魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》 作:三咲ディア
「魔法も悪用してないし、この子は大丈夫ね。ごめんなさい、私達の都合で引き留めてしまって…。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
俺が管理局での取り調べを受けた翌日、簡単なものではあるがリンディさんから開放の言葉をかけられた。尤も、取り調べと言うものでも、連行と言うものでも無かったから、形式的なものではあるが。俺は気にしてないという風に手を振る。
「本当に惜しい人材ね…。どう?管理局に入らない?」
「お断りします。俺には夢がありますから。」
「夢?」
「はい。家族にも言ってるんですが、小さな探偵事務所を開いて、皆に愛される探偵になりたいんですよ。俺の目標であり、夢なんです。」
自分の夢を話すのは少し気恥ずかしいが恥ずかしくて堪らないわけではなく、逆に心が軽くなる。
いつの間にか綻んでしまった口を戻すが、時すでに遅し。リンディさんは俺を見て微笑んでいた。
「まぁ、とても素敵な夢ね?じゃあ私が困った時は、貴方に依頼に行こうかしら?」
「良いですよ。八神探偵事務所はどんな依頼にも誠心誠意尽くすのがモットーですから。」
笑顔のまま言うリンディさんに、気障ったらしく言って見せる。暫く黙っていると、どちらともなく笑い出した。
「じゃあ、俺はこれで。」
しかし、何時までも笑っていられない。俺は軽く頭を下げるて転送ポートへと入ると、見送りに来てくれていたなのは達に向き直り、手を振る。
「では、転送します!」
「じゃあな、また会うことがあったら、その時は仲良くしてくれよ?」
「うん!またね、翼くん!」
「また…必ず。」
「翼、面白い魔法があったら教えてね?」
皆から別れの言葉を受けると、転送ポートが起動する。こうして俺は、数分もしないうちに海鳴の町へと帰ってきたのだった。
☆
「ただいま、皆。」
「お帰り、翼。向こうの人に迷惑掛け…「翼くぅぅぅぅぅぅん!!!」…」
我が家へと帰宅した俺は、帰りの挨拶もそこそこにシャマルに抱き付かれる。主であるはやての言葉を遮ってまで抱き付いてきたシャマルには、呆れを通り越して尊敬の念すら抱くほどだ。事実、シャマルは普通にしていれば美人なのだが、俺の事となると途端に残念になる。まあ、そんなとこも含めて好きなんだが…。
「翼、戻ったのか。」
「あぁ、ザフィーラ。ただいま。」
「お帰りだ。すまないが、バルディアスを貸してくれないか?」
「ん?良いよ。な、バルディアス。」
『はい、勿論ですよ。』
珍しく人間形態で家の中にいるザフィーラにバルディアスを渡す。ザフィーラなら変なことはしないだろうと信頼しての事だ。他の人には絶対に渡さない。
俺からバルディアスを受け取ると、ザフィーラは頭を下げて奥の部屋へと向かっていった。
ソファに腰を掛ける俺に、嬉しそうな顔をしたはやてが近づいてくる。
「えへへ…翼。私な、友達が出来たんよ?」
「お?良いことじゃないか!」
「うん!嬉しゅうてな…翼に直ぐにでも教えてあげたかったんよ?」
「良かったな。俺も新しい友達が出来たんだぜ?」
お互いに新しい友達が出来たことを報告しあい、喜びあう。隣に寄り添うように車椅子を着けて話すはやての手を、俺は優しく握っていた。
「シャマルも、居ない間ありがとう。助かったよ。」
「一日くらいは私にも出来ますから、お安いご用よ。あ、お礼は翼くんの体で…!」
シャマルに礼を言おうとすると、調子に乗ったのかルパンダイブをしようとしてくる。ため息混じりに構えようとしたが、シャマルの様子がおかしいことに気付いた。
「し、シグナム…これはそのっ」
「問答無用だ!」
振り返ると其処にはシグナムが。シグナムは弁解するシャマルに聞く耳を持たないまま、手に持っていた竹刀を降り下ろした。とても小気味の良い音と共に、シャマルの悲鳴が平穏な八神家へ響いた。
☆
「友人の家へ手伝い?」
「そや。すずかちゃんの友達の愛沢さんの家へ行ってくれへん?なんや子供の面倒見るのに、同じ子供で、尚且つ冷静に周り見れる子が居らんかーって聞かれてな?」
翌日の朝食を食べながらの会話。どうやらはやてはすずかちゃんの申し出を受けてしまったらしい。
はやてもその年齢にしては大人びている所はあるが、体が不自由な為、迷惑をかけてしまうと思ったのだろう。そこで、年不相応な程大人びている俺に白羽の矢が立ったのだ。うん、自分で言ってて恥ずかしい。
「まあ良いけどさ。で、その愛沢さんの家にはどうやって行けば良いの?」
「すずかちゃんの車が迎えに来てくれるみたいや。ふふっ、八神探偵事務所、初めての依頼やね?」
「探偵は何でも屋じゃないんだけどな…」
楽しそうに笑うはやてに緩く突っ込み、朝食を食べ終える。俺の突っ込みに対してシグナム達も大いに頷いていた。
洗い物を済ませ、服を着替えて迎えを待つ。暫くするとインターホンが鳴り、迎えが着いた事を知らせた。
「じゃあ行ってくる。」
「おみやげよろしくな!」
「ヴィータ…旅行じゃないんだぞ?」
「ちぇー……」
「まぁまぁ。翼、楽しんで来るんよ?」
口を尖らせてむくれるヴィータを嗜めながら微笑むはやてに手を上げて答える。俺は扉を開け、外に停めてある車に乗り込んだ。
俺は運転手の人と他愛ない話をしながら、目的地の愛沢さんの家へと向かって行くのであった。
☆
「………いやいやいやいや、何此処?どこの金持ちの家なの?こんなんなら使用人雇えば良いだろ。」
現在、俺は大邸宅の前で突っ立っている。目の前にある大きな門に、開いた口が塞がらないでいると、運転手はもうすぐすずかちゃんが来ることを伝えて帰っていった。
たっぷり二十分経った頃だろうか。暫く玄関先でボーッとしていると、二人の男が一人の女の子に絡んでいる声が聞こえてきた。
「良いじゃないか、俺達と一緒に行こうぜ?」
「アンタら、そんな男の事を何て言うか知っとるか?ロリコン、言うんや!」
「声が大きい、静かにしろ。」
「何すんや!はーなしー…んー!?」
聞こえてくる声から察するに、どうやら口を塞いだようだ。
幾ら今の人通りが無いとは言え、大胆な事をするものだ。俺もつくづくトラブルと縁があるなと思いながら足下に転がっている石つぶてを手に取る。俺は声のする方へと足を運ぶと、予想通り女の子を捕まえている男達に声をかけた。
「お兄さん達、楽しそうだね?何してんの?」
「な!?何で此処が!」
「いや、あれだけ大声出してたら聞こえるし…。まあ、俺しか居ないから誰にも聞かれてないけどさ。」
「…まぁ、見られたもんは仕方ねぇ。お前も連れていくか。」
「ぷはっ!来たらアカン!逃げてぇ!」
「ふーん…遊んでくれるんだ?」
無理に暴れて口を自由にした女の子が叫ぶ。俺は小さく不適な笑みを浮かべ少しだけ近づいてから男達に指を向けると、挑発する様に告げた。
「お前達、俺に釣られてみる?」
刹那、女の子を捕まえていない男の額に向けて石を投げる。
魔法で肉体強化した体で投げられた石は、男の頭に吸い込まれるように直撃し、男を一撃で失神させた。
「何だ、呆気ないね。」
「…なるほど。そこそこ出来るみたいだな。」
女の子を捕まえている男が冷静に言葉を紡ぐ。嫌に落ち着いてる姿に、俺は違和感を覚えた。
「随分と落ち着いてるんだな?」
「ふふふ、そうでもないさ。この女の子をどうしてやろうか考えてるだけなんでな?」
「余裕って訳かよ…ったく、お兄さん趣味悪いね。」
小さく悪態をつくと、何かの気配を感じて石を投げる。投げられた石は、緑色の魔力弾に当たり四散した。
「!?魔力弾…ってことは…」
「ほう、魔法を知ってるのか?御察し。俺は魔導士さ。」
男が笑みを浮かべると同時に、俺に掌を向けると高速の魔力弾を放ってくる。俺は転がるように回避すると、人目に着かないようバルディアスに結界を張らせた。
「な、なんや!魔導士とか!?一体何のことなんや!?」
「チッ……五月蝿い餓鬼だ。寝ていろ。」
男が女の子の額に指を置くと、女の子が力なく崩れ落ちる。恐らく睡眠の魔法をかけたのであろう。
「お前も魔導士か?」
「いや、違うね。俺は…」
男の問い掛けに対して小さく言うと、腰にロストドライバーを具現化させる。勿体つけるように言うと腰から青いメモリを取り出し、人差し指で押した。
『Trigger!』
「通りすがりの探偵さ!覚えておけ!」
俺はトリガーメモリをバックルへ挿し込み倒す。
すると、ジョーカーの時とは違い青色を基調としたバリアジャケットが展開され、俺の身を覆った。更に俺の手には、バルディアスが拳銃となり握られる。
「さぁ!お前の罪を数えろ!」
銃口を向けながら高らかに言うと、男は笑いだした。それは自分の勝ちを確信した、慢心にも取れる大きな笑いだった。
「はぁーっはっはっはぁ!!笑わせてくれるな!餓鬼が大人に敵うと思うなよ!」
「知ってる?それ、フラグっていうんだぞ?」
「なら…試してみやがれぇ!!」
耳障りな程の大声を上げながらの魔力弾を一斉射してくる男に、俺はルナを使うまでもないと判断するとバルディアスのトリガーを引いた。
銃口から放たれた俺の魔力弾は、寸分違わず全ての魔力弾に命中して魔力を四散させた。
「ふん、少しはやるみたいだな?」
『マスターは少しじゃなく、とても出来るんです。貴方みたいなゲスと一緒にしないでください。』
「バルディアス、ちょっと黙ってろ。」
空気を読まず発言するバルディアスを黙らせ、腰を落として構える。打ち出される魔力弾を撃ち落としながら、男へと肉薄し拳を突き出したが、簡単に防がれてしまった。
「なんでこんなことを…」
「何故って、決まってるだろう?可愛い餓鬼は高く売れる。魔法を使えば簡単に痕跡は消せるからな。」
俺の拳を握り厭らしく笑いながら言う男に怒りの視線を向けると、片手に握っているバルディアスと自分で生み出したスフィアから魔力弾を一斉に放つ。
男は障壁を貼り防ぐと、俺をそのまま投げた。俺は投げられながらも体勢を変えて着地をする。
そんな必死な俺を見て更に愉快そうに、奴は笑った。
「必死になってまぁ…。安心しな。お前も同じように売り飛ばしてやるよ。」
「ふざけんな!アンタがこの先悪さできねぇように、俺が倒して管理局に引き渡す!」
『Metal!』
男の言葉を否定し、銃形態のバルディアスを開きメタルメモリを入れて戻す。俺は未だに笑みを浮かべる男へと銃口を向ける。
「自分自身の力だ。これが力。持つ者が振るうべき、他には無い力なんだよ。こうして暮らせば、楽ができ……っ!」
そして語っている男目掛けて引き金を引いた。
男は余裕そうに障壁を貼り笑みを浮かべたが、直ぐにその笑みが歪む。障壁を貫いた魔力弾が、男の腹部へと直撃していた。
メタルの性質は硬質化。俺はその属性を付与させ、魔力弾を徹甲弾のようにして障壁を貫いたのだ。
余りの衝撃に蹲る男を見下ろし、スフィアを周囲に展開させ銃口を頭に突きつける。
「…探偵は、お前達みたいな卑劣なやつに嘆き悲しむ人々の為に存在するんだ。…お前みたいな奴は…」
「や、やめろっ!やめろっ!」
先程とはうって変わって情けなく許しを求める男に冷たい視線を投げ掛ける。そして無慈悲に告げた。
「倒してもいいよな?答えは聞かないけど。」
「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
カチリとトリガーを引いた刹那、銃口とスフィアから魔力弾が放たれ無防備な男を襲い、男の意識を刈り取った。
「ふぃー…取りあえず、クロノに連絡かな…」
ため息を吐きながら結界を解いてクロノへと連絡をし、男を拘束する。
そうこうしている間に来た局員へ男を引き渡すと、俺は女の子をおぶったまままた玄関先へと戻るのであった。
かなり間が空いてしまいましたね…作者のディアです!
翼「本当、かなり空いたな…。皆、ごめんな?」
すいません。翼くんの生まれの事とか色々と考えていたら筆が進まなく、こんなに遅くなってしまいました。後、地味に翼くんの設定が変わっております。
はやて「作者も悩むことあるんやね?基本能天気な人かと思てたわ。」
ひ、酷い…
翼「うちひしがれてる作者は放っといて、今回は色々あったな?」
はやて「翼が帰ってきて、すずかちゃんの知り合いの家に行って、待っとる間に悪い人と戦って…」
翼「正直、もう少し強くてもよかったかも…。仮面の男とやりあった後じゃ、少しもの足りないかな。」
はやて「そんなん言わんの。あ、そう言えばザフィーラにバルディアス貸してたやん?あれはなんやったん?」
翼「ん、わかんねぇ。作者もバルディアスもザフィーラも教えてくれないからな。」
シグナム「それにしても、愛沢家に行ったときは散々だったな?肝心のすずかは居ない、変な男達と戦闘になる…」
ザフィーラ「翼よ。お前にはトラブルが付きまとうのか?」
翼「ははは…何でだろうな…」
はやて「それにしてもあの愛沢って子、何や私によう似とったなぁ…」
あ、愛沢さんはクロスオーバーとしての参加ではなく、スポット参加となります。
はやて「解る人には解る思うよ?みんな、当ててみてな?」
それでは短いですが、これでお別れとさせていただきます。
シグナム「読んでくれている皆、何時も感謝しているぞ。」
はやて「ご意見やご感想など、気軽に書いていただけると幸いです。」
シグナム&はやて「「次回もこの小説に…」」
翼&ザフィーラ「「リリカル・アクセス!」」