魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》 作:三咲ディア
『…スター…マスター!起きてください!』
時計の長針と短針が12を指し示す頃、俺はベッドサイドに置いているバルディアスに起こされる。こんな真夜中に起こされるなんて勘弁してほしいんだが…と思いながら起き上がった。
「何だ…ってまだ0時じゃねぇか。」
『はやての部屋から多数の魔力反応です!』
「何だって!?」
バルディアスの言葉にバネのように飛び上がると、ロストドライバーを腰に装着させる。そして一目散にはやての寝室を目指した。
俺はノックもせずに扉を開ける。
「はやて!無事っ…!?」
「…何だ貴様は?今は主を介抱するのに忙しい。」
「つーわけで、とっとと消えな。見逃してやるからよ。」
部屋に入った瞬間、4人もの魔導士が其処に居り、金髪の女声が気絶したはやてを介抱していた。
いきなり入ってきた俺に対して殺気を放つポニーテールの女性と小さな少女を見据えながら、俺はメモリを手に取る。
すると一人の屈強な男性が二人を手で制した。…何故犬耳が着いているのだろう?
「落ち着け、二人とも。この方は主の関係者だ。」
「ザフィーラ!何でそんなことわかんだよ!」
「こんな夜更けに主と一緒にいる時点で気付かんか?」
「あ…」
「まったく…ヴィータは兎も角、烈火の将であるシグナムまで冷静さを欠くとは…」
「すまないザフィーラ…。」
「おーい…俺は無視ですか?」
そもそも主って誰の事だ?と問いかけようとした時、シグナムと呼ばれた女性が頭を下げた。
「すまない…主の関係者とは露知らず、無礼をお許しください。」
「…はやてに危害を加えてないなら良いよ。それより、はやては大丈夫?」
「はい、少し驚かれて気絶しているだけですが…」
「一応石田先生の所に行こうか…。お前らは来るのか?」
「勿論です。我らヴォルケンリッターは、何時までも主の側に。」
剣を掲げ堅苦しく話すシグナムに苦笑いが漏れる。外見通りのお堅い性格の様だと口には出さず胸中で呟くと、未だに気絶しているはやてへと近寄る。そっと背中と膝裏に手を回して抱き上げると、玄関から外へと出た。
それに続くように後ろから着いてくるヴォルケンリッターと名乗る者達。…あの服装で石田先生に会わせるのはどうだろうか…と、若干の懸念事項を持ちながら俺は病院まで駆ける。
「すいません、貴方は主とどの様な関係ですか?」
「家族だよ。俺は八神翼。よろしくな?」
「そうですか…私は湖の騎士、シャマルです。」
「あたしは鉄槌の騎士、ヴィータ。」
「私は烈火の将、シグナム。」
「盾の守護獣、ザフィーラだ。」
病院までの道程を駆け抜けながら自己紹介を行う。それから俺はシグナム達からヴォルケンリッターの事、闇の書と呼ばれる物の事等を聞きながら病院へとたどり着いた。
☆
「ん…?」
「はやて…気付いたか?」
「翼…?私…本から人が出てきて吃驚して…それから…」
「気絶したんだよ。アイツらも此処に来てるから、親戚って事にしてる。話を合わせてくれ。」
「わかった。ほんなら、石田先生呼んでくれる?」
「おう。」
目を覚ましたはやてに事の次第を告げ、口裏を合わせるように手筈を整えて石田先生を呼びに行く。俺は病室をはやてと石田先生だけにしてヴォルケンリッターの居る場所へと向かった。
待合室で4人を見付けると、一安心したように息を吐く。どうやら騒ぎは起こしていないようだ。
「翼様、主は…」
「安心しろ。もう目覚めて石田先生とお話し中だ。」
「良かった…」
「シャマルは心配性だからな。あたしみたいにドーンと構えてりゃ良いんだよ。」
「お前の場合は無遠慮と言うべきだな。」
「まったくだ…」
なるほど、はやてを守る騎士だけあってやはりはやての身は心配なんだな、と思いながら待合室の長椅子に腰を掛ける。
「なあなあ、何か食うもんないか?」
「えっと…ヴィータだったっけ?悪いけど今は何もねえ。」
「えー…」
明らかにテンションを下げるヴィータに転けそうになる。出会い頭に殺気を放ってきた時とはまるで別人の様な感じがした。
俺は苦笑いを浮かべながら足を組む。時刻は午前2時…流石に眠くなってきた…。
眠い目を擦りながら待っていると、病室の扉が開く。
「お待たせ、翼くん。はやてちゃん、異常は無いわ。」
「良かった…ありがとうございます。」
「ううん、主治医なんだからこれくらい当然よ。医者としては一日様子を見たいけど、本人が帰りたいって言ってるから、今日は連れて帰ってあげて?」
「はい、ありがとうございました。」
石田先生に頭を下げてからはやての元へと行く。はやてが上手く説明していた為か、石田先生からヴォルケンリッターについての言及はなかった。
「はやて、じゃあ帰ろうか?」
「うん。車椅子は…」
「あ、悪い。俺が抱き上げてきたから…車椅子無いんだ。」
「ほうか…。ほなら、また御願いできる?」
「おう、任せな。」
はやてのお願いを快く承諾すると先程のように膝裏に手を差し入れ、片手で背中を支えて立ち上がるとはやてが密着してくる。
「あんまくっつかれると動きにくいんだけど…」
「ええやんええやん♪」
上機嫌なはやてにされるがままになりながらもヴォルケンリッター達と合流する。俺の首にしがみつくはやては、何処か嬉しそうで、幸せそうな顔をしていた。
「それじゃ石田先生、お世話になりました。」
「面倒かけてごめんなさい、石田先生…」
「良いのよ。それじゃあはやてちゃん、次の検診の時にまた会いましょうね?」
出口近くまで送ってくれた石田先生に頭を下げる。ヴォルケンリッター達も俺達に習って一人ずつ礼を述べると、皆で家路を目指した。
「主、闇の書の魔力の蒐集についてなのですが…」
「翼からちょこっと話聞いたよ。それって他の人襲うっちゅう事やろ?」
「はい、そうなりますね。」
「ほな、やったらアカン。」
はやての言葉にシグナム達が呆然とする。事のあらましを少しでも話しておいて良かったと、俺は心から思った。
「で、ですが我々は主の願いを叶えるべく…」
「不自由な生活しとるけど、私は何も要らんよ?皆で楽しゅう過ごせればそれでええ…」
「…では…我らは一体何のために…」
今まで闇の書を完成させ、主の願いを叶えるのがコイツらの誇りであり、責務であったことがありありと見てとれる。存在意義を否定されたかの様に項垂れるシグナム達に、俺は振り返ること無く告げた。俺は優しく何てないからな…。
「ま、数百年生きてりゃこういう事もあるって。諦めろ。」
「っ…我等が誇りを…」
「そんな誇りなんざ、溝に棄てなよ。…今の主が平和に暮らしたいって言ってんだ。黙ってそれにしたが…んぐ!?」
「こーら、言い方ゆうもんがあるやろ?」
はやてに鼻を摘ままれて言葉を遮られる。シグナム、ヴィータ、シャマルは俺を不審な目で睨み付けていたが、ザフィーラだけは俺の意図に気付いていたようだった。一人だけでも気付いて貰えて良かった。
「…そやな、一つだけ願いがあるんなら…皆で楽しゅう暮らしたい。ヴィータもシャマルもシグナムもザフィーラも…そして翼も。皆で家族になりたい。」
「…わかりました。我等、ヴォルケンリッターの名の元に。」
「もし私に黙って蒐集なんかしたら…服剥いだるで?」
はやてが冗談めかしていうとヴォルケンリッター一同が戦慄する。俺は小さく吹き出すとシグナム達の服をどうにかしなければ…と考えながら家に到着を果たした。
こうして俺達八神家に、新たな家族が増えることとなった。俺にも兄や姉が出来たみたいで嬉しい。
ザフィーラは兄のように俺を見守ってくれるし、シグナムは俺の稽古に付き合ってくれる。ヴィータは騒がしいが俺達の場の空気を作ってくれるし、シャマルは良いお姉さんだ。
願わくば、この生活が続きます様に…と祈りながら、日々を過ごしていく。
俺とはやてが闇の書事件に巻き込まれるまで、後6ヶ月…。
はい、と言うわけで6月4日の出来事であるヴォルケンリッター覚醒の巻きでございました。少し短めでしたがいかがでしょうか?
翼「いや、短すぎじゃないか?」
はやて「ほやろか?私はあんまり長々するのは苦手やけど…」
この小説否定しないでもらえませんかね?
なのは「わたし達、まだまだ出番がないの…」
管理局組は出番が限られてきますからねぇ…。番外編のNovel stageで管理局組の質問があれば、翼君との絡みが出来そうですが…。
リニス「フェイトと翼が出会った時が面白そうですね。私的にはとても楽しみです。」
翼「別に、どうもしないよ。俺の家族は八神家なんだから。」
リニス「私は家族じゃないんですねー!(ダダダダダダッ)」
翼「あ、ちょ!母さーん!?」
騒がしくなっちゃいましたね。それでは次回予告をば…。
はやて「新しゅう家族になったヴォルケンリッター達。」
そんな彼等との日常は毎日が笑顔に包まれている。
なのは「こんな日常が続けば良いな…」
次回、八神の日常。
はやて「次回もリリカルマジカル、頑張ります!」
なのは「それ私の台詞なの!」
P.S.
フェイト「番外編のNovel stage…簡単に言うと、ラジオみたいな感じになるのかな?」
そうですね。読者の皆様から質問や要望等を受け付けて、それに応えていこうかなと思っています。
フェイト「活動報告で募集用の記事を作るから、良かったらあなたの御質問、要望等を書いてください。勿論、感想でも受け付けて居ますので…」
それでは!次回でお会いしましょう!