローンだろうか?

 

 

『その通りですよ。マスター。』

「っ!?誰!?」

 

いきなり聞こえた声にビクリと反応し、辺りを見回す。しかし周りには相変わらず這いつくばりながら呻くクローン達しか居なかった。

 

 

『貴方の胸元です、マスター。』

「え…君が…?」

『はい。貴方が本当に生きたいと願い、この場の状況にある程度の察しが着いた頃にマスターと話せと、マイスターリニスに仰せつかりました。』

 

 

チカチカと明滅しながら僕に喋りかけてくる宝石を手に取る。その宝石は、無機質だがどこか温かな感触がした。

その後、僕はこの宝石から僕の生まれた理由、プロジェクトFの全容、プレシア…僕を生み出した人物の目的、ある程度の魔法の原理を聞いた。

 

 

『…これがマイスターリニスより説明するようにと言われた事の全てです。』

「実感わかないなぁ…。僕があの子達と同じ…だなんて…」

 

 

ショッキングな話に目眩を覚えるも、正気を保つ。小さく息を吐いて心を落ち着けると宝石を優しく握り締めた。

 

 

「…ありがとう、本当の事を教えてくれて。」

『…それが私の使命ですから。脱出するのでしたらコレを…』

 

 

小さな魔方陣が現れると、魔方陣から何やら重厚なバックルの様な物と六本のUSBメモリの様な物が出てくる。訳のわからないまま手に取る。バックルにはUSBメモリを刺す箇所があり、どうやら六本の内三本が対応しているようであった。

 

 

「これは?」

『マスターのデバイスの一つです。私の様に自我はありませんが、信頼の出きるデバイスですよ?先ずは腰に当てて下さい。』

「こうかな?」

 

 

言われるがままに腰にバックルを当てる。すると自動でレザーが生成され、ピッタリと僕の腰にフィットした。

 

 

「わわっ!?」

『そうです。次に黒色のメモリのボタンを押してバックルに刺し、そのまま倒してください。』

「こう?」

『Joker!』

 

 

人差し指でメモリに着いたボタンを押すと、機械音声が流れる。一瞬ビックリしたがバックルにメモリを差し込み横に倒すと、僕の体を光が包み服が形成される。

その服は全身黒色のライダースーツの様な物に、肩に銀色のパット、体の各所に銀のラインの装飾の入った物であった。

 

 

『魔法は私がサポート致します。では脱出しましょう、マスター。』

 

 

そう言うと宝石は光る刃を持つ鎌へ姿を変えた。僕はその鎌を握り締め、処理場の扉を切りつける。するとまるで豆腐を切り裂くように簡単に扉が真っ二つに切れる。少し深呼吸をすると、後ろの肉塊に振り向く。

 

 

「…助けてあげられなくて…ゴメンね。」

 

 

か細い声で肉塊に謝罪を述べると、僕はその場から逃げるように走り出す。後ろからは恨みがましい声が僕を後ろめたい気持ちにさせたが、首を振り考えぬようにしながら廊下を走り抜いた。

 

 

 

 

『マスター、此処を右です。』

「ありがとう!えーっと…」

『私の名前はバルディアスです。』

「ありがとう、バルディアス!」

 

 

建物の中を疾走しながら僕の手にしている鎌…バルディアスに礼を述べる。バルディアスのナビゲーション通りに道を進んでいると、外へと続く扉らしき物が見えた。

 

 

「待ってください。」

「っ!?」

 

 

足下に魔力弾を撃ち込まれ急停止をする。僕が振り返ると、其処には猫耳の着いた女性…リニスさんが立っていた。

 

 

『…マイスターリニス…。』

「リニスさん…」

「自分で生きる道を選んだのですね?」

「はい。」

 

 

リニスさんの問い掛けに力強く頷く。僕は、あんな場所で死にたくない。生まれた以上、精一杯生きていたい。そんな眼差しでリニスさんを見つめていた。

 

 

「…本当、貴方は生まれたてのクローンとは思えませんね。驚くほど知識が有り、知恵が有り、そして自我がある。」

『マイスター…』

「…私が転送魔法で別の次元へと送り届けます。プレシアも、手出しはしないでしょう。」

 

 

リニスの足下に魔方陣が現れる。暫くすると、転送魔法の準備をしながらリニスさんが優しく微笑んだ。

 

 

「…本当なら、男の子のお世話、もう少ししてみたかったのですが…仕方ありませんね。良いですか?私の最後のお願いです。強く、誰よりも強く、弱い人を守れる男の子のなってください。」

「リニス…さん…リニスおかあさん!」

 

 

思わず叫んだ僕の言葉に、リニスさんが驚いたような表情を浮かべる。しかし直ぐに表情を和らげると、僕の背中に腕を回して抱き締めてきた。甘い、柔らかな匂いに思わず目が潤んでしまう。

 

 

「…プレシアの気持ちが、改めて理解できました。」

 

 

誰に言うでも無くリニスさんが呟くと、僕の体が輝き始める。次の瞬間、何かの力に弾かれる感覚に襲われる。

思わず目を閉じ、風が体を撫でていることに気付いて目を開ける。僕が居た場所は空の上だった。重力に引っ張られて体が自由落下を始める。

 

 

『マスター!早く飛行魔法を…』

「いきなり言われてもわからないよ!バルディアス!」

 

 

落下をしながらバルディアスに言うと、どうしようかと考える。ふと、六本のメモリの内の一つを取り出し見詰める。そのメモリは全体が銀色で、Mの文字が入っていた。

 

 

「一か八か…これだぁ!」

『Metal!』

 

 

度胸任せでメモリのスイッチを押す。機械音声が響いたのを確認すると、僕はバックルを起こしてメモリを引き抜き、メタルと発したメモリを差し込んだ。

身を包んでいた服が銀色へと変わる。指で服を押してみるととても硬く感じた。

 

 

『protectionを激突前にかけます!マスターは踏ん張ってください!』

「わかった!」

 

 

バルディアスのサポートを受け僕は落下していくと、とある住居の庭が見えてくる。

家に突っ込まなくて良かったと安心しながら、僕は庭にある植え込みへと落ちた。

全身に伝わる、叩きつけられた衝撃に背中が軋む。僕は肺の中の空気を全て吐き出すと、余りの痛みに意識を失った…。

 

 

???Side out

 

 

 

 

はやてSide

 

 

「…もういやや…何で私ばっかりこんな目に会うねやろ…」

 

 

両親の遺影がある部屋で一人涙を流す。私、八神はやて五歳は物心着いた時から両親が居らんかった。

立つこともままならん不自由な身体で日々を過ごし、親戚にも引き取って貰えん様な状況で遂には心が折れてしもうてた。もういっその事死んだろかな?とも考えたが、そんな勇気私にはあらへんかった。

暫く涙を流し落ち着いた所で服の袖で涙を拭う。幾ら弱気になっとっても、両親に情けない顔見せられへんもんな。

車椅子を動かしてリビングへ移動し、お茶を飲む。うん、少しは心が落ち着いてきた。

 

 

ベキベキベキ!ドサッ!

 

 

のんびりしとったら何やら凄い音が庭から聞こえてきた。急いで車椅子を動かして窓に近付く。

植え込みが酷く荒れ悲惨な状態になっとったけど、私はそんな事よりコレを起こしたモノを探した。

すると、植え込みの中から銀色のライダースーツを着た、私と同い年くらいの子がそこに居た。暫く観察していても全く動かへんから、少し心配になってきた。

 

 

「あ、あのー…大丈夫ですか?」

 

 

声をかけてみるけど、全く反応があらへん。

 

 

「た、大変や!」

 

 

慌てとると近所のおばちゃんが気付いて私の家に運んでくれた。どうやら死んどる訳やのうて、気絶しとるみたいやった。

綺麗な子なんやけど…どこの子やろ?と考えながら顔を拭いてやる。未だ起きへんこの子を寝かせたまま、私はご飯を支度しに行った。

 

 

はやてSide out

 

 

 

 

???Side

 

 

「ん…いたた…」

『マスター、大丈夫ですか?』

「何とか…」

『メタルのメモリを使って正解でしたね。マスターが気絶している間、この家の子が世話をしてくれましたよ。』

 

 

体を起こして胸元のバルディアスに触れる。未だ落下のダメージに苛まれているが、何とか起きれるレベルであった。

深呼吸をして辺りを見回す。ぬいぐるみが多数置かれている所を見ると、どうやら女の子の部屋の様だ。

バックルを起こしメモリを引き抜こうとしてふと思い出し、バルディアスに問いかける。

 

 

「…バルディアス。僕って服着てなかったよね?」

『そうですね。廃棄場から出たときは裸でしたし。』

 

 

慌ててバックルを倒す。このままメモリを抜いてたら、裸を晒していたところだ。ギリギリセーフと言わんばかりに溜め息を吐く。

これからどうしようかと考えていると、車椅子の女の子がやって来た。どうやらこの子が僕を助けてくれたみたいだ。

 

 

「あ、もう起きても平気なん?」

「うん、ありがとう。迷惑かけちゃったね…」

「ええよ。ちょおビックリしたけどね。私ははやて。八神はやてや。君…名前は何て言うん?」

 

 

名前を聞かれて少し言い辛そうな顔をして頬を掻く。僕にはまだ名前が無いのだ。

 

 

「ごめんな、嫌なこと聞いて…」

「あ、嫌なこととかじゃなくて…ただ名前が無いだけで…」

「名前が無いん?」

「うん…実は…」

 

 

僕はこれまであったことを少し話した。その女の子…はやてちゃんは、何も言わずに僕の話を聞いてくれた。

 

 

「…そうなんや。と言うことは、君はそのアリシアって子のクローンなんやね?」

「うん、そうみたい。性別が反対らしいけどね?」

「えっ!?男の子なん!?」

「し、失礼な!僕は歴とした男だよ!」

 

 

はやてちゃんの余りの驚きように若干怒ってみせる。女の子のクローンだから仕方ないだろうけど、少し傷付いた。

 

 

「ご、ごめんな?それにしても…行くところ無いんやな?」

「うん…家族も居ないし、本来ならこの世に居ない命だからね。」

「…ほんなら、此処に居る?」

 

 

はやてちゃんの言葉に思わず目を見張る。嬉しくはあるのだけど、僕は少し不安になった。こんな僕を置いて、両親はどう思うのだろうか等と考えたいた。

 

 

「親の心配ならせんでええよ?…私も、君と同じで親が居らへんねん。」

「あ…ごめん…。…お世話になって良いかな?」

「気にせんでええよ?もちろんや!ほなら、君の名前、考えんとあかんね?」

 

 

そう明るく言うと、はやてちゃんは顎に手を当てて考えるような仕種をする。

時計の針が三周した頃、閃いたと言わんばかりに指を鳴らしてとても良い笑顔をした。どうやら決まった様だった。

 

 

「翼!八神翼(たすく)や!」

「翼…」

「そや。…誰かを助ける力になれる様に…や。」

「…ありがとう、はやてちゃん。」

 

 

リニスさんとの約束を名前にしてくれたはやてちゃんに礼を言う。色んな感情が頭を支配し、目から涙が溢れた。そんな僕を、はやてちゃんはずっと撫でてくれた。

この日から僕ははやてちゃんと暮らすことになった。

 

 

これは、僕の最初の物語。リニスさんとの別れと、新たな家族との出会いだった。




新作連載です!
このプロローグでは主人公の出生を書いてみました。如何でしたでしょうか?
次回は主人公…八神翼君の細かな設定を書いていこうと思います。
ご意見、ご感想御待ちしております!

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